アウトライン 1. • はじめに • 先行研究2.1「はい」に関する先行研究 2 • 2.2非言語行動に関する先行研究 • 結果と考察3.1「はい」発話の取り扱いとその機能 3 4 2 • • おわりに 3.2「非言語行動的特徴」-うなずき、視線 1、はじめに(1/7) • 社会言語学登場以降 • 語彙や文法の言語要素+コミュニケーションに欠かせないもの 言語教育では、言語的伝達が非言語的伝達に対して圧倒的に優 位にあるように思いがちである(中道ら,1995) 3 1、はじめに(2/7) • 言語行動とともに伴うしぐさなどの非言語行動は、意思交 流に大きな影響を与えている(佐藤,1989;奥田,1992;高見,2009)。 例:日本人のうなずき---アメリカ人誤解(西原,1995) 映像はテキストと同時に、非言語コミュニケーションや文化 情報を理解するのに役立ち、言語習得が促進される(石 田,1966;北尾,1992;池田,2003;竹内,2004;福岡2004;葉,1996)。 4 1、はじめに(3/7) • • JFL学習者は、主に教師や教科書を通して、日本語を学習したり、日 本社会の価値観を認識したりする。 JFL学習者にとっては、日本人のNVCを理解し、習得することは環境 上かなり困難である。 これを補完するために、日本語教育現場では 日本人の実際のコミュニケーションが分かる ビデオ教材やマルチメディア教材が活用されてきた。 5 1、はじめに(4/7) • 日本語学習者、真偽疑問文に対して「はい」のみで応答し、何かぶっ きらぼうな感じ(奥津,1989) 上級日本語学習者、発表時、「はい」の多用、違和感 (山元,2008) 6 1、はじめに(5/7) 例1、図書館の人:外国の方ですか。 カリナ:はい。( 『みんなの日本語』 L23) 例2、林:すみません。60円切手5枚と35円のはがき10枚ください。 局員:35円のはがきはいま売り切れなんですが。 林:じゃ、40円のをください。 局員:40円のを10枚ですね。 林:はい(a)。 局員:はい(b)。700円になります。 林:はい(c)。 局員:ありがとうございました。 ( 『生活日本語』第5課会話1、下線と(a)(b)(c)は筆者による。) 7 1、はじめに(6/7) • • 従来の紙教材の中には「はい」がよく用いられているし、 単独として使われることもしばしばあることが分かる。 従来の紙教材に限界が見出され、特別な教材(例えば、マルチメメディ ア教材)を活用しないかぎり、JFL学習者にとっては習得上に難しい点 があろう。 8 1、はじめに(7/7) • 筆者は佐藤(1987)の行動修正の概念を参考にし、 • 特に望ましい行動が身に付いていないJFL学習者に、 望ましい行動の形成あるいは増加をさせるには、 • eラーニング教材(音声や画像が組み込まれた)の活用 は、有効的な指導法の1つだと考える。 9 2、先行研究ー2.1「はい」に関する先行研究(1/4) • 奥津(1989):先行発話の性質により、「はい」の10種類の機能。 • 北川(1977):「yes」「yeah」/「はい」と「ええ」の相違分析。 • • 富樫(2002):「はい」と「うん」の関係について、 「あいづち表現に用いられる、応答に用いられる、トピックの切れ目に現れる、繰り返し て用いられる」の4パターンに分けて検討。 • • 大浜(2004)応答形式:「はい」のみの応答、「はい」のない応答、 「はい」を伴う応答がある 山元(2008):教室談話の「はい」の機能、 「ひとまとまりの語感が完成したことを示す機能」、「一度流れをとめ、生徒の注意をひき つけ、教師の意図通りに次の指示や発問をする機能」、「それた話題をもとに戻す機能」 10 2、先行研究-2.2非言語行動に関する先行研究(2/4) • Mehrabian,A(1968):コミュニケーション全体 words:7%、tone of voice:38%、nonverbal communication: 55% • 非言語行動は言語行動と切り離せない関係があるので、聴解の指導の中 に含めるべきである。(鮎澤,1988) 日本語教育は、言語教育、コミュニケーション教育、インターアクション教育の すべての面を含まなければならない。(ネウストプニー,1989)。 11 2、先行研究-2.2非言語行動に関する先行研究(3/4) • 日本語教育では言語表現形式のみならず、非言語表現形式、 行動の様式の3つの要素のすべての領域にわたるものを教えなければ ならない。(水谷,1989) • 技術研修生に非言語伝達の学習を導入し、実践授業を行った。 非言語伝達の学習が、日本語学習の初心者にとって、特に意思 の間違いのない交流のために有効であるとともに、日本語能力 の向上にも寄与する。(佐藤,1989) 12 2、先行研究(4/4) • 諸先行研究は、日本語教育への非言語行動指導の必要性を論じ ることにとどまるものが多い。 • 話し手は話しかけたり、働きかけたりする際に、どんな非言語 行動をとるかはいくつか触れただけである。 • 一方、聞き手はどう反応しながら受け取っているかはあまり詳 しく探求されていない。 13 3、結果と考察 • • • • 調査対象: 「JPLAN中級」(以下、「JPL」) 「多言語モジュール」(以下、「多言語」) WEB版「エリンが挑戦日本語できます(以下、「エリン」)」 • 方法: • 会話文にある「はい」を抽出。 • その取扱い、機能、非言語行動について記述∙分析。 14 3、結果と考察 3.1「はい」発話の取り扱いとその機能(1/5) 15 3、結果と考察 3.1「はい」発話の取り扱いとその機能(2/5) 16 3、結果と考察 3.1「はい」発話の取り扱いとその機能(3/5) 17 3、結果と考察 3.1「はい」発話の取り扱いとその機能(4/5) 奥津(1989)、富樫(2002) eラーニング教材の「はい」発話を 「応答」「あいづち」「トピックの切れ目」 という3つのタイプに分けて考察をする。 18 3、結果と考察 3.1「はい」発話の取り扱いとその機能(5/5) 19 3、結果と考察 3.2非言語行動的特徴 • 会話構造には多くの種類の非言語行動が関わっている。 • 3.2.1:「うなずき」 • 3.2.2:「視線」 2つの行動指標のみに焦点をあて、例をとりあげな がら考察を行う。 20 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」(1/21) 21 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (2/21) 22 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (3/21) • 例5には、「うなずき」が共起する。それは、面接官(先生(女 ))は「うなずき」や「ほほえみ」を用いて、雰囲気を緩和し ようとする意図があると解釈されるであろう。 例5、先生(女):はい、面接はこれで終わります。 後ろのドアから退出してください。 受験生:はい、ありがとうございました。 (JPL1-3) 23 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (4/21) • 「疑問文の応答」(7例)の場合には、「~か」「~ね」「~でしょう か」のような先行文脈が取り上げられる。そのうち、「うなずき」と 共起するのは5例である。 • ほかの2例は、「~か」という言語形式をとっているが、どちらも純 粋的なYNQではなく、「肯定」を期待して非典型的な疑問文である。 例8は電話のやりとりの反応であり、「うなずき」が共起しない。 例8、先生:はい、中村です。 ヴィエン:あっ、中村先生でいらっしゃいますか。 先生:はい。 (JPL4-3) 24 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (5/21) • 「非疑問文の応答」(21例)の場合 • 次のような先行文脈が取り上げられる。「~てください」「~ ように(してください)」「お願します」「すみません」「~ よ」「~といいね」「~ましょう」「~ほうがいい」「平叙文 」である。そのほか、電話のやりとりの反応、ノックへの反応 がある。 • 「はい」発話の「うなずき」有無は先行文脈が大きく関わって いるととらえられる。以下、先行文脈別にみていく。 25 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (6/21) • 1)依頼、要求の「~てください」「~ように(してください) 」「お願します」:「うなずき」が共起する。 • 2)勧誘の「~ましょう」、助言(コメント)の「~よ」と望 ましいの「~といいね」「~ほうがいいですね」の場合、「う なずき」が共起する。 26 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (7/21) • 3)よびかけの「すみません」、ノックの場合、 「うなずき」は 共起しない。 • 4)電話のやりとりの場合、「うなずき」が共起しないのは普通である (例15a,b)。しかし、例15cのような電話の場合、目の前にいなくても 、特に目上の人に感謝の気持ちを表したい際に、「うなずき」が共起 することがある。 例15、ヴィエン:はい(a)、これから気をつけます。どうも申し訳ありません した。では、あさってのお昼、12時にうかがいます。 先生:はい(b)、じゃあ、待ってますよ。 ヴィエン:はい(c)よろしくお願いします。 (JPL4-3) 27 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (8/21) 28 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (9/21) • あいづちの場合、「うなずき」は共起しない。 • 「トピックの切れ目」の場合、「うなずき」は共起 しない。 29 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (10/21) • 「疑問文の応答」(9例):YNQの「~か」、確認要求の「~ ね」「~よね」「~だっけ」、許可の「~てもいいですか」の ような先行文脈が取り上げられる。いずれも「うなずき」が共 起する。 例18、店員:いらっしゃいませ。会員カード、おあずかりします。会員証はお 持ちですか? エリン:はい。(エリンL21) 30 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (11/21) • 一方、「非疑問文の応答」 (13例):次のような先 行文脈が取り上げられる。「~て」「~てください 」「~ないで」「~なさい」「~てくれる」、「す みません」、「~ましょう」である。 31 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (12/21) • 1)依頼、要求の「~て」「~てください」「~ないで」「~な さい」「~てくれる」の場合には、7例のうち、6例には「うな ずき」が共起する。 「うなずき」と共起しないのは、例21のように、「は~い」を長音化し 発話する場合である。 例20、さき:あー、先生!私も頭がいたいんですけど、ちょっと休んでいいです か? 先生:だめ。体育、さぼりたいだけでしょ。早くもどりなさい。 さき:はーい。(エリンL16) 32 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (13/21) • 2)勧誘の「~ましょう」の場合、「うなずき」が共 起する。 • 3)よびかけの「すみません」の場合、「うなずき」 は共起しない。 33 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (14/21) 34 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (15/21) • 「トピックの切れ目」の場合、「うなずき」が共起しないのは 普通である。しかし、図書館の場合(例24)、1つの礼儀とし て「うなずき」というお辞儀を示すものと解釈されよう。 例24、図書館員:はい、どうぞ。 吉田さん:ちょっとうかがたいのですが。 図書館員:なんでしょう。(多言語L13) 35 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (16/21) • 「疑問文の応答」(5例):YNQの「~か」「~は?」、否定 疑問文の「~ませんか」のような先行文脈が取り上げられる。 いずれも「うなずき」が共起する。 例25、通行人:学園祭があるんですか。 野村君:はい。今月の18日からです。 通行人:どんな催し物があるんですか。(多言語L28) 36 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (17/21) • 「非疑問文の応答」 (27例):次のような先行文脈が取り上げ られる。「~て」「~てください」「お願します」「おねがい があるんですけど」「~てもらえますか」「すみません」「指 名」「平叙文」「電話のやりとり」である。 • また、「うなずき」と共起するのは、18例、「うなずき」と共 起しないのは、9例である。 37 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (18/21) • 1)依頼、要求の「~て」「~てください」「お願します」「 お願があるんです」「~てもらえますか」「~たいんですが」 の場合には、17例のうち、14例には「うなずき」が共起する。 その他の3例には、1つは電話のやりとり、もう2つは指示に従 い、機械を操作する用例である。 • 2)よびかけの「すみません」「指名」の場合、「うなずき」 が共起しないのは3例、共起するのは3例である。しかし、「 すみません」の場合、あまり「うなずき」と共起しないが、図 書館の場合、1つの礼儀として「うなずき」が共起しやすい。 38 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (19/21) • また、「指名」の場合、「うなずき」と共起しやすい(例29)。が、 例30の場合、「レポート」に注視するので、「うなずき」は共起しな かった現象が見られる。 例29、田中先生:田村さん。 田村さん:はい。 田中先生:就職活動は進んでいますか。 田村さん:それがなかなあk思い通りにすすまなくて。(多言語L25) 例30、斎藤先生:では、この間のレポートを返却します。山田君。 山田君:はい。 斎藤先生:なかなかよく書けていると思いました。(多言語L18) 39 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (20/21) • 3)電話のやりとりの場合、対話の相手は目の前にいないので 、「うなずき」が共起しないのは普通である。 • 4)例32は注文の平叙文の用例であり、受け賜わるという意味 で、1つの礼儀として解釈してよかろう。 40 3、結果と考察 3.2.1「うなずき」 (21/21) 41 3、結果と考察 3.2.2「視線」 (1/13) 42 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (2/13) • あいづちの場合、視線を無特定(漠然とした)のと ころに向いて「はい」発話をする。 • 「トピックの切れ目」の場合、特定の相手(全員)に視線を向 いたり、話題で出ている事物(話題とかかわりのある)に視線 を向いたりして「はい」発話をする。 43 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (3/13) • 「疑問文の応答」の場合、例37は電話のやりとりの 例で、対話の相手は目の前にいないことで、無特定 (漠然とした)のところに視線を向いて「はい」発 話をする。それ以外、「疑問文の応答」は全部対話 の相手に視線を向いて「はい」発話をする。 例37、先生:はい、中村です。 ヴィエン:あっ、中村先生でいらっしゃいますか。 先生:はい。 ヴィエン:きょう、奨学金の推薦状をお願いしましたヴィエンですが(JPL4-3) 44 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (4/13) • 「非疑問文の応答」の場合、対話の相手は14例、無 特定は5例、話題事物は2例。 • 無特定の5例はどちらも電話のやりとりの場面である 例38、ヴィエン:----(略) では、あさってのお昼、12時にうかがいます。 先生:はい、じゃあ、待ってますよ。 ヴィエン:はい、よろしくお願いします。 先生:はい、失礼します。 ヴィエン:失礼いたします。(JPL4-3) 45 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (5/13) • (新注視点)話題事物(話題とかかわりのある)の2 例はどちらもノックの場合である。 例39、先生(女):次の方、どうぞ。お入り下さい。 受験生 先生(男):はい、どうぞ。 (JPL1-1) 46 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (6/13) 47 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (7/13) • あいづちの場合、視線を無特定(漠然とした)のところに向い て「はい」発話をする。例40は相手が説明している「合唱部」 の人々に視線を向いていることが観察される。 例40、さき:こっちが 剣道部で、下が柔道部。 ここが音楽室。音楽の授業をするところ。 エリン:はい。 さき:放課後は、ほとんど 合唱部が使ってるけどね。(エリンL2) 48 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (8/13) • 「トピックの切れ目」の場合、特定の相手(全員)に視線を 向いたり、話題で出ている事物に視線を向いたりして「は い」発話をする。 • 「疑問文の応答」 「非疑問文の応答」、全部対話の相手に 視線を向いて「はい」発話をする。 49 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (9/13) 50 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (10/13) • 「トピックの切れ目」の場合、特定の相手(全員) に視線を向いたり、話題で出ている事物に視線を向 いたりして「はい」発話をする。 • 「疑問文の応答」(5例)の場合、どれも対話の相手 に視線を向いて「はい」発話をする。 51 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (11/13) • 「非疑問文の応答」の場合、対話の相手は19例、無 特定は4例、話題事物は4例である。 • 無特定の4例はどちらも電話のやりとりの場面であ り、相手の発話に対する反応として「はい」が用い られる。 例48、田村さん:それから、ホテルのパンフレットを送ってほしいんですが。 田村さん:はい、住所は東京都府中市朝日町3の11の1です。 田村さん:はい、では、よろしくお願いします。(多言語L38) 52 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (12/13) • (新注視点)話題事物の場合、どれも話題にでてい る事物に視線を向いて「はい」発話をする。 例49職員:じゃあ、まず、このボタンをおしてください。 山田君:はい。 職員:次に、倍率を選んで。 山田君:はい。(多言語L21) 53 3、結果と考察 3.2.2「視線」」 (13/13) • 54 以上3つのeラーニング教材の「はい」発話と「視線」との関係を踏まえると、 次のよう傾向がうかがえる。 4、おわりに(1/9) • eラーニング教材により、より適切な日本語コミュニ ケーション能力の習得に十分な非言語行動を提供す ることは可能であるという前提のもと、 • 3つのeラーニング教材における「はい」発話を中心 としてその取扱いや非言語行動とのかかわりを考察 し、eラーニング教材による非言語行動提示の有用性 をえることができた。 55 4、おわりに(2/9) • 以上、考察してきた結果、次のようなことが明確になる。 1)「はい」発話: 「JPL」(14.9%)>「多言語」(8.4%)>「エリン」(7.1%)。 2)「はい」発話: 一語のみで一文が形成される例が少なくない。 「エリン」(67.9)>「多言語」(34.3%)>「JPL」(29.4%)。 56 4、おわりに(3/9) • • • • 3)「はい」発話の機能 「応答」:最も多く81例(89.2%)、 「トピックの切れ目」:10例、 「あいづち」:僅か2例。 • あいづちは、コミュニケーションを円滑にするために重要な役 割を果たしているという点から、「あいづち」機能ももっと積 極的に教材に取り入れるべきであろう 57 4、おわりに(4/9) 4)「はい」発話の「うなずき」の有無はその先行文脈の構造が 大きく関わっているように思われる。 「うなずき」と共起しやすい構文: 疑問文(~ですか、~は?、~でしょうか、~ませんか等)、 同意要求(~ね、~よね、~だっけ等)、 勧誘文(~ましょう、~う等)、 依頼・要求(~てください、~て、お願します、~てもらえま すか、~たいんです等)である。 あまり共起しない 「あいづち」、「トピックの切れ目」(教師の教室用語、物渡 し等)、よびかけ、電話のやりとり、ノックである。 58 4、おわりに(5/9) • 5)「はい」発話の「視線」の方向は、先行文脈とのかかわりは さほどないように見える。一方、注視点と深いかかわりがある と認められる。また、視線の方向により、「はい」発話者の注 視点はどこに置かれているかがよみとれよう。 • • • • • 59 「視線の方向」: ①対話の相手(全員)、 ②話題にでている(話題とかかわる)事物、 ③無特定(漠然とした)のところの3種類である。 最も多いのは、対話の相手(全員)に視線を向いて「はい」発 話をする用例である。 4、おわりに(6/9) 60 4、おわりに(7/9) • JFL学習者: • 日本語体系(語彙や文法)を習得しているが、どういう時に、 どう発話をするのかなどの言語行動やどんな非言語行動を適切 に使うかなどを理解し、使用するかなどのことは容易ではない • 画像(動画)を提示することにより、非言語情報(身振り、頭 の動きなど)をテキスト(言語情報)と同時に利用することが でき、会話の状況、話者の特徴、周囲の雰囲気などを自然に習 得することが可能になると思われる。 61 4、おわりに(8/9) • eラーニング教材はいつでもどこでも学習可能という ユビキタス的長所をもっているが、学習者が適切に 利用しないと、その利点をいかすことはできない。 • 日本語教師には、第二言語習得研究からの知見をも とに、eラーニング教材活用の有効な指導法を考案す ることは今後の課題になろう。 62 4、おわりに」 (9/9) • 「視線」と「うなずき」を中心としてみてきたが、コミュニケ ーションを行う際に、言葉でうまく表現できない情報について 、手振りや表情などを補完的に用いて表現し、最終的に目標に たどり着くことも観察される。 • 日本語教育においては、このような非言語行動に関する研究が まだ十分ではないように思われ、今後さらに検討をすすめてい く必要があろう。 63 参考文献 • 鮎澤孝子(1988)「「話しことば」の特徴―聴解指導のために」『日本語教育』第64号、1-12 • • • 池田伸子(2003)『CALL導入と開発と実践―日本語教育でのコンピュータの活用―』くろしお 石井恵理子(1997)「教室談話の複数の文脈」『日本語学』第16巻第3号、明治書院、22-28 石田敏子(1966)「日本語教育における語学ラボラトリーの使用法に関する考察―国際基督教大学日本語科における使用報告」 『日本語教育』9号、日本語教育学会、24-46 大浜るい子(2004)「日本語の自然会話における真偽疑問文と応答詞「はい」の関係について」『日本語教育』第123号、37-45 奥津敬一郎(1989)「応答詞「はい」と「いいえ」の機能」『日本語学』第8号、明治書院、4-14 川田拓也(2008)「ポスター会話におけるフィラーと視線の同期について」『京都大学言語学研究』27、151-168。 北尾謙治(1992)「CAIの英語教材の選択と作成」枝澤康代、北尾謙治、佐伯林規江、吉田晴世、石原堅司、三根浩、山内信幸 、吉田信介『はじめてのCAI―よりよい英語教育を求めてー』山口書店、115-136 北川千里(1977)「「はい」と「ええ」」『日本語教育』第33号、65-72 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