2004年10月6日 日本気象学会秋季大会 富士山における笠雲の発生と700hPa 付近に存在する安定層との関係 日本大学大学院地球情報数理科学専攻 博士前期課程M2 気候気象システム研究室 清水 崇博 研究の背景及び目的 富士山における笠雲発生機構の研究は古くから行われている。 1、統計的研究成果 1-1、笠雲発生後の降水確率が70~80%である(湯山,1972) 1-2、日本海低気圧存在時に発生しやすい(たとえば植野, 1950や大井・ほか,1974) 2、高層データ解析による成果 2-1、笠雲発生時には山頂付近に安定層がある(大井・ほか, 1974) 過去の研究成果において,1-2と2-1の関連性について述べ られていないため、笠雲発生要因は謎に包まれている部分が多 い.そこで、笠雲が発生した日本海低気圧の構造を調べることで 日本海低気圧が富士山に笠雲を発生させるに至るプロセスを解 明することを目的とする. 研究方法 笠雲発生日の検索 (日本大学富士山プロジェクト画像解析) 日本海低気圧存在日の特定 (気象庁:印刷天気図 CD-ROM) ゾンデデータを使用した気温減率の アイソプレスの作成 (気象庁:高層観測年報 CD-ROM) 笠雲を発生させる日本海低気圧 と 発生させない日本海低気圧 の 大気成層上の相違点の確認 以上から確認された相違点を検討し, 笠雲発生要因を追求する 4月13日9時 浜松 笠雲発生しない日本海低気圧 笠雲発生した日本海低気圧 笠雲が発生した日本海低気圧の検討 ←2002年4月13日9時 衛星可視画像 同時刻の富士山プロジェクト 日本海低 気圧 関東沖小 擾乱 南西カメラ(富士宮市・奇石博物館) 画像↓ 東西断面 (鹿児島) (潮岬) (浜松) (館野) 南北断面 関東沖擾乱 多層の安定層 (八丈島) (浜松) (輪島) 多層の安定層形成要因の推測 Pre-Frontal Waveの可能性 ウィンドプロファイラによる鉛直P速度デー タを用いた鉛直流分布図 ※笠雲発生は8:35~11:15 まとめと考察 笠雲を発生させた日本海低気圧では、暖域(寒冷 前線の前面)に多層の安定層が認められた. ウィンドプロファイラ鉛直流の分布図を見ると,笠 雲発生時に波動が生じていた. 上記2つの事実から,波動はのちにやってくる寒 冷前線前面のPre-frontal Waveであり、このPrefrontal Waveが多層の安定層を形成し、山頂付近 に存在する安定層が山の斜面による強制上昇を 抑え,笠雲が発生する. 今後の課題 Pre-frontal Waveによる安定層の発生要因に季節性 があるのか Pre-frontal Wave発生要因を解析し,日本海低気圧 発生から笠雲発生までのプロセスをより深く追求す る. 日本海低気圧のうち、Pre-frontal Waveが存在する ものとそうでないもので、降雨分布の違いを比較し, 天気予測に役立てる. 参考文献 遠藤邦彦・坪井哲也・大野希一・小林貴之(2002):富士山監視カメラシス テム.月刊地球,24,9,645-650. 大井正一・山本三郎・曲田光夫(1974):富士山の雲と大気の成層状態.気象 研究ノート,118,39-54. 植野隆壽(1950):富士山雲の研究(其2)山雲の分類と天気.気象庁研究時報, 2,1-9. 湯山 生(1972):富士山にかかる笠雲と吊し雲の統計的調査.気象庁研究時 報,24,415-420. 沖縄に台風・山陰から東北 にかけて前線 太平洋高気圧 Atmospheric Pressure Pattern 日本海に高気圧 東シナ海に低気圧 二つ玉低気圧 南岸に移動性高気圧 山陰から東北にかけて前線 日本海に前線 日本海に前線を伴わない低 気圧 北海道に低気圧 日本付近が気圧の谷 台風(熱帯低気圧)接近 南岸に前線 日本海に低気圧 10 Group-2 5 Group-3 Generation Number 0 Group-1 15 天気図の検討 ウィンドプロファイラの各地点データ 2. 1. く東 ,海 波地 の方 存で 在は を上 示昇 唆気 し流 て・ い下 る降 .気 流 の 交 代 が 激 し 風0 関 上m 付東 で近 付 はに 近 西風 は よの 関 りシ 東 のア 沖 風が 小 が存 擾 吹在 乱 いし の て、 影 いシ るア 響 .よ で 高 り度 下2 で, は0 南0 笠雲が発生しない日本海低気圧の検討 多層の安定層が明瞭ではない ウィンドプロファイラ鉛直P速度
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