偏光・熱放射・幾何学的性質の解析に 基づく透明物体

MIRU2002
偏光解析と幾何学的解析に基づく
透明物体の表面形状計測
宮崎大輔
池内克史
東京大学
情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻
本研究の目的
• 透明物体の表面形状を非接触で自動的に計測する手法を
提案する
• 手法としては偏光解析を用いる
• 従来の偏光解析で発生していた曖昧性を、物体の幾何学的
性質に基づいて除去し、正しい法線(=形状)を求める
( 東京国立博物館蔵 )
( 東京国立博物館蔵 )
( 奈良国立博物館・正倉院蔵 )
関連研究
• 越川 1979, 越川&白井 1987
– 偏光した光を様々な方向から物体に照明し、反射光の偏光状態から面の傾
きを求め、あらかじめ用意したモデルの中から最適なモデルを選ぶ
• Wolff 1990, Wolff&Boult 1991
– 両眼ステレオ法と偏光解析を組み合わせる事によって、物体の形状を計測
する事ができうる事を示した
• 斉藤,佐藤,池内,栢木 1999
– 偏光解析を用い、透明物体の形状を計測する手法を示したが、あいまい性
の問題を解決しなかった
• Rahmann&Canterakis 2001
– 偏光解析に基づき、鏡面物体の形状を計測する手法を示した
• 宮崎,斉藤,佐藤,池内 2002
– 可視光の反射光と熱放射光の偏光解析をもとに、透明物体の形状を計測す
る手法を示した
本手法の利点
左記手法と比べた場合の本手法の利点
光源は偏光している必要はなく、物体表面各
越川
点の法線データをいっぺんに計測できる
Wolff
ステレオで発生する対応点の問題を解決した
斉藤
法線の曖昧性を解決した(後述)
Rahmannはボウリングの玉の形状しか計
Rahmann 測できていないが、本手法は球ではない透明
物体の形状を計測できている
宮崎
計測に赤外カメラが必要でない
実験装置の幾何配置
カメラ
表面法線
偏光板
反射角
P
θ
光源 入射角
θP
表面法線
反射角
θQ
入射角
θQ
点P
点Q
物体
光源
θの曖昧性
2
2
2
2
2
2
2
ρ
• 偏光度を計測
• 偏光度ρから天
頂角θが求まる
(=法線が求ま
る)
偏 1   2 sin  cos n  sin 
n  sin  1  n  2 sin  
光
度
ρP
天
頂
角
θ
• 曖昧性を除去す
れば表面形状が
求まる
0
θ1 P
θ2 P
ブリュースタ角θB
曖昧性の問題が発生!
90°
手法の概要
• 物体を微小な角度だけ回転し、2つの偏光度
データを取得する
• 2つの偏光度データを領域分割する
• 領域内の点で、物体の回転方向に沿った法
線を持ち、偏光度が最小である点を対応点と
する
• 2つの対応点における偏光度の差の符号か
ら曖昧性を除去する
物体の微小回転
• 物体を微小な角度だけ傾ける
• 傾斜角の異なる2つの偏光度データを比較す
る事により、曖昧性を除去する
カメラ
微小回転
物体
領域分割
• 偏光度データを偏光度1の点(ブリュースタ角
の点)で分割
領
域
分
割
物体の偏光度を計測
偏光度画像
領域分割結果
偏光度1:白
偏光度0:黒
3つの領域に分割された
N
ガウス写像
N
N
B線
B線
赤道
赤道
ガウス球
N
N
B線
B線
赤道
ガウス球
赤道
ガウス球
ガウス球
または
Brewster-Equator領域
Brewster-Brewster領域
Brewster-Northpole領域
折り返し
• ガウス球上の一方の側にしか写像されないよ
うな線を折り返し点と呼ぶ事にする
• 折り返しは,物体の回転に不変な,曲面上の
幾何学的性質である(ガウス球上の線だか
ら)
曲面
ガ
ウ
ス
写
像
折り返し線
物体を回転=ガウス球を回転
ガウス球
対応点
• 折り返しは回転に不変な幾何学的性質
• 回転方向と同じ方向の法線を持つ点は回転
させても同じ方向の法線を持つ
対応点
•折り返し線
•回転方向を表す大円
この2曲線の交わる点を対応点とし
て用いる
折返し線
B線
回転方向
領域内の一点での判定結果は領域全体に適用できる
(B線で分割しているので領域にはθB以上の角度の点かθB以下の点しか存在しない)
対応点
• 対応点[北側]=大円と • 対応点[南側]=大円と
折り返し線の交わる点
折り返し線の交わる点
i.e.回転方向に沿った、
i.e.回転方向に沿った、
偏光度最小の点
偏光度最小の点
対応点
物体を回転
対応点
物体を回転
偏光度の差
1
• Δθだけ回転させた時、対応点
における2つの偏光度の差は
偏
光
度
 (   )   ( )   ( )
• 偏光度の微分は


d 2 sin  n 2  sin 2   n 2 sin 2  2n 2  sin 2   n 2 sin 2 

2
d
n 2  sin 2  n 2  sin 2   n 2 sin 2   2 sin 4 


• Δθの符号は分かるので、偏光
度の差の符号から曖昧性を除
去できる
•方位角φが計算済み
•回転させる方向は与えてやる
ポイント:回転角まで与える必要は無い

0
正
偏
光
度0
の
微
分
負
θB
90°
self-occlusionは発生しないと仮定
アルゴリズムのまとめ
• Brewster-Equator領域
背景差分によってOccluding Boundaryを求める
Occluding Boundaryに接する領域,と定義
θB<θ<90°として曖昧性を除去
• Brewster-Northpole領域
偏光度が0つまり角度が0°の点を含む領域,と定義
回転させても偏光度の最小値が0のままである事から判別できる
0°<θ<θBとして曖昧性を除去
• Brewster-Brewster領域
上2つ以外の領域,と定義
0°<θ<θBであるかθB<θ<90°であるかを判定する方法は:
– 物体を微小回転させ、2つの偏光度データを得る
– 各偏光度データを領域分割する
– B-B領域内の点で、回転方向に沿った法線を持ち、偏光度が最小の点を対
応点とする
– 2つの対応点での偏光度の差の符号から曖昧性を除去する
実験装置
光源
カメラ
光源
偏光板
光源
光源
物体
半透明球
半透明球
カメラと偏光板
計測精度[直径3cmの半球]
復元された形状
領域分割結果
ρ
誤差
偏光度 0.17
天頂角 8.5°
2.6mm
高さ
偏
光
度
天頂角θ
誤差(差の絶対値の平均)
偏光度のグラフにプロットしたもの
実験結果1
物体の写真
領域分割結果
復元された形状
実験結果2
B-B領域で判定
物体の写真
非回転 0.095
回
転
し
な
い
こ
っ
ち
方
向
に
回
転
非
回
転 領
域
分
割
結
微 果
小
回
転
物体は約8°回転させた
微小回転 0.266
↑向きの偏光度最小点
の偏光度の変化
非回転
0.089
微小回転
0.084
↓向きの偏光度最小点
の偏光度の変化
いずれからも
0°<θ<θBと判定
復元された形状
誤差評価
• 理論値と実測値の比較
理論形状
実測形状
直径24mmの物体
誤差0.4mm(高さの差の平均)
レンダリング結果
• 実画像
• レンダリング画像
まとめ
• 透明物体の表面形状を非接触で計測する手
法を提案した
– 安価な装置で計測する事ができた
– 法線をあいまい性なく求める事ができた
– 物体表面各点の法線を一度に求める事ができた
– 鏡面物体では困難な対応点を求める事ができた
– 球よりも複雑な形状をした透明物体の表面形状
を求める事ができた
(c) Daisuke
Miyazaki 2002
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宮崎大輔, 池内克史, "偏光解析と幾何学的解析に基
づく透明物体の表面形状計測," 画像の認識・理解シン
ポジウム, 論文集II, pp.263-268, 愛知, 2002年
7月~8月