地図情報論

第3回 地理空間と地理情報
 地理空間
 地理空間の特性
 地理空間のとらえ方
 地理情報
地理と地理空間

空間(Space):


地理(Geography):







広義では,地球の外皮.地球の表面と生物圏
狭義では,自然の諸条件が人間の社会生活の組織形成をゆるす空間
一般に,人類が生存のために利用する,人間が近づくことのできる空間.
地理空間の各点は,地表における特定の地点である.
地理環境(Geographic Environment):


地球表面の土地や人間活動に関わる諸事象が成り立つ原理.
それは一方では,自然環境条件(地質構造,地形,気候,植生等)によっ
て,規定される自然の空間であり,
他方では,人口密度や社会・経済の組織や技術の水準に応じて整備され
た人工的空間でもある.
地理空間(Geographic Space):


要素と要素によって形成された一連の関係
人間活動によって改変された自然環境
地理景観(Landscape):

自然と歴史の結合によって形成された土地の外観.
地理空間の種類

自然景観:人間の手が殆ど加えていない環境(もうあまりないが)


アマゾンの熱帯雨林,南極大陸,天然林保全地区など.
自然景観の原理:さまざまな自然システムの要因と過程

地質システム.地史的プロセス,・・・

土壌システム,地形システム,・・・

自然エコシステム.生態的競争.食物連鎖.エネルギーの流れ,・・・
中国内蒙古自治区の天然林保全地区
オーストラリアの熱帯雨林保全地区
自然景観に見え隠れる自然システム
生
物
的
競
争
に
よ
る
空
間
的
棲
み
分
け
成長量
C植物
A植物
B植物
温度
地理空間の種類

人間によって改変された自然空間(農業景観).

農業景観の構造:農業的土地利用.耕地の開墾と放棄,肥料の導入,灌
漑,農産物の取引,・・・
鳥取の里山
チベットの山村
里山景観に見え隠れる人間・自然システム
山地
里山里地
里山林
雑木林
雑木林&草地
里山林
セミ自然
松林・雑木林・草地
天然林・人工林
国有林が多い
山
谷底水田
丘陵
住居
住居 川沿い水田
畑
谷底水田
低地
傾斜台地
里山の景観構造
谷底
天然林
人工林
雑木林
草地
水田
畑
松林
住居
地理空間の種類

人工景観:人間によって作られた環境(都市空間)

都市景観の構造:都市システム.

都市の空間システム:都市の立地(都市圏・都市軸),土地利用

都市の交通システム:ひと・ものの流れ,・・・
ブラジルの町並み
東京の町並み
都市空間に見え隠れる中心地システム
商業業務地
中央業務地
住宅用地
工業用地
野菜畑
一般農地
古典的中心地模式
地理空間の種類

地域空間:人間の経済社会活動に関わる空間

地域空間の構造:地域システム

行政システム:国・県・市・区・町

地域区分:さまざまな区域区分
地理空間の特性①
時空間における進化・分化の結果
地球表面
階
層
的
構
造
:
ス
ケ
ー
ル
地域A
(同質)
地域C
地域B
異質
分化
分類
相互作用
類似
空間的モザイク:形態
(点か線か面)
時
間
・
空
間
的
組
織
化
:
プ
ロ
セ
ス
地理空間の特性②:
同質領域・異質領域のモザイク
オーストラリアの熱帯雨林開発地区
台地・畑
箱根芦ノ湖
谷地・田
砂漠化地域
同質地域・異質地域の分類は地理の基本



同質地域:Homogeneous Area
異質地域:Heterogeneous Area
分類(Classification):




分類の意義:





何らかの基準をもとに,性質の似ているものを1つの空間的単元にまとめる.
単元の大きさが重要.
分類基準が変われば,同質・異質の結果も違う.
同質の地域は同様な歴史を経て形成された.
同質の地域は同様な環境の摂理がある.
同質の地域は同様な環境ポテンシャルがある.
同質の地域は同様な使い方ができる.
同質と異質の関係



地理景観は同質地域と異質地域のモザイクである.
近くの異質地域は遠くの異質地域より,よりよく似ている(分化の層位の関係).
同質地域・異質地域の間に、物質の循環とエネルギーの流れが起こる.
地理空間の特性③
同質・異質のスケール依存特性
地球空間
① スケール
国土空間
都市空間
②
ゼ
ロ
次
元
~
3
次
元
地域空間
③ 関心内容
地理空間のスケール
階 層
名 称
具 体 例
規 模
研究のスケール
Ⅰ
地帯
(Zone)
第1次スケール
熱帯,モンスーンアジア
107km
~1/1000万
Ⅱ
領域
(Domain)
第2次スケール
関東地方,アルプス山地
106km
1/100万~
1/500万
Ⅲa
地方
(Province)
第3次スケール
105km
1/50万
地域
(Region)
第4次スケール
104km
1/20万~
地区
(City)
第5次スケール
区域
(District)
第6・7次スケール
ブロック
(Block)
100mの形態
場所
(Location)
微スケール
Ⅲb
Ⅳ
Ⅴ
Ⅵ
Ⅶ
神奈川県
1/10万
湘南地域
藤沢市
5001000km2
1/5万~
50-50km2
1/1万~
1/2万
1/5000
遠藤地区
1ha-1km2
1/1000~
1/5000
街区,耕地の小字
1a-1ha
ビオトープ,エコトープ
1/500
~1/100
地理空間の特性④
進化と分化はつまり高次元への組織化,構造化
GISと地理空間

GISの目的は以上のさまざまな地理空間のシステムをデジタルで記述し,
数量的にまたはビジュアルに分析・考察し,人間の意思決定を支援する
ことにある.

GISを正しく,賢く利用するためには,さまざまな地理システムを理解す
ることが重要である.だから,GISを勉強することは,ソフトウェアの操作
よりも,自然と社会に関わる様々な問題を理解する能力が求められる.

地理システムに理解の欠ける人は総合政策学のアプローチを理解でき
ないともいえる.環境情報の分析もうまくならない.

総合政策・環境情報で学んださまざまな知識を掘り起こして、そこで気
付いたことを空間的に考えてみよう.

地理空間を考察するに際して,まず地理空間を捉える.その方法は二
つある。レイヤの見方とフィールドの見方。
地理空間のとらえ方:①レイヤの見方
空
間
の
相
互
作
用
時
間
の
積
み
重
ね
地理空間は様々な物理的層や社会経済的活動層の積み重ねによってできたとする.
地理空間のとらえ方:②フィールドの見方
地理空間は大小様々な空間実
体がモザイクしたものである.
海に浮かぶ島,陸地に点在する
湖,平地にたつ家などは空間実
体であって、エンティティという.
エンティティ
エンティティの背景として,連続
的に変化する地表面はフィール
ドという.
レイヤとフィールドとの関係

レイヤは断面の視点から地理空間を物理的,社会的層によって
とらえたものである.最小単位はレイヤ.

フィールドは鳥瞰の視点から地理空間を離散的な物体と連続的
な領域によってとらえたものである.最小単位はエンティティ.

同種類のエンティティの集まりがレイヤになる.

類似するエンティティが隙間なく埋め尽くされたレイヤはフィールド
となる.

類似するエンティティが集まる地域が同質地域といい,異なるエ
ンティティティが混在する地域は異質地域という.

地理空間は同質地域と異質地域の集まりである.

結局,エンティティとは地理空間における1つの同質地域である.
エンティティの特性

位置



形状


幾何学形状:0次元の点,1次元の線,2次元の面,3
次元の曲面(サーフェース)
属性


地理空間の中で,参照可能な場所
位置参照の方法:地名,住所,座標,コード,・・・
エンティティの物理的性質や社会的状態
機能

エンティティがもつサービス能力
エンティティの間の関係


位相(トポロジー)関係

上下,左右,前後の隣接関係をトポロジー(位相)という.
地理空間がどんなに変形しても,上下,左右,前後など
の相対的隣接関係が変わらない限り,位相同一という.

位相関係を保つことは地理情報をデジタル化するときの
基本条件である.
依存関係

エンティティ間の外延や包含を示す組織構造である.
エンティティの特性

エンティティの基本特性


エンティティの関係


位置(Position),形状(Shape),属性(Attribute),
機能(Function),時間(Time)
位相関係(Topology),依存関係(Order)
GISの基本課題はこれら7つの側面をどのよう
にとらえ,どのように管理するかにある.
地理情報



地理情報とは

エンティティの特性を記述した情報の総称.あるいは空間的位置によって関連づ
けられたさまざまな情報.

情報はデータ,事実,経験,知識,知恵などを含む曖昧なことばである。
地理情報の種類

記述方法から:文字,記号,数字,写真

メディアから:アナログ,デジタル

表現手法から:地図,画像,統計,文章
伝統の地理情報を理解することが重要

地図や画像や統計などに,地理空間を扱うための科学原理,データを処理する
ための技術,情報を理解・利用する知恵がある.

地図や画像や統計などは自然と人類の過去を記録した歴史的財産である.
地理情報の特性①:位置キー
地理情報=位置情報+属性情報
地理情報の特性②:多様な表現

写実的な表現



風景写真,空中写真,衛星写真
シミュレーション
描写的表現

地図


スケッチ・イラスト


風景画,・・・
数値的表現


地形図,主題図,平面図,段彩図,・・・
名義尺度,順序尺度,間隔尺度,比例尺度などによる数量化
記述的表現


地誌,郷土史,
詩,文,
地理情報の特性③:地図表現

地理空間は,場所を確認できる空間であるから,地図に
表現することができる.地図表現によって,縮尺に応じて,
また座標軸を基準にして諸現象を空間に位置づけ,空間
の構成要素を図式化することが可能になる.

地図は,空間に属する諸要素をそれらがある場所に位置
づけることによって,空間を形象化し,図式化する表現技
術である.
地図の特性①:レイヤ表現
地図はレイヤによっ
て,地理空間をとらえ,
様々な記号を使って,
地理情報を記述して
いる.
 1つのレイヤは1つの
情報項目を代表する.

地図の特性②:縮尺
側 面
大 縮 尺
小 縮 尺
縮小率
1/1000,1/500,・・・
1/10万,1/100万
規模
狭い地域
広い地域
詳しさ
(情報量)
詳しい.情報量が多い
粗い.情報量が少ない
正確さ
位置が正しい
位置の精度が粗い
作り方
直接調査
編集
地理システムの特性の観点から,縮尺の意味を考察してみよう.
地図の特性③:投影


投影

球面座標系にある地理空間を平面座標系に射影すること.

地理座標は準拠楕円体の定義に依存する.ある準拠楕円体によって定義
される地理座標系は測地系という.
座標系の種類




球面座標:地理座標(経度・緯度・標高)

ベッセル準拠楕円体(Bessel)によって定義した測地系:日本測地系

世界準拠楕円体(WGS84)によって定義した測地系:世界測地系
平面座標

Universal Transversal Mecartor (UTM)座標系

日本の平面直角座標系
(「GISの原理と応用」第2章を参考)
直角座標系(2次元,3次元)の間の座標値の換算は座標変換.
地図の特性④:図式(凡例)
フォント
スタイル
サイズ
カラー
○
種類
○
○
線(ライン)
線種
太さ
○
面(領域)
色塗り
網掛け
点(マーカ)
注記
○
向き
○
○
○
きれいな表現のために,以上の技法を組み合わせて,丁寧にアレンジすることが重要!
課題1: Google Earthの評価

これまでの授業を踏まえて次のリポートを作成し
てください。


Google Earthからどんな地理情報を読めたか。そ
れらの地理情報はどんな特性を持っているか。あな
たにとってそれはどんなに役に立ったのか
Google Earthのどこが面白いか。どんな面白い利
用がさらにできそうか。
分量 A42枚
 提出 印刷して10月17日の授業前に提出。
