f i (フガシティー、fugacity) ルイスが実在気体を熱力学的に論じるために導入した量。実在気体のモル ギブス自由エネルギーG を用いて f i (フガシティー、fugacity)は G = G 0 (T ) + RT log f (T , p) で表される。 G 0 は標準状 態のモルギブス自由エネルギー、T、p は絶対温度と 圧力。 f は圧力の次元を持つ。 チタンとジルコニアは共に低温では六方最密充てん構造であるが、高温では体 心立方構造(b.c.c)となる。図 1 . 2において 750Kではギブスエネルギーは h.c.p. 相のギブスエネルギーより高く、h.c.p.は準安定である。b . c . cが最安定となる 1300K でのギブスエネルギーと組成の図では逆転する。 成分特有の構造とは異なる結晶構造を持 つ中間相が系内に現れる場合には興味深 い結果となる。 図 1.3(a)は銀-マグネシウム系の相図。 XMg=0.5付近に CsCl型(図中のβ)が存 在する。面心立方型(f.c.c)銀へのマグネシ ウムの溶解度も h.c.p.マグネシウムへの銀 の溶解度も有限である。F.c.c.相の曲線と A g軸の交点は純粋な f.c.c.相の外挿曲線と M g軸の交点は仮想的な純粋な f.c.c.マグネ シウムの標準ギブスエネルギーを表してい る。A gとの交点は仮想的な純粋な h.c.p.銀 標準ギブスエネルギーを表す。 h.c.p.銀と f.c.c.マグネシウムが存在すると、 それぞれの多形に対して準安定。それぞ れを表す G 0Ag(h.c.p.) と G 0Mg( f .c.c.) は G 0Ag( f .c.c.) と G Mg(h.c.p.) よりも上になる。 0 CsCl型の中間相βの曲線を外挿する。A g軸 と M g軸との交点はそれぞれ CsCl型構造を 持つ仮想的な純粋な A gと M gのギブスエネ ルギーを表す。 しかし、A gも M gもこの構造では存在しないので G 0Ag(b.c.c.) と G 0Mg(b.c.c.) は G Ag( f .c.c.) と G Mg(h.c.p.) よりずっと上になる。β層で立方副格子が出来るのは 0 0 A g M gと言う組成に対してのみである。Ag/Mg比が1と異なると C s C l型と はならない。 β相の組成φを考える。線分 G 0Ag( f .c.c.) G 0Mg(h.c.p.) 上の点 G u は混合していない銀 とマグネシウムのギブスエネルギーを表し、線分 G u G b は反応 Ag(f.c.c.)+Mg(h.c.p.)→組成φのβ相 のギブスのエネルギーを表す。A gと M gの量は組成比により異なる。 同様に線分 G 0Ag(h.c.p.) G 0Mg(h.c.p.) 、 G 0Ag( f .c.c.) G 0Mg( f .c.c.) 、 G 0Ag(b.c.c.) G 0Mg(b.c.c.) 上にそれぞれ G u(h.c.p.) ,G u( f .c.c.) , G u(b.c.c.) を定義することが出来る。例えば線分 G u( f .c.c.) G b は反応 Ag(f.c.c.)+Mg(仮想的な f.c.c.) → 組成φのβ相 のギブスエネルギーを表す。 エンタルピーとエントロピーのデータを外挿することにより、融点以下に おける固体の融解ギブスエネルギーを計算することが出来る。つまり、線 分 G 0Ag(1) G 0Mg(1) を実際に描くことが出来る。 線分 G u1 G b は反応 過冷却液体 Ag + 過冷却液体 Mg → 組成φのβ のギブスエネルギーを表している。二本のギブスエネルギー曲線の共通接 線と縦軸の交点は平衡にある2相中の A gと M gの部分モルギブスエネルギ ーを表す。 例)図 1.3(b)に f.c.c相の曲線とβ相の曲線の共通接線が示されている。 それと A g軸の交点は組成 e の f.c.c.固溶体中の A gの部分モルギブスエネル ギーを表し、また組成 b のβ相中の A gの部分モルギブスエネルギーをも表 している。従って G Ag (組成 e の f.c.c.相)= G Ag (組成 b のβ相) 、同様に G Mg (組成 e の f.c.c.相)= G Mg (組成 b のβ相)であり、2相は化学平衡に ある。図 1.3(b)の線分 e bは相図の2相領域における e b連結線に関連してい る。 図 1 . 4は領域が狭い例を示す。極端な場合はいわゆる“化合物”であって、存 在領域が大変狭 く電気的、光学的などの物理 的性質の変化は見知できてもほと んどの分析法ではその幅をはかることが出来ない。相の存在領域が狭 くなると 対応するギブスエネルギー-組成曲線の最小曲率 半径が小さくなり、“化合物 ” ではほとんど 0 に等しい。 理想 0K以上では決 して存在することがない“完全”結晶性化合物 は極端な例で あるが、固体“化合物 ”が実際には存在領域が極めて狭 い組成の変化する 相以外何者でもないことを理 解することは重要。完全な化合物 はそれが存 在するとギブスエネルギー-組成図において端での半径 0 に相当する垂線で 表される。その最小点には無限に多数の折線を引くことが出来るので、相 の組成を変えることなく全ての成分の化学ポテンシャルを変えることが出 来る。これは化学的に見て無意味。 実際 実在する物 質→微量の欠陥不純物 を含む。“完全結晶”とは“純粋”成分と同 様に単なるモデル。 CO2 や H2O と言った個々の分子では厳密に定比例の法則が成り立つ。 長年にわたり、この法則が巨視的量の物体に適応されてきた。 定比例の法則に基づく化合物 はその発見者から“ドルトナイド”と呼ばれ る。Ti1-zZrx のような固溶 体のように組成の変化が容易に観測される相は提 唱者にちなんで“ベルトライド”と呼ばれる。 実際の相はベルトライドである。 擬二成分系のギブスエネルギー-組成図 LiBrや NaBrのようなハロゲン化物では陽イオン/陰イオンの比に顕著な変 化は見られず、事実上いつも1である。このため、2種類のハロゲン化物 からなる固溶体は Li1-xNaxB rと表す。図 1.6(a)に Li-Na-Br系の一部について の3次元ギブスエネルギー-組成図を定性的に示す。 Li1-xNaxBr固溶体は LiBr と NaBrを通る垂直な面内に相当する。 xのある値に対応する Li1-xNaxB rを考える。この相をσとする。 (1-x)LiBr(NaCl型)+xNaBr(NaCl型)→Li1-xNaxBr (NaCl型) σの生成ギブスエネルギーを考える。 混合ギブスエネルギーΔG mは f.c.c.陽イオン副格子上の Na+←→Li+と言う置 換に対応。Li+と Na+は似かよっているので混合によってはわずかなエネル ギーのみ解放。つまり、ΔH mはほぼ 0。 ゆえにΔG mにもっとも寄与するのは-TΔS cである。ここで、ΔS cは混合 における配置エントロピーであり、 ΔSc=-R[(1-x)ln(1-x)+xlnx] であり、室温(300K)では ΔGm=300R[(1-x)ln(1-x)+xlnx] これは理 想溶 液の混合ギブスエネルギーである。実在の固体は理 想モデル のようには振る舞わないが、ずれが大きい場合を除けば混合ギブスエネル ギーは同程度。 ギブスエネルギー-組成図の原理より図 1.6(b)でσ相の曲線の接線と LiBr あるいは N a B rに相当する垂線との交点は、その組成における G LiBr と G NaBr を表している。固溶体中には化学種 L i B rは存在していないので、形式的な 物である。 σ相における各元素の化学ポテンシャルを求めるには3次元ギブスエネルギー組成図に接平面を描く。純粋な元素を表す縦軸との交点を決定する。 1. 不定比固溶体 » Fe や » Ti の場合、組成の変化は空孔や格子間原子の生成を伴っている。 Ti1-xZrx や Li1-xNaxB rと言った固溶体では熱励起によって生じる空孔や格 子間原子を除けば組成によらず全てのサイトが占有されている。 二酸化ジルコニウム(ZrO2)と酸化カルシウム(CaO)はある組成範囲で蛍石構造、 その立方対称サイトは全て Zr4+または Ca2+で占められている。 一見、(ZrO2)1-x(CaO)x と言う相は(LiBr)1-x(NaBr)x 固溶 体と類似しているが、化学 式で書き直すと (ZrO2 )1- x (CaO) x º Zr 1- x Ca x O 2- x であり、酸素副格子が組成に依存する。 立方対称のサイトにおいて Zr4+が Ca2+で置換されると O2-空孔の生成により補償 される電荷2が生じる。このため正しい化学式は Zr1-xCaxO2-x(VO)x となる。 電気伝導率の大小により呼び方が変わる 電気伝導度 絶縁体 小 抵抗体 半導体 導体 超伝導体 大 イオン伝導と電子伝導では移動度が 約2000倍も異なる イオン結合性結晶や共有結合性化合物 自由電子がほとんど存在しない 抵抗率:108〜1012Wcm 金属 絶縁体 CB FB CVは空っぽ EF 5〜10eV程度 VB CB VB 電子はVBのみ CB : Conduction Band(伝導体) VB : Valence Band(価電子帯) FBが無くなりVB電子は 連続的にCBへ移行 自由電子として伝導に寄与 不純物半導体 真性半導体 Extrinsic semiconductor Intrinsic semiconductor CB CB EF EF VB p形半導体 n形半導体 ED VB ED Donor State EF CB VB EA EA Acceptor State 半導体ではFBが1〜2eV程度 (Si:1.1eV, Ge:0.7, GaAs:1.4eV) 真性半導体 Intrinsic semiconductor CV EF 熱励起によりVBにある電子の一部がCBへ VBでは電子の励起によりホールが単独で存在 n = NC e - ( EC -E F ) - VB kT ( E F -EV ) p = N V e kT N C や N V はCBやVBにある有効な状態密度で 3 * æ 2 pm kT ö 2 N C = NV = 2 ´ ç ÷ 2 è h ø m* :電子の有効質量 励起された電子濃度はVBからCBに傾斜化しており、 その平均密度がEFとなる 不純物半導体 Extrinsic semiconductor p形半導体 n形半導体 CB EF ED VB ED Donor State EF CB VB EA EA Acceptor State 不純物半導体では 固溶サイトの占有原子よりも高原子価の元素の固溶により n形半導体 固溶サイトの占有原子よりも低原子価の元素の固溶により p形半導体 不定比性の化合物における欠陥構造によっても禁制帯中に エネルギーレベルができる 導電機構 セラミックスの導電機構は数多く提案されている 代表的な導電機構 1.バンドによる伝導 2.金属伝導 3.ホッピング伝導 4.金属ー半導体転移 バンドによる伝導 電子やホールが伝導体の中を移動する 酸化物では 1.化学量論組成からのずれ 2.不純物の添加 によりキャリアを生成、それらのエネルギーレベルを構成する バンド伝導では導電率は温度依存性を示し、 æ Eö s = s 0 expç- ÷ è kT ø で近似することができる。 :Sr ion :Ti ion :O ion <Band Structure② n=1> <Band Structure⑥ bulk 5% Y-dope> 金属伝導 電気伝導度σが非常に高く、σの温度依存性が ds <0 dT かつ金属ー半導体転移が温度を変えても発現しない セラミックスではReO3が代表的 酸化物の中で最も電気伝導が高い O Re 正八面体結晶場の中心に遷移金 属イオンが存在 d軌道は八面体結晶場中で縮体 がとけて t2g準位 d xy ,d yz ,dzx eg準位 d x 2 - d y2 ,dz2 に分裂 eg準位の電荷密度はx,y,z軸方向 に広がり陰イオンと反発して不安 定 t2g準位の電荷密度は軸間に広が り、安定 Re6+-Re6+間の距離は約5.3ÅでRe6+イオン のt2g軌道が重なることは極めて少ない Re6+イオンは6個のOからなる八面体結晶 場の中心に位置 Re6+の電子配置は(5s)2(5p)6(5d)1である。 局在化した5d電子を1個持つReO3 のバ ンドモデルである。 八面体結晶場に置いてRe6+イオンのd軌 道はt2gおよびeg軌道に分かれる 酸素イオンのsおよびp軌道 二重に縮退したpπ軌道とspσ混成軌道に分かれる。 Re6+イオンの2個のeg軌道は6個の酸素のspσ混成軌道とσ結合 結合性σ準位と反結合性σ*準位を形成 Re6+イオンの3個の酸素のpπ軌道とπ結合し、結合性π準位と反結合性π*準位を つくり、残りの3個の酸素のpπは非結合準位を作る 。Re6+イオンのsおよびp軌道は6個の酸素のspσ混成軌道とσ結合し、結合性σ準位 と反結合性σ*準位を作る。 ReO31分子当たりの電子数は25個であり、下の準位 から電子を詰めていくと反結合性π*準位は1/6だけ満 たされる。従って、π*準位内にフェルミ準位がくるため、 ReO3は金属的な電気伝導を示す。 ホッピング伝導 イオン結晶 絶縁体 半導体 幅の狭い伝導体 伝導電子は特定のイオンに局在化 極小のエネルギーの状態 電子の雲は周りの格子を歪ませる 電気的分極構造の誘起 電気的分極は電子との相互作用により 電子エネルギーを減少させる 結晶中を電子が動くとすると 分極構造をともなって移動する 電子と分極の複合粒子をポーラロンと呼ぶ 結晶の単位胞よりも大きな格子歪み ラージポーラロン 結晶の単位胞よりも小さな格子歪み スモールポーラロン
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