ニューラルテスト理論を 利用した Can

日本テスト学会 第7回大会
2009.09.04
ニューラルテスト理論を利用した
教科テストの Can-do table 作成
松 宮
功
京都府長岡京市立
長岡第四中学校
荘島宏二郎
大学入試センター
研究開発部
1
概要
学力
目的:教科の「学力進度表」を作成
方法:ニューラルテスト理論を利用
能力記述文
5
・・・することができる
4
・・・することができる
3
・・・することができる
2
・・・することができる
1
・・・することができる
能力記述表
学力進度表
Can-do table
Can-do chart
Can-do list
Can-do statements
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
2
中学校において,テストの影響は大きい。
たとえ定期テストであっても,影響は大きい。
中学校の定期テスト事情
・評価(通知票成績)情報の中心は,依然としてテスト
・評価に対する納得も不満も,テスト得点から
・平均点は,安心・不安基準
3
中学校において,テストは指導の手段になる。
テストの測定・診断以外の教育効果
(1)節目を意識・・・名簿順座席,各種ルール
(2)学習時間の増加・・・学習内容をまとめて復習
(3)学習方法を学習・・・授業スタイルが出題形式に反映
テストから作成するCan-do table に期待される効果
(1)テストの説明資料
(2)学力達成への道標
4
対象テスト:’08全国学力・学習状況調査_数学
0.3
0.25
0.2
相
対 0.15
度
数 0.1
項目数 51(A問題 21,B問題 13)
数と式 15, 数量関係21, 図形15
選択 21, 短答24, 記述6
解答者 3年106名,解答日 4/22
平均正答率 0.73
標準偏差 0.14(項目)
0.22(解答者)
0.05
0
0-5 6-10 11-15 16-20 21-25 26-30 31-35 36-40 41-45 46-51
正答数
5
Can-do table 作成の手順
ニューラルテスト理論を利用
(1)学力
(2)項目を分類
5
項目2
項目23 項目12
項目19 項目8
・・・することができる
4
項目4
項目22 項目15
項目28
項目1
項目16
項目27
・・・することができる
3
項目20 項目11項目5
項目24
項目14 項目7
・・・することができる
2
項目17
項目3
項目26
項目9
項目21
・・・することができる
1
項目18
項目10
項目25 項目13 項目6
・・・することができる
(3)能力記述文
6
手順2 分類の指標
項目参照プロファイル(IRP)
Item
R1
R2
R3
R4
11
R5
0.93
MA02 0.556 0.775 0.896 0.936 0.981
MA03 0.517 0.620 0.790 0.910 0.958
MA04 0.597 0.754 0.916 0.970 0.991
MA05 0.559 0.773 0.918 0.987 0.999
MA06 0.521 0.761 0.889 0.925 0.958
MA07 0.212 0.323 0.562 0.799 0.929
PROBABILITY
MA01 0.828 0.925 0.944 0.945 0.948
0.8
0.75
0.56
0.5
0.25
0.32
0.21
MA08 0.121 0.125 0.304 0.608 0.797
MA09 0.745 0.870 0.928 0.930 0.933
MA10 0.419 0.538 0.678 0.828 0.841
MA11 0.371 0.464 0.592 0.806 0.839
MA12 0.506 0.734 0.891 0.950 0.967
0
R1
R1 R2
R2 R3
R3 R4
R4 R5
R5
LATENT
LATENT RANK
RANK
IRP(数学_)
IRP(項目M07)
手順2 分類の基準
この項目のターゲットは,どの学力レベルか?
Item
R1
R2
R3
R4
R5
MA01 0.828 0.925 0.944 0.945 0.948
MA02 0.556 0.775 0.896 0.936 0.981
MA03 0.517 0.620 0.790 0.910 0.958
分類の基準
MA04 0.597 0.754 0.916 0.970 0.991
MA05 0.559 0.773 0.918 0.987 0.999
MA06 0.521 0.761 0.889 0.925 0.958
MA07 0.212 0.323 0.562 0.799 0.929
MA08 0.121 0.125 0.304 0.608 0.797
MA09 0.745 0.870 0.928 0.930 0.933
MA10 0.419 0.538 0.678 0.828 0.841
MA11 0.371 0.464 0.592 0.806 0.839
MA12 0.506 0.734 0.891 0.950 0.967
正答確率
0.75
手順2 分類(学力1に対応する項目)
1
1
0.75
0.75
PROBABILITY
PROBABILITY
学力1の正答確率が0.75以上の項目
0.5
0.25
0.5
0.25
0
0
R1 R2 R3 R4 R5
LATENT RANK
IRP(数学_)
1
2 3 4 5
LATENT RANK
IRP(数学_1-2)
手順2 分類(学力2に対応する項目)
1
1
0.75
0.75
PROBABILITY
PROBABILITY
学力2の正答確率が0.75以上の項目
0.5
0.25
0
0.5
0.25
0
R1 R2 R3 R4 R5
LATENT RANK
IRP(数学_)
1
2 3 4 5
LATENT RANK
IRP(数学_2-3)
手順2 分類(学力3に対応する項目)
1
1
0.75
0.75
PROBABILITY
PROBABILITY
学力3の正答確率が0.75以上の項目
0.5
0.25
0.5
0.25
0
0
R1 R2 R3 R4 R5
LATENT RANK
IRP(数学_)
1
2 3 4 5
LATENT RANK
IRP(数学_3-4)
手順2 分類(学力4に対応する項目)
1
1
0.75
0.75
PROBABILITY
PROBABILITY
学力4の正答確率が0.75以上の項目
0.5
0.25
0
0.5
0.25
0
R1 R2 R3 R4 R5
LATENT RANK
IRP(数学_)
R1 R2 R3 R4 R5
LATENT RANK
IRP(数学_4-5)
手順2 項目の分類結果
学力1・2・3・4・5
5
対応項目数
―
3
0.75
12
15
4
0.75
11
3
0.75
10
2
0.75
12
1
0.75
3
PROBABILITY
学力 基準
1
0.75
0.5
0.25
0
R1
R2
R3
R4
R5
LATENT RANK
IRP(数学_)
13
手順3 能力記述文(基礎資料)
項目の情報を含む資料を段階別に並べ替え
IRP
領 形
域 式 R1 R2 R3 R4 R5
設問の概要
出題の趣旨
具体的な事象にお
数量の関係を一 ける数量の関係を
数 短
と 答 .42 .54 .68 .83 .84 元一次方程式で とらえ,一元一次
式
表す
方程式を立式する
ことができる
Item 領域 形式 R1 R2 R3 R4 R5
内容
出題趣旨
A07
数と式 短答
.21 .32 .56 .80 .93
等式 x+2y=6 を, y について解く
等式を目的に応じて変形することができる
A11
数と式 選択
.37 .46 .59 .81 .84
x-y=1 の解の個数を選ぶ
二元一次方程式の解の意味を理解している
A10
数と式 短答
.42 .54 .68 .83 .84
数量の関係を一元一次方程式で表す
具体的な事象における数量の関係をとらえ,一元
一次方程式を立式することができる
B06
数と式 記述
.30 .42 .72 .92 .98
B02 数量関係 短答
.31 .54 .71 .75 .84
A30 数量関係 短答
.12 .22 .44 .77 .81
A27 数量関係 短答
.11 .22 .49 .79 .87
A24
図形
選択
.49 .56 .71 .75 .75
A16
図形
選択
.35 .50 .62 .76 .90
A15
図形
短答
.47 .60 .67 .90 .99
B12
図形
選択
.38 .51 .73 .90 .96
A03
数と式 短答
.52 .62 .79 .91 .96
B04
数と式 短答
.65 .74 .85 .85 .86
A12
数と式 短答
A26 数量関係 選択
.51
.61
.58
.46
A25 数量関係 選択
.45 .63 .87 .93 .93
B07 数量関係 短答
.61 .73 .87 .94 .94
A20
図形
短答
.33 .50 .77 .86 .96
B10
図形
選択
.54 .64 .79 .87 .87
A28 数量関係 短答
B13 数量関係 短答
.73
.68
.65
.65
.89
.77
.80
.84
.95
.92
.90
.88
.97
.96
.93
.94
2桁の自然数と,その数の十の位の数と一の位の
発展的に考え,予想した事柄を説明することができ
数を入れかえた数との差について予想した事柄を表
る
現する
上腕骨の長さの差が4cmのとき,身長の差を式を用 言葉で表された式の特徴から数学的な意味を考え,
いて推定する
事象を式の意味に即して解釈することができる
y=ax+b の a がグラフの傾きであることを理解して
一次関数の式からグラフの傾きを求める
いる
比例のグラフ上に,xの変域に対応する部分を図示 xの変域に対応する部分を,グラフ上に表現するこ
する
とができる
証明で用いられている図が考察対象の図形の代表
証明の意義について理解している
であることについての正しい記述を選ぶ
円錐の体積を,底面が合同で高さが等しい円柱の
円錐と円柱の体積を比較し,正しい図を選ぶ
体積との関係から理解している
空間における直線や平面の位置関係(面と辺の垂
直方体において,与えられた面に垂直な辺を書く
直)について理解している
証明で用いた三角形の合同を根拠として,証明した
証明を振り返って考えることができる
こと以外に新しく分かることを選ぶ
指数を含む正の数と負の数の計算をすることがで
2×(-32) を計算する
きる
82と,82の十の位の数と一の位の数を入れかえた 問題場面における考察の対象を明確にとらえてい
数との和を,式で表す
る
連立方程式 y=3x-1,3x+2y=16 を解く
簡単な連立二元一次方程式を解くことができる
反比例のグラフ上の点の座標を求める
グラフ上の点の座標の表し方を理解している
5つの湖から2つの湖を選ぶ組合せの総数を求める与えられた情報を分類整理することができる
反比例の性質を表した記述を選ぶ
反比例の意味を理解している
具体的な事象の中には,比例を用いてとらえられる
数量の関係が比例になるものを選ぶ
ものがあることを理解している
積み重ねたベニヤ板の枚数の求め方を読み,枚数 事象における数量の関係を見いだし,何と何の関
を何に置きかえて考えているかを答える
係が利用されているかを明らかにできる
円周角の大きさを求める
円周角の性質を理解している
辺の長さが等しいことを証明する際に,その辺を含 証明の方針を立てる際に根拠となる事柄を筋道立
む三角形の合同を示せばよい理由を選ぶ
てて考えることができる
作成された Can-do table
学
力
5
4
3
2
1
教科学力の達成度(中学校3年4月)
数と式
数量関係
図形
満足できる。
文字式が表現する意味を具体的事象と 具 体 的 事 象 の 関 数 関 係 (y=ax+b,
平面図形の性質を理解し ,
関連付けたり,読み取ったり,表現したり ax+by=c, y=a/x)を表現したり,考察
基本作図をすることできる
して,活用することができる
したりすることができる
概ね満足できる。
等式の意味や変形の規則を理解してい
具体的事象の正比例や一次関数 図形の要素の位置関係や面
る具体的事象の数量関係を方程式に表
の関係を,表・グラフ・式を使って表 積・表面積・体積の計量方法
現ししたり,それを解いたりすることがで
現することができる
と関係を理解している
きる
もう少しで満足する段階に達する。
基本的な連立方程式を解くことができる
基本平面図形の性質(平行
正比例・反比例,一次関数をグラフ
塁乗を含む正負の数の計算,文字式の
線と角,多角形など)を理解
や式で表現することができる
四則計算をすることができる
し,使うことができる
努力を要する。
基本的な一元一次方程式を解くことがで
基本平面図形の性質(平行
きる
座標とグラフ上の点を対応させるこ
線と角,多角形など)を指摘
負の数の意味を理解し,基本的な文字 とができる
することができる
式の計算をすることができる
相当な努力と要する。
小学校段階の分数計算を正解すること
―
―
ができる
テスト参照プロファイル(TRP)と正答数
50
45
40
35
正 30
答 25
20
数
15
10
5
0
51
26
21.8
32
27.8
24
40
35.1
32
45
41.2
36
44.3
40
テスト参照プロファイル(TRP)
6
R1
R2
R3
潜在ランク
R4
R5
潜在ランク分布(LRD)
R5正答数45~51
40
人数
30
20
10
R2正答数24~32
R4正答数36~45
R1正答数6~26
R3正答数32~40
0
R1
R2
R3
R4
学力達成段階
中学校3年4月の学力(数学)達成度
R5
ランクメンバーシップ・プロファイル(RMP)
性
得点
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
F
M
F
M
F
M
F
F
M
F
F
M
F
M
M
M
F
47
42
41
39
33
31
22
34
42
47
24
15
30
43
38
28
47
潜在 R1
ランク
4
4
4
4
2
2
1
2
4
5
1
1
2
4
3
1
5
0
0
0
0
.01
.06
.99
.01
0
0
.94
1
.08
0
0
.59
0
R2
R3
R4
R5
0
0
0
0
.77
.90
.01
.91
0
0
.06
0
.90
0
.02
.40
0
.01
.11
.16
.01
.22
.04
0
.07
.26
0
0
0
.02
.11
.98
0
0
.82
.79
.81
.93
0
0
0
0
.74
.09
0
0
0
.83
0
0
.07
.17
.10
.03
.06
0
0
0
0
0
.91
0
0
0
.06
0
0
.93
1
0.75
確率
No
0.5
0.25
0
R1 R2 R3 R4 R5
RMP(No.1~17)
ランクメンバーシップ・プロファイル(RMP)
性
得点
1
2
3
4
F
M
F
M
47
42
41
39
5
F
6
7
M
F
8
F
9
10
11
12
13
14
15
16
17
M
F
F
M
F
M
M
M
F
潜在 R1
R2
R3
R4
R5
0
0
0
0
.01
.11
.16
.01
.82
.79
.81
.93
.17
.10
.03
.06
33 2 .01 .77 .22 0
0
31
22
ランク
4
4
4
4
0
0
0
0
34 2 .01 .91 .07 0
0
42
47
24
15
30
43
38
28
47
2
1
0
0
0
0
4
5
1
1
2
4
3
1
5
.06
.99
0
0
.94
1
.08
0
0
.59
0
.90
.01
0
0
.06
0
.90
0
.02
.40
0
.04
0
.26
0
0
0
.02
.11
.98
0
0
.74
.09
0
0
0
.83
0
0
.07
0
.91
0
0
0
.06
0
0
.93
1
0.75
確率
No
0.5
0.25
0
R1 R2 R3 R4 R5
RMP(No.1~17)
まとめ
1. 教科テストの結果を使って Can-do table
を,作成することができる。
2. ニューラルテスト理論は,Can-do table 作成
に適している。
3. 5段階の場合,境界層が示された上で,大
きく2分割されるのかもしれない。
おわり
御清聴ありがとうございました。