5月号 - こまえボランティア・センター

こまえボランティア情報第 252 号
平成 27 年5月1日発行(1)
第 252 号
5月号
2015
認
定
N
P
O
法
人
テーマ:りんご
画:虹のひかり
保育園卒園生
もくじ
E
S
A
ア
ジ
ア
教
育
支
援
の
会
・ 教育こそが子どもの未来への道
認定 NPO 法人 ESA アジア教育支援の会・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・02
・ ボランティア・センター/社会福祉協議会からお知らせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・05
・ ボランティア関連情報 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・07
・ 連載:志賀泉さんコラム 第 10 回「僕が民謡を歌った理由」
・
第11回 「音楽を届けに」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・08
【発行】
社会福祉法人狛江市社会福祉協議会
こまえボランティア・センター
〒201-0013 東京都狛江市元和泉 2-35-1 あいとぴあセンター内
開所時間:平日 8:30~19:15
TEL:03-3480-3615(直通)
ホームページ:http//vc.komae.org
メール:[email protected]
教
育
こ
そ
が
子
ど
も
の
未
来
へ
の
道
特
集
こまえボランティア情報第 252 号
教育こそが
子どもの未来への道
認定 NPO 法人 ESA アジア教育支援の会
Education Sponsorship in Asia
平成 27 年5月1日発行(2)
■ インドは、象さんみたい
「インドの今の時期、首都デリー(ニューデリー地
区)のあたりは、昼間は 45℃ありますが、寒暖差が
20℃位あり、夕方になるとグッと涼しくなります。内
陸だったり盆地だったり海岸沿いだったりと天候は
様々。言葉も、主な共通語はヒンズー語ですが、公用
語が 14 言語もあり、英語の方が通じる場合がありま
す。言葉も文字も民族も入り乱れている感じです。
そんなインドは『象さんみたいなもの』と言われて
います。足、鼻、耳、体、それぞれ見た場所によって、
見た人の印象が違うように、『これがインド!』と明
確に表現できないほど、人も文化も多様性に富んでい
ます。
」
狛江市の保育園で、アジアの子どもたちの生活につ
いて「お話し会」などをされている ESA さんにおじ
ゃまし、理事長の淺田さんと理事の内田さんに、活動
の様子などをうかがってきました。
■ ESA の活動は、「こどもの未来への道」を支援
35 年間の一貫した活動の理念について、
「教育こそ
が子どもの未来への道」であると静かに語ってくださ
■
ESA の始まりは、35 年前の衝撃から
いました。
「今から 35 年ほど前、アジアを訪れた創設者が貧困
「貧困で苦しんでいる地域の子どもたちの支援にお
にあえぎながらも、きらきら輝く瞳を持つ子ども達の
いて、貧困を乗り越えるためには物資の給付も必要で
姿に大きな衝撃を受けました。様々なつながりや偶然
すが、彼らが将来的に自立していくため・自分の力で
の出会いから、1979 年、ESA の前身となる団体を立
歩くためには、教育を支援することが大事であると思
ち上げ、インド・バングラデシュ・ネパールの 3 カ国
っています。誰にも盗まれることのない知識と言う財
の子どもたちの教育支援を開始しました。
」
産を得られなければ、子どもたちは人間としての権利
「今でこそインドは、BRICsと呼ばれる新興国にな
を知ることも守ることもできません。」とおっしゃっ
っていますが、当時は、バングラデシュ・ネパール・
ていました。
インドは、世界の中の最貧国でした。現在のインドは、
貧富の差が更に大きくなっています。
」
2か国6地域で支援をしています。
こまえボランティア情報第 252 号
■ ニーズ(必要性)は、現地の地域ごとに異なる
平成 27 年5月1日発行(3)
■ 現地の支援は、現地のスタッフで
「ダッカとトリッチーでは、貧困で親が育てられな
「現地に日本人を駐在させて、その日本人からプロ
くなったり、病気により親が亡くなってしまったりと
ジェクト(課題)を吸い上げるのではなく、現地の信
身寄りのない子どもたちのための子どもの家(児童養
頼できるスタッフに活動自体を任せています。何故な
護施設)の支援をしています。ダッカでは国から寮費
ら教育制度は国によって異なり、私達にはわからない
や食事代は出ており、学校にも通学できるようにはな
部分も多いからです。現地の事情に根差した支援にす
っているのですが、地方から入寮した子どもたちは、
るために、各地域に献身的に尽くしてくださるカウン
言葉も上手くしゃべることができなかったり、習得能
ターパート(現地協力団体)が ESA の活動を支えて
力が極めて劣っていたりするので、学校の勉強につい
おり、彼らは無償で活動をしてくださっています。
」
ていかせるためには、補習授業でフォローしてあげね
現地のスタッフが、地域によって必要なことを見定
ばいけません。この指導者に支払う費用を ESA が負
めて支援していることが分かりました。
担しています。このような支援によって 100%進級さ
■ 日本での活動のメインは、国際理解教育
せてあげることができるのですが、支援が無ければ、
寮に入れても学校に行けても、多分、こうした子ども
たちは進級できずに途中で落第してしまうことにな
るのです。
」
「インドでは、小学校に(入学できれば)誰もが無
「日本では、現地の支援を支える活動をしていま
す。寄付を集めたり、バザーをしたりして資金を集め
る活動もありますが、海外の支援をしている団体の存
在意義として、国際理解教育に力を注いでいます。
」
償で通うことができますが、入学する際、ある程度ア
Q 国際理解教育って?
ルファベットを読むことができないと、また生活習慣
A
①世界の現状を「知る」
が身についていないと小学校の入学許可が下りませ
②課題に気づき「考える」
ん。つまり、就学前の教育(幼稚園教育)が必要なの
③自分にできることを「実行する」
です。しかし、チェンナイのスラム街の子どもたちは、
有料の幼稚園に行くことができません。そこで ESA
はチェンナイで幼稚園教育の支援をしています。子ど
もにはお弁当の食べ方、母親にはお弁当の作り方、衛
生面など 2 年間の教育をすることで、公立の小学校に
入学できます。
」
「チッタゴンとシレットでは、学校を作り、教師を
雇い、教師の給料や子どもたちの文房具や制服、給食
も ESA が支援しています。ここには村の子どもたち
が通える学校がありませんでした。子どもたちが安心
して、自分たちの文化や習慣を大切にしながら通える
学校を作りました。
このように、教育支援といっても支援地域によって
必要とされる支援はそれぞれ異なっており、ESA はそ
のニーズに的確に対応するよう心がけています。
」
「私たちは、保育園の年長組さんを対象に、実際に
見たり聞いたり感じたりしたインドやバングラデシ
ュの生活について伝える『お話会』を実施しています。
貧しさを強調するのではなく、写真を見せながら、
『こ
の写真、どう思う?』と自分の身になって考えてもら
ったりしています。自分たちとの生活の違いや貧しさ
について何か感じ取ってもらえればいいと思いなが
らしています。」と淺田さんの国際理解教育への思い
を語ってくださいました。
こまえボランティア・センターでも、ESA のお話会の
後、給食を残さずに食べるようになったり、水の出し
っぱなしを注意するようになったという子どもたちの
エピソードを家庭や保育園から聞くことがあります。
「他にも、ESA のボランティア活動に参加しても
らうことで、一緒にインドやバングラデシュのことを
考えたり、視野を広げてもらいたいです。
」とおっし
ゃっていました。
こまえボランティア情報第 252 号
■ ボランティアさん大募集!
ボランティアは、基本的には登録制をとっており、
ESA 事務局からボランティア情報をお知らせし、で
きる方に手を挙げていただいています。交通費は支
給されます。募集中のボランティアは、次の 2 種類。
①スパイス製造ボランティア(現在 20 名程登録)
週に1回(月・水・金のみ)
、ESA にてスパイスの
製作に関わっていただきます。
平成 27 年5月1日発行(4)
■ 学生さんのボランティア ESA ユースチーム
ボランティアセンターの夏ボラ ESA に参加した
10 名程の高校生から友達の輪が広がり、中学生から
大学生まで 25 名程に膨らでいるという嬉しいお話
がありました。学校も学年もバラバラな学生たちが
継続してボランティア活動をしてくださっているそ
うです。内田さんは、
「ESA を介して、学校や学年を
超えた良い出会いが生まれています。若い力が、ESA
の活動を支えてくれています。」とおっしゃっていま
した。
■ ESA の活動に参加しようと思っている方に一言
内田さんからのメッセージです。
「ある方に、『ESA はお母さんの会だ』と言われ
ました。役員やボランティアには男性もいますが・・。
支援地の子どもたちへの思いは、自分の子どもに対
する思いと同じです。国際理解教育は、自分の子ど
②いろいろボランティア(現在 6 名程登録)
もに伝えるように、日本のいろんな子たちに世界の
会報誌の発送、事務、販売、イベントやバザーのお
様々な様子を伝えたいと思ってやっています。お母
手伝いなどいろいろしていただきます。現在、狛江市
さんのような細やかな愛情を持って、この会は運営
在住のボランティアさんが不足しているため、
されています。これは、今迄 ESA に関わってきた人
狛江市在住の方大募集!
たちの精神であり、ESA の歴史を作ってきたのだと
思います。ESA に来るとまたボランティアに来たく
■ ボランティア以外に参加できる支援
なると言われます。いつでもウェルカムな会ですの
①書き損じはがきや未使用切手の寄付
で、一度、事務所に来て活動に参加していただけた
②スパイスの購入
らと思います。
」
ホームページから購入することができます。
▷TAMAGAWA GREEN MARKET に出店!
日程:5/9(土)、5/10(日)、6/13(土)、6/14(日)、
7/11(土)、7/12(日)、8/22(土)、8/23(日)
場所:玉川高島屋 S.C.西館アレーナホール
③イベントへの参加
▷体験ボランティア
日程:5/16(土)
場所:ESA 事務所
▷夏休み絵本作りイベント
「世界に届け!僕らの絵本」
日程:7/31(金) 午後 2 時~4 時
場所:エコルマホール
認定 NPO 法人
ESA
アジア教育支援の会
〒201-0014
東京都狛江市東和泉 1-23-3-101
TEL
03-5497-2261
FAX
03-5497-2262
E-mail [email protected]
URL
こまえボランティア情報第 252 号
平成 27 年5月1日発行(5)
information
ボランティア・センターからお知らせ
■講座「視覚障がい者を知ろう」を実施します
視覚障がい者の日常生活について理解を深め、
場所:あいとぴあセンター4階講座室
体験を通して支援の仕方について学ぶ、全2回の
内容:ガイド体験、狛江市のガイドヘルプサービス事情
連続講座を実施します。
■定員
白い杖を持った人を見かけたら、どうすればい
20 名(全 2 回参加できる方)
いのでしょう?まちですれ違ったことがあるとい
■参加費
う人も多いのではないでしょうか。そんなとき、
100 円
ひと声かける第一歩になるかもしれません。
■主催
こまえボランティア・センター
■日時・場所・内容
(狛江市社会福祉協議会)
<第1回>
■共催
日時:6 月 6 日(土)午後 2 時~4 時
場所:あいとぴあセンター3階ボランティア室
内容:視力障がいとは、視覚障がい者の日常生活
の様子と工夫、視覚障がい者との交流
狛江視覚障害者の会
■お申込み・お問合せ
こまえボランティア・センター
TEL 03- 3480-3615
<第2回>
日時:6 月 13 日(土)午後 2 時~4 時
■連載終了のお知らせ
ボランティア情報 240 号から連載をスタート
しました、
「障がい者と楽しむスポーツ」と「ふ
くしえほん『あいとぴあ』
」は 249 号をもちまし
て、連載を終了させていただくことになりまし
た。読んで下さった読者のみなさま、ありがとう
ございました。
来月からは、不定期にはなりますが、バラエテ
ィに富んだ記事や情報をお届けしたいと思いま
すので、お楽しみに。
今後とも、こまえボランティア情報をお手に
取ってくだされば幸いです。
■ボランティア・センター 職員あいさつ
はじめまして。
4 月からボランティア・センターの
担当になりました白石珠美(しろい
したまみ)です。
今までは、高齢者・障がい者の個別
支援をしてきました。ボランティア・セ
ンターの仕事は、新鮮で刺激的なの
で、ドキドキ・ワクワクの毎日です。
皆さんに助けていただきながら、
早く一人前になれるように頑張りた
いと思います。どうぞ、よろしくお願
いいたします。
白石 珠美
こまえボランティア情報第 252 号
平成 27 年5月1日発行(6)
Volunteer information
ボランティア関連情報
東京多摩いのちの電話
電話相談員ボランティア募集
情報誌配達ボランティア募集
こまえボランティア・センターが年に 10 回発行
電話相談員を志す方は、2015 年 9 月 1 日現在
している「こまえボランティア情報」は、取材や印
23 歳以上 65 歳以下で、前期・後期の研修を経て
刷、製本発送作業および市内の配達はボランティ
認定を受けることが必要です。
アの方々にご協力いただきながら行っています。
今回は、配達ボランティアを募集します。移動す
■研修期間
前期 2015 年 9 月~2016 年 7 月
後期 2016 年 9 月~2017 年 3 月
■研修場所
多摩地区の公民館・市民会館等
■受講料
前期 40,000 円、後期 30,000 円
●募集要項希望者は、92 円切手を貼り、住所・氏
名を明記した返信用封筒を、下記あてに送付して
ください。(募集要項はホームページでもダウン
ロードできます。
〒185-0012
国分寺本町郵便局留
「NPO 法人東京多摩いのちの電話」
事務局 募集要項係
■公開講座
相談員募集に先だち、5 月 23 日、6 月 27 日、7
月 11 日に公開講座「人とこころを学ぶ 3 日間」
を開催します。公開講座はどなたでもお申込み
いただけます。公開講座終了後、相談員募集につ
いての説明会があります。
■お問合せ先
東京多摩のちの電話事務局
TEL 042-328-4441
FAX 042-328-4440
メール [email protected]
る活動なので、歩くことでちょっとした運動にも
なり、運動不足の解消につながります。
■活動内容
月 1 回程度で、月初めの活動になります。月初
めに発行する情報誌をあいとぴあセンターまで取
りに来ていただき、発行日からおよそ一週間以内
を目安に、都合のよい時間に配達して下さい。
■配達地区
慈恵医大(医学科・看護学科・看護専門学校の3
か所)
、いち絵(慈恵大向い)
■お申込・お問合せ
こまえボランティア・センター
TEL 03-3480-3615
メール [email protected]
イラスト:足利孝宏さん(こまえ工房 もえぎ)
テーマ:お花見
こまえボランティア情報第 252 号
国立成育医療研究センター
ボランティア募集
平成 27 年5月1日発行(7)
ボランティアのつどい参加団体募集
ボランティアのつどいは、ボランティア・市民
国立成育医療研究センターは主に小児が対象
活動を広く市民に知ってもらうために年1回開
の医療機関です。外来ガイド、休日診療、病棟、
催しているイベントで、今年で 35 年目になりま
シッティング、図書、ショップ、園芸などをして
す。昨年度は 39 の団体が参加し、およそ 800 名
います。募集説明会に参加ご希望の方は、電話ま
たは FAX でお申し込みください。
<募集説明会>
■日時
5 月 28 日(木)午後 1 時 30 分~4 時
■場所
国立成育医療研究センター
(世田谷区大蔵 2-10-1)
■お申し込み、お問合せ先
TEL 03-3416-0181(代)ボランティア事務局
FAX 03-3416-2222 ボランティア宛
※詳細は下記ホームページでもご覧になれます。
http://www.ncchd.go.jp/
平成 27 年度草の根育成助成
対象事業募集のお知らせ
■主募集期間
5 月 20 日(水)~6 月 19 日(金)(消印有効)
■対象事業
8 月 1 日から平成 28 年 3 月 31 日に東京都で行
われる医療・福祉分野、スポーツ分野の事業
■対象団体
東京都に拠点を有する非営利活動団体
(任意団体を含む)
■助成額
1事業当たり上限50万円補助率 30~80%以内
■申請方法
詳細は財団HPをご覧ください。
■問い合わせ
TEL 042-321-1132
メール [email protected]
公益財団法人 草の根事業育成財団
の市民に来場いただきました。
狛江市ボランティア連絡協議会とこまえボラ
ンティア・センターの共催で行うこのイベントで
は、各団体の協力のもと、7つのコーナーに分か
れて実施しています(体験コーナー、相談コーナ
ー、展示コーナー、あそびのコーナー、ステージ
コーナー、販売コーナー)
。
今年も、9月 27 日(日)に開催することが決
定しました。
イベントを一緒に盛り上げてくださる参加団
体を募集します。実行委員会の見学は大歓迎で
す。お気軽にご参加ください。
―第 35 回ボランティアのつどい実行委員会―
■日時
5月9日(土)午前 10 時~
■場所
あいとぴあセンター 3階 ボランティア室
(狛江市元和泉 2-35―1)
■お申込・お問合せ
ボランティアのつどい実行委員会
事務局:こまえボランティア・センター
TEL 03-3480-3615
こまえボランティア情報第 252 号
平成 27 年5月1日発行(8)
*お詫び*
4 月 1 日発行のこまえボランティア情報 251 号に掲載いたしました志賀泉さんコラムに
つきまして、3 月 1 日発行の 250 号と同様の内容を掲載する誤りがありました。
楽しみにされていた方もいらっしゃることと思います。謹んでお詫びいたしますととも
に、前号分、今号分あわせて下記のとおり掲載させていただきます。
連載:志賀泉さんコラム
第 10 回「僕が民謡を歌った理由」
しかし、いつ何時呼び出され「君、歌いなさい」
震災の年の六月、僕は福島県の避難所で、避難者
と命じられるかわからない。嘘を真実にすべく民
の皆さんを前に「新相馬節」を歌った。まったくの
謡のCDを探しだし、通勤電車で聴き、仕事中に
独習。人前で民謡を歌うのは初めて。これがのど自
口ずさみ、夜に風呂場で唸り女房に呆れられる修
慢なら五秒でカンと鐘が鳴る出来映えだった。
練を積み重ねた。しかし川崎市からは一向にお呼
もちろん、僕が民謡を歌うに至るまでにはそれな
びがかからず、日々の努力は水泡に帰すかと諦め
りの経緯がある。震災直後、僕の住む川崎市でもボ
ていた矢先、福島県の避難所でトークをする機会
ランティアを募集していると知り、担当課に電話を
を得て、ここぞとばかり披露したわけだ。結果は
かけたが、
「資格は?
前述した通り。それでも、被災者の皆さんは真剣
特技は?」と質問された。
しかし僕はこれといって取り柄のない人間で、ある
に聞いて下さった。
のは被災地出身という強みだけ。とっさに「民謡が
このことは地元新聞に取り上げられた。記事に
歌えます」と答えてしまったが、これは真っ赤な嘘
は僕の発言として「故郷の人々を見ていたら歌わ
で、地元だから民謡は自然と耳に入るが、実は鼻歌
ずにいられなかった」と書いてあった。言った覚
ですら歌ったことはなかった。
えはないのに。
第 11 回「音楽を届けに」
いた表情を次第にやわらげていくのを僕は見て
震災の年の五月から六月にかけて、新日本フィル
いた。
ハーモニー交響楽団のチェリストと組んで福島県
海辺にある精神病院で催した演奏会も忘れら
内の避難所や医療・福祉施設を回り、演奏会を開い
れない。一階は津波が押し寄せ滅茶苦茶に荒らさ
ていった。
れていた。ただし病室は二階にあったため入院患
震災で傷ついた心を癒すのに、チェロはおそらく
者は全員無事で、そのまま入院生活を続けてい
最良の楽器だろう。避難所になった体育館の一角で
た。しかし、ただでさえ心を病んでいる人が、停
演奏すると、チェロの響きがエンドピンから床に伝
電と断水と食糧不足が続く極限状態をどんなふ
わり、床板が共鳴板になって人々の身体に心地よい
うに耐えていたか、その精神世界は想像も出来な
震動をもたらすのだ。宮沢賢治の『セロ弾きのゴー
い。患者を支えていた医師の苦労も並大抵ではな
シュ』に、病気になった野ねずみの子をチェロの孔
かっただろう。
に入れて演奏し治してしまう話があったが、ちょう
『セロ弾きのゴーシュ』ではチェロの響きを「あ
どそんな具合だ。ダンボールの仕切りから出てきた
んま」とたとえていたが、演奏会は彼らの心を解
人々が、思い思いの姿勢で床にくつろぎ、強張って
きほぐすのに少しは役立てたのだろうか。
志賀泉さんプロフィール
自主製作映画『原発被災地になった故郷への旅 -福島県南相馬市-』で出演と監修を担当、各地で精力的
に上映会を開催し故郷を支援する。同映画は映文連アワード 2014 パーソナルコミュニケーション部門で優
秀賞を受賞。作家としての作品に「指の音楽」(2004 年太宰治賞受賞)、
「TSUNAMI」がある。生活介護事業
所「麦の穂」職員。
ブログ“しがしま21”http://profile.ameba.jp/sigahina/
facebook
登録してます
次号、第253号の発行は6月1日(月)です。