「乳幼児突然死症候群(SーDS)および乳幼児突発性危急事態〈ALTE)の

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平成24年度厚生労働科学研究費補助金(成育疾患克服等次世代育成基盤研究事業)
「乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明
および予防法開発に向けた複数領域専門家による統合的研究」
分 担 研 究 報 告 書
両親における乳幼児突然死症候群の認知度
研究分担者:横田俊平(横浜市立大学大学院医学研究科発生成育小児医療学教授)
一
研究協力者:岩崎志穂 (横浜市立大学附属市民総合医療センタ 総合周産期母子医療センター)
【
要
旨
】
乳幼児突然死症候群(SIDS)の予防に対しては適切な保育環境が重要であることより、
養育者であるご両親の存在が大きい。 平成19年度に出産を控えたご両親対象に行つたアン
ケートでは76.5%がSIDSを知つていると答え、情報源としてはテレビが優勢であった。今
回同様のアンケートを再度行い、 認知度の変化の有無を調べた。 対象は横浜市立大学附属
病院で行われている両親学級への参加者のうちァンケートへの回答のあった93名(父26
名、母67名)。 SIDSにっいては全体の72.0%が「知つている」と答えた。母親のうち83.6%
が「知つている」と答えたのに対し父は42%と差を認めた。全体の認知度に大きな変化は
ないものの父親の認識度が低下している可能性がある。 また SIDS にっいての詳細では 5
年前の調査同様死亡順位で第3位であることや好発年齢にっいて知つていたのは半数以下
であり、危険因子の各項目にっいての認知度のばらっきも多かった。テレビやインターネ
ットを利用した正しい啓発が夫婦ともに行われることが必要である。
【
目
的
】
平成16年度厚生労働省研究班が公表した
亡順位で第3位であることや好発年齢にっ
いて知つていたのは半数以下であった。 危
「乳幼児突然死症候群(SIDS)に関するガイ
険因子の各項目にっいての認知度のばらっ
ドライン」の中で「乳幼児突然死症候群
きも多かった。 公共機関で作成した資料よ
(SIDS)の大半は、 最も社会的に脆弱な生後
りもテレビ,雑誌、新聞から知識を得てい
6ヵ月未満の乳児であり、 またその発症に
る割合が高い事も判明した2)。前回の調査
保育環境が関与するところから、適切な保
より5年を経てSIDSに対する意識の変化
育環境が重要であること、母親や父親、そ
や情報源の変化の有無を調べるため同様の
の家族の存在が大きいこと、 などを一般社
アンケートを再施行した。
会に啓発していくことが重要である」と述
'
べられている )。これを受けて我々は平成
【対象および方法】
19 年度にこれから出産を控えたご両親へ
対象は24年8月から平成24年12月まで
のアンケー トを行い一般社会における
に横浜市立大学病院産婦人科で分娩前に行
SIDS の認知度の実態調査および啓発活動
われた両親学級への参加者95名。アンケー
に向けた研究を行つた。 この中でご両親の
トへの回答のあったSIDS に関するアンケ
76.5%がSIDSを知つていると答えたが、死
ートを配布した。回収数は93名(父26名、
ですか。
2.
乳幼児突然死症候群にっいてどこで知
母 6 7 名 ) 、 回 収 率 は 9 7. 9 % で あ っ た 。
り ま し た か ? (複数回答可)
1.
乳幼児突然死症候群(SIDS)と言う言葉
テレビ
をご存知ですか。
母子手帳
雑誌
平成19年度
知つている
新聞
150:76.9 %
知り合いから
インターネット
( 父 4 5 : 6 0 % 、 母 1 0 5 : 8 7.5 % )
知らない
45:23.1%
第一子の出産時
9 5 4 2 1
3 1 1 1 1 7 4 3
【結果】
ラジオ
(父30:40%、母15:22.5%)
どこで知つたか忘れた 5
その他 (自由記載)
平成24年度
知つている
育児書(1)、授業(2)
67:72.0%
(父11:42.3%、母56:83.6%)
知らない
26:28.0%
( 父 1 5 : 5 7 . 7 % 、 母 1 1 : 1 6 .4 % )
(人)
0
5
母
0
3
父
0
4
平成19年度
0
2
0
1
0
平成24年度
3.
乳幼児突然死症候群が0歳児の死亡原
因の3位であることをご存知ですか。
4.
知つている
1 0 : 1 4. 9 %
知らない
57:85.1%
乳幼児突然死症候群がおきやすいのは
生後2から6ケ月であることをご存知
「知つている」答えた方(67名) に は 2 番
以降の質問にすべて答えていただき 「知ら
ない」と答えた方には2~6番をとばし7
番に答えていただいた。
34
知つている
16:28.1%
知らない
51:71.9%
35
5.
-
乳幼児突然死症候群と窒息は違う事を
ある
24:25.8%
ご存知ですか?
ない
6 9 : 7 4.2 %
知つている
38:56.7%
知らない
2 9 : 4 3. 3 %
【考察】
平成19年度と24年度を比較すると全体の
SIDSの認知度は大きく変化がないように
・
見える。 しかし、父親、母親に分けて検討
知つている 口知らない
100%
80%
60%
40%
20%
0%
したところ、父親においては「SIDSを知つ
ている」と答えた方の率は5年前と比較し
減 少 し て い た 。 両年度の父親の認知度を比
較したカイ二乗検定では p=0.09 と有意差
は出なかったが、アンケート回答数の差が
大きいためとも考えられる。父においての
死亡原因 好発年齢窒息と異危険因子
第3位
なる
認知度が下がり傾向にある可能性があり、
今後の動向を注意深く見守る必要がある。
一方、 母親においては両年度に大きな差が
6.
乳幼児突然死症候群の危険因子として
な く 一 定 で あ っ た 。 母親の認知度が一定で
知つているものにマルを付けてくださ
父親だけ認知度の低下が進むと夫婦間の意
い。(複数可)
識の乖離が進んでいくことになり、SIDS
に対する姿勢も足並が揃わなくなる。
うっぶせ寝
48:71.6%
「SIDSの発症に保育環境が関与する」 「適
父親の喫煙
2 2 : 3 2. 8 %
切な保育環境が重要である」 「母親や父親、
母親の喫煙
2 5 : 3 7. 3 %
その家族の存在が大きい」のであれば、ご
母乳で育てない
9:13.4%
両親の足並みは揃うべきである。
危険因子にっいては知らない 1 4 : 2 0 . 9 %
情報源としては5年前と変わらず、テレビ
が群を抜いていた。前回と異なる点は、母
% % % % % %
0 0 0o 2
8 6 4 0 0
0
1
■知つている 口 知 ら な い
子 手 帳 が 上 位 に 挙 つ た こ と で あ る 。 今回は
新しい母子手帳への切り替えがあり、手帳
への関心が高かったためと思われる。 しか
し、 母への啓発には母子手帳をきちんと読
むように指導するだけでも有効かもしれな
い が 、 父が母子手帳を丹念に読むことは稀
だと思わる。先に述べたように、夫婦間の
うっぶせ寝父の喫煙
母の喫煙非母乳哺育
意識の乖離は避けるべきであり、父への啓
発方法が今後の課題である。 イ ン タ ー ネ ッ
トの普及にも係らず、インターネットを
7.
赤ちゃんの蘇生 (呼吸や心臓の動きが
SIDS の 情 報 源 と し て 挙 げ る 人 の 増 加 は 認
停止した時の応急処置) にっ いての話
めなかった。 これから子どもを迎える家庭
を聞いた、 ま た は 読 ん だ こ と が あ り ま
で は 認 識 さ れ て い る も の の 、 社会全体では
すか。
話題にのぼる機会が少ないためかもしれな
(SIDS)の診断のためのガイドラインの作
い。 5 年 前 か ら 引 き 続 き 情 報 源 と して有用
であるとの結果が出ているテレビを使つ
成およびその予防と発症率軽減に関する研
たり、現在多くの人が使用しているネット
究 」 平 成 1 4 年 度 ~ 16年度総合研究報告書.
を使つたりして、父・母両方、ひいては子
2 0 0 5 年 3 月 、 2 3 26
どもに直接関係のない人々にも啓発できる
2)厚生労働省研究班編:乳幼児突然死症
方法が望まれる。
候群(SIDS)の発症と予防に対する普及啓
5年前と同様、 「知つている」 と答えた方の
発 に 関 す る 研 究 . 子ども家庭総合研究事業
中でもSIDSが乳児の死亡原因の第3位で
「乳幼児突然死症候群(SIDS)における科
ある事や好発年齢が生後2ヶ月から6ヶ月
学的根拠に基づいた病態解明および臨床対
で あ る 事 に っ い て 知 つ て い た の は 「SIDS
応と予防法の開発に関する研究」平成19年
と 言 う 言 葉 を 知 つ て い る 」 と答えた方の中
度総括・分担研究報告書. 2008年3月、84 8 7
でも半分以下であった。 正しい詳細な知識
3)厚生労働省研究班編:乳幼児突然死症
がなく、「名前だけ知つている」ご両親が多
候群の発症と予防に対する普及啓発に関す
く存在すると思われる。危険因子では「う
る 研 究~医 学 生 ・ 初 期 研 修 医 に お け る 乳 幼
つぶせ」を知つていると答えた方は7割に
児 突 然 死 症 候 群 の 認 知 度 ~ . 成育疾患克服
上り、前回の8割に比べやや低下している
等次世代育成基盤研究事業 「乳幼児突然死
ものの「うっぶせ」がSIDSの危険因子と
症候群(SIDS)における病態解明と臨床的
して一般知識に定着している事が判明した。
対応および予防法開発とその普及啓発に関
しかし、他方、「喫煙」を危険因子として認
す る 研 究 」 平 成 2 0 年 度~2 2 年 度 総 合 研 究
識しているご両親は半数鵜を下回り、「非母
報告書. 2 0 1 1 年 3 月 、 144 149
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乳保育」 を 危 険 因 子 と し て 認 識 し て い る 御
両親は 13.4 % と 特 に 少 な か っ た 。 こ の よ う
に、 「うっぶせ」以外の危険因子にっいては
認識度が低く、 これからの啓発を考えて行
かなければならない。
最後の蘇生にっいて問いには 「 赤 ち ゃ ん の
蘇生にっいての話を聞いた, ま た は 読 ん だ
事がある」と答えた人は全体の1/4程度で
あ り 、 5 年 前 と ほ ぼ 同 じ 率 で あ っ た 。 自由
記載の中に 「 発 見 し た 時 の 対 処 法 が 知 り た
い」 と い う 意 見 が あ り 、 前 回 も 述 べ た こ と
であるがSIDSを啓発するにあたって蘇生
法を併せて知らしめるのも良いのではない
かと考えた。
【参考文献】
1)厚生労働省研究班編:乳幼児突然死症
候群(SIDS)に関するガイドライン.子ど
も家庭総合研究事業 「乳幼児突然死症候群
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