特定領域研究「火山爆発のダイナミクス」2005年度年度末シンポジウム,2006.3.1-3,東大地震研 三宅島火山ガスの動態と防災体制 木下 紀正(鹿児島大 地域共同研究センター)・ 飯野直子(鹿児島大 工学部)・ 坂本昌弥(鹿大 教育学研究科&鹿児島玉龍高)・ 金柿主税 (熊本県天草郡御所浦北中 ) 2000年噴火前 SiPSE-3D近赤外画像 火山ガス防災体制の基本 火山ガスのリスクをどう捉えるか 火山ハザードマップ中で火山ガスに関する記載は14%のみ [中村・荒牧2004,2005] 記載も『火山ガスの濃度が高くなりやすい条件は「風が弱い」 「くぼ地である」』等、低温型ガスの注意のみが多い。 秋田県泥湯温泉ガス中毒事故 2005.12.29 伊豆大島火山博物館2001.2・軽井沢駅掲示2005.3・ 殆どの火山解説書も 三宅島2000年-やこれまでの阿蘇・桜島の場合は、 活発な火山活動で放出される高温型ガスであり、 比較的低温の噴気口や地中の割れ目からにじみ出るような 低温型ガスとは振舞いが異なる。 軽井沢駅掲示2005.3.6 関係者に助言、改善が期待される 高・低温型の火山ガスの区別 in 「火山ガスから身を守るには」、科学技術庁、1998 SO2+ 3H2 ←→ H2S + 2H2O 科学技術庁パンフレット,1998 火山ガス災害に関するシンポジウム -科学技術振興調整費緊急研究の成果 と普及-、1998.9.19 科学技術庁研究開発局、 火山ガス災害に関する緊急研究成果報告書、1999 近藤裕昭他、火山ガスの拡散シミュレーション、 資源と環境、8, pp.123-138、1999 気塊の密度には数ppmの程度の火山ガスSO2成分は殆ど影 響せず、むしろ気塊の温度の違いが決定的である。 風洞実験・水理実験とコンピューターシミュレーションによっ て八甲田山の低温型と阿蘇の高温型の火山ガスの拡散を 研究し、後者については強風時の風下への高濃度ガスの吹 き付けの危険(木下他1998)を確認。 但し、緊急研究まとめでは、残念ながら 低温型ガスについての注意だけ 高濃度火山ガスの動態と気象条件 木下・池辺・金柿・直江・今村、自然災害科学研究 西部地区部会報・論文集22、 133-138、 1998 TBS報道特集「三宅島火山ガスの脅威」 2001.10.28 さらに、NHKニュース10 「なぜ高濃度 三宅島火山ガス」 2002.3.5 三宅島火山ガス問題の経過 2000 8月末から大量の火山ガス、山頂火口からの高温型、本土へも影響 9月~全島避難、2005年1月まで 始め無防備、9.16島内で作業中の警察官数人が火山ガス中毒 9.20 強風をさけて風下の阿古港に入ろうとした作業船かとれあ丸、 ガスの直撃を受け混乱 8-12月、「火山学者のひとりごと」掲示板のガス関連発言盛ん 8.30~、鹿大噴煙火山ガス研究グループ発言と HP「三宅島雄山の火山ガスを考える」 10.5 「現地観測体制再建のために」 5800木下 噴煙上昇なら火山ガスはあまり来ていない。 強風では風下を避けて接岸できれば火山ガス濃度は低いはず 12月~、東京都内や島内の火山ガス連続測定データを 都環境局広域監視課から入手 三宅島火山ガス問題の経過 2001 2.28 特別講演会「三宅島噴火と広域大気汚染」 都・大気環境学会 3.1 大気環境学会酸性雨分科会主催 2001年酸性雨講演会 3月 鹿大 グループ論集「噴煙と火山ガスの動態を探る - 三宅島2000年噴火にあたって -」 7.17 西日本新聞科学欄、木下 火山ガス 「風」に支配された挙動、はるばると長旅も 10.28 BS910ch., TBS 鹿大 グループ見解を紹介 10月 火山学会で発表、 火山噴火予知連に意見書 討議・かなり理解される 岩波の 科学 10 木下, 火山ガスの正しい理解を 12月 都災害対策本部第336報, 風速の違いによる風下側に対する影響で木下を引用 三宅島火山ガス問題の経過 2002 3.5 NHK 鹿大 グループ見解を紹介 9.8毎日 下記の鹿大・東大グループ発表をスクープ、内閣府から照会 9.15アカコッコ『毎日新聞』「<三宅島>火山ガス、高濃度は限定的 予測可能で帰島へ朗 報」という記事によれば、 「健康への影響が出るような高濃度が観測されるのは、火口付近に強風が吹くときで、しかも 風下の幅約1キロの狭い範囲に限定されることが、鹿大と東大の研究で明らかになった」。 この研究グループは、「一時的な高濃度への対応ができれば、永続的な帰島の検討も始めら れるのでは」と指摘。 一日も早い、三宅島のみなさまの帰島を願ってやみません。 (三宅島と多摩をむすぶ会・アカコッコ編集委員会代表 干川剛史) 9.19-20 自然災害学会 飯野・木下・小山田・金柿・寺田 三宅島山麓における火山ガス濃度変動と帰島問題 ①島内の高濃度事象は強風時の風下が非常に危険である。②並風~弱風で噴煙が火口から 数百メートル上昇しているようなときには、火山ガスは噴煙とほぼ一緒に挙動するため、山麓 付近で高濃度事象はあまり起こらない。 冬季に高濃度の継続時間が長時間にわたる空港局周辺を除けば、数時間の高濃度対策を明 確にしたうえでの帰島は可能であると考える。 0.1ppm以上の高濃度事象についての詳細な検討は残された課題 11.9-10 鹿大 多島域フォーラム「列島火山の噴煙活動を探る」 鹿大 グループの見解 強風でない場合 強風の場合 三宅島火山ガス問題の経過 2003-2005 2003.7月 小山田・木下・寺田・飯野・金柿, 三宅島島内の火山ガス高濃度 事象と八丈島高層風の特徴, 天気,50, pp.553- 559 2004.9 自然災害学会 飯野・木下,三宅島高濃度火山ガスハザードマッピング ―衛星画像による植生指数変化と八丈島高層風との関係― 2004.9.25読売夕刊「マップは三宅村の帰島地区選定の貴重な情報に」 →2005.3.7 確認 2005.2月 住民永住帰島開始 危険地区・高濃度地区除く 5月 一般・観光客受入れ開始、ガスマスク必携 (6.19 木下、南日本新聞 時論 2005. 三宅島と火山ガス防災、鹿大製のマップが貢献 火山防災体制の先進的モデルになっている鹿児島では、 火山ガス防災についても適切な配慮が期待される。) 火山ガス ハザード マップ 火山ガス 14観測点に 役場モニターセンター 記号 観測局名 観測開始 [月/年] A1 支庁 12/2000 D1 美茂井 04/2004 B1 逢ノ浜 09/2001 C1 三池 03/2002 C2 役場 05/2002 A2 空港 12/2000 D2 御嶽神社 04/2004 C3 坪田 03/2002 B2 アカコッコ 09/2001 C4 薄木1 03/2002 D3 薄木2 04/2004 A3 阿古 12/2000 D4 ふるさと 04/2004 B3 伊ヶ谷 09/2001 2001年1月-2005年9月の高濃度発生頻度 三宅島火山ガス研究: http://ese.mech.kagoshima-u.ac.jp/miyake/ 現地調査::2005年5月21-22日 伊豆-神着 伊ヶ谷-伊豆 (NIR) 坪田高濃度地区 錆ヶ浜(NIR) 都賀神社 阿古高濃度地区 NIR 坪田高濃度地区 坪田公民館 NIR 三宅村防災のしおり 高感受性者・要介護者・ 一般 で対応区別 SO2濃度5分値 5.0 ppm 以上 2.0 0.6 0.2 2005年1月 ,12月一部改訂 火山防災教育 桜島火山防災マップを活用した 火山防災授業2時間を実施 2005.12 鹿児島玉龍高等学校(1学年350 名) 2年生 68名(地学Ⅰ) 3年生 32名(地学Ⅱ) 地学選択者90名で実施 火山ガス対策記載も! おわりに 三宅島火山ガス問題をめぐる防災関 係機関の対応については、限られた 情報にもとづいて述べた。 今後、関係機関当事者によるまとめ や議論が期待される。 三宅島火山ガスについての鹿大グループの最近の論文: http://ese.mech.kagoshima-u.ac.jp/miyake/papers.htm
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