スライド 1

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地震防災知識普及のための
「人生ゲーム」教材の開発
教育学部 総合科学専攻
小山研究室
3051-6027 松本由真
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研究目的
地震に対する脅威は感じていても、実際に地震防
災に対して深い関心を持っているひとは少ないよう
に思われる。原因として地震災害の発生頻度の低さ
や、被害の度合いが極端に大きい場合と小さい場合
があるからである。しかし、地震災害は発生してし
まったら悲惨な結果を残しかねない。
そうならないために、地震災害について正しい知識
の普及・教育をする必要がある。その方法として、
ゲームによる方法を導入することで地震防災に関心
のない人でも気軽に楽しく学ぶことのできる教材の
開発を行う。
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研究方法
現在開発されている防災ゲームについて、知
ることで防災ゲームに適したゲームの傾向をつ
かみ、これまでの防災ゲームでは補え切れてい
ない分野を知る。
その後、開発するゲームの形式を決定する。
地震災害について調査しながら、それを実際
に開発するゲームに反映させる。
4 現在開発されている地震防災ゲームの種類吉川(2006)
正解を学ぶ:ぼうさいダズン
天ぷら火災という状況が与えられ、12個の対応行動に重要度に応じ個人・集団
(話し合い)で順位をつける。正解との隔たりを計算し、個人と集団の決定を比較
する。
動作を身につける:ぼうさいダック
子供を対象とし様々なハザードへの対応を学ぶために開発された。表にハザー
ド、裏に対応行動が書かれたカードの表を見て、対応行動を示すポーズを取る。
問題の共有と合意形成:クロスワード
5人1組で災害時のジレンマが記されたカード
を引く。イエスまたはノーのカードから選んだ
カードをグループ内でいっせいに見せ合う。多
数派のプレーヤに加点。
暗示される時間:大ナマジンすごろく(図1)
季節のイベントと関連のある12ヶ月分のマス
を通過しながら、マスの指示に従いハザードへ
の対応行動を取る。大地震を暗示させる大ナマ
ジンがスタートの3マス前サイコロの1が出たら1
ずつ進んでくる。
図 1
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開発するゲームの形成
 従来の防災ゲームを分析した結果、これから開発するゲー
ムに適したゲーム形態として、以下の条件を挙げた。
1. ルールが分かりやすい。
2. できるだけ地震防災を身近に感じられる。
3. 楽しみながら地震防災を学べる。
4. これまでにないような、地震が人生に与える影響が学べ
る。
☞以下の理由から、人生ゲームが適しているのではないか
と考え、「人生ゲーム」風のすごろく形式を採用し基本設計
を行った。
①誰もが1度はプレーしたことがある。
②ゲームの中で1人の人生を仮想体験できる。
③災害などによるコストと利益を容易に表現できる。
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人生ゲームの概要
形式
1人の人生を模したすごろく形式のゲーム。ゴールするまでに、一番お金を
集めた人が勝ち。
ゲームの流れ
プレーヤーが盤面のルーレットを回し、出た数だけコマを進める。
とまったマス目の指示に従う
(※通過したときに指示に従うマス
もある)。指示によって、お金の出
入りがある。
プレイ中に職業につく。途中、給
料がもらえたり、ランクアップ(昇
給)したりする。
全員がゴールした時点でゲーム
終了となる。
図2が参考にした人生ゲームで
ある。
図 2
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開発するゲームのコンセプト
コンセプト
東海地震の発生が迫る静岡を舞台とする。
静岡で生まれ育った人がたどる様々な人生をシミュレーションする。
地震災害の仮想体験と地震と共生するための教訓や知恵を身につける。
開発するゲームの概要
人生ゲームに類似したすごろく形式。
プレーヤの数は2~6人。
プレイ中に止まったマスによって、職業
につく。職業により、地震災害における
影響に差がある。
職業の種類
市役所職員・サッカー選手・サラリー
マン・ストレスカウンセラー・医者・学校
の先生
※図3は職業につく際に引くカードで
ある。
し ょ く ぎょ う
職業カ ード
ぶ ちょ う
ラ ンク アッ プで部 長 へ
サラリーマン
ひつよ う
必要ポイ ン ト
ラ ンク アッ フ ゚
ポイ ン ト
…5 P
た
し ょ く ぎょ う
てんし ょ く
他の 職 業 から 転 職
きゅう り ょ う
給 料
$1 2 ,0 0 0
と
ち ょ う ど 止ま る と
たい
退
しょく
職
きん
金
$2 4 ,0 0 0
$3 6 ,0 0 0
図 3
ポイ ン ト
…1 0 P
てんし ょ く
フ リ ータ ーから 転 職
ポイ ン ト
…5 P
8
盤面の流れ
1. 職業決定ゾーン・・・サラリーマンなどの職業につく。
2. 一般ゾーン・・・・・・・地震に備え、お金やアイテムを獲得する。
3. 地震ゾーン・・・・・・・東海地震が発生し、さまざまなハザードに直面する。
※各ターンの最後のプレーヤがコマを進めたら、親がルーレットを回し10が
出たら東海地震が発生。各プレーヤは全員地震ゾーンのスタートマスに
移動する。これにより、いつ起こってもおかしくない地震を表現した。
人生の一般的選択
結婚:結婚は指示されたマスで行うことが可能。(図4)
出産:結婚している場合、マスで指示された人数の子供が生まれる。
自宅の購入:建築する住宅にレベルを設け、
ストップ!結婚の選択
金額により耐震・耐火の性能が異なる。
結婚するなら、相手を車に乗せる。ルー
※自宅の購入は選択肢を設けることで、耐震 レットを回し、出た数によりみんなからお
工事の有無・地盤の良し悪しにより地震災害 祝いをもらう。
1,2,3,4,5・・・・・$3,000
の被害の差を分かり易くした。
6,7,8,9・・・・・・$1,000
地震保険の加入:指示されたマスで加入で
10・・・・・・・・$5,000
きる。
図 4
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地震トリビアマス
地震に関する知識を問うためにクイズ形式のマスをつくった。
地震トリビアマス
地震トリビアマス(図5):クイズの書かれたカードを引き、地震 地震トリビアカード
に関するクイズに答える。正解数に応じお金などがもらえる。 をランダムに1枚引
例.1.津波は異常な引き潮から始まる ○or×?
2.浜名湖は津波によって海とつながった ○or×?
3.海岸と逆方向から津波に襲われることもある ○or×?
全問不正解→1回休み 1問正解→$1,000
2問正解→$3,000
3問正解→$5,000
きクイズに答える。
図 5
地震の恵みマス
地震には知られていないがさまざまな恵みがある。(小山2006)
それらを表現するために、地震の恵みカードというのを設けた。(図6)カードを
引く指示のあるマス(図7)でカードを引き、それをゴールまで持っていたら、カード
に書かれた金額をもらえるというルールとした。
じ
し ん
め ぐ
地震の恵みカ ード
じ
ウナギ
表
し ん
め ぐ
地震の恵みカ ード
裏
ウナギ
ねん めい お う と う かい じ し ん
つ な み
な いり く
1 4 9 8 年明応東海地震によ る 津波で , 内陸に
は ま な こ
がい かい
け っ か
は ま な こ
あっ た浜名湖が外海と つな がっ た。結果,浜名湖
し んせん
かい すい
で
い
き す い こ
は新鮮な 海水が出入り する 汽水湖と な り , アサ
ひ ょ う か が く
評価額
めいさ んち
さか
リ ・ カ キ・ ウナギな ど の名産地と し て 栄え る こ
$2 0 0 ,0 0 0
図 6
と と な っ た.
浜名湖でウナギの
養殖をはじめた。$
50,000 は ら う 。 地 震
の 恵 み カ ード 「 ウ ナ
ギ」を取る。
図 7
非常持ち出し袋&家具固定カード
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地震災害に備えて非常持ち出し袋の準備や、
家具の固定を行っておくことは非常に重要であ
る。そのことを強調するために、非常持ち出し袋
&家具固定カード(図8)を設けた。同カードを引
く指示のあるマスで手に入れることができること
とした。(図9)
ひ じょう
も
だ
ぶく ろ
か
ぐ
こ
て い
非常持ち 出し 袋&家具固定カ ード
表
り
まい

1 人1 枚

1 度手 に入 れたら 、 最後
ど
て
い
さ い ご
地震災害に関するマス(図10)にとまった際に、
まで持つこ と ができ る 。
同カードを手に入れていたら、損失が軽減され
非常持ち 出し 袋&家具固定カ ード
るといった特典を設けた。
も
ひ じょう

防災ボランティアの
講習会で1回休み。
非常用持ち出し袋
& 家 具 固 定カ ー ド
を取る。
2ポイント
図 9
※非常用持
ち出し袋を
もっていたら、
ラジオで正し
い情報を聞
いていたた
め、払わなく
てもよい。
近所でまた大地震
が起こるという噂が
流れ、避難するが、
何も起きずその間に
空き巣に入られる。
$5,000払う。
も
だ
ひ じょう も
裏
ぶく ろ
だ
か
ぐ
こ
て い
ひん
非 常 持ち 出し 品
さ い て い げん
よ う い
じ し ん
びょ う いん
ち りょう
う
し たら 、 ケガを し ても 病 院でただち に治 療 を 受ける こ
こ んな ん
き ゅ う きゅ う や く ひ ん
じ ゅ んび
と は困難です。 救 急 薬品の準備も し ておき まし ょ う 。

か
ぐ
こ て い
家具固定
はん し ん
あ わ じ だいし んさ い
おお
ひと
か
ぐ
て んと う
阪神・ 淡路大震災では、 多く の人が家具の転倒など に
ししょう
かべ
か な ぐ
よ っ て死傷し ていま す。タ ン スを 壁に金具でと める など
たいさ く
ひつよ う
の対策が必要です。
図 10
はっ せい
最低限のも のを 用意し ておき ま し ょ う 。 地震が発生
図 8
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試作品のプレイ結果
試作品を以下の日時に小山研究室のゼミ内でプレイした。
11/22(水)昼休み 小山研究室ゼミ8
2つのボードを用意し、学生9人・教授1人が5人ずつ2組に分かれプ
レイした。その後、アンケートを取った。
アンケート結果
以下が、試作品をプレイした際のゲームに対しての感想や意見である。
事象が日常生活に結びつきやすくて分かりやすい
地震による津波被害とかも作ったら面白いかも・・・。
もう少し地震の知識を伝えるマスがあっても言いと思う。
復興していく過程があっても良いと思う。
予知情報といったイベントをいれてはどうか。
地震前の緊迫したステージを作った方がよいのでは。
家が崩れる種類(全壊・半壊・一部損)などがほしい。
今後の予定
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職業によって防災や地震の影響が変わるマスの作成。
家族がいる・いないによって防災や地震の影響が変わるマ
スの作成。
マスを作るための地震災害・防災に関する資料集め。
アンケート結果をもとに手直しを加える。
津波に関するマスを増やす。
予知情報などのマスを設ける。
家が壊れる際に、耐震のレベル・地盤の良し悪しにより
壊れる度合い(全壊など)がことなるようなマスを設ける。
地震後に、水道などが復興していくマスを設ける。