The concept of test constructs Hiroshi Shimatani 島谷 浩 日本言語テスト学会(JLTA) 第34回研究例会 講演資料 2012 年 1 月 21 日(土)(於:鹿児島大学) 新学習指導要領とこれからのコミュニケーション能力 ―教科指導における新たな知識とテストづくり― 島谷 浩 ( 熊本大学 ) 1.新学習指導要領におけるコミュニケーション能力 中学校における英語教育の目標 • 旧学習指導要領 (1998年告示) 「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的 にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、聞くこ とや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を 養う。」 • 新学習指導要領 (2008年告示) 「外国語を通じて、言語や文化に対する理解を深め、積極的 にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、聞くこ と、話すこと、読むこと、書くことなどのコミュニケーション能力 の基礎を養う。」 中学校の英語教育における大きな変化 1. 週あたりの授業時数が3時間から4時間に増加。 2. 3年間で学習する語彙が現在の「900語程度まで」 から「1200語程度」に増加。 3. 2011年度から必修化された小学校での「外国語活 動」を経験した生徒の入学。 4. 「聞くこと」「話すこと」「読むこと」「書くこと」という4 領域での基本技能育成の強化。 4技能の総合的な指導 中学校学習指導要領解説外国語編 2 外国語科改訂の趣旨 • 「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の4技能 の総合的な指導を通して、これらの4技能を統合的に活用で きるコミュニケーション能力を育成するとともに、その基礎と なる文法をコミュニケーションを支えるものとしてとらえ、文法 指導を言語活動と一体的に行うよう改善を図る。また、コミュ ニケーションを内容的に充実したものとすることができるよう、 指導すべき語数を充実する。 4技能の総合的に育成する教材 中学校学習指導要領解説外国語編 (2) 教材選定の観点 • 教材は、目標である「聞くこと、話すこと、読むこと、 書くことなどのコミュニケーション能力の基礎」を総 合的に育成するために、適切なものを選定する必要 がある。 中学校新学習指導要領で各領域に 追加された言語活動 • 聞くこと:まとまりのある英語を聞いて、概要や要点 を適切に聞き取ること。 • 話すこと:与えられたテーマについて簡単なスピー チをすること。 中学校新学習指導要領で各領域に 追加された言語活動 読むこと: 話の内容や書き手の意見などに対して感 想を述べたり賛否やその理由を示したりなどするこ とができるよう、書かれた内容や考え方などをとらえ ること。 書くこと:自分の考えや気持ちなどが読み手に正しく伝 わるように、文と文のつながりなどに注意して文章を 書くこと。 言語能力(language competence) の構成要素 (Bachman, 1990: 99) 2. 英語コミュニケーション能力の目標 「英語が使える日本人」の育成のための戦略構想が 目標とした英語力 (文部科学省, 2002 ) 中学校卒業段階 • 挨拶や応対等の平易な会話(同程度の読む・書く・ 聞く)ができる。(卒業者の平均が英検3級程度) 高等学校卒業段階 • 日常の話題に関する通常の会話(同程度の読む・ 書く・聞く)ができる。(高校卒業者の平均が英検準2 級〜2級程度) 英検3級合格者のCan-do リスト 読 む (1) 簡単な物語や身近なことに関する文章を理解するこ とができる。 • 興味・関心のある話題に関する簡単な文章を理解 することができる。 • 日常生活の身近な話題についての文章を理解す ることができる。(スポーツ、音楽など) 英検3級合格者のCan-do リスト 読 む (2) • 短くて簡単な物語を理解することができる。(簡単 な伝記や童話など) • 日本語の注や説明がついた簡単な読み物を理解す ることができる。(学校の課題図書、 学習者向けの 物語など) • 簡単に書かれた英語の地図を見て、通りや店、病 院などを探すことができる。 英検3級合格者のCan-do リスト 聞 く (1) ゆっくり話されれば、身近なことに関する話や指示を理 解することができる。 • ゆっくり(または繰り返して)話されれば、興味・関心の ある話題に関する話を理解することができる。 (趣味 に関すること、好きな音楽やスポーツのことなど) • ゆっくり(または繰り返して)話されれば、日常生活の 身近な話題に関する簡単な話を聞いて、 その内容を 理解することができる。(学校、クラブ活動、週末の話 など) 英検3級合格者のCan-do リスト 聞 く (2) • ゆっくり(または繰り返して)話されれば、簡単なアナウンス を聞いて、理解することができる。 (集合場所、乗り物の出 発や到着時刻など) • ゆっくり(または繰り返して)話されれば、簡単な道案内を 聞いて、理解することができる。 (例:Go straight and turn left at the next corner.) • よく使われる表現であれば、単語がつながって発音されて も、その意味を理解することができる。 (Come in. が「カミ ン」、Don't you?が「ドンチュー」のように聞こえるなど) 英検3級合格者のCan-do リスト 話 す (1) 身近なことについて簡単なやりとりをしたり、自分の ことについて述べること ができる。 • 自分の好きなことについて、短い話をすることができ る。(趣味、クラブ活動など) • 物ごとの「好き」「嫌い」とその理由を簡単に述べるこ とができる。 (動物、食べ物、スポーツなど) • 日常生活の行動について言うことができる。 (例:I got up at seven. / I ate some bread for breakfast.) 英検3級合格者のCan-do リスト 話 す (2) • 自分の予定を簡単に言うことができる。(例:I'm going to meet my friends.) • 簡単な頼みごとをすることができる。(例:Can you open the window, please?) • 身近なことで相手を誘うことができる。(例:Let's go to a movie tonight.) • 簡単な相づちを打つことができる。(例:I see. / Really?) 英検3級合格者のCan-do リスト 書 く (1) 自分のことについて簡単な文章を書くことができる。 • 簡単な自己紹介の文章を書くことができる。(名前、 住んでいるところ、家族など) • 自分の趣味について、書くことができる。 • 物ごとの「好き」「嫌い」とその理由を書くことができ る。(食べ物、スポーツ、音楽など) 英検3級合格者のCan-do リスト 書 く (2) • 短い日記を書くことができる。(1文から3文程 度) • 簡単なカードやはがきを書くことができる。 (誕生日カード、旅行先からの絵はがきなど) • 短い伝言を書くことができる。(例:Ken called at 3 p.m.) 3.言語テストの基本認識 測定・評価・テストの関係 • 「測定」(measurement): 学習者の「言語能 力」をテストの得点や評点などの数値や記号 でとらえること。 • 「評価」(evaluation): 測定で得られた結果を 解釈し、意味付けすること。 測定・評価・テストの関係 (Bachman, 1990: 23) 言語テストの機能 (1) 教師側の「指導機能」 1) 2) 3) 4) 学習への動機付け 学習者の達成度や進歩の状況の評価 教師自身へのフィードバック 成績付け。 言語テストの機能 (2) 学習者側の「学習機能」 1) 学習の方向付け 2) 練習効果 3) 学習者自身による自己評価 (土屋・広野, 2000) 言語テストの適切度 (1) • 信頼性(reliability):一貫して同じ結果を出す 度合いであり、測定の精度を表す概念。 • 妥当性(validity):妥当性とは、テストが測るべ きものをどの程度適切に測っているかどうか の度合い。 言語テストの適切度(2) • 実用性/実施可能性(practicality/ feasibility):テストの作成・実施・採点のしやす さなどの度合い。 • 波及効果(backwash effectまたは washback effect):テストが指導、学習に与える効果。望 ましい方向へ学習者を向かわせるテストほど、 そのテストの波及効果は高い。 (島谷, 2007) 参考文献 • Bachman, L.F. (1990). Fundamental considerations in language testing. Oxford: Oxford University Press. [邦訳: 1997. 『言語テスト法の基礎』池田央・大友賢二 [監修] みくに出版] • 島谷浩 2007. 「評価とテスト」樋口晶彦・島谷浩(編著) 『21世紀の英語科教育』(pp. 148-164)開隆堂 • 土屋澄男・広野威志 2000 『新英語科教育法入門』 研究社出版 • 日本英語検定協会 2007 『3級Can-do リスト http://www.eiken.or.jp/about/cando/cando_02_5.html (最終アクセス 2013年2月28日) 参考文献 • 文部科学省 2002 『「英語が使える日本人」の育成のた めの戦略構想ー英語力・国語力増進プランー』 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/0 20/sesaku/020702.htm#plan(最終アクセス 2013年2月 28日) • 文部科学省 2008a 『中学校学習指導要領解説外国語 編』開隆堂出版. • 文部科学省 2008b 『小学校学習指導要領解説外国語 活動編』東洋館出版社. 2)テストの作成、採点、結果の報 告の実践的な情報: Practical considerations in developing language tests ©日本言語テスト学会 島谷 浩
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