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H21年度 徳島県高等学校教育研究会外国語学会統一研究大会 全体会資料
高等学校学習指導要領の改訂について
(外国語科概略)
徳島県立総合教育センター 学校経営支援課 高等学校教育課程班
指導主事 美馬 持仁
学習指導要領の改訂の理念
生涯学習の見地に立った学力観
◎学校教育法30条第2項
「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識
及び技能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決
するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力をは
ぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を
用いなければならない。」
◎中央審議会答申(H20 1.17)
「変化が激しく、新しい未知の課題に試行錯誤しながらも対応
することが求められる複雑で難しい時代を担う子供たちにとっ
て、将来の職業や生活を見通して、社会において自立的に生
きるために必要とされる力が『生きる力』であるということであ
る。これからの学校は、進学や就職について子供たちの希望
を成就させるだけではその責任を果たしたことにはならない。」
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改善の基本方針(1)
○ 外国語科については、その課題を踏まえ、「聞くこと」や「読むこと」
を通じて得た知識等について、自らの体験や考えなどと結び付けな
がら活用し、「話すこと」や「書くこと」を通じて発信することが可能と
なるよう、中学校・高等学校を通じて、4技能を総合的に育成する
指導を充実するよう改善を図る。
→ (小)中高における英語科の目標の連携
○ 指導に用いられる教材の題材や内容については、外国語学習に
対する関心や意欲を高め、外国語で発信しうる内容の充実を図る
等の観点を踏まえ、4技能を総合的に育成するための活動に資す
るものとなるよう改善を図る。
→ コミュニケーション能力育成の観点から教科書等を改善,
英語の授業は英語で行うことを基本とする
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改善の基本方針(2)
○ 「聞くこと」、「話すこと」、「読むこと」及び「書くこと」の
4技能の総合的な指導を通して、これらの4技能を統
合的に活用できるコミュニケーション能力を育成する
とともに、その基礎となる文法をコミュニケーションを
支えるものとしてとらえ、文法指導を言語活動と一体
的に行うよう改善を図る。また、コミュニケーションを
内容的に充実したものとすることができるよう、指導
すべき語数を充実する。
→ 文法指導を言語活動と一体的に行うよう改善
を図る。また,中高で学習する語数を増やす。
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改善の基本方針(3)
○ 高等学校においては、中学校における学習の基礎の上
に、聞いたことや読んだことを踏まえた上で、コミュニケー
ションの中で自らの考えなどについて内容的にまとまりの
ある発信ができるようにすることを目指し、「聞くこと」や
「読むこと」と、「話すこと」や「書くこと」とを結び付け、四つ
の領域の言語活動の統合を図る。
→ 「コミュニケーション英語」を核とした科目編成
○ 高等学校において、中学校における学習が十分でない
生徒に対応するため、身近な場面や題材に関する内容を
扱い、中学校で学習した事柄の定着を図り、高等学校に
おける学習に円滑に移行させるために必要な改善を図る。
→ 中高の丁寧な接続,「コミュ二ケーション英語基礎」の導入 5
外国語科の目標の改訂
現行学習指導要領
外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積
極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図
り,情報や相手の意向などを理解したり自分の考えなど
を表現したりする実践的コミュニケーション能力を養う。
新学習指導要領
外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積
極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図
り,情報や考えなどを的確に理解したり適切に伝えたりす
るコミュニケーション能力を養う。
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目標の解説(1)
「外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め」
この部分は,「目指すもの」であって,「測るもの」で
はない。


「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育
成を図り」
知識としての文法や和訳テクニックをlectureするの
ではなく,out-put活動やinteraction活動等を通して
「英語を使おうとする生徒」を育成する。
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目標の解説(2)

「的確に理解する」
「より正確に」という意味ではない。「話者の真意
を読み取る」ことであり,文字通りではなく,言葉の
裏や言葉のあやを見抜くこと。
(例)Do you have a pencil? と聞かれて,Yes, I
do. と答えるのでは,相手の真意を理解し、適切
に応対しているとは言えない。
Here you are. と言って相手に鉛筆を差し出す
ことができて,初めてコミュニケーションといえる。 8
目標の解説(3)

「適切に伝える」
状況や相手によって異なる伝え方をすること
である。即ち,聞き手を意識して,使用語彙や
話し方,スピードを変えることができることを意
味する。(現行の学習指導要領では「伝える」
の部分が「表現する」となっていたが,「表現す
る」では相手が不在である。)
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各教科等の主な内容の改善(高等学校)
【外国語】
○ 科目構成:科目構成を変更し,4技能の統合的かつ総合的な育成を図るコミュニ
ケーション科目「コミュニケーション英語基礎」,「コミュニケーション英語Ⅰ~Ⅲ」 ,
論理的に表現する能力の向上を図る表現科目「英語表現Ⅰ~Ⅱ」 ,会話する能力
の向上を図る「英語会話」 に再編
○ 必履修科目:現行の選択必履修から「コミュニケーション英語Ⅰ」の共通必履修に
変更
○ その他の主な改善事項
・ 指導する語数を充実。コミュニケーション英語Ⅰ,Ⅱ及びⅢを履修する場合におい
ては,高等学校で1,800語,中高で3,000語を指導 (現行,英語Ⅰ,英語Ⅱ及
びリーディングを履修した場合,高校で1,300語,中高で2,200語)
・ 生徒が英語に触れる機会を充実するとともに,授業を実際のコミュニケーションの
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場面とするため,授業は英語で行うことを基本とすることを明記
科目構成について(1)

科目構成を変更し,4技能の統合的かつ総合的な育成を図るコミュ
ニケーション科目「コミュニケーション英語基礎」,「コミュニケーション
英語Ⅰ~Ⅲ」 ,論理的に表現する能力の向上を図る表現科目「英語
表現Ⅰ~Ⅱ」 ,会話する能力の向上を図る「英語会話」 に再編
「コミュニケーション英語基礎」(積極的に設置することが望ましい)
中学校で学習した「英語」の定着を図ることで,必履修科目である
「コミュニケーション英語Ⅰ」への円滑な接続を図るために設定された
科目。生涯学習の見地に立って,全ての子供に基礎・基本を定着さ
せることをねらいとしている。英語科のみに作られている基礎科目。
高校サイドから見た一方的な「基礎」を教えるのではなく、あくまで
も中学校の学習指導要領に則った内容や方法からのアプローチ。
(意欲の動機付けと丁寧な指導が必要。)
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科目構成について(2)

「コミュニケーション英語Ⅰ~Ⅲ」
「コミュニケーション英語Ⅰ」の目標は,次の二つの要素から成り立っ
ている。
① 英語を通じて,積極的にコミュニケーションを図ろうとする
態度を育成すること。
② 英語を通じて,情報や考えなどを的確に理解したり適切に
伝えたりする基礎的な能力を養うこと。
基本的に「英語Ⅰ,英語Ⅱ」とほぼ同じ。3年間継続となる。
4技能の統合的な活動を軸に,4技能においてバランスの取れた
コミュニケーション能力を育成する科目。「コミュ二ケーション英語Ⅰ」
は必履修科目。
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科目構成について(3)

「英語表現Ⅰ,Ⅱ」
(「英語表現Ⅰ」の目標):「 英語を通じて,積極的にコミュニ
ケーションを図ろうとする態度を育成するとともに,事実や意見な
どを多様な観点から考察し,論理の展開や表現の方法を工夫し
ながら伝える能力を養う。」
この科目の評価は、「書くこと」と「話すこと」だけについて行う。
「読む」「聞く」は活動の前提としてあるが、評価はしない。ただ、
活動やその評価に関して、「何のために読むか/聞くのか」を分
からせてから読ませたり聞かせたりする必要がある。
なお,今回の改訂で「読むこと」に特化した科目が無いのは,
「読むこと」はすべての活動に当然組み込まれるべきで,コミュニ
ケーション能力の育成において「読む」だけの活動は不自然であ
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ると考えたから。
語数の充実について
「コミュニケーション英語Ⅰ,Ⅱ及びⅢを履修する場合においては,
高等学校で1,800語,中高で3,000語を指導する」(現行,英語Ⅰ,
英語Ⅱ及びリーディングを履修した場合,高校で1,300語,中高で
2,200語)
増加する理由:


生徒の負担に配慮した上で,コミュニケーションに必要な語彙数,と
いう考えから語数を設定した。
今回の中高あわせて3000語という語彙数は、昭和52年の学習指
導要領と同じ語数。また,中国と同じ語数。
(韓国は2800語~3000語)
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文法指導について
文法問題を解くための文法,文構造を理解するためだけの文法
ではダメ。コミュニケーション(4技能,特にspeaking, writing)の場
面において,生徒が英語を使うために必要な文法を教える。すなわ
ち,文法は体系的に教授するものではなく,使いながら「気づき」に
よって体得するものである。
(例)仮定法
If you were president like Obana, what would you do?
--- Well... I'd help the poor.
というやりとりを教師が生徒に聞かせると,明らかに実際にはあり
得ない「仮定」の話だとわかる。生徒は教師のまねをして答えること
により,仮定法の構文を「気づき」によって体得していく。
このように,教師の英語をまねさせて使わせ,英語の表現に触
れ,使っている内に自分なりの法則を見つけさせる。その後で整理
として簡単に説明してやると,「目から鱗が落ちる」ように心に残る。
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
文法指導の例

文法の活用目的を明確にして指導する。
(例)「コミュ二ケーション英語」では,文法は「読むこと」「聞くこ
と」の目的に限定。
「英語表現」では,「書くこと」「話すこと」が目的。
「コミュ英」では,チャンク形成,文構造の理解にとどめ,「英表」
では,英語を使わせながら,気づきと修正,補足説明によって
fluency → accuracy へと段階的に指導。
文法項目別に「教授する」のではなく,「コミュ英」ではテキスト
ベースで,「英表」ではテーマベースで指導する。この際,指導
方法と同時に,指導内容の綿密な計画(シラバス)が必要である。
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「授業は英語で行うことを基本とする」ために・・・
▼教師の言い分: 「授業方法になれていない」「そん
な授業を受けていない」
→ H21~H24の間に慣れていこう!(移行期間) 特に、
teacher talkにおいて、次の項目で生徒の反応を探って
おくこと。 ①語彙 ②スピード ③絵などの必要性
(生徒が、何をわかって何をわからないかを知る)
▼英語で授業をするのが目的ではない。それによって授業
が生徒の言語活動中心型に変わることが大切。
▼熱意を持って,指導力向上のために,学習者としての後
ろ姿をみせることが大切。
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「授業は英語で行うことを基本とする」ために・・・
▼授業のパターン例:
①Open your text book. ② Repeat after me,
concerning the linking of sound.
③ Read and summarize for understanding.
④Task activities for communication
⑤ Consolidation
同じ指導を繰り返し行い、生徒の反応を見る。
▼準備:
①ほめ言葉を幾種類も用意しておくこと。
②指示をする英語の練習。
③言い換え(paraphrase)の練習。 ④叱り方の練習。18
「授業は英語で行うことを基本とする」ために・・・
▼文法指導について: 教科書の文法はとってつけた
もの(これがないと売れないから)。必要な文法は教
師が決める。(綿密な計画を)
handoutをうまく活用せよ。(説明よりも例を多く提示
することによって発見させる)
▼各lessonの資料を素材として、ここではscanningを
ここではこれを説明、ここではskimmingを、と英語科
でよく話し合って指導計画(シラバス)を作成すること。
→ 英語科の教員の一致団結が必要。
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「授業は英語で行うことを基本とする」ために・・・
▼「K大等の国公立大学個別試験対策に和訳の授業が必要」との意見に対して:
①grammar & translation方式は、昭和の時代のパラダイムであると認識せよ。
②生涯学習の一環としての英語という点では 「基礎的コミュニケーションスキル」の定着を図る
ことが目標。ただし,大学入試のためには「発展的知識」も必要。ただ,教室での指導におい
ては,前者は後者に優先する。その両方を指導する際には,別々の視点からの指導計画が
必要。
③センター試験は4000語を80分で読ませる高速処理能力を問うている。Grammar
& translationの授業では高得点は無理。
④K大はmeta-cognitiveな生徒を求めている。すなわち、日本語を解釈して別の言語
に変えたり、英語を解釈して別の言語に変えられる力を持つ生徒を募集している。
だから入試に意味はある。ただ、それはほんの一握りの大学。そのための対策をす
るなら、英語科の目標を達成させた上で、プラスアルファの指導をすべき。本末転倒
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はダメだし、英語学習上意味がない。
「授業は英語で行うことを基本とする」ために・・・
⑤output重視の授業でもK大を始め国公立大個別入試に対応できる。
⑥学習指導要領の改正が大学入試に反映するように大学側に働きかける予定。
⑦学習指導要領に書いてあるのだから,法的拘束力がある。
→ 「うちは英語で授業はしない」は、未履修と同じで、法令違反である。
▼全国でうまくいっている学校がある(調査研究)、すなわち、根拠があるから
学習指導要領に乗せた。
▼ヨーロッパや東南アジアでは、英語はESL(第2言語)であるが、日本では
EFL(外国語)である。すなわち、教室の中で英語を使う環境を作らなけれ
ば、絶対に使えるようにはならない。
→ 小学校外国語活動ではこの環境を作っている。いわんや高校でをや!
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新学習指導要領 実施スケジュール
平成20年度
幼稚園
告
示
平成21年度
平成22年度
周知・徹底
平成23年度
平成24年度
平成25年度
全面実施
総則等
小学校
告
示
中学校
告
示
周知・徹底
先行実施
総則等
周知・徹底
先行実施
告
示
周知・徹底
全面実施
数学、理科
先行実施
高等学校
全面実施
算数、理科
総則等
学年進行
で実施
数学、理科
先行実施(学年進行)
教科書の改善について
「教科書の充実に関する提言」(教育再生懇談会 第二次報告 平成20年12月)
○質・量の両面で教科書を格段に充実
(練習問題や文章量の充実、発展学習、補充学習に関する記述の充実、豊かな情操や道徳心の育成などに
資する題材の充実)
「教科書の改善について」(教科用図書検定調査審議会 報告 平成20年12月)
教科書改善の具体的方策
~教科書の質・量両面での充実と教科書検定手続きの透明化~
教育基本法で示す目標等を踏まえた教科書改善
○教科書が、教育基本法に示す教育の目標等を達成する
ための主たる教材であることを明記し、同法第2条(教育
の目標)を基準に掲載 等
知識・技能の習得、活用、探究に対応するための
教科書の質・量両面での格段の充実
○「発展的な学習内容」の量的な上限の見直しや、「補充的
な学習」「繰り返し学習」「他教科の関連する内容の学習」
を抑制する規定の見直しなどにより「厳選」から「記述に
充実」に向けた改善
等
多面的・多角的な考察に資する公正・中立でバラ
ンスのとれた教科書記述
○記述の選択・扱いの公正を求める規定について、教育基
本法の目標等を達成し、多面的な考察に資するよう、一面
的・断定的な記述などに適切に適用 等
○小学校→平成23年度使用(平成21年度検定)
○中学校→平成24年度使用(平成22年度検定)
○高等学校
(数学・理科) →平成24年度使用(平成22年度検定)
(数学・理科以外)→平成25年度使用(平成23年度検定)
より実施
要するに・・・
国は(文科省は)本気で
未曾有の英語教育改革に
乗り出している!
ということです!
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私たちが今後しなければならないこと
4年の間に新しい指導法を確立すること
視点①英語を使える環境づくり(英語使用の場面を増やす)
②文法の指導法の転換(指導内容の整理と指導計画)
③TranslationからInterpretationへ
④output活動中心の授業の創造
⑤教師自身の英語使用への自信と習慣化
⑥授業及び授業以外の学習(補習,家庭学習,塾等)の
目的の差別化,明確化
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覚悟を決める → みんなで考える → 実行する (Trial & Error) → 評価&切磋琢磨
ご
静
聴
あ
り
が
と
う
ご
ざ
い
ま
し
た
。
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