化石燃料の枯渇が及ぼす 経済的影響の一考察 南山大学 経済学部 太田代ゼミ 1.日本の現状分析 2.世界の現状分析 3.エネルギー価格とGDP 4.実証分析 5.結論 6.今後の展望 1.日本の現状分析 日本の輸入状況(2013年度) 2013年度輸入品内訳 食料品 その他 8% 12% 原料品 7% 輸送用機器 3% 鉱物性燃料の割合が 最も高い 電気機器 13% 一般機械 7% 鉱物性燃料 34% 原料別製品 化学製品 8% 8% 財務省貿易統計より作成 つまり… 化石燃料を、他国から 最も輸入している 燃料別電力依存度 2013年度 1973年度 (第1次石油危機時) 0.0% 1.0% 4.7% 再生可能エネルギー 2.6% 1.2% 2.2% 再生可能エネルギー 8.5% 石炭(ほぼ輸入炭の 石炭(国内炭のみ) 17.2% み) 石油・LPG 石油・LPG 1.8% 2.4% LNG 30.3% LNG 43.2% その他ガス 71.4% 原子力 海外からの化石燃料 に対する依存度 水力 76% その他ガス 13.7% 海外からの化石燃料 に対する依存度 原子力 水力 88% 経済産業省のHPを基に筆者作成 経済産業省のHPを基に筆者作成 • 日本は現在、電源に占める化石燃料の割合が88%である • この数値は、第1次石油危機の起きた1973年度の76%を上回っている • また、エネルギー自給率も第1次石油危機が起きた73年の9%を下回る6%であ る • 2012年度の自給率は、OECD加盟国の34カ国の中でルクセンブルクについで低 い 化石燃料輸入総額の推移 100万 60 20 x 100000000 18 50 16 14 40 12 30 10 8 20 6 4 10 2 0 0 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 石炭 天然ガス 石油 出所:UNCTAD Statisticsより作成 • 1990年から安定していた石油価格が、2004年頃から上昇し始め、2008年には急 上昇。主な理由として、中国に代表されるアジアを中心とした非OECD諸国(発 展途上国)の需要拡大にある • 2009年には、リーマンショックの影響により各要素の輸入額は揃って下落 • その後は回復基調を維持している 石油輸入相手国 オマーン, 2.2% 石炭輸入相手国 中国, 5.0% インドネシア, その他, 1.5% その他, 5.9% 3.2% 米国, 6.2% ロシア, 4.2% カナダ, 5.5% 中立地帯, 1.9% サウジアラビア, イラク, 2.8% クウェート ロシア, 6.5% 35.8% , 6.7% イラン, 8.8% カタール, インドネシア, オーストラリア, 20.2% 59.8% UAE, 23.2% 10.6% 天然ガス輸入相手国 赤道ギニア, 1.9% その他, 2.7% ナイジェリア, 2.5% オーストラリア, その他, 2.0% 9.9% オマーン, 4.9% ブルネイ, 8.1% LPガス輸入相手国 カタール, イラン, 5.4% 15.1% UAE, 7.0% カタール, 31.8% クウェート, ロシア, 9.1% マレーシア, 19.1% 12.0% サウジアラビ インドネシア, オーストラリア, 11.9% 17.8% ア, 15.3% UAE, 23.6% 出所:資源エネルギー庁 石油の用途 石炭の用途 3% 11% 20.6% 5% 38.3% 石油総消費量 2億3952万Kℓ 13.6% 43% 石炭総消費量 1億6914万トン 38% 11.9% 1.8% 9.3% 1.7% 0.8% 2.1% 自動車 航空機 運輸・船舶 農林・水産 都市ガス 電力 家庭・業務 化学用原料 鉄鋼業 電気業 鉄鋼 窯業土石 紙・バルブ その他 LPガスの用途 天然ガスの用途 0.2% 2.0% 11.9% 28% 8.2% 天然ガス総消費量 1055億㎥ 9.7% 72% 42.2% LPG総消費量 1539万トン 25.8% 家庭・業務用 都市ガス 電力他 工業用 都市ガス用 自動車用 化学原材料用 電力用 その他 出所:日本ガス教会、資源エネルギー庁 1人あたりのエネルギー消費量の推移 単位:トン/人(石油換算) 5 4.5 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 1971 1973 1980 1990 世界1人当たり 2000 日本人1人当たり 2005 2009 2010 出所:省エネルギーセンター • 日本人1人当たりのエネルギー消費量が1973年から80年にかけて下がった要 因として石油危機の影響があると考えられる • 同様に2005年から09年にかけて下がった要因としてリーマンショックの影響 があると考えられる • 世界1人当たりの数字はエネルギー消費量にあまり変化はないが、緩やかに 右上がりになっている もし、化石燃料が枯渇したら… 主要国の電源別発電電力量の構成比 イタリア イギリス 韓国 ブラジル フランス ドイツ カナダ インド ロシア 日本 中国 アメリカ 世界 0 10 20 30 40 石炭 石油 50 天然ガス 原子力 60 水力 70 その他 80 90 出所:BP統計2013 • 大半の国で石炭、石油、天然ガスといった化石燃料の割合が非常に高く、原 子力、水力、その他の項目だけで化石燃料の割合を超えているのは、ロシ ア、フランス、ブラジルのわずか3カ国だけである • 世界の統計データを見ると、化石燃料だけで約7割を占めており、もし化石 燃料が枯渇してしまった場合、代替エネルギーを設置するために莫大な金額 がかかる 100 原子力発電 メリット 安定して大量の電力を供給できる 発電量当たりの単価が安いので、経済性が高い 事故が起きなければ国の技術力の高さの証明になる 発電時に地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しない 酸性雨や光化学スモッグなどといった大気汚染の原因となる酸化物を排出し ない デメリット 放射線の厳しい管理が必要 毒性のある放射性廃棄物が発生する 事故が起きて周辺地域に多大な被害を与える恐れがある 事故が起きて放射線が外部に流出すると、人間が発電所に近づくのが難しく なるため、故障箇所の修復が困難となってしまう 水力発電 メリット 燃料が不要 環境汚染の心配がない 比較的安定している デメリット 今日の日本では大型施設の増設が難しい 建設に当たり山中の広大な範囲を水没させることになる。当然周囲の自然 環境は破壊される上、そこに人家や集落があれば住民の移住が必要である し、場合によっては現地の重要文化財の存続に関わる場合もある。 また河川に設置する流れ込み式の水力発電所も、国内の目ぼしいところは 一通り建設が終わっている状況であり、今から数を伸ばしていくのは難し いとされる。 再生可能エネルギー 1.風力 不安定、広い土地が必要、 発電量は全体の0.42% 2.太陽光 不安定、発電量は全体の0.05% 3.地熱発電 発電量は全体の0.2% 技術革新に期待 2.世界の現状分析 100万t 世界のエネルギー消費量の推移 (地域別、1次エネルギー) 14,000 80.0% 12,000 70.0% 60.0% 10,000 50.0% 8,000 40.0% 6,000 30.0% 4,000 38 億 t 125 億 t 20.0% 2,000 10.0% 0 0.0% 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 北米 中南米 欧州 ロシア その他旧ソ連邦諸国 中東 アフリカ アジア大洋州 OECDシェア(右軸) 2010 ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 世界全体のエネルギー消費量は1965年に38億tであったが2010年には125億t と3倍以上に増加した。要因としてはアジア大洋州の経済成長に伴うエネル ギー消費の増加が考えられる。 100万t 世界のエネルギー消費の推移 (エネルギー源別、1次エネルギー) 14,000 10% 1% 2% 5% 12,000 10,000 21% 8,000 6,000 32% 4,000 2,000 29% 0 1971 1975 石炭 1980 石油 ガス 1985 原子力 1990 1995 水力 新エネルギー 2000 2005 可燃性再生可能エネルギー他 2010 ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 石油が32%とエネルギー消費の最も大きなシェアを誇る。 しかし、近年石炭と天然ガスのシェアが増加傾向にある。 この背景には経済成長著しい中国等の石炭消費量の拡大、 天然ガスは先進国を中心に発電や都市ガス用の消費が増加 したことがある。 世界の石油埋蔵量 アジア太平洋 アフリカ 北米 2.5% 7.7% 13.6% 世界の石油埋蔵量 1兆6879億バレル 中東 47.9% 中南米 19.5% ヨーロッパ 0.8% ユーラシア 8.0% 中東のシェアが 約50%を占め ている ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 世界の石油生産動向 北米 中南米 欧州 ロシア その他旧ソ連邦諸国 中東 アフリカ アジア大洋州 (100万バレル/日) 90 依然とし て中東が 原油の生 産量トッ プ 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 世界全体の原油生産は石油消費の 増大とともに増加傾向にある 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 原油価格の推移 USドル/バレル 120 100 80 60 40 20 0 ※IMF HPより作成、価格はWTI原油のもの 原油価格の決定方法 産油国に複数の価格指標があり、アメリカのWTI価 格、イギリスのブレント価格、その2つに影響され て決まる中東のドバイ価格の3つが一般的に用いら れている。 そのなかでも、WTI価格は、取引量と市場参加者が 圧倒的に多いため、世界経済の動向を示す経済指標 の1つとなっている。 しかし、最近はブレント価格の存在感が高まってき ており、中東原油価格への影響度を増している。 世界の石炭埋蔵量 その他アジア太 平洋 その他アフリカ 4.3% (中東を含む) 3.7% アメリカ 26.6% その他ヨーロッパ 17.2% 世界の石炭埋蔵量 8915億トン ロシア 17.6% カナダ 中南米 0.7% 1.7% アメリカ(26.6%)及び ロシア(17.6%)、次い で中国(12.8%)に多く 埋蔵されている 中国 12.8% インド オーストラリア 6.8% 8.6% ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 石炭価格の推移 USドル/トン 160 140 120 100 80 60 40 20 0 ※IMF HPより作成、価格はオーストラリアのもの 世界の天然ガス埋蔵量 アフリカ 8% アジア大洋 州 9% 北米 中南米 6% 4% 世界の天然ガス 埋蔵量 208兆m3 欧州・ロシア・ その他旧ソ連 邦諸国 30% 埋蔵量の割合は中東が43%、 欧州・ロシアが30%と2地域が 圧倒的シェアを誇っている 中東 43% ※BP, Statistical Review of World Energy 2014より作成 天然ガス価格の推移 USドル/100万BTU 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0 ※IMF HPより作成、価格はアメリカのもの まとめ 1次エネルギーの消費量 ⇒全体的に増加している それに合わせ、エネルギー価格も 同じく増加傾向にあり、不安定に推移している エネルギー価格が物価に与える 影響 エネルギー価格(石油、天然ガス)の上昇 ↓ 運送費などコストを引き上げ ↓ 様々な分野に影響が及ぶ ↓ 物価上昇 40 20 1980 1981 1982 1983 1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 原油価格の推移 USドル/バレル 120 変動幅大 100 80 これからのエネルギー 価格は予測困難 60 今後 ・埋蔵量減少によって供給量が減少し、さらに価格上昇 ・新エネルギー登場によって需要量が減少し、価格下落 などが考えられる 0 IMF HPより作成 エネルギー価格とGDPについて PE C E E PE :エネルギー価格 C E :エネルギー輸入額 E :エネルギー輸入量 Y :実質GDP エネルギーのGDPに対する価格弾力性 エネルギー価格とGDPの変化の関係を表す Y Y log Y PE PE log PE 上式を変形し、数式を代入すると log Y PE E log PE Y 左辺の変化率は 左辺の対数の変 化率に等しいか ら 価格弾力性の式の変換 log Y log Y log E Y E E PE log PE log PE log E Y E E PE log A 1 A A だから log Y Y E log E E PE Y E log E E PE log PE PE Y E Y E PE ・・・① Q Y PE E YにPEE(輸入総額)を足したものをQ(産出量)とする これを変形し、Eで偏微分すると Y PE E E E E ②を①に代入 log Y PE E log PE Y ・・・② 弾力性が負の値なので エネルギー価格と GDPの間には 負の相関関係がある エネルギー価格の増加は GDPの減少をもたらす では、どのくらい低下するのか?? 国際エネルギー機関(IEA) による試算 エネルギー価格がGDPにもたらす影響 国際原油価格が40%上昇した場合・・・ (25 ドル/バレルから) アメリカ 0.3%の減少 日本 0.4%の減少 ユーロ圏 0.5%の減少 中国 0.5%の減少 ※ 内閣府経済社会総合研究所 GDP・物価の国際原油価格弾力性とその変遷 より PEの変化によるGDPの対前年変化額(日本) (兆円) (%) 30 50 25 40 20 30 15 20 10 10 5 0 0 -10 -5 -20 -10 -30 -15 -20 -25 エネルギー価格と GDPの間には 負の相関関係がある GDP変化額 -40 -50 エネルギー価格変化率 ※ IEA試算データ 内閣府国民経済計算 財務省貿易統計 資源エネルギー庁 平成24年度エネルギー確報 より作成 GDP変化額 25 (兆円) GDPを変化させる他の要因の存在 20 15 10 5 0 -5 -10 -15 -20 -25 実質GDP変化額 PEによるGDP変化額 ※ 資源エネルギー庁 平成24年度エネルギー確報 財務省貿易統計、内閣府 国民経済計算GDP統計 より作成 GDP変化のその他の要因 全体的に寄与度の 絶対値が下がって きている GDP成長率への寄与度 (%) 6 5 4 3 2 1 0 -1 -2 -3 -4 -5 1974 1975-79 1980-84 労働時間 GDP成長 率 労働時間 労働構成 資本 技術進歩 1985-89 労働構成 1990-94 資本 1995-99 2000ー04 技術進歩 2005ー09 GDP成長率 1974 1975-79 1980-84 1985-89 1990-94 1995-99 2000ー04 2005ー09 0.4 4.4 3.9 4.6 2 0.9 1.4 -0.4 -1.7 0.7 2.7 -2.2 0.7 0.3 1.8 1.6 0.8 0.6 2 0.5 0.4 0.3 2.3 1.6 -0.3 0.1 2.2 -0.1 -0.4 0.3 1.2 -0.2 -0.4 0.3 0.6 0.8 -0.5 0.3 0.5 -0.6 エネルギー価格のGDP変化への影響が 増大する可能性 正の要因がGDP成長率にプラスの変化をもたらす 平成25年版通商白書より エネルギー価格のGDP変化への影響 が増大する可能性について 輸入総額に占める一次エネル ギー輸入額上昇 (%) 40.00 35.00 GDPと輸入総額と1次エネルギー輸入額 近年、両者とも 増加傾向にある 18.00 16.00 GDPに占める輸入総額の上昇 14.00 30.00 12.00 25.00 10.00 20.00 8.00 15.00 1次エネルギー輸入額がGDPに 占める割合増加 6.00 10.00 4.00 2.00 0.00 0.00 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 5.00 輸入額に占める1次エネルギー輸入額 結果、1次エネルギー価格の増 大がGDPに与える影響は増大 GDPに占める輸入総額 財務省貿易統計より まとめ ・エネルギー価格とGDP ⇒負の相関関係 ・今後のエネルギー価格の 変動によるGDP変化への影響 ⇒増大する可能性 内容 この節では、現実のデータを用いてトランスロ グ関数を推計し、化石燃料の枯渇が経済に与え る影響についてまとめた トランスログ関数とは ⇒生産関数の一般系として提唱された関数で、 いくつかの生産要素間の代替・補完関係を定量 的に分析するのに用いられる ※ Christensen JorgensonとLau(1970)によって提唱された 目的 実証分析を通して →生産要素間の代替の弾力性 →自己価格弾力性 この2つを求めること 自己価格弾力性 ある𝑖財の価格の変化が、 𝑖財(自己)の需要量に 与える影響 ln xi ii ln Pi (生産要素間の)代替の弾力性 ある2財の価格比(𝑃𝑖 /𝑃𝑗 )が変化したときに、ど ij MiMj れだけの財を代替するのかを表す ij MiMj これに関する1例⇒パンの価格が上昇し米の価格 が下落すれば、パンを米で代替する。その度合が 代替の弾力性。 実証分析において・・・ 代替弾力性と自己価格弾力性は生産関数のパラメー ターの推計値から求められる 回帰分析に よってわかる 推計に用いられる生産関数 1.コブ・ダグラス型生産関数 2.CES型生産関数 3.トランスログ型生産関数 を使用!! なぜトランスログ型生産関数を使用するのか? 生産要素間の代替の弾力性について ・コブ・ダグラス型生産関数 1であると仮定→代替弾力性の研究に適さない ・CES型生産関数 一定である→3要素間の代替弾力性の計測に適さない しかし・・・ トランスログ型生産関数は代替弾力性に制約を置いてい ない 代替弾力性が時系列的に変化するという点からも適して いる! 推計する際の注意点 生産関数と双対な費用関数を使用する 理由 量のデータよりも価格に関するデータの収集の 方が比較的容易なため 〈トランスログモデル分析〉 生産要素 資本 K 労働 L エネルギー E 時間変数 t 生産関数 Y f ( K , L, E , t ) ・・・① 費用関数 C C (Y , PK , PL, PE , t ) ・・・② トランスログ型費用関数 C C (Y , PK , PL, PE , t )・・・② ②式(費用関数)の対数をとり、2次近似すると次の式が得られる 2次近似⇒対数の2次の項までを用いて表すこと ln c ln 0 ln Y i ln Pi i K ,L,E 1 1 2 ln P ln P t ln P t tt t ・・③ ij i j t it i 2 i K ,L,E j K ,L,E 2 i K ,L,E ここでは費用関数がYに関してホモセティックであるということ8と 同次であること9を仮定している。 Y P が分離可能であることを意味しており 8、これは とi ln C 9、これは ln Y が一定であるということ トランスログ関数の制約 〈制約〉 i i 1 ij ji j ij 0 it ti it 0 i ・・・④ トランスログ関数には、一次同次を仮定すると、 これらの制約がつく。 ※ある関数の変数の値をN倍したときに、関数の結果がNK 倍になればK次同次関数という ③式(トランスログ型費用関数)を𝑙𝑛𝑃𝑖 で偏微分 ln C C Pi i ln Pi Pi C ij ln Pj itt ・・・⑤ j K ,L,E シェパードの補題より C xi ( xK K , xL L, xE E ) Pi ・・・⑥ ⑥式を⑤式に代入し、生産要素𝑖のコストシェアを𝑀𝑖とすると、 ⑥式を⑤式に代入し、生産要素𝑖のコストシェアを𝑀𝑖 と すると、 PKK MK K KK ln PK KL ln PL KE ln PE Ktt C PLL ML L KL ln PK LL ln PL LE ln PE Ltt ・・・⑦ C PEE ME E KE ln PK LE ln PL EE ln PE Ett C 以上の3式が導かれる トランスログ型費用関数を𝑡で偏微分 ln C t Kt ln PK Lt ln PL Et ln PE ttt 2 ・・・⑧ t この式は技術変化率を表す トランスログ型費用関数のパラメーターの推定値は、 ④の制約の下で、⑦の2式と⑧式を同時推定するか、 もしくは⑦の2式と③式を④の同時推定することに よって求められる 今回は⑦の2式と③式を④の同時推定によって求める データ出所 雇用者報酬 国民経済計算(GDP統計) - 内閣府 企業所得 国民経済計算(GDP統計) - 内閣府 資本ストック 国民経済計算(GDP統計) - 内閣府 名目GDP 国民経済計算(GDP統計) - 内閣府 実質GDP 国民経済計算(GDP統計) - 内閣府 就業者数 統計局ホームページ/労働力調査 長期時系列データ 輸入1次エネルギー額 財務省貿易統計 輸入1次エネルギー量 資源エネルギー庁 平成24年度エネルギー確報 労働時間 厚生労働省 毎月勤労統計調査 推計結果 α0 αt αK αL αE βKK βKL βKE βLL βLE βEE γKt γLt γEt γtt 0 21602.37 -17.7845 2.393454 16.39108 0.276532 -0.03936 -0.02234 0.021045 0.002118 -0.29758 0.007775 -0.00106 -0.00672 -10.8726 α𝑖 :生産要素のコストシェア 𝛽𝑖𝑗 :𝑗の価格変化に対する𝑖のコスト シェアの変化 𝛼𝑡 :技術進歩率 𝛾𝑖𝑡 :技術進歩の傾向 𝛾𝑖𝑡 > 0:生産要素増大的進歩 𝛾𝑖𝑡 < 0:生産要素節約的進歩 𝛾𝑖𝑡 = 0:生産要素中立的進歩 (変化なし) 𝛾𝑡𝑡 :技術進歩率の変化率 この推計結果から得られる主要な結果としては・・・ 技術進歩の型が、 1.エネルギー節約的(𝛾𝐸𝑡 < 0) 2.労働節約的(𝛾𝐿𝑡 < 0) 3.資本増大的(𝛾𝐾𝑡 > 0)な技術進歩であることがわかる 石油危機が発生したあと、日本は1988年以降、エネルギー節約 的な技術進歩を遂げてきた、つまり日本の省エネルギー化が進 展していると結論付けることができる 代替弾力性・自己価格弾力性 𝑖財と𝑗財のアレン偏代替弾力性は C Cij ij C iC j トランスログ関数では推計されたパラメーターを 用いて、以下のように計算できる ij ii ij MiMj MiMj ii Mi 2 Mi Mi 2 ・・・⑨ (i, j K , L, E ) 代替弾力性 ij ij MiMj MiMj ・・・⑨ 代替の弾力性 𝜎𝑖𝑗 は 𝜎𝑖𝑗 > 0 のときに生産要素 𝑖 と 𝑗 は代替的、 𝜎𝑖𝑗 < 0のときは生産要素𝑖 と𝑗 が補完的であることを意味 する 自己価格弾力性 ln xi ii Mi ii ln Pi ・・・⑩ 𝑖の価格が上昇したときに𝑖の需要量はどう 変化するのかを表す。𝜀𝑖𝑖 > 0のとき需要量 増加、𝜀𝑖𝑖 < 0のとき需要量減少を表す。 結果のグラフ 代替弾力性 1200 1000 代替的 800 600 400 200 0 補完的 -200 -400 -600 -800 資本と労働 資本とエネルギー 代替弾力性 0 -1 -2 -3 -4 -5 -6 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 資本とエネルギー 労働とエネルギー 補完的 代替弾力性の推移をグラフに表すと労働とエ ネルギーが代替的( 𝜀𝐿𝐸 > 0)、資本と労働、 資本とエネルギーが補完的(𝜀𝐾𝐿 < 0、𝜀𝐾𝐸 < 0 )という結果になった。 1988 年以降、労働とエネルギーの代替弾力 性が不安定になるという結果になった。代替弾 力性は⑨式よりパラメーターの推計値及びコス トシェアに依存しているが、パラメーターは固 定であるため、この変動はコストシェアに依存 している。 結果のグラフ 価格が上昇すると需要 量は上昇 自己価格弾力性 120 価格が上昇すると需要量 は上昇 100 80 60 40 20 0 価格が上昇すると需要量 は減少 -20 -40 資本 自己価格弾力性 0.14 0.12 0.1 0.08 0.06 0.04 0.02 0 資本 労働 エネルギー 自己価格弾力性について資本と労働は正(𝜀𝐾𝐾 > 0、𝜀𝐿𝐿 > 0)、エネルギーは負(𝜀𝐸𝐸 < 0)になった。 資本と労働は価格が上昇すると需要量は上昇 し、エネルギーは価格が上昇すると需要量は減少 する。 また、エネルギーの自己価格弾力性は変動が大き いため、価格の変動に量が敏感に反応することが わかる。 5.結論 GDPとエネルギー価格の関係 費用関数 𝐶 = 𝐶(𝑌, 𝑃𝐾 , 𝑃𝐿 , 𝑃𝐸 , 𝑡) 代替弾力性の値が0 に近いので、あまり 反応しない 生産関数 𝑌 = 𝑓 𝐾, 𝐿, 𝐸, 𝑡 𝑃𝐸 と𝑌には負の相関関係 𝑃𝐸 ↑⇒ 𝐸 ↓ 𝐿と𝐸の間には 強い代替関係がある 𝐸 (𝑃𝐸 )の変化が 𝑌 (GDP)の変化に 𝐿より大きな影響を 持っている 今後さらに 増大の可能性 6.今後の展望 エネルギー価格は不安定 →GDPも不安定に推移 対策 →エネルギー価格の安定が必要 エネルギー価格安定のために・・・ 1次エネルギーの輸入先の国を増やすことによるリスク 分散 日本の1次エネルギーの中 東依存度は高い 1次エネルギーの中東依存度 (%) 95 90 中東からのエネルギー輸入 価格が上昇すると、日本は 大きな打撃を受ける 85 80 75 70 65 60 エネルギーの輸入先を増や してリスクを分散 55 50 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 中東依存度 出所:資源エネルギー庁「資源・エネルギー統計年報・月報」 2000 2005 2010 (年) エネルギー価格安定のために・・・ 新エネルギーの開発など、輸入エネルギーに頼らない エネルギー供給の確保 環境税導入によるエネルギー需給の安定化 自己価格弾力性 負の値をとるので、価格が 上昇すると需要量は減少 0 -5 石炭や石油にかかるエネルギー税 に加え、環境税がさらに上乗せさ れるとエネルギー消費が低減する -10 -15 -20 -25 -30 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 -35 エネルギー エネルギーに対する超過需要を抑 えられ、価格安定化につながる 参考文献 【論文】 ・HORN, Theara、小幡一詞、佐久間誠、滝順次 (2005) 「トランスログ型費用関数の 推計, ISFJ政策フォーラム2005発表論文 【ホームページ】 ・経済産業省(http://www.meti.go.jp/) ・経済産業省・資源エネルギー庁(http://www.enecho.meti.go.jp/) ・資源エネルギー庁 エネルギー白書 (http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2014html/2-2-1.html) ・蓄電池.net(http://蓄電池.net/kinds/atomic.html) ・通商白書 2013年度版(http://www.meti.go.jp/report/tsuhaku2013/) ・内閣府経済社会総合研究所(http://www.esri.go.jp/) 参考文献 ・日本ガス協会(http://www.gas.or.jp/user/market/production/index.html) ・日本LPガス協会(http://www.j-lpgas.gr.jp/) ・BP(http://www.bp.com) ・IMF(http://www.imf.org/external/index.htm) ・JX日鉱日石エネルギー (http://www.noe.jxgroup.co.jp/binran/part01/chapter03/section02.html#anc02) ・UNCTAD(http://unctad.org/en/Pages/Home.aspx) ご清聴ありがとう ございました!
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