DBJ金融アカデミー 『国際金融』(3)

『マクロ金融特論』 (3)
一橋大学大学院商学研究科
小川英治
マクロ金融特論2015
1
為替介入
マクロ金融特論2015
2
為替介入とは?
• 為替介入とは?
=外為市場において民間部門による外貨の
超過需要(超過供給)が発生した場合に、
通貨当局が超過需要(超過供給)相当分
の外貨を外為市場に供給(需要)すること。
マクロ金融特論2015
3
為替介入vs為替管理
• 為替介入=市場メカニズムを利用。通貨
当局が介入することによって外国為替市
場での不均衡が解消される。
• 為替管理=外国為替取引そのものを規制
する。外国為替市場で不均衡が発生した
まま。
マクロ金融特論2015
4
為替介入の目的
• 為替相場安定化(スムージング)
• 為替相場目標(ターゲット)
*為替相場ターゲットの目的には、いろいろ
ある。
→貿易収支安定化、経済成長、インフレ抑
制etc.
マクロ金融特論2015
5
通貨当局のバランスシート
負債
資産
国内信用残高
(対政府信用+対民間信用)
ハイパワードマネー
ハイパワードマネー
外貨準備残高
マクロ金融特論2015
6
為替介入(外貨買い介入)
と通貨当局のバランスシート
負債
資産
国内信用残高
(対政府信用+対民間信用)
ハイパワードマネー
ハイパワードマネー
外貨準備残高
外貨買い介入による
外貨準備残高増
マクロ金融特論2015
ハイパワードマネー増
7
為替介入と不胎化政策
• 為替介入→外貨準備残高増減
①不胎化政策を伴わない場合
国内信用残高を一定としたまま、外貨準備残高
増減がハイパワードマネーの増減に結びつく。
②不胎化政策を伴う場合
外貨準備残高増減を相殺するように国内信用残
高を調整して、ハイパワードマネーを一定に保つ。
マクロ金融特論2015
8
不胎化政策を伴う為替介入と
通貨当局のバランスシート
負債
資産
国内信用残高
(対政府信用+対民間信用)
国内信用残高減
ハイパワードマネー
ハイパワードマネー
外貨準備残高
外貨買い介入による
外貨準備残高増
マクロ金融特論2015
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不胎化政策を伴う為替介入
• 自国通貨の減価を抑える為替介入を不胎化する
と、
①為替介入によって外貨準備残高が減少するが、
貨幣供給量は不変。
②ファンダメンタルズが変化しないために、自国通
貨減価圧力が続く。
③外国通貨売り介入を続けなければならない。
④いずれは外貨準備残高が尽きる。
マクロ金融特論2015
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為替介入の効果(1)
• 不胎化政策を伴わない為替介入=貨幣供
給残高(ファンダメンタルズ)の変化を通じ
た効果
(例)
円高抑制の為替介入(=ドル買い介入)
⇒貨幣供給量の増加
⇒金利低下or物価上昇
⇒円安ドル高
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為替介入の効果(2)
• 不胎化政策を伴う為替介入=貨幣供給残
高(ファンダメンタルズ)の変化がない。
⇒金利の変化がない。
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為替介入の効果(3)
• 内外資産が完全代替
s0  i  i  s
*
e
1
①金利(不胎化政策を伴わない介入)
e
②シグナリング効果( s1 )
不胎化政策を伴う為替介入が将来の金
融政策の変化を予想させる場合に、有効。
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為替介入の効果(4)
• 内外資産が不完全代替

1
s0 
i i  s 
b  f   

1 
1 
*
e
1
①リスク・プレミアムを通じた効果
不胎化政策を伴う為替介入=自国通貨建
て債券と外国通貨建て債券のスワップ取
引⇒bとfを通じて有効。
マクロ金融特論2015
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不胎化政策を伴う為替介入と
通貨当局のバランスシート
負債
資産
国内信用残高
(対政府信用+対民間信用)
円建て債券売りオペ
ハイパワードマネー
ハイパワードマネー
外貨準備残高
ドル建て債券買いオペ
マクロ金融特論2015
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為替介入の効果(5)
• 円高を抑制する為替介入
円建て債券売りオペ+ドル建て債券買い
オペ
⇒民間部門に利用可能な供給残高(bの増
加とfの減少)
⇒ドル建て債券に対する円建て債券のリス
ク・プレミアムが上昇
⇒ドル高円安
マクロ金融特論2015
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為替介入の現実
• 外貨準備残高の変動から為替介入を推計
• 財務省の「外国為替平衡操作の実施状
況」(http://www.mof.go.jp/1c021.htm)の
データを利用
マクロ金融特論2015
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外貨準備残高変動と為替相場
億ドル
円/ドル
図4-2:為替相場と為替介入
10000
330
280
為替相場
230
通貨当局対外純資産(短期)
1000
180
①
②
③
④
⑥
130
⑤
100
1973 1974 1975 1976 1977 1978 1979 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998
マクロ金融特論2015
18
80
円高・円安と為替介入
①③⑤円高進行←ドル買い介入(円高抑制)
②④円安進行←ドル売り介入(円安抑制)
⑥円安進行←ドル買い介入(円安加速)
マクロ金融特論2015
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B O J Interventions and D ollar/Yen M ovem ent (Jan/1991-D ec/2004)
B O J Intervention
( 100M illion Yen)
B O J Intervention (against U Sdollar :100M illion Yen)
D ollar/Yen (average of m onth)
D ollar/Yen
(A ve.of m onth)
70000
150
60000
140
50000
130
40000
125円/ドル
30000
120
20000
110
10000
0
100
-10000
90
-20000
80
Jan-91
M ay-91
Sep-91
Jan-92
M ay-92
Sep-92
Jan-93
M ay-93
Sep-93
Jan-94
M ay-94
Sep-94
Jan-95
M ay-95
Sep-95
Jan-96
M ay-96
Sep-96
Jan-97
M ay-97
Sep-97
Jan-98
M ay-98
Sep-98
Jan-99
M ay-99
Sep-99
Jan-00
M ay-00
Sep-00
Jan-01
M ay-01
Sep-01
Jan-02
M ay-02
Sep-02
Jan-03
M ay-03
Sep-03
Jan-04
M ay-04
Sep-04
-30000
マクロ金融特論2015
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第2.3 表 ドル・円介入日の中心値水準ごとの介入回数・総額
介入日の中心値
以上
未満
介入の方向
介入日数
介入総額(億円)
140
~145
ドル売り
3
2,736
135
~140
ドル売り
1
139
130
~135
ドル売り
8
30,581
125
~130
ドル売り
20
15,338
120
~125
ドル買い
2
17,109
115
~120
ドル買い
4
21,568
110
~115
ドル買い
17
13,815
105
~110
ドル買い
28
38,310
100
~105
ドル買い
50
63,977
95
~100
ドル買い
35
27,257
90
~95
ドル買い
9
5,406
85
~90
ドル買い
16
20,718
80
~85
ドル買い
7
3,680
ドル売り累計
32
48,794
ドル買い累計
168
211,860
総合計
200
260,654
(注)これ以外に、ドル売り・マルク買い 1 回、マルク買い・円売り 1 回、ドル売り・ルピア
買い 5 回、ユーロ買い・円売り 5 回、があった。
ドル売り介入日の円・ドル中心値の最安値
126.50円
ドル買い介入日の円・ドル中心値の最高値
122.65円
マクロ金融特論2015
伊藤隆敏「日本の通貨当局による為替
介入の分析」 2001年
21
為替介入の実際
•
125円/ドルを境にして、それ以上におい
て円買い介入。それ以下において円売り
介入。
• 1995年以前と1995年以降で為替介入が
変化。
(1) 1995年以前:頻繁かつ小規模
(2) 1995年以降:頻度が低下し、大規模
マクロ金融特論2015
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