Progress Report B12512 新井みずき 図1 文部科学省「平成20年度全国学力・学習状況調査」 平成27年度東京大学学部入学式 総長式辞より抜粋 …最後になりますが、何事を成し遂げるにも健康 が第一です。その為には規則正しい生活をするこ とがなによりです。規則正しい生活をする秘訣を お教えしましょう。まず、朝、きちんと起きて朝 食をしっかり食べること、そして授業に出席する ことです。 平成27年(2015年)4月13日 東京大学総長 五神 真 100円朝食のはじまり 1COIN (100円)朝食週間 酪農学園大学(北海道)が食生活改善運動として 2007年より開催 学生に食生活の改善と規則正しい生活を呼びか けるキャンペーンとして毎年春と秋に実施しさ れており、今春(2015年5月)で15回目の開催。 (酪農学園大学ホームページ) 写真:酪農学園大学ホームページ Outline 1.Background 2.Mini Literature Review 3.Problem Consciousness 4.This Year’s Theme 5.Difficulties and Problems 1.Background 1.1 1.2 1.3 食生活の歴史(江戸時代以前) 現在の食生活(明治時代以降) 政府の取り組み 1.1食生活の歴史(江戸時代以前) 1 2 3 4 一日二食の時代 古代の食(物)に対する考え方 間食から昼食へ 一日二食から三食へ 1.1.1. 一日二食の時代 現在、私たちの常識になっている 一日に三回の食事は、現在の文明 社会での習慣である。 酒井(2001:8) 1.1.1. 一日二食の時代 『延喜式』の祝詞のなかに、朝御食、 夕御食という言葉が出てくる。 この言葉が現在の朝食、夕食という言 葉につながっているのである。一日二食 の時代、二回の食事は朝の食事と夕方の 食事とであった。 酒井(2001:21) ※延喜式: 延長5年(927)に全50巻として成立した平安時代の法典 一日三食は非常識? 現代人は一日に三回食事をすること を常識と思っているが、日本の歴史 を1000年もさかのぼると、それは どうも非常識の世界であり、場合に よっては悪行として訴えられかねな かった。 酒井(2001:24) 1.1.2 古代の食(物)に対する考え方 古来、我が国には食物について言葉に表現する ことを軽視ないしは蔑視する傾向があった。封 建時代に支配者層が食料を生産する人たちを軽 侮し、… 一般に物質軽視の考えは、体面を重んずる精神 主義の定着する以前に、生産労働に従事するか 否かを契機として支配者層と被支配者層との階 級が成立したころに発する。 殊に食料に関してはすべての人間が生活の第一 次的必需品とするが故に、逆に食物及びこれを 生産するものに対し、意識的に蔑視観が強く なったのであろう。 戸田(1999:49) 1.1.2 食に対する考え方(海外) 中世のヨーロッパでは、昼の正餐と夕 食の一日二食が理想的な食事の形とさ れるようになった。 中世には「一日に一度の食事は天使の 生活、二度の食事は人間の生活、三度、 四度、それ以上は動物の生活で、人間 の生活ではない」ということわざが生 まれたほどである。 酒井(2001:32) 1.1.3. 間食から昼食へ 労働をする人たちが昼食に相当するも のを間食として食べることは、ごく当 たり前のことになっていた。 昼の食事やそのほかにも間食をとって いたが、これらの食事はあくまでも臨 時の食事であって…正式の食事として は認められていなかった。 酒井(2001:23) 一日三食のはじまり 当時の間食類には大別して麺類・饅 頭・羹類がある。 この中で麺類はどうやら昼食(正式の 食事)の一部に充当されつつあったらし く、後世の三度食の起源の一つともなっ た。 渡辺(1999:95) 1.1.4. 一日二食から三食へ 奈良時代以来、日本人は基本的に二食(朝夕) 制であったが、ことに労働量の多い人びとは 二食では体がもたないので、その間に硯水(建 水、勤随などとも)とよばれる昼食をとること があったのである。 朝夕二回の食制は鎌倉時代のあたりまでは守 られていたが、まず公家社会ではだんだんに 朝、昼、夜の三食制が入ってきた。寺院でも、 本来は一日一食だったのが、非時とか点心と か言う名目で二回になり、室町時代になると 三食とる例も出てくる。 熊倉(2007:41) 一日三食の歴史 寛永から明暦までのわずか二、三〇年 の間に、食事の回数が二回から三回へ と変わったというのである。 庶民の間で食事の回数が一日三回に なったのは、なんと一七世紀のなかば を過ぎたころであり、一日三回の食事 はわずか三百年あまりの歴史でしかな い。 酒井(2001:27) なぜ江戸時代に変わったのか? 一日二食から三食へと移り変わったとされて いる明暦の頃は、江戸幕府の基礎が固まりつ つある時代でもあった。 江戸時代に入り、安価なナタネ油が出まわり はじめると、庶民も安心して夜の灯火をとも せるようになった。照明という点では、夜の 生活時間が長くなることに対応できるような 社会の仕組みができあがっていったのである。 酒井(2001:29) 1.1食生活の歴史(江戸時代以前) 1 2 3 4 一日二食の時代 古代の食(物)に対する考え方 間食から昼食へ 一日二食から三食へ 1.Background 1.1 1.2 1 2 3 1.3 食生活の歴史(江戸時代以前) 近代の食生活(明治時代以降) 明治の食生活 大正の食生活 食卓の役割変化 政府の取り組み 1.2.1 明治の食生活 柳田国男が「食物の個人自由」の なかで提起した問題は、共同体に おいて家が、家において個人が食 生活の上で自立してくることを近 代の特質とする。 小山(1999:269) 明治の食に対する価値観 けれども、百年前の日本はまだ科学的知識も普及せ ず、栄養素なども知られていません。第一、日本人 の優れた点を語る場合、武士道とか大和魂などの精 神論が強調される一方で、「食べる」などという卑 俗なことを男子が口にすべきではない、とされてい ました。明治日本では、家庭や生活のことは女子の 専門領域で、「男子厨房に入らず」が当然でした。 …男子はもっと大きなこと、すなわち政治や学問な どについて語るべきであり、食物のような小言にこ だわるのは見苦しい、とみなす風潮があったといえ るでしょう。 黒岩(2007:193) 食育思想 明治期に萌芽した「食育」の思想 村井弦斎は石塚左玄と共に、明治期に 「食育」という言葉を造語して、 「食」の大切さを主張した先駆者でし た。「食育」という言葉は定着しませ んでしたが、百年後に「食育基本法」 という法律の形で蘇ります。 黒岩(2007:283) 食育思想 ようするに、教育では智育が大切だ、 体育が大切だというものの、そのどち らも根本は何を食べるかということに ある。 栄養的にバランスがとれていて、衛生 的な食物を摂取しなければ、脳も発達 しないし、身体も成長しない。だから、 それよりも「食育」が大事なのだ、と 著者の弦斎は主張しているのです。 黒岩(2007:193) 1.2.2 大正の食生活 主婦が専業化し、毎日変わったものをつくら なければならないという雰囲気がますます強 調されてきたわけである。それまで何の料理 をつくろうなどと毎日悩むことはまったくな かったが、食物の個人自由の進行は料理の個 別化を生み、サラリーマンであるご主人を楽 しませるためには、毎日料理の工夫をしなけ ればならなくなった。 小山(1999:278) 1.2.3. 食卓の役割変化 むしろダイニングテーブルの時代になっ て進行するのは、家庭内のヒエラルキーの 問題と不可分の関係があるのではないかと 思われる。それは食卓に期待される団らん という問題と深い関係がある。 箱膳時代に代わってチャブ台を中心とす る食 事には一家団らんがあったとされる が、団らんもまたヒエラルキーの表現では なかったか。 小山(1999:283) 1.2.3. 食卓の役割変化 食事中の会話は一般には禁止されている。『日 本の食文化』でも、われわれの調査でも、一番 強く出てくるのは一膳飯の禁止と会話の禁止で あって、食事中会話をしてはいけない、黙って 食べろとしつけられた。 家族はしゃべらないが、家長はよくしゃべった という報告がある。その会話は、むしろ教訓で あり、説教であり、食事は父親が中心となった 子供に対するしつけの場であった。 小山(1999:283) 1.Background 1.1 1.2 1 2 3 1.3 食生活の歴史(江戸時代以前) 近代の食生活(明治時代以降) 明治の食生活 大正の食生活 食卓の役割変化 政府の取り組み 1.background 1.1 食生活の歴史(江戸時代以前) 1.2 近代の食生活(明治時代以降) 1.3 政府の取り組み 1 法律 2 プロジェクト 1.3.1. 法律 ・健康増進法 ・食育基本法 ・教育基本法 健康増進法 公布:平成14年8月2日 目的:国民の健康の増進の総合的な推 進に関し基本的な事項を定めるととも に、国民の健康の増進を図るための措 置を講じ、国民保健の向上を図る。 「健康日本21」を中核とする国民の 健康づくり・疾病予防をさらに積極的 に推進するため。 食育基本法 施行:平成17年7月15日 目的:国民が健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐく むため、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進す ること等 食育の3つの柱 ①国民健康づくり運動の推進 (「健康日本21」の推進) ②子ども・子育て支援(食育の推進について) ③食品の安全に関するリスクコミュニケーションの取組 (厚労省) 図2 第2次食育推進基本計画における目標値と現状値 (平成26年3月現在) 教育基本法 ○平成18年2月22日改正 家庭教育: 第十条 2. 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性 を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び 情報の提供その他の家庭教育を支援するために 必要な施策を講ずるよう努めなければならない。 教育基本法 学校、家庭及び地域住民等の相互の連携協力 第十三条:学校、家庭及び地域住民その他の 関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責 任を自覚するとともに、相互の連携及び協力 に努めるものとする。 1.3.2. プロジェクト ○各関係省庁の取り組み 内閣府・消費者庁・食品安全委員会・厚 生労働省・農林水産省など 文部科学省 →「早寝早起き朝ごはん」国民運動 「早寝早起き朝ごはん」国民運動 子どもたちが健やかに成長していくためには、適 切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が 大切です。 (中略) 成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な基 本的生活習慣が大きく乱れています。 こうした基本的生活習慣の乱れが、学習意欲や体 力、気力の低下の要因の一つとして指摘されていま す。 このような状況を見ると、家庭における食事や睡 眠などの乱れは、個々の家庭や子どもの問題として 見過ごすことなく、社会全体の問題として地域によ る、一丸となった取り組みが重要な課題となってい ます。(文科省) 全国協議会 設立:平成18年4月24日 目的:地域全体で家庭の教育力を推進 する社会的機運の醸成(国民運動を推進す る母体) 会員数:284(平成27年度5月現在) 会長:有馬朗人(元文部大臣) 活動内容:フォーラム開催・指導者研 修・教材作成・配布 地方自治体・学校・企業の取り組み例 村山市立戸沢小学校(山形) 『方言活用家庭教育訓を用いた「早寝早起き 朝ごはん」運動』 沼田市立薄根中学校(静岡) 『元気もりもり朝ごはんプロジェクト』 (株)明治『明治食育セミナー』 上越教育大学 『「早寝早起き朝ごはん」国民運動への取り 組み』 文部科学大臣表彰 図3(独)日本スポーツ振興センター 「児童生徒の食生活等実態調査」 図4:Q2 次の日に学校がある日は、ふだん何時ごろに寝ますか。 × Q19 あなたは、朝食を食べますか(高校生) 1.background 1.1 食生活の歴史(江戸時代以前) 1.2 近代の食生活(明治時代以降) 1.3 政府の取り組み 1 法律 2 プロジェクト 2. Mini literature review Book:8 Academic Magazine Internet paper:2 article:4 article:3 2. Mini Literature Review 2.1 2.2 肯定的意見 否定的意見 2.1 運動に対する肯定的意見 私は、兵庫県の田舎で一人教師をやっているとき、 まさしく「早寝早起き朝ごはん」の国民運動を文 部省がやってくれることを、ずっと夢見ていた。 なぜ、国民運動か。 …しかるべきところが責任を持って、音頭を取り、 それを受けてそれぞれが自覚的に自分たちの生活 を改善していく。それが最も現実的であり、うま くいく方法だろうと思っていた。 隂山(2006:116) 2.2 運動に対する否定的意見 一見正しいと思わせる「早寝、早起き、 朝ごはん」という用語は、そのように極 めて巧妙な政治的操作として使われてい る。 新村(2007:4) 2.2 運動に対する否定的意見 重要な点は、このようなスローガンの 内容そのものの善し悪しは、この問題 の議論にとってはまったく関係がない という点にある。 仮にその具体的内容が、多くの人々が 納得するような良いものであったとし ても、(中略)勝ちあるいは道徳に関す ることがらは、私生活の自由として保 護されるべきことがらなのである。 池田(2007) この管制食育運動に参加し協力するこ とや食育に努力することを、食育基本 法は「国民の責務(義務)」(第13条)で あるとする。 →「お国のために食を通して健康たれ」 という戦時中の「社会的機運」変わらな い。 新村(2007:8) 食育基本法第13条 国民の責務 第十三条 国民は、家庭、学校、保育所、地域その 他の社会のあらゆる分野において、基本 理念にのっとり、生涯にわたり健全な食 生活の実現に自ら努めるとともに、食育 の推進に寄与するよう努めるものとする。 政府・文科省が旗振りをし、企画と調 整と評価だけをしているのでは、国民 と子どもへの「教化」、全国民を対象 にする国家的規模の「管理主義」教育 になるだけである。 新村(2007:7) 2. Mini Literature Review 2.1 2.2 肯定的意見 否定的意見 3.Problem Consciousness ・食(物)を軽視・蔑視する傾向はどのように生 まれ、どのように変化してきたのか。 ・なぜ日本は一日三食を取り入れた時期がこん なにも遅かったのか。 ・「食育」は真にいつ誕生した考えなのか。ま た時代によってその考え方に違いはあるのか。 ・「早寝早起き朝ごはん」国民運動は行政によ る個人・個家庭への過干渉に値するのか。 ・これから日本の食生活はどのように変わって いくのか。 4. 卒論テーマ 日本の「早寝早起き朝ごはん」思想 ~「早寝早起き朝ごはん」国民運動は 憲法違反なのか~ 5.Difficulties and Problems ・どこに焦点をあてるのか。 ・食育思想をどこまで掘り下げるのか。 ・卒論全体が教育的、また法的な話に偏らない か。 Thank you for your listening!
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