H25年度基礎天文学観測実習 「電波望遠鏡による 分光撮像観測」 河野孝太郎、田村陽一(天文学教育研究センター) [email protected] [email protected] 改訂履歴: 平成24年7月30日 平成24年8月6日 平成25年9月24日 本日のスケジュール (2013/9/28 14:30~17:00?) 実習参加者顔合わせ 担当教員:河野孝太郎、田村陽一 担当チューター:泉拓磨(修士2年) 参加:安藤亮、岡村拓、菊田智史、辰馬未沙子、藤本空 実習概要説明 事前講義 電波望遠鏡とは 電波望遠鏡を使った観測に登場する概念・用語など 実習準備 観測天体の検討 必要なソフトウエア等の確認・準備 実習の概要 国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を用いて、 天体観測とそのデータ解析を行う。これにより、 電波望遠鏡を使った分光観測や撮像観測とはど のようなものか理解すると共に、得られた電波ス ペクトルおよび電波画像から得られる情報とその 物理的意味について考察する。 実習のうち、観測とデータ解析は野辺山で行う( 2泊3日)。その前後に、三鷹で電波天文学に関 する講義と準備、また、取得したデータを使った 考察・議論を行う(各1日) 「電波望遠鏡による分光撮像」 実習のねらい 電波望遠鏡とは? 電波望遠鏡を使った観測の特徴は? 電波望遠鏡を使った観測では、どのような「物 理量」を測定・取得しているのだろうか? 得られた測定量から、どのように天体の画像が 得られるのだろうか? 天体の画像から、どのような天文学的・物理学 的・化学的情報を得ることができるだろうか? 得られる情報の精度・誤差は、実際の観測とは どのように関係しているのだろうか? 実習の意義 装置を「ブラックボックス」として使う人 出てきた結果に何か問題があったとき、それがど の程度「あぶない」のか正確に判断できない。 よく理解した上で使う人 装置性能ギリギリに挑む観測(初期宇宙の銀河 からの極めて微弱な信号を捕らえたい、ブラック ホール近傍の極めて小さい空間構造を議論した い、系外惑星からの小さくて微弱な信号を探した い、などなど) 装置の原理を理解することで、徹底的に性能を 引き出すことができる。出てきた結果の、どこまで を信頼し、どこからを疑うべきか?が、確信をもっ て判断できる。 具体的なターゲット 22GHz帯にある星間分子からのスペクトル線 アンモニア分子からの反転遷移輝線 天の川銀河内に分布する、大質量星形成領域。 そこに存在する星間分子雲のガス量(ガスの柱密度)や温 度を測定する。 観測が順調であれば、大気透過度の測定の実習も途 中で行う。 観測候補天体の位置 @2013/10/13, NRO 実習スケジュール:1日目(10/12(土)) 集合: 2013/10/12(土) 14時@JR小海線野辺 山駅 新宿 11:02発 あずさ77号 松本行き 13:04 小淵沢着 13:14発 小海線 小諸行き 13:46 野辺山駅着 (昼食は適宜済ませて下さい) 河野、泉が車で駅まで迎えに行く。 初日の夕ご飯は、観測しながら45m観測棟で 近隣 のコンビニで適宜買い物をしてから観測所へ。 チェックイン(各自、部屋の鍵を受け取る等) 14:30 本館から45m観測棟へ移動 実習スケジュール:1日目(10/12(土))続き 14:30 – 15:30 指示書作成、観測準備 15:30 – 18:00 M17SW or W51(1回目) ※ 最初の観測の様子を見たところで、「後半夜班」は 適宜夕食を摂った後、仮眠へ 18:00 – 20:30 W51 or DR21 (1回目) 20:30 – 23:00 DR21 or NGC7538(1回目) 10/13(日) 「後半夜班」観測 01:30 – 03:30 Orion-North(1回目) 03:30 – 05:30 Orion-KL/BN(1回目) ※ 観測が終わったら適宜就寝 実習スケジュール:2日目(10/13(日)) 午前中は就寝・自習 12:00 NRO本館・玄関ロビーに集合。昼食(朝 食?)を外へ食べに行く。 田村さん合流。 13:30 – 15:30 データ解析 15:30 – 初日と同様に観測。 データ取得が順調な場合は、前半夜のどこかの タイミングで、大気透過度の測定を行う。 (10/14の05:30までには観測終了、就寝) 実習スケジュール:3日目(10/14(月)) 午前中は就寝・自習 12:00 NRO本館ロビーに集合。昼食(朝食?)を 外へ食べに行く。 各自、荷物をまとめ、部屋を空けた状態で集合。 鍵も返却する。領収書を忘れずに受け取る。 13:30 – 16:00 データ整理、「まとめ」の発表( 10/26(土))に向けた準備 余裕があれば所内見学等も 16:30 本館ロビー集合、野辺山駅へ移動・解散 16:59 JR小海線 小淵沢行き 17:30 小淵沢着 17:41 スーパーあずさ28号 新宿行き(19:36着 実習で使う「道具」 NEWSTAR 45m電波望遠鏡のスペクトル線データの解析ソフト。 LINUXまたはMac-OSではjava版 NEWSTARが動く。 http://www.nro.nao.ac.jp/~jnewstar/html/ KARMA または ds9 解析済みの画像の表示。FITS viewer。他の波長の画像 との比較をする際に使用。 http://www.atnf.csiro.au/computing/software/karma/ http://hea-www.harvard.edu/RD/ds9/site/Download.html Gnuplot 得られたデータの表示(2次元マップ作成など)。 PowerPointまたはkeynote まとめのプレゼンテーションで使用 ds9を使った中間赤外線画像(Spitzer衛星3.6μm )と45m鏡による観測領域の図示(の例) 持ち物など 秋の野辺山は、朝晩、零度近くまで冷えこみます。 冬用の上着等を必ず持参して下さい。 国立天文台野辺山の共同利用宿舎に泊まります。 タオル、バスタオル、シャンプーは備え付けアリ。 洗濯機・乾燥機(洗剤もアリ)が利用できます。 可能な限り各自ノートパソコン、記憶媒体(USBメモ リ等;データを持ち帰るため) 筆記用具、ノート 宿泊費の領収書等、事務室(石川さん)の指示に従 って忘れずに提出して下さい。 観測に使用するアカウント = メモ:パスワードは i1042kk (全員共通) ________________ 安藤亮: プロジェクト名 = 2013a 岡村拓: プロジェクト名 = 2013b 菊田智史: プロジェクト名 = 2013c 辰馬未沙子: プロジェクト名 = 2013d 藤本空: プロジェクト名 = 2013e 田村陽一 2013f 河野孝太郎 2013g 具体的な観測天体候補 M17SW W51A (or W51D?) DR21/W75S NGC 7538 Orion-North Orion-KL/BN いずれも、天の川銀河内にあり、電離雲(HII領 域)と巨大分子雲が存在する大質量星形成領域 。 NGC 7538 Herschel衛星による 遠赤外線(70~250μm 帯)3色合成画像 ダスト 温度[K] Fallscheer et al. 2013, ApJ, 773, 102 重い星の集団である「カシオペア座OB2 アソシエーション」に付随 するHII領域。 銀河系中心と反対の方向、2.8kpcの距離にあり 、銀河系の渦状腕「ペルセウス腕」に位置する(視線速度は約 53 km/s)。巨大な分子雲(質量が20万倍の太陽質量もある)が 存在し、 HII領域NGC7538に隣接して現在でも活発に大質量星 (O型、B型星)が生まれている。 W51 Sorai et al. 2008 PASJ, 60, 1285 天の川銀河の中で最も明る い大質量星形成領域の一つ 。W51A, B, C, Dの4つの 分子雲からなることが分かっ ている。 特に、W51の中で最も明る いHII領域複合体である G49.5-04領域は、さらに年 齢の異なる4つの領域に分 かれており、複数の分子雲 の衝突が星形成を引き起こ しているとの説も提唱されて いる。 Parsons et al. 2012, MNRAS, 424, 1658 JCMT15m 望遠鏡による CO(3-2)map DR21/W75S はくちょう座方向にあり、分子雲 やダストが多く存在する。 距離 1.7kpcにあり、視線速度 は-3km/s。 この領域の中心には、「超コンパ クトHII領域」である DR 21 があり、 さらにその北には DR21より若く比較的活発な星 形成領域 DR21(OH) がある。 埋もれた赤外線源 まだ光り だしていない若い星が多数存在 していることを示している。 Kumar et al. 2007, MNRAS, 374, 54 Spitzer衛星による 中間赤外線(3~8μm帯) 3色合成画像+SCUBA カメラによる850μm 画像(等高線) 赤緯 M17SW Spitzer衛星による 中間赤外線(3~8μm帯) 3色合成画像 Busquet et al. 2013, ApJ, 764, L26 など 赤経 M17SWは、距離約2.1kpcにある、大質量星形成領域である 。明るいHII領域 M17の南西側にあり、赤外線でみて暗い、 赤外線暗黒星雲(Infrared dark clouds; IRDC)が存在す ることでも知られている。また、星の初期質量関数が、M17 HII領域と比較して顕著に異なっていることが報告されている。 このことから、M17SWは、まだ進化段階の若い、これから多 量の大質量星が生まれようとしている場所ではないかと考えら れており、更なる研究が進められている。 赤緯 Orion分子雲 距離が400pcと近いた め、大質量星がその周 囲の星間物質に与える 影響(温度変化等)を 詳しく調べることができ る。 過去の観測から、以下 の2領域はアンモニア 分子が豊富: Orion-KL/BN Orion-North Shimajiri et al. 2011, PASJ, 63, 105 赤経 図:Orion-KL領域を含む、OrionA分子雲を、色々な波長でみた画像。(a) AzTEC/ASTE による1.1mm連続波。(b) 115GHz帯にあるCO分子の輝線のピーク輝度温度分布。(c) 近赤外線(1~2μ帯)での3色合成画像。(d) 中間赤外線(8μm)での画像。
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