大学が大型計画に参与し易い 枠組みの構築へ向けて 広島大学 宇宙科学センター 川端 弘治 (TMT推進小委員会外部委員) サマリー 問題設定 • 開発が大型化しすぎると大学院教育とフィットしない • 全国の力をなんとか結集できないか 提案 • 大学教員の多少の意識改革 • TMTに関わる様々な仕事をブレークダウンする人・枠組みを 設けられないか? • 半年~1年程度の短いインターバルで将来計画の調整を議 論する会合を開いてはどうか • 日本の割り当て時間の中に、貢献のあった人・グループが 使える「開発グループ枠」を設けてはどうか? 2 大学の研究室の事情1 • 効率化係数に基づく人員削減(研究室淘汰) – 黙っていれば減らされる – 他研究室と無言の競争 – 成果をアピールし続けないと発言力は得られない • 学生の維持 – 魅力ある研究テーマを掲げてリクルート – しかし博士課程まで残る人はマイナーになってきた – 卒論・修論向けの手頃なテーマ 3 大学の研究室の事情2 • 研究成果のアピール – (特に物理の人を相手にする場合は) 原理的な「動機」「目標」 を設定することが大事 – 他分野の人たちにも判り易い動機が求められる – 「最新の望遠鏡による新観測」「次世代の観測機器の開発」「そ のシミュレーション・評価」は判り易い謳い文句 – 大学運営サイド(首脳陣)へのアピール – 学生の勧誘材料にもなる – 何より、最先端の観測データを得られる、ないしはそういった研 究に関われることは魅力 次世代の大型計画と関わることは地方大学 の教員にとってメリット 4 光赤外分野の現状 • 共同利用の枠組みが整っており、地方の小研究室でも独自 に観測研究は行うことができる 「一国一城」可能 • 機関・グループごとの小さな単位でまとまっている • サイエンスも幅広い(層は薄いが) – 国内での個々のサイエンスでの競争意識は高くはない • すばる、あかり、中小望遠鏡…それぞれに潤ってきた – 欲しいデータを自ら観測して得ることができてきた • 長期的にまとまって大きな仕事をする必要性は少なかった (ある意味で成熟していた) 5 大学の研究室の事情3 • 国際化・淘汰の時代にどう対応するか – 小さいままでは切られやすい – 学外との連携は有効 – 外部資金が入る – 大学の首脳陣に「形」が見えるとなお良い • 従前の「常識」に従っていては破たん – 資金難、学生数少 パイは限られる – 「黙っていても与えられる」ことの保証は無い – より大きいところから切られる可能性もある 個々の考え方・活動方針の変革が迫られている 6 次世代大型計画へ参画する際の難点 • 装置・施設の大型化・精密化 – 個々の研究室ではなかなか切り込んで行けない • 大組織化・国際化 – 苦手 • 自分のモチベーションに直結しない • 別の中小計画を推進している(したい) より大きな競争の中にいることを強く認識して 自ら変えるしかない 7 日本の高エネルギー宇宙観測グループ • 力を結集して大きな観測衛星を開発 – それ以外の観測衛星も並行して出来ている • 開発作業のブレークダウンと各大学への分担 – 修論・卒論、もっと小さい仕事も – 他機関で分担 – 開発に関わる知識・経験のひろがり • 衛星の運用デューティーなどを分担 – 力を結集できる源泉のひとつ? • 学生の教育 – 「開発だけ」「サイエンスだけ」はなるべく避ける – サイエンスではアーカイブデータを活用 8 参考になる面がある すばる マウナケア国際 TMT SPICA ここが太くならないと い け な い 各大学・グループ:中・小規模計画 9 大型計画を進めやすい枠組みの構築に向けて1 • 大きな変革はムリ・時間が掛かる – 個人的な研究を続けたい人は必ずいる – ステップを踏んで少しずつすすめるしかない • ある程度のビジョンが必要 – – – – 各大学、大学共同利用機関、コミュニティ、個人全般に関わる 最初から枠組みの完成形を決めてしまうのは難しい 理念を掲げて共有 なにが「肝」になるか 10 大型計画を進めやすい枠組みの構築に向けて2 • その1 個人の意識改革と努力(特に大学教員) – 「エフォート」の一部を、ポテンシャルユーザーである大型計画 に充て、関わって支える – 小規模の仕事を引き受ける(装置開発、評価、パイプライン、 観測計画、観測シミュレーション、etc; 一か月スケールから) – 学生に一つのテーマだけやり続けてもらうのではなく、いろい ろ経験させる方針で(バランスはケースバイケース) – 大型計画のネームバリューを活用してアピール – 日頃からコミュニティの計画に対して高い意識をもつ(議論が 活発に。個々に知識がついて妥協案も見つけやすくなる) – 仕事をするからには、何らかのインセンティブは欲しい 11 大型計画を進めやすい枠組みの構築に向けて3 • その2 大型プロジェクト室・コミュニティ の小改革 – 大型プロジェクトの仕事をブレークダウンする組織(開発マネジ メント部門)とマネージャーがどうしても必要だろう – コミュニティ側は、TMT推進小委やすばる小委を通じてその活 動をサポートする – 議論する場を定期的に設ける(一定の決定権を有するものに) – 最近本格化した装置開発ワークショップの存在もフィット • インセンティブの一案 – TMTの日本時間の中に、開発グループGT枠を設けて、貢献の あった人たちで使うようにしてはどうか? – 使い方はその人たちで議論 – いくつかの有力な観測プログラムをピックアップして実施し、そ 12 の論文には開発グループ全員の名前を連ねる、など TMTの場合、どう取りかかるか • 開発マネジメント部門の整備について議論 – 望遠鏡本体の仕事や第一期装置の仕事をブレークダウン • 望遠鏡時間の使い方の議論 以上、TMTプロジェクト室、国立天文台、各種小委員会、光赤天連運営委 • TMT第二期装置の検討 – サイエンス+装置(すでにいくつか提案されている) – うまくいけば良いが、自分のやりたい観測ができない装置に与するの はハードルが高い – なるべく乗り越えてもらう(乗り越えられない人はしょうがない) コミュニティの多くが自主的に参加するような雰囲気が醸成でき ると良い(究極的な目標) 意識改革の呼びかけ 13 サマリー 問題設定 • 開発が大型化しすぎると大学院教育とフィットしない • 全国の力をなんとか結集できないか 提案 • 大学教員の多少の意識改革 • TMTに関わる様々な仕事をブレークダウンする人・枠組みを 設けられないか? • 半年~1年程度の短いインターバルで将来計画の調整を議 論する会合を開いてはどうか • 日本の割り当て時間の中に、貢献のあった人・グループが 使える「開発グループ枠」を設けてはどうか? 14
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