Venus Climate Orbiter 金星大気探査計画

2010年―――
地球の双子惑星の謎に挑む
文部科学省宇宙科学研究所
我々は地球の気象を完全に理解し
ているか?
• 2,3日先までの天気予報はまあまあ当たる
• しかし、複雑系である地球全体の大気大循環に
ついて、現在の姿でなければならない必然性や
長期的な変動はよくわからない
• そもそも地球の気象形態は、自転周期や太陽か
らの距離や大気組成などの惑星パラメータに
よって、どのように決定付けられているのか?
• 地球の理解のために、惑星の気象の多様性と必
然性を統一的に説明する「惑星気象学」が必要
惑星気象学の夢
1. 地球の気候の宇宙における位置付けを知りたい
2. あらゆる惑星・時代を自由に行き来したい
比較惑星学的アプ
ローチが有効
大気量、放射緩和時間、
太陽輻射
金星
火星
雲量、ダス
ト、地形
地球
自転周期、
赤道傾斜角、
重力加速度
連続写真
金星大気大循環の解明
• スーパーローテーション
のメカニズム
– 自転243日:大気の回転
4日
– 子午面循環の構造
– 水平擾乱の正体
スーパーローテーションの仮説(一例)
子午面循環(ハド
レー循環)
低緯度で角運動量を
上向き輸送、高緯度
で下向き輸送
大規模擾乱
角運動量を赤道向
きに輸送
惑星スケールの循環や波の作用によって、
自転のエネルギーが大気に運び上げられる?
何故、金星まで出かけるのか?
地上観測(国立天文台)
• 長所
波長高分解能
• 欠点
金星撮像画像(岡山)
0.1%NDフィルター+2.26micron狭帯域
空間分解能が高くない
明るい昼側の問題(夜
側へのコンタミ)
一観測日の観測時間に
制限(日没or日の出付
近の最大1時間)
解明の手法
• 金星大気の運動を周回軌道上から
精密に測定
• 全球にわたり立体的に大気運動を
可視化
• 風速、風向の測定から子午面循環、
水平擾乱の仕組み、大きさを導出
惑星気象をいかに可視化するか?
→ 雲・微量気体の連続撮像
GOES-10による地球の水蒸気画像(12時間間隔)
Synchronized orbit to the
atmospheric circulation
Spacecraft
20
motion 18
22
24
26
28
Superrotation
16
14
12
10
8
6
Orbital period = 30 hr
4
2
0 hours
12° FOV
Viewed from north the pole
濃淡パターン追跡による風速場導出
相関解析の手法(統数研)
~500 km
東西風
次の画像では
模様が移動
近紫外
近赤外
南北風
近紫外
近赤外
Galileoによる雲移動風(平均値)
地球での雲トレース(手作業による)
高さ方向にも分解
東西風分布
)
SO 2
雲層
下
777nm
層
大 電
分 雲
波
気
布 ( 290nm
光 オ
近
(
カ
近 赤
ル
雲
赤 外
テ 雷
頂
外
ー 発
分 温
シ 光
度
布
1-2.4mm
ョ
(
(
ン
紫 中
2.3,2.4mm 外 間
) 赤
外
)
高度 (km)
80
551,558nm
CO
粘性 未知の
機構
100
60
観測高度領域
角運動量輸送
40
20
)
7-11mm
0 0
50
100
風速 (m s-1)
異なる波長で異なる高度の現象が見える
近赤外
紫外
中間赤外
上部対流圏
下部成層圏
雲頂
軌道周期30時間
1~2時間ごとに撮影
(→動画として眺めよ
う!)
金星気象ミッションが今まで行
われなかった理由は
惑星全体を覆う厚い雲と
大気が大気深部のグロー
バルな気象観測を阻止
ブレークスルー
1990年前後に近赤外の波長域
で下層大気や地表面まで大気
圏外から透視できることが発見
される
新たな観測の可能性
灼熱の下層大気から漏れ出る光
近赤外ウィンドウ
輝
度
波長
(mm)
金星夜側の放射スペクトル
多波長撮像による立体的観測
紫外
中間赤外
近赤外ウィンドウ
下層~中層大気の複数高度面の運動を可視化
日本の金星ミッションによって
得られるもの
金星気象の理解 →
惑星と地球の比較による
気象学の再構築 →
地球気象のさらに深い理解
惑星気象学分野以外で得られる
成果
気象学以外で期待される多くの成果
活火山の探索
雷は存在
するか?
大気ー地殻化学相互作用
太陽電池パドル
探査機
中利得アンテナ
+Y
軌道制御用
500N
エンジン
+Z
-X
観測装置
(赤外カメラ他)
高利得アンテナ
打上げ(H-IIAによる)
金星到着
衛星姿勢
探査機総重量
観測機器重量
金星周回軌道
軌道傾斜角
軌道周期
2010年夏
2010年12月
3軸制御
530kg
30kg
近金点 300 km, 遠金点 13 Rv
172°
約30地球時間
カメラ (1)
近赤外カメラ1 (IR1)
雲および微量気体の可視化
l=1.0mm, FOV=12°, 1024x1024, SiCCD
PI: 岩上直幹 (東京大学)
Co-I: 坂野井、杉田、上野
近赤外カメラ2 (IR2)
雲および微量気体の可視化
l=1.7/2.3/2.4mm, FOV=12°, 1024x1024, PtSi
PI: 佐藤毅彦 (熊本大学)
Co-I: 中村、笠羽、矢野
遠赤外カメラ (LIR)
雲頂温度
l=10-12mm, FOV=12°, 240x360, Bolometer array
PI: 田口 真 (国立極地研究所)
Co-I: 今村
搭載機器の開発
全国の研究所(宇宙研、極地研)、大学等で進行中
近赤外カメラ
Filter wheel
熱試験モデル
Optics
Detector housing
Hood
Aperture
Stirling cooler
カメラ (2)
紫外イメージャ (UVI)
雲頂SO2 分布のイメージング
l=280/360nm, FOV=12°, 1024x1024, SiCCD
PI: 渡部重十 (北海道大学)
Co-I: 岡野
雷・大気光カメラ (LAC)
雷の高速度撮影
大気光イメージング
l=551/558/777nm, FOV=12°, 8x8, PMT
PI: 高橋幸弘 (東北大学)
Co-I: 堤
異なる波長で異なる高度のデータが
得られる
近赤外撮像
紫外撮像
上部対流圏
下部成層圏
中間赤外撮像
雲頂
日本のミッションと諸外国のミッションの関係
大気同位体比
大気組成
Vesper (NASA)
Ishtar (ESA)
Lavoisier
(ESA)
散逸イオン
Venus
Express
(ESA)
大気散逸
雲の動態
地表面組成
大気化学
Lavoisier
(ESA)
大気‐地殻物質交換
大気運動
本計画
気象力学
大気大循環
気候の変動・調節
気候の変遷・惑星の分化
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部