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マクロ経済学入門
第3話 乗数
立命館大学経済学部 松尾匡
今回の問題
• 投資が増えると生産が増える
• 政府支出が増えると生産が増える
• 減税すると生産が増える
では、どのくらい増えるのか?
貿易も政府もない一番簡単な例
財市場均衡式
消費関数
代入
左辺に移項。マ
イナスがつく。
この式を使う!
(*)
当初
それが
だったとする。
増加
増加
Yの変化ΔYはどれだけか?
(*)の変化後から変化前を引けば変化した分が出る
変化後
変化前
両辺を1−cで割ると
乗数が出る
乗数
(投資乗数)
均衡の生産量は、投資の増大の
倍、増大する。
限界消費性向cは先進国で6割から8割ぐらい
限界消費性向が2/3なら…
1
1
1


3
1  c 1  2 /3 1
3
生産の増大は投資
の増大の3倍。
乗数
(投資乗数)
限界消費性向が0.8なら…
1
1
1


5
1 c 1 0.8 0.2

生産の増大は投資
の増大の5倍。
乗数
(投資乗数)
どうしてこんなことが起こるのか?
投資需要増
一発目の投資
需要が増えた
ら…
イーリバースドットコム フリーイラスト集 http://www.e-reverse.com/util/freeillust/
生産・所得増
投資需要増
その同じ分生
産が増えて所
得が増える
http://free-illustration.com/
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
そのうち、限界消費
性向の割合が消費
需要にまわる
ヒューマンピクトグラム2.0 http://pictogram2.com/
生産・所得増
投資需要増
生産・所得増
消費需要増
またその同じ分
生産が増えて所
得が増える
http://free-illustration.com/
生産・所得増
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
消費需要増
また、そのうち、限界
消費性向の割合が消
費需要にまわる
生産・所得増
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
消費需要増
生産・所得増
またその同じ分
生産が増えて所
得が増える
生産・所得増
生産・所得増
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
消費需要増
また、そのうち、限
界消費性向の割合
が消費需要にま
わって…
生産・所得増
生産・所得増
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
消費需要増
以下、同
様にずっ
と続く
生産・所得増
生産・所得増
投資需要増
消費需要増
生産・所得増
消費需要増大の波及効果
投資需要増
Y  cY  I
(1  c)Y  I
I
 Y 
1 c

だからc>1のとき、乗数はマイナスになるのではない。
無限大になる。
所得の増加が波及
していく過程で、消
費にまわさず貯蓄
されたものの総計
は、もともとの投資
増と等しくなる。
設備投資をまかなう貯蓄は、あ
とからつくられる!
45度線グラフで見ると
需供
要給
拡大してみよう
45
°
それに合
それにわせた所
合わ 得増
せた所
得増
1発目
の需
要増
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
ΔI
cΔI
それに
よる消
費需要
増
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
ΔI
cΔI
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
ΔI
cΔI
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
ΔI
cΔI
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
ΔI
cΔI
c c2ΔI
cΔI
c
ΔI
cΔI
ΔI
ΔY
この図からも乗数が1/(1-c)となる
ことを確認できる。
A
E
CD CE  DE

BC
BC
CE DE
D  BC  BC
CE DE


1 c
BC AD
ΔI I

1 c
Y
Y
1

C
I 1  c
c

ΔI
45°
B
ΔY

政府を考慮に入れると
財市場均衡式
代入
消費関数
パワーポイント作るのがめんどくさくなったので、途中経過は省
略。各自やってみて下さい。
結論だけ言うと
政府支出乗数
租税乗数
どっちの効果が大きい?
• 同じ額の政府支出と減税では、財政赤字
を増やす効果は一緒。では、景気に与える
影響は?
>0
政府支出乗数
1単位の政府支出の効果
租税乗数
1単位の減税の効果
政府支出の
効果の方が1
だけ大きい。
生産・所得増
政府支出増
生産・所得増
消費需要増
消費需要増
生産・所得増
消費需要増
政府支出増大の効果
この分が少ない。
これが「1倍」の差。
減税
生産・所得増
消費需要増
消費需要増
生産・所得増
消費需要増
減税の効果
※ 正確には−ΔTと書くべきところ、見やすさ
の都合上マイナスを除いて書きました。
政府支出の方がいい?
• 政府支出の波及効果は、直接の政府支出
先を中心に広がっていく。減税の波及効果
は全国一律。乗数効果の大きさだけ見て、
一概に政府支出の方がいいというわけに
はいかない。
政府支出の公的意義、支出先の偏り具
合、他方で減税の対象者の公平性等々を
勘案して判断しなければならない。
政府支出を増税でまかなったら?
• G増加してT不変というのは、国債を出して
国が借金する方法。では、国の借金を増
やさないために、ΔG=ΔTで、全部増税で
まかなったらどうなる?
政府支出を増税でまかなったら?
• やっぱりさっきといっしょで…
>0
政府支出乗数
1単位の政府支出の効果
租税乗数
1単位の増税のマイナス効果
波及効果分が増税で消えて、政府支出増の直接効果だけ残る。
増税で財政赤字が増えないなら、
乗数1でも、やらないよりやった
方がましなのか?
• 政府支出による波及効果は、直接の政府
支出先の周辺から広がる。増税によるマイ
ナスの波及効果は、全国一律に広がる。
両者は総計では相殺されるが、トクする
人とソンする人が出る。
• よって、政府支出の公的意義や、支出先
の公平性を考慮して判断する必要。
貿易を考慮に入れると
•
•
•
1より大きいかもしれない。
「輸入関数」を考える。
中間財輸入があるから。Y
は付加価値で中間財投入
所得が増えると消費財の輸入が増える。
は除いてある。日本の場合
生産が増えると生産手段の輸入が増える。
は1よりも小さい。
(典型:日本の場合の石油)
• 簡単化してこんな形で考えてみよう。
財市場均衡式に代入する
財市場均衡式
代入
代入
輸入関数
消費関数
やっぱりめんどくさいので
結論だけ言うと
政府支出乗数
の乗数も
の乗数もこれと同じ
輸入がないときより小さい
輸入があるとき
輸入がないとき
需要が輸入に漏れるから。
政府支出増
生産・所得増
輸入
による
需要
の漏
れ
消費需要増
生産・所得増
生産・所得増
消費需要増
消費需要増
近年乗数が
小さくなっていると言われる
• エクセルで超大雑把推計してみました。
• 国内総生産から在庫品増を引いたものを
「総需要」とみなす。
• 「総需要」の前期からの増分を、投資(民間固
定資本形成)+輸出の増分と、政府支出(政府
最終消費支出+公的固定資本形成)の増分とで、
定数項なしで回帰分析する。
結果は、たしかに下がっている
乗数の推移
詳しくは、http://matsuo-tadasu.ptu.jp/essay__100228.html
乗数低下の原因は何か
• グローバル化で輸入による需要の漏れが多
くなった?
• 政府支出が増えると将来の増税に備えて消
費を減らす?(リカードの中立命題)
↑投資(輸出)乗数も80年代より減っているか
らあてはまらないのでは?
• 総需要増で金利上昇圧力がかかると、円高
になって輸出が減る?(マンデル・フレミング
効果)
• 今世紀に入っての労働分配率低下?
最後に注意!
• 以上の話は、失業者がある間成り立つ。
(生産能力が余っている間成り立つ。)
• 完全雇用になったら、需要を増やしても、
それ以上生産は増えない。
• 以上の話は、政府支出を増やしても投資
や輸出に影響しないことを仮定している。
• 政府支出が投資や輸出に影響することは、
後の回で詳しく検討する。