特集 「実践の人類学 パート II アクションから見える調査の未来」 第56回現代人類学研究会 2008年9月27日 東京大学駒場キャンパス 特集の趣旨 「調査して民族誌を書く」ことを旨とする伝統的な 人類学のあり方から、「調査で得られた知見を問 題解決に役立てる」ことを旨とする実践的な人類 学のあり方まで、文化人類学は将来的な選択肢 を複数化しつつある。 本特集では、この二極の間にあってフィールドへ の応答の可能性を模索する研究者らのさまざま な営みを「アクション」として抽出し、記述と実践 のいずれにも回収されえないフィールドワーカー の多様なあり方を示したい。 背景的関心 「だれしも手を染めてきた」? 近年の応用/実践人類学への関心の高揚 • • • • ノラン, R. 2002=2007.『開発人類学: 基本と実践』 小泉潤二/志水宏吉編. 2007.『実践的研究のすすめ』 佐藤寛ほか. 2008.「特集・開発援助と人類学」(アジ研) 松園万亀雄ほか編. 2008.『みんぱく実践人類学シリーズ』 しかし、「だれしも昔から、多かれ少なかれ実践 に手を染めてきた」というのもまた事実である • • • • 宮本常一. 1972=2008.「調査地被害」 川喜田二郎. 1974=1997.「海外協力の哲学」 和崎洋一. 1977.『スワヒリの世界にて』 宮本常一・安渓遊地. 2008.『調査されるという迷惑』 第40回 「実践の人類学」特集 2006年7月23日 亀井伸孝 「ろう者の人類学の二つの使 命」 佐川佳之 「学校・不登校経験の「隠蔽」 と相互行為秩序−不登校 者の支援グループ・フリー スクールAを事例に−」 コメンテータ: 猪瀬浩平 http://anthrop.c.u-tokyo.ac.jp/2006/0723c.html 「二つの使命」に込めた意味 「ろう者の研究」=「障害」=「問題」=「解決が必 要」=「あなたの研究は実践系なんですね!」と いうステレオタイプへの反発 世界各地に分布する自然言語である手話言語 の記載や、各手話言語集団の文化の記述は、い わばふつうの言語学、文化人類学のテーマであ りうる まずは、通常の言語・文化研究を振興すべきで ある(一つ目の使命) しかし、それだけでよいのだろうか 手話言語研究をめぐって 「手話は言語だ」という認識が広まると… 手話を話せない研究者が、分析対象としてのみ 手話とろう者をあつかうケースが増える 学術的な行事の使用言語として、手話が尊重さ れないことも 「手話を学術の使用言語に!」の理想と現実 手話を扱う研究者たるもの、だれしも実践に身を 投じるべきだという確信(二つ目の使命) (to be continued… > 「少数言語と研究者」2008年10月, 福岡) 実践の二つの入口 「『実践性』を旨とする、専門性の高い人類 学の新領域を設ける必要がある」のか それとも「個々の人類学者が、いわば基礎 的なリテラシーのひとつとして、だれしもあ るていどの実践のノウハウを身に付けてお くことが望ましい」のか ワークショップ「多文化と幸せ」 (2004〜2008) 関西学院大COE「『人類の幸福に資する社会調査』の研 究」の一環として開催 フィールドワーカーらによる共同研究(のべ30件の報告) 【キーワード】文化の多様性、フィールド、同時代、応用人 類学/実践人類学、幸福追求 人類学、社会学、社会福祉学、言語学などの出身 同時代における幸/不幸のテーマを、領域を背負わずに 個人の調査体験の中から語る 成果刊行 『アクション別フィールドワーク入門』 武田丈/亀井伸孝編, 2008年, 世界思想社 調査者の個人的技芸の多 様性と有用性をテーマとし た論集 「ふみだす」から「行き来す る」までの8章構成 322項目のアクション別さく いんつき (挨拶をする〜笑われる) 8つのアクション ふみだす まきこまれる 創る 手伝う 分かちあう 教える のぞむ 行き来する 今日の構成 趣旨 亀井伸孝(東京外国語大学) 服部志帆(京都大学) 「カメルーンで森と人の共存の道をさぐる−これまで の研究をもとに私が実践できること」 内藤順子(日本女子大学; 学振) 「人類学的営為の未知数性:開発援助の現場で暗 中模索する」 飯嶋秀治(九州大学) 「施設という生活世界で—人間共生システムコース の実践」 総じて… 統一された実践のマニュアルはない それを目的とした分野が確立されているわけでも ない しかし、このような個人技の集積(「研究/実践」 の両極のあいだに広がるグレーゾーンとしての 細かい個人的アクションの積み重ね)こそが、じ つはおもしろい領域である インフォーマルな「武勇伝」にとどめず、技芸を共 有し蓄積することに道をひらきたい フィールドワークの特性解明、未来を探る鍵? 謝辞 ワークショップ「多文化と幸せ」開催ならびに 『アクション別フィールドワーク入門』刊行は、 関西学院大学21世紀COEプログラム 「『人類の幸福に資する社会調査』の研究: 文化的多様性を尊重する社会の構築」 (2003-2007年度) の一環として行われました。 現代人類学研究会企画運営の各位(中空萌様; 田中孝枝様) ご来場の各位 権利と引用について (c) KAMEI Nobutaka 2008. All rights reserved. ピクトグラムデザイン: 亀井伸孝 スライドの一部を引用することは自由です。 引用する時は出所を明示してください。 亀井伸孝. 2008. 「特集の趣旨『実践の人類学 パート II: アクションから見える調査の未来』」 第56回現代人類学研究会 (2008年9月27日, 東京都目黒区, 東京大学).
© Copyright 2024 ExpyDoc