天体放射論II

H24年度基礎天文学観測実習・資料
観測する天体・領域について
河野孝太郎(天文学教育研究センター)
[email protected]
図の作成:泉拓磨(修士1年)
平成24年8月6日
改訂版
観測候補天体の位置 @2012/8/9, NRO
Spitzer衛星による
中間赤外線
(3~8μm帯)
3色合成画像
 重い星の集団である
「カシオペア座OB2
アソシエーション」に
付随するHII領域である。
 銀河系中心と反対方向に
2.8kpcの距離にあり、銀河系の渦状腕「ペルセウス腕」に位置
する(視線速度は約 - 53 km/s)。星が生まれるもととなる巨
大な分子雲(質量が20万倍の太陽質量もある)が存在し、 HII
領域NGC7538に隣接して現在でも活発に大質量星(O型、B
型星)が生まれている。生まれたばかりの若い星たちと思われ
る赤外線源も11個見つかっている。 距離の近い大質量星形成
領域のひとつであり、その形状も比較的単純であることから、
大質量星がどのようにして生まれるかを調べる上で格好の領域
であると考えられており、よく研究されている。
赤緯
NGC 7538
赤経
赤経
DR21
赤緯
 はくちょう座方向にあり、分子雲や
ダストが多く存在する。
 距離 1.7kpcにあり、視線速度は
-3km/sである。この領域の中心には、
「超コンパクトHII領域」である DR 21
があり、 さらにその北にはDR21より
若く比較的活発な星形成領域
Spitzer衛星による
(DR21(OH) と呼ばれる)がある。
中間赤外線(3~8μm帯)
3色合成画像
 最近の赤外線の観測によれば、
可視光で見た場合より赤外線で見た
場合の方が明るく見えている。 これは、まだ光りだしていない若い
星が多数存在していることを示している。
赤緯
赤経
W51D
Spitzer衛星による
中間赤外線
(3~8μm帯)
3色合成画像
 W51は銀河系で最も明るい星形成領域の一つである。特に、
W51 の中でも最も明るい H II 領域複合体である G49.5 0.4 領域は年齢の異なる4つの領域に分かれ、最も若い領域
では17個のO型星が生まれている。
 13CO (J = 1→0) 分子線の観測からは、速度の異なる 4つ
の分子雲の存在が明らかになっている。これら複数の巨大分
子雲同士が衝突し、その衝突によって集団的星形成が引き起
きている可能性がある。
赤緯
M17SW
Spitzer衛星による
中間赤外線(3~8μm帯)
3色合成画像
赤経
 M17SWは、距離約2.1kpcにある、大質量星形成領域である
。明るいHII領域 M17の南西側にあり、赤外線でみて暗い、
赤外線暗黒星雲(Infrared dark clouds; IRDC)が存在す
ることでも知られている。また、星の初期質量関数が、M17
HII領域と比較して顕著に異なっていることが報告されている。
このことから、M17SWは、まだ進化段階の若い、これから多
量の大質量星が生まれようとしている場所ではないかと考えら
れており、更なる研究が進められている。
Sh255
赤緯
Spitzer衛星
による
中間赤外線
(3~8μm帯)
3色合成画像
赤経
 Sh255(あるいは単にS255) は、銀河中心と反対の方向にあ
る「ふたご座OB 1 コンプレックス」と呼ばれる巨大分子雲の一
部。地球からの距離は2.5kpc で、私たちの銀河系の中では
比較的外縁部にある。
 この巨大分子雲の中には多くの HII 領域を含み、星の直接的
母体と考えられている密度の高い分子雲の塊、「分子雲コア」も
、複数検出されている。近くには、S254, S256, S257 など複
数の HII 領域が存在している。
赤緯
Ori-KL
 Orion-KL領域は、
Orion-A巨大分子雲
の中で最も激しく大質
量星を生成している現
場である。距離が
400pcと近いため、大
質量星がその周囲の
星間物質に与える影響
(温度変化等)を詳しく
調べることができる。
図の出典:
Shimajiri et al. 2011,
PASJ, 63, 105
赤経
図:Orion-KL領域を含む、OrionA分子雲を、色々な波長でみた画像。(a) AzTEC/ASTE
による1.1mm連続波。(b) 115GHz帯にあるCO分子の輝線のピーク輝度温度分布。(c)
近赤外線(1~2μ帯)での3色合成画像。(d) 中間赤外線(8μm)での画像。