洲本市における妊婦の喫煙問題の現状と対策(第1報)

目的
成人喫煙率は、男性喫煙率が30%台となるな
ど、全体に減少傾向にはあるが、若い女性や未
成年者の喫煙対策が問題となっている。特に、
妊婦の喫煙は、胎児や乳児に深刻な影響を与え、
有効な対策が急務である。
今回は洲本市における妊婦の喫煙問題の現
状と対策(第3報)として、妊婦喫煙率や喫煙の害
についての知識、受動喫煙の状況を報告し、在
住者と転入者との比較で啓発効果を検証する。
方法1
妊婦さんへ
喫煙についてお伺いします。事実をありのままご記入下さい。
Q1 . あなたは、 現在、 たばこ を 吸っ ていま すか
はい( Q2 へ)
2001年4月より、洲本市に
妊娠届を提出した全ての
妊婦に対し、喫煙状況と喫
煙の害に関する知識につ
いての調査を、自己記入
式で実施した。調査対象
数は2001年4月~2010年6
月の9年間、3,635名で
あった。
喫煙状況が完全に記入されていた有効回答数
3,185(88%)
吸っ ていたがやめた( Q3 へ)
以前から 吸っ ていない( Q4 へ)
Q2 . ( 現在吸っ ている 方へ) 妊娠以前と 比べて本数は変わり ま し たか?
変わら ない(
本/日)
減っ た・ 増えた( 以前
本/日→現在
本/日)
こ れから 禁煙し よ う と 思いま すか?
禁煙する つも り
禁煙し たいができ ない
禁煙する つも り はない
Q3 . ( 禁煙し た方へ) 以前は何本吸っ ていま し たか?
(
) 本/日
いつやめま し たか?
最終月経以前
最終月経以後妊娠がわかる 以前
妊娠がわかっ てから
禁煙を 出産後も 続けま すか?
続ける
出産し たら ま た吸う つも り
ど う なる かわから ない
Q4 . ( 全ての方へ) 同居家族の方の喫煙本数を 教えて下さ い( おおよ そで結構です)。
吸わない場合は0 同居し ていない場合は× を ご 記入下さ い
夫 (
本/日)
義父(
本/日)
義母(
実父(
本/日)
実母(
本/日)
その他の同居家族(
本/日)
本/日)
Q5 . ( 同居家族のど なたかが吸っ ている 方へ) ど こ でたばこ を 吸いま すか
あてはま る すべてに○を 付けて下さ い
家の外だけ
妊婦が行かない部屋
換気扇の下
空気清浄機を つけて
ど こ ででも 吸う
その他工夫し ている こ と があれば(
)
( 参考: 換気扇や空気清浄機はたばこ の害を 完全に防ぐ こ と はでき ま せん)
Q6 . ( 全ての方へ) 知っ ていたこ と には○
知ら なかっ たこ と には× を ご 記入下さ い
妊婦が喫煙する と 早産や流産が増える
妊婦が喫煙する と 胎盤の血流が悪化し て胎児が苦し む
妊婦が喫煙する と 早期破水、 早期胎盤剥離が増える
妊婦が喫煙する と 低体重児が増える
妊婦が喫煙する と 先天異常( 口蓋裂、 無脳症、 二分脊椎等) が増える
乳幼児突然死症候群は妊婦または同居家族の喫煙と 関係がある
親が喫煙する と 子供の脳に鉛が沈着し て知能低下を 起こ すこ と がある
喫煙は男女と も に不妊の原因になる
喫煙は ED( 勃起不全) の原因と なる
喫煙する と 皮膚の老化が 10 年早く 進み、 し み・ し わが増える
(
(
(
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
)
)
)
)
( 上記の事実は喫煙の害の一部です)
Q7 . 喫煙について何かご 質問等あり ま し たら 、 なんでも お書き 下さ い。
最後に、 やめる 気さ えあれば、 たばこ は必ずやめら れま す。 ご相談は保健婦ま でお気軽にどう ぞ。
方法2
お母さんに、喫煙についてお伺いします。事実をありのままご記入下さい。
Q1. あなたは、現在、たばこを吸っていますか
はい( Q2 へ)
吸っ ていたがやめた( Q3 へ)
以前から 吸っ ていない( Q4 へ)
Q2. (現在吸っている方へ)何本吸っていますか?
(
さらに、2002年6月より、
乳児健診(3,4か月児
対象)で受診したすべて
の母親に喫煙状況と喫
煙の害に関する知識に
ついての調査を、自己
記入式で実施した。
本/日)
妊娠中はどうでしたか?
吸っ ていた(
本/日)
やめていた
( いつから ですか → 妊娠がわかる 前
妊娠がわかっ てから 妊娠届ま での間
妊娠届以後 )
これから禁煙しようと思いますか?
禁煙する つも り
禁煙し たいができ ない
禁煙する つも り はない
Q3. (禁煙した方へ)以前は何本吸っていましたか?
(
) 本/日
いつやめましたか?
妊娠がわかる 前
妊娠がわかっ てから 妊娠届までの間
妊娠届以後
これからも禁煙を続けますか?
続ける
ま た吸う つも り
ど う なる かわから ない
Q4. (全ての方へ)同居家族の方の喫煙本数を教えて下さい(おおよそで結構です)。
吸わない場合は0 同居していない場合は× をご記入下さい
夫 (
本/日)
義父(
本/日)
義母(
実父(
本/日)
実母(
本/日)
その他の同居家族(
本/日)
本/日)
Q5. (同居家族のどなたかが吸っている方へ)どこでたばこを吸いますか
あてはまるすべてに○を付けて下さい
家の外だけ
子ども が行かない部屋
換気扇の下
空気清浄機を つけて
どこ ででも 吸う
その他工夫し ている こ と があれば(
)
( 参考: 換気扇や空気清浄機では、 子ど も へのたばこ の害を 完全に防ぐ こ と はでき ま せん)
Q6. (全ての方へ)知っていたことには○
知らなかったことには× をご記入下さい
喫煙によ り 母乳中にニコ チン が出て、 乳児に不眠、 下痢など を 起こ すこ と がある
子ど も がたばこ の煙を 吸わさ れる と 喘息・ 気管支炎・ 肺炎を 起こ し やすく なる
乳幼児突然死症候群は同居家族の喫煙と 関係がある
親が喫煙する と 子供の脳に鉛が沈着し て知能低下を 起こ すこ と がある
喫煙は男女と も に不妊の原因になる
喫煙は ED( 勃起不全) の原因と なる
喫煙する と 皮膚の老化が 10 年早く 進み、 し み・ し わが増える
(
(
(
(
(
(
(
)
)
)
)
)
)
)
( 上記の事実は喫煙の害の一部です)
Q7. 喫煙について何かご質問等ありましたら、なんでもお書き下さい。
最後に、 やめる 気さ えあれば、 たばこ は必ずやめら れま す。 ご相談は保健師ま でお気軽にどう ぞ。
洲本市保健センター TEL 22-3337
結果 妊婦喫煙率
妊娠初期(最終月経時)喫煙率と妊娠届出時喫煙率
30%
25%
24.1%
24.8%
21.3% 24.3%
23.9% 23.4% 23.7%
20.3%
20.9%
19.7%
20%
21.5% 21.7%
18.8%
17.6%
20.5% 20.6%
18.1%
17.6%
15.9%
最終月経時喫煙率
15%
妊娠届出時喫煙率
20代喫煙率(JT発表分)
10%
8.3%
7.0%
5%
6.4% 6.9%
5.8% 5.3%
5.9%
4.6%
4.1% 4.2%
0%
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
妊娠初期(最終月経以後妊娠判明まで)喫煙率 20.6% 妊娠届出時喫煙率 4.2%と減少傾向には
あるが、若年女性喫煙率の全国的な傾向ともいえる。喫煙妊婦の8割が妊娠届までに禁煙している。
年齢別妊婦喫煙率
50%
46.9%
45%
40%
35%
30%
27.3%
26.2%
最終月経時喫煙率
25%
20%
15.9%
16.8%
15%
10%
6.2%
6.5%
10代
20代
5%
妊娠届出時喫煙率
14.9%
JT発表喫煙率(2009年)
15.0%
5.0%
4.5%
30代
40代
30代
1431
40代
44
0%
n
10代
81
20代
1655
合計
3211
年代別では、最終月経時喫煙率は、10代46.9%、20代26.2%、30代15.0%、40代
27.3%と10代が非常に高く30代が最も低かったが、妊娠届出時喫煙率はそれぞれ
6.2%、6.5%、5.0%、4.5%と大きな違いはなかった。喫煙する女性は早く妊娠する、あ
るいは遅く妊娠する傾向がある。
同居喫煙者がいる割合
80%
70%
60%
50%
40%
74.3%
74.5% 65.3%
64.6% 63.6%
63.2%
61.4% 61.3%
54.9% 55.5% 56.6%
52.3% 51.6% 53.8%
49.7%
47.5%
44.2%
42.0%
41.2% 42.4%
30%
受動喫煙率
20%
20代男性喫煙率(洲本市応急診療所受診者)
10%
0%
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
同居者に喫煙者がいる割合は減少が続いているが、男性喫煙率の減少によるもの
であろう (同居喫煙者のうち9割は夫である)
同居喫煙者の喫煙方法/場所
(複数回答)
45%
40%
38.8%
35.7%
35%
30%
32.9%
31.4%
29.7%
32.0%
30.2%
27.8%
23.7%
22.4%
22.5%
20%
20.8%
15%
14.5%
21.9%
26.4%
22.9%
換気扇
24.9%
22.8%
24.2%
どこでも
20.3%
外だけ
9.9%
7.7%
6.3%
17.3%
11.4%
17.6%
15.4%
14.6%
14.4%
12.9%
10%
5%
32.4%
18.0%
17.0%
35.3%
29.9%
26.8%
25%
32.8%
32.1%
37.0%
13.2%
12.3%
9.1%
行かぬ部屋
清浄機
13.2%
11.0%
8.0%
9.4%
7.4%
6.4%
5.9%
2009
2010
4.4%
0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
同居喫煙者がどこでも吸っている割合が2001年の31.4%から2010年は9.4%と急減し
ており、外だけで吸う割合が17.0%から35.3%に増えており、ちょうど逆の動きが見られ
る。換気扇で吸う割合も20.8%から38.8%に増えており、空気清浄機を使っている割合
も6.3%から5.9%へとあまり変わりなく、さらに受動喫煙対策の啓発が必要である。
妊婦喫煙のリスクに関する有知識率の推移
100%
90%
93.0%
86.9% 86.8% 86.3% 88.9% 87.2%
92.4%
90.3% 92.0%
94.7%
80%
早産や流産
低体重児
70%
胎盤の血流
60%
皮膚の老化
50%
胎盤剥離
40%
SIDS
先天異常
30%
34.8%
20%
10%
22.6%
26.4% 27.8% 27.8%
30.1%
27.5%
知能低下
不妊
ED
16.8%
10.6% 12.6%
0%
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
全体的に有知識率は増加している。グラフにはないが特に喫煙妊婦でその傾向は顕著
である。EDで増加率が大きいが、ここにEDを入れているのは、口コミによる男性の禁煙
啓発効果を狙っているためである。
妊婦喫煙のリスクに関する有知識率の比較
在住者と転入者
90%
(実線)
80%
(点線)
SIDS(在住)***
70%
SIDS(転入)
60%
皮膚の老化(在住)*
50%
皮膚の老化(転入)
40%
知能低下(在住)***
知能低下(転入)
30%
ED(在住)***
20%
ED(転入)
10%
*p<0.05 ***p<0.001
「転入」との間に有意差あり
0%
2001-2005
2006-2009
乳児健診時に聞いた妊婦喫煙のリスクについて、妊娠届出時にも調査した洲本市「在住」者
と、その後乳児健診時までに転入してきて妊娠時の調査をしておらず、パンフレットや有線
放送などの啓発があまりなされていないと思われる「転入」者とを比較すると、いずれも年を
追って有知識率は増加傾向にあるが、二者の間にも有意の知識差があり、これは洲本市在
住者へのこれまでの啓発効果があったと考えた。
洲本市健康福祉館
考察
● 妊婦喫煙率や受動喫煙率は減少傾向に
はあるが10代妊婦の禁煙が課題である。
● 受動喫煙対策は、どこでも吸う割合は急減
しているが、引き続き啓発が必要である。
● 洲本市で実施してきた調査自体やパンフ
レット(右図)などによる啓発は効果があったと
思われ、今後もさらに妊婦の禁煙支援、再喫
煙防止などの有効な方策も探っていきたい。
参考 :
洲本市禁煙専門外来&禁煙支援センターホームページ
http://www1.sumoto.gr.jp/shinryou/kituen/
2003年から洲本市の全妊婦に配布している
パンフレット
(HPから各種パンフダウンロードできます)