PowerPoint プレゼンテーション

ICTベンチャーの中核人材確保のあり方
(総務省
情報通信政策課研究会から)
報告者
早稲田大学ビジネススクール
教授・商学博士
松田修一
(日本ベンチャー学会会長)
研究会構成員
 総務省 情報通信政策課「ICTベンチャーの人材確保のあり方に関する研究会」(平成19
年2月)、略称『ICTベンチャー研究会」)の構成員は次の通りです。
座長
松田 修一
早稲田大学大学院
商学研究科(ビジネススクール)
座長代理 高橋 徳行
武蔵大学
経済学部
構成員
赤羽 雄二
ブレークスルーパートナーズ(株)
マネージングディレクター
構成員
池上 重輔
早稲田大学大学院
商学研究科
構成員
大久保 幸夫 (株)リクルートワークス研究所
所長
構成員
岡島 悦子
(株)グロービス・マネジメント・
代表取締役
構成員
関根 智
ネットエイジキャピタルパートナー
パートナー
構成員
前川 徹
国際大学
グローバル コミュニケーションセ
主幹研究員
構成員
松本 哲郎
(株)CEAFOM
常務取締役
構成員
矢口 哲成
新日本監査法
新規事業支援部社員(公認会計士)
教授
客員助教授
注:ここでの発表資料は、上記研究会の報告書から加工したものである。
‐1 ‐
教
ICTベンチャーの定義と課題、議論対象
 高い志と成長意欲の強い起業家を中心とし、情報通信技術(ICT)を活用した新たな商
品・サービスや、先進的なICT技術を用いた商品・サービスを開発・提供する企業であっ
て、創業からの年数が浅く成長性が期待される企業である。
 経営資源(いわゆる“ヒト”“モノ”“カネ”)に乏しい中で急激な成長を支えるために人材を
効率的に確保し、組織を着実に整備することが大きな課題となる。
 創業期から事業拡大期にある、もしくは、上場準備を進めているICTベンチャーを対象と
事業内容
した。ICTベンチャーの類
型
ものづくり型
• 半導体の部品設計
• コンピュータ/周辺機器の開発
• 通信インフラの整備・運用
ソフトウェア
開発型
• パッケージソフトの開発
• ソフトウェアの受託開発
技術志向型
ICTベンチャー
インターネット
販売型
サービス志向型
インフラ従量
提供型
インターネット
サイト構築・運営
型
*1:出所:総務省「ITベンチャー研究会」報告書より加工
‐2 ‐
• 通販・オークション等のネット
販売
• データセンタ・ASP等
• インターネットサイトの構築・運営
• ビジネスモデルとしては、メディア事
業であり、広告からの収入がメイン
ICTベンチャーの成長ステージと経営課題
 成長ステージは、「創業期」「事業拡大期」「プロフェッショナル化期」「再強化期」
「多角化・統合・再活性化」の5段階に大きく分類されると考えられる。
成長
ステージ
第1段階
ベンチャーの創業期
(サービス業:売上高0.3億円以下)
ミッション
• 事業基盤:ビジネスコンセプトの定義 • 資源の開発
• オペレーション・システムの開発
• 市場の特定・定義
• 製品・サービスの開発
開発領域
事業
開発
組織
(経営)
開発
リーダー
シップ
開発
第2段階
事業拡大期
(売上高0.3~3.3億円)
第3段階
プロフェッショナル化期
(売上高3.3~33億円)
• マネジメント・システムの開発
事業開発
第4段階
再強化期
(売上高33億円以上)
• 企業文化の管理
組織(経営)開発
リーダーシップ開発
• 事業基盤を定義する際、自社の
強み/弱み、市場における機会と
脅威を十分考慮していない
• 競合/新規参入/代替品/サプライ
ヤー/バイヤーを考慮せず、市場
ニーズに合わない製品・サービス
を開発している
-
• Vision/Missionが確立・浸透して
いない
• 信念強くあきらめない風土が弱い
• わき目もふらずに、先頭に立ち
チームをリードできていない
• 資源(カネ)調達がうまくいかない
• 新規顧客を開拓できない
• 売上拡大の為のマーケティング・
コミュニケーションができていない
• 営業力を強化する必要がある
• 戦略的資源配分ができていない
• 非コア業務も内部で行っている
• 事業拡大期に得た信用を維持・
強化できていない
• 顧客ロイヤルティを高められない
• ブランド価値を高められない
• 販路を強化・維持できていない
• 戦術レベルの業務の専門性を高
められない
• 経営幹部候補もスタッフも不足し
ている
• 職責が曖昧で、仕事のモレ・ダブ
リが発生している
• オペレーション・プロセスの形式
知化ができていない
• 予実管理体制が未整備である
• Plan-Do-Check-Action体制及び組 • 次ステージへの成長を支えるに
織構造が未整備である(Plan-Do
足る新たな資源(ヒト・カネ)を調
の繰り返し)
達できていない
• 戦略と個人目標に乖離がある
• 新旧資源(ヒト)のコンフリクトが顕
• チエを共有化する仕組みが内在
在化している
化されていない
• 変革を起こす仕掛けが組織に内
• 社員の能力開発が計画的でない
在化していない
• 増大した社員をひとつの方向にま
とめきれていない
• マネジメント・チームが組成しきれ
ておらず、特定の人・部門に過度
に責任・権限が偏っている
• Visionが浸透せず、社員が自分の
ものとして消化していない
• 戦略立案/実行/検証の役割分担
が機能していない
• 管理職・経営幹部候補を発掘・育
成・選抜する仕組みがない
• ミドル・マネージャーへの権限委
譲ができていない
• タレント・パイプラインが細い
• 次ステージの収益の柱となる新た
な事業領域を発掘できない
• 戦略的な事業の選択と集中の意
思決定が行えていない
• 新事業領域における戦略的提携
等外部の力を上手くレバレッジで
きていない
• 企業文化の多様化を上手く管理
できていない
• マネジメント・チームが固定化し、
チーム内に甘えが生じている
• 組織内で危機感が共有されてい
ない
• 過去の成功体験に捕われている
出所:総務省「ITベンチャー研究会」報告書より、岡島 悦子構成員((株)グロービス・マネジメント・バンク) プレゼンテーション資料
‐3 ‐
日本のICTベンチャーの人材確保の課題整理
 日本のICTベンチャーの人材確保に関する課題を整理すると以下のように考えられる。
ICTベンチャーの人材確保に関する課題*1
環境
競合
ICT
ベン
チャー自
身
就労者
失敗が許されない
風土
• 一度起業に失敗しても再チャレンジの機会を得易いアメリカと異なり、日本で
は一度失敗するとエラーコストが高くつき、社会的にも経済的にも起業リスク
が大きい環境にある
人材の流動性の
低さ
• 一企業で長く働き続けることを美徳とする価値観が根強く、終身雇用制度もこ
れを後押ししている
ベンチャー企業
全般に対する偏見
ベンチャーキャピ
タリスト人材の不
足
大手企業の採用力
の強さ
• 日本には依然としてベンチャー企業で働く人間は負け組だという発想がある。
大手企業等に就職できない場合にベンチャーを指向するのだと決め付ける風潮
がある
確保能力の低さ
• ベンチャー企業経営者は、成長ステージに応じた必要な人材等を認識するスキ
ルや人材を採用するためのノウハウ等が乏しいケースが多い
• VCが積極的なハンズオンを行い、経営指導から人材紹介まで徹底的に支援す
るアメリカと異なり、日本ではハンズオンを行う実力を兼ね備えたベンチャー
キャピタリストが少ない
• 景気回復に伴い、大手企業が人材採用に積極的に乗り出し、採用競争が激化し
つつある中、大手企業に比べネームバリューが低く、採用にかけられるコス
ト・提示できる報酬等に限界があるベンチャー企業では、優秀な人材の確保が
困難になっている
年齢に対する
先入観
• ベンチャー企業には、その成長ステージのため、きちんと整備された人材育成
体系が存在しないことが多く、人材の確保・保持の点で大手企業に対して不利
になるケースが多い
• ICTベンチャー企業経営者やVC等が、若い世代(20代~30代前半)はICTベン
チャーに必要かつ向いており、30代後半を過ぎた人材は余程のスーパーマン以
外は必要ないという先入観を強く持っている
ロールモデルの
乏しさ
• ICTベンチャー企業は歴史が浅いため、事業拡大して大手企業となり、経営層が
40~50代となっているロールモデルが少ない
育成能力の低さ
キャリアパス
意識の低さ
• アメリカと異なり、キャリアパスの一環としてベンチャーへ行くという発想は
一般的ではない。日本人は安定感のある大企業志向が強く、ダイナミックな
キャリアパスを描く人は少ない傾向にある
さまざまな課題が存在するが、まずはICTベンチャー自身の課題解決の優先度が高い
と
想定される人材の「確保能力の低さ」に対する支援から取組んでいくのが妥当と考え
られる
‐4 ‐
日本企業の人材確保の競争激化と採用難易度
 日本企業の業績向上に伴うベンチャー企業への人材確保の競争激化
人材確保の競争激化の構造
景気の回復、企業業績の向上
企業の拡大志向、新規事業等の活発化
個人の社内での成長機会の増加
社内の人材不足が成長のボトルネック化
優秀な人材の社外流出の減少
大企業の求人意欲の増大
転職市場の流動性の低下
ベンチャー企業の採用力が相対的に低下
即戦力採用難⇒ポテンシャル採用へ
認知度、広告投入量、採用人的・財務的
資源、採用ノウハウ、報酬条件 等
“The War for Talent*12” 勃発
出所:総務省「ITベンチャー研究会」報告書より
‐5 ‐
ICTベンチャーの人材確保に当たっての課題と確保の方向性
 人材確保に当たっての課題には、ICTベンチャーの内部要因と外部要因とがある。
 求められる人材育成は、経営幹部候補者とベンチャー志向人材の拡大とが両輪である。
‐6 ‐
ICTベンチャーの人材確保(ガイドラインラインの体系)
 人材確保が原因となって生じがちな「典型的な症状」とそれに対する「解決のヒント」
を整理する。
① 採用をすべきかどうか/
どのような人材を求めるか
1. 他の人に任せたいが、どのような業
務をどのように任せればいいのか悩
む
2. 業務を任せるとしたら、どのようなこ
とを求めて、期待した役割を果たし
て貰うか分からない
3. ある程度成長したものの、顧客から
クレームがつくなど、以前より業務
の品質・スピードが低下してきたと感
じる
4. また、人員不足が売上成長の足を
引っ張ってい
5. さらに、指示が社員に行き届かない
/社員の反応が鈍い/社内がギスギ
スしている
6. 上場に向けた組織拡大・体制の整
備・ガバナンスの強化が進まない
② どのように採用するか
7.どのように採用候補者を探し
ていいか分からない
8.ターゲットの採用候補者に具
体的にどのようにアプロチ
したらいいか分からない
9.その候補者を採用したいが、
評価に悩む
10.せっかく内定を出したのに、
断られてまう
11.以上のプロセス中で手続き
がからない
出所:総務省「ITベンチャー研究会」報告書より加工、詳細は公表報告書参照
‐7 ‐
③ 入社後に当初の予定通り活躍
してもらうためにどうするか
12.採用した人材が想定して
いたよ りスキルが低く
かった
13.採用した人材にスキルは
あるが、経営層が期待
していることと当人の
認識にギャップがある
ため本来のスキルを発
揮できていない
14.採用した人材にスキルは
あるが、周囲と摩擦を
起こす
15.採用した人材が期待した
成果を挙げられない
16.採用した人材が辞めてし
まう
17.辞めさせたいにも関わら
ず、辞めさせられない
ICTベンチャーの経営層候補となる人材の育成
 経営プロフェッショナル人材と経営・技術の融合人材の2種類の人材育成
経営のプロフェッショナル人材(経営チーム)の育成
前提:グローバル競争の激化と技術革新スピードの速いICT産業において生き残っていける的確な事業戦略・
計画の策定と、強い意志で戦略・計画を遂行できる経営のプロフェッショナル人材自体が不足
・強い経営者
実践の現場
既存企業の徹底した事業リストラによる人材流動化
・右腕になりうる人材
幹部の養成
スピード経営に耐えうる人材の進化と支援システム
経営・技術双方を理解できる人材の育成
前提:日本産業界の欧米キャッチアップ型経営のもとで、専門縦型人材を輩出する大学教育や企
業内キャリアパスが定着し、経営チームを支える経営・技術双方を理解できる人材が決定的
に不足
・技術系人材
・事務系人材
MOT教育
(技術経営)
ロジックとシステムを重視した経営
知的資産をベースに儲かるビジネスモデル
‐8 ‐
ICTベンチャーを志向する人材層の拡大
ICT人材志向の学生層の拡大と不活性層人材の活用の促進
大学教育におけるICTベンチャー志向人材の裾野拡大
前提条件:ICTベンチャーに関する「知識」を学びたいときに学び、実践に生かす「知恵」を発揮できる就業経験を組み
こんだ大学における「長期履修学生制度」等の多様な「学びの場」の提供と企業の採用条件の多様性
社会知識
社会のしくみ
挨拶
基礎知識
会社のしくみ
戦略と活動
専門知識
ICT固有知識
ビジネスモデル
実践経験
ICTベンチャー
インターンシップ
課題提言
提言プラン
策定・発表・評価
不活性層人材の活用促進
採用難易度マップ
前提条件:潜在的な潜在的流動人材、
18歳
女性やシニア層等の人材
活用のためのマッチングの場、
能力の可視化、労働条件等
(即戦力)
大
学
生
女
性
30歳
35歳
45歳
定年
経験者
男
性
のインフラ整備
22歳
新
卒
採
用
時
リーダー採用
中高年採用
シ
ル
バ
ー
採
用
院卒
修士理系
経験者
(即戦力)
主婦の再雇用
未経験者
出所:総務省「ITベンチャー研究会」報告書より
(第二新卒)
‐9 ‐
採用難易度
凡
例
易
難