趣旨説明 - Laboratory of KAMEI Nobutaka

分科会
「アクションというフィールド」
日本文化人類学会第42回研究大会
2008年6月1日
京都大学
分科会趣旨
「調査して民族誌を書く」ことを旨とする伝統的な
人類学のあり方から、「調査で得られた知見を問
題解決に役立てる」ことを旨とする実践的な人類
学のあり方まで、文化人類学は将来的な選択肢
を複数化しつつある。
 本分科会では、この二極の間にあってフィールド
への応答の可能性を模索する研究者らのさまざ
まな営みを「アクション」として抽出し、記述と実
践のいずれにも回収されえないフィールドワー
カーの多様なあり方を示したい。

背景的関心
「だれしも手を染めてきた」?

近年の応用/実践人類学への関心の高揚
•
•
•
•

ノラン, R. 2002=2007.『開発人類学: 基本と実践』
小泉潤二/志水宏吉編. 2007.『実践的研究のすすめ』
佐藤寛ほか. 2008.「特集・開発援助と人類学」(アジ研)
松園万亀雄ほか編. 2008.『みんぱく実践人類学シリーズ』
しかし、「だれしも昔から、多かれ少なかれ実践
に手を染めてきた」というのもまた事実である
•
•
•
•
宮本常一. 1972=2008.「調査地被害」
川喜田二郎. 1974=1997.「海外協力の哲学」
和崎洋一. 1977.『スワヒリの世界にて』
宮本常一・安渓遊地. 2008.『調査されるという迷惑』
ワークショップ「多文化と幸せ」
(2004〜2008)





関西学院大COE「『人類の幸福に資する社会調査』の研
究」の一環として開催
フィールドワーカーらによる共同研究(のべ30件の報告)
【キーワード】文化の多様性、フィールド、同時代、応用人
類学/実践人類学、幸福追求
人類学、社会学、社会福祉学、言語学などの出身
同時代における幸/不幸のテーマを、領域を背負わずに
個人の調査体験の中から語る
成果刊行
『アクション別フィールドワーク入門』
武田丈/亀井伸孝編,
2008年, 世界思想社
 調査者の個人的技芸の多
様性と有用性をテーマとし
た論集
 「ふみだす」から「行き来す
る」までの8章構成
 322項目のアクション別さ
くいんつき
(挨拶をする〜笑われる)

本分科会の構成 (120分)







趣旨説明
「教える」
「手伝う」
「分かちあう」
「のぞむ」
「まきこまれる」
コメント
代表者
亀井伸孝(東京外国語大学)
吉野太郎(関西学院大学)
服部志帆(京都大学)
米田信子(大阪女学院大学)
飯嶋秀治(九州大学)
鈴木 紀(国立民族学博物館)
「教える」(亀井)
異文化間の橋渡しをするアクション
 フィールドワークの長期滞在調査の
経験から何を学生に提示できるか

>ろう者理解のワークショップの事例
「手伝う」(吉野)
開発援助に関わりの深いアクション
 実は手伝ってもらうことの方が多い
 「手伝われる側」の都合との折り合い
方を学ぶ

>モンゴルのパソコン寄贈事業の事例
「分かちあう」(服部)
成果の共有、還元に関わるアクション
 「中立的な調査者」像をこえて、さまざ
まなステイクホルダーとどのように知
見の共有を行うか

>カメルーンで開催したセミナーの事例
「のぞむ」(米田)
調査にもとづいた展望、提言に関わる
アクション
 「はじめに調査者ののぞみありき」で
なく、いかに現地の人びとののぞみに
つき合い続けるか

>ナミビアの言語政策の調査の事例
「まきこまれる」(飯嶋)
トラブルにまきこまれ、対処する調査
者のアクション/リアクション
 諸問題に対処するなかでこそ発見でき
る問題もある
 不幸/暴力とつきあうことの意味

>オーストラリア先住民と暴力の事例
総じて…





統一された実践のマニュアルはない
それを目的とした分野が確立されているわけでも
ない
しかし、このような個人技の集積(「研究/実践」
の両極のあいだに広がるグレーゾーンとしての
細かい個人的アクションの積み重ね)こそが、じ
つはおもしろい領域である
インフォーマルな「武勇伝」にとどめず、技芸を共
有し蓄積することに道をひらきたい
フィールドワークの特性解明、未来を探る鍵?
謝辞

ワークショップ「多文化と幸せ」開催ならびに
『アクション別フィールドワーク入門』刊行は、
関西学院大学21世紀COEプログラム
「『人類の幸福に資する社会調査』の研究:
文化的多様性を尊重する社会の構築」
(2003-2007年度)
の一環として行われました。
権利と引用について
(c) KAMEI Nobutaka 2008.
All rights reserved.
スライドの一部を引用することは自由です。
下記のように出所を明示してください。
亀井伸孝. 2008.
分科会「アクションというフィールド: 趣旨説明」
日本文化人類学会第42回研究大会
(2008年6月1日, 京都市左京区, 京都大学).