着目する TCP コネクションの 相互作用を考慮した TCP の定常特性 および過渡特性解析に関する検討 大阪大学 大学院基礎工学研究科 久松 潤之 [email protected] 2015/10/1 1 TCP (Transmission Control Protocol) • パケット再送機能 – 棄却されたパケットを受信側ホストへ再送 • 輻輳制御機構 – ウィンドウサイズによって送出パケット数を調整 2015/10/1 2 従来の研究 • パケット棄却率を一定と仮定 • 定常状態におけるTCP の特性解析 – スループット、ウィンドウサイズの分布 定常状態に至るまでのTCP の過渡特性については 知られていない 実際のネットワークでは、パケット棄却率は変動 2015/10/1 3 我々のこれまでの研究 • ネットワークをフィードバックシステムとしてモデル化 – TCPの輻輳制御機構 – TCPから見たネットワーク 相互作用するシステム • 過渡特性解析 – ウィンドウサイズ の時間的変動から判断 [2] 高垣景一, 大崎博之, 村田正幸, “流体近似法および 待ち行列理論を組み合わせたTCPのフィードバック型 輻輳制御機構のモデル化“; 交換システム研究会, March 2001 2015/10/1 4 研究の目的 • ネットワークをフィードバックシステムと捉える • 定常状態解析 – スループット、パケット棄却率、キュー長を導出 • 過渡特性解析 – TCP のコネクション数、伝播遅延時間、リンク容量、 バッファサイズが過渡特性に与える影響を明らかに 2015/10/1 5 解析モデル Background Traffic Sender1 ・ ・ ・ Receiver1 B w(k) ・ ・ ・ Senderi Receiveri ・ ・ ・ m SenderN p(k) Link Capacity μ ・ ・ ・ ReceiverN Propagation Delay τ 2015/10/1 6 ネットワーク全体のモデル化 • フィードバックシステムとしてモデル化 – TCPから見たネットワーク – TCPの輻輳制御機構 TCPの輻輳制御機構 w:ウィンドウサイズ TCPから見た ネットワーク p:パケット棄却率 2015/10/1 7 TCP の輻輳制御機構のモデル化 • • • • 文献[2]のモデルを使用 流体近似法を用いたモデル化 入力 : パケット棄却率 出力 : ウィンドウサイズ 常に輻輳回避フェーズでの動作を仮定 2015/10/1 8 TCP から見たネットワークのモデル化 • 入力 : ウィンドウサイズ 出力 : パケット棄却率 • M/M/1/m 待ち行列を用いてモデル化 TCP ウィンドウサイズ w1 ・・ ・ wN 2015/10/1 バックグラウンドトラヒックの パケット到着率 B N wi B i 1 ri ri : ラウンドトリップ時間 パケット M/M/1/m 棄却率 p m 9 定常状態解析 • 状態遷移方程式を利用 • 定常状態における、スループット、 パケット棄却率、平均キュー長の導出 • 定常状態におけるウィンドウサイズ = 十分に時間が経過したときのウィンドウサイズの 期待値 2015/10/1 10 平衡点の導出 • 平衡点 : 定常状態での TCP の ウィンドウサイズ、パケット棄却率 • 状態遷移方程式において、 w(k+1)=w(k)、p(k+1)=p(k) とおくことで導出 • キュー長 : M/M/1/m の平均待ち行列長 • パケット棄却率: M/M/1/m 待ち行列における 客の棄却率 • スループッ ト : ウィンドウサイズ/ ラウンドトリップ時間 2015/10/1 11 数値例 / シミュレーションで用いるパラメータ • コネクション数 N :10 [本] • バックグラウンドトラヒックの平均到着率 b : 0.2 [packet/ms] • バックグラウンドトラヒッ ク :ポアソン過程に従う UDP パケット • バッファサイズ m ::50 30[packet] [ms] • 伝播遅延時間 • TCP と UDPのパケット長 : 1000 [byte] 2015/10/1 12 Average Queue Length L [packet] ボトルネックリンクの容量が変化した場合 キュー長 50 45 40 35 30 25 20 15 10 2015/10/1 Simulation Analysis 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Link Capacity μ [packet/ms] 4 4.5 5 13 ボトルネックリンクの容量が変化した場合 パケット棄却率 Packet Loss Probability 1 0.1 0.01 0.001 0 2015/10/1 Simulation Analysis 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 Link Capacity μ [packet/ms] 4.5 5 14 ボトルネックリンクの容量が変化した場合 スループット Throughput T [packet/s] 0.5 0.45 Simulation Analysis Analysis(padhye) 0.4 0.35 0.3 0.25 0.2 0.15 0.1 0.05 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 Link Capacity μ [packet/ms] 4 4.5 5 Analysis(padhye) : 文献[3] の結果の式を用いて計算した値 [3]J. Padhye, V. Firou, D. Towsley, and J. Kurose, “Modeling TCP throughput: a simple model and its empirical validation”, in Proceedings of ACM SIGCOMM’98, 1998 2015/10/1 15 過渡特性解析 • 過渡状態において、ウィンドウサイズおよび キュー長がどのように変動するか明らかに • 制御理論を適用して、平衡点の近傍において TCP の振る舞いを解析 2015/10/1 16 過渡特性解析の概要 • 状態遷移方程式を線形化 • 特性方程式の固有値 si が特性を決定する – 安定条件 : |si|の最大値 が1より小さい – 過渡特性 : |si| の最大値が小さいほどよい 2015/10/1 17 コネクション数を変化させた場合の 最大絶対値 N=5 白い部分 最大絶対値 大 ⇔ ⇔ N=15 黒い部分 小 帯域遅延積 : 過渡特性、安定性を左右 2015/10/1 18 Average Window Size [packet] 妥当性の検証(ウィンドウサイズ) 60 μ=0.5 μ=2 μ=5 50 40 30 20 10 0 0 1 2 3 4 5 Time [sec] 2015/10/1 リンク容量 [packet/ms] 固有値の 最大絶対値 0.5 0.619 2 0.780 5 0.923 19 Average Queue Length [packet] 妥当性の検証(キュー長) 80 μ=0.5 μ=2 μ=5 70 60 50 40 30 20 10 0 0 1 2 3 4 5 Time [sec] 2015/10/1 リンク容量 [packet/ms] 固有値の 最大絶対値 0.5 0.619 2 0.780 5 0.923 20 まとめと今後の課題 • TCP の定常特性と過渡特性の解析 – TCP のスループット、パケット棄却率、 ボトルネックルータにおける待ち行列長の導出 – コネクション数または、バックグラウンドトラヒックの量 が大きいと ネットワークはより安定する – 帯域遅延積: TCP の安定性や過渡特性を決定 • 今後の課題 – 一般的なネットワークへの適用 – 近似解析の精度の向上 2015/10/1 21 TCP の輻輳制御機構のモデル化 • 文献[2]のモデルを使用 w( k 1) w( k ) 1 p ( k 1 w( k )) w( k ) ˆ ( w( k ), p ( k ))) p ( k 1 w( k ))w( k ) (1 Q 2 ˆ ( w( k ), p ( k )) p ( k 1 w( k ))Q Qˆ (w, p) :ウィンドウサイズ w、パケット棄却率 p のときに タイムアウトによってパケット棄却を検知する確率 2015/10/1 22 発表内容 • • • • • 研究の背景 モデル化の概要 定常特性解析 過渡特性解析 まとめと今後の課題 2015/10/1 23 シミュレーションの設定 • 解析モデルと同じネットワークトポロジー • 24秒間のシミュレーションのうち終わりの20秒間 の値を採用 • 50回のシミュレーションの平均値と 95%の信頼区間を得る 2015/10/1 24 モデル化の概要 • フィードバックシステムとしてモデル化 – TCP の輻輳制御機構 • 入力: パケット棄却率 出力: ウィンドウサイズ – TCP から見たネットワーク • 入力: ウィンドウサイズ 出力: パケット棄却率 • すべての TCP コネクションの伝播遅延時間が 等しく、同期して動作すると仮定 • システムの状態: ウィンドウサイズとパケット棄却 率で一意に表される。 2015/10/1 25
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