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長時間労働の仕組み
2014年12月9日
人事労務管理論B (第10回)
LT1011教室
LT1012教室
先週の復習
長時間労働の国・日本

時短先進国ドイツと長時間の国日本
1980年代、年間で約500時間の違い
500÷40=12.5 つまり3ヶ月強に相当

政府の公約「経済運営5カ年計画」
1990年代初期には年間総実労働時間を
1800時間程度まで短縮すると約束
週48時間労働から40時間労働へ(1988年)
2004年、その目標を廃棄!
2
労働時間法制の基礎知識(3)
年次有給休暇


第39条 使用者は、6箇月間継続勤務した労働者
に、10日間の有給休暇を与えなければならない。
2 使用者は、1年6箇月以上継続勤務した労働者
に対しては、1年ごとに、前項の日数に、次のように
加算した有給休暇与えなければならない。
1年1日、2年2日、3年4日、4年6日、5年8日、
6年以上10日
(すべてわかりやすく条文を修正してある)
3
時間外勤務をする理由
電機連合(2007)
時間内では片付かない仕事量
JILPT(2007)
56.0
時間内では片付かない仕事量
57.2
自分の仕事をきちんと仕上げたいから 34.1 突発的な業務がしばしば発生する
45.9
要員が足りない
27.9
人員削減で人手不足
20.3
所定外でないとできない仕事がある
13.4
取引先と時間を合わせる必要がある 18.8
業務をこなせる人材が少ない
11.9
事業活動の繁閑の差が大きい
16.5
事業活動の繁閑の差が大きい
9.9
仕事の進め方に無駄が多い
10.3
手当を増やしたい
6.1
より高い成果を上げたい
8.2
上司がいて先に帰りづらい
4.1
上司や同僚がいて先に帰りづらい
6.2
進め方に無駄が多くダラダラ残業する 3.6
手当を増やしたい
3.5
残業が評価される傾向にあり、査定に影響
する
3.3
長時間働く方が評価される
1.8
仕事と自己啓発の時間も兼ねている
2.4
定時で帰るより働いている方が楽しい 0.8
黒田兼一他編著『人間らしい働き方・働かせ方』99ページ4
サービス(不払い)労働時間の実態
2004年6月度の実態(月時間)
平
均
Total
平均
35.4
38.1
29.4
20歳代 30歳代 40歳代
43.2
27.8
42.4
32.8
34.5
27.2
50歳代 高卒以下 大卒以上
27.2
32.4
33.2
24.5
小倉・藤本『日本の長時間労働・不払い労働時間の実態と実証分析』
JIL労働政策研究報告書№22、2005年
41.1
35.7
上段:男性
下段:女性
なぜサービス残業をするのか
・そもそも残業時間が決められている
・仕事が多すぎる
・仕事をこなさないと昇進に悪影響
5
日本の労働時間の問題点

所定内労働時間と所定外労働時間
所定内労働時間は
所定外労働時間は

サービス残業
無給の残業、フロシキ残業、過労死、過労自殺

低い年次有給休暇取得率
残業を前提とした

短時間労働と長時間労働の共存!
正規従業員の
非正規従業員の
6
労働法の規制緩和の経過
年 月
内
容
1985年6月
労働者派遣法の成立
1987年9月
労基法改正(変形労働時間制拡大、フレックスタイム制、専門業務型
最長労働制)
1993年6月
労基法改正(1年単位の変形労働時間制、週40時間労働制)
1996年6月
労働者派遣法改正(対象業務16から26業務に拡大)
1997年6月
労基法改正(女子保護規定の撤廃、専門裁量制の対象業務拡大)
1998年9月
労基法改正(企画業務型裁量制、1年単位の変形労働時間制要件
緩和、有期雇用期間の上限を3年へ)
1999年6月
労働者派遣法改正(原則自由化ネガティブリスト方式へ)
2003年6月
労基法改正(企画業務型裁量制の要件緩和)
派遣法改正(製造業派遣解禁、3年ルールへ)
2006年12月 労働政策審議会、ホワイトカラー・エグゼンプション制度導入を答申
7
労働時間制度の規制緩和のねらい

効率性の追求
仕事にあわせて働く
→

労働時間規制制度の緩和
時間規制のない層の拡大 →
仕事にあわせた働かせ方 →
8
名ばかり店長問題
ーーー労基法41条2号の管理監督者ーーー
労基法には
「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理
の地位にある者又は機密の事務を取り扱う
者」には労働時間と休日の規制を適用しない
 名ばかり店長の怒り

マクドナルド
すき家
コナカ
セブンイレブン
9
労働時間の柔軟化(規制緩和)

フレックスタイム制
コアタイムを除いて

変形労働時間制
合法的残業手当不払い策
1週単位:
1ヶ月単位:
1年単位

みなし労働時間
実際の労働時間にかかわりなく決められた時間働いたとみ
なす制度
・事業場外労働:
・裁量労働:
10
裁量労働制
 裁量労働制
みなし労働時間制の一種

種類
専門業務型:業務の性質から労働者の裁量に委ね
る必要があると思われる19業種
研究者、デザイナー、プログラマー、新聞記者、ディレク
ター、弁護士、大学教員、中小企業診断士、公認会計士
企画業務型:事業場の事業の運営に関する業務
企画、立案、調査及び分析の業務
適用に当たっては本人の書面などの同意が必要!
11
労働時間規制緩和の諸問題(1)

みなし労働時間制は日本独特な制度

アメリカのエグゼンプション制度に酷似

「みなし」は時間規制の緩和策だが、
撤廃・適用除外ではない
専門業務型≒
企画業務型≒
12
労働時間規制緩和の諸問題(2)

「裁量労働制」は、長時間労働を誘発!

なぜ長時間労働になるのか?
①
②

効率性と同時に人間性(ワーク・ライフ・バランス)も
重視すべき
13
多すぎる仕事量
業務量=要員マンパワー×労働時間
人数×スキルレベル
業務量を変えないとすれば
時間短縮するためには
14
幻に終わった??
ホワイトカラー・エグゼンプション制度

2005年6月、経団連「WCE制度に関する提言」
・みなし労働時間制度
・WCの仕事は

2006年11月、経済同友会の意見書
・現行制度を活用すべき
・長時間労働の是正や仕事の進め方の改善

2006年12月、厚労省労働政策審議会が答申

2007年2月、同審議会が法案要綱を答申
15
今また復活?
-----アベノミクスの第3の矢(成長戦略)

「日本再興戦略」(2014)
時間ではなく成果で評価することができるような新
たな労働時間制度の創設!

その条件として
「例えば少なくとも年収1000万円以上」というけど

その新たな労働時間制とは
労働時間の長さと賃金のリンクを切り離す
16
アメリカのWCE制度

公正労働法(FLSA)
週40時間超の労働に対する割増賃金(1.5倍)の支払い
義務を適用除外

アメリカの労働時間法制
・日本のような法定(上限)労働時間という概念がない
・週あたり40 時間を超えて働かせる場合は割増賃金を
支払う義務があるという規定
・エグゼンプションexemptionとは
・割増賃金を課して時間規制と雇用増大をねらったもの

時間管理の適用除外ではなく、
17
ヨーロッパのWCE制度

ドイツ
一日8時間以上の労働禁止の適用除外(管理者等)

フランス
週35時間以上の労働禁止の適用除外(経営幹部)

イギリス
個別的オプトアウト:個別に書面での同意があれば
適用除外できる制度
18
構想されていたWCE批判(1)

導入の根拠がない:

仕事の質と量を不問のままでは、

現行でもエグゼンプション制度がある(労基法41条2
号の管理監督者)
全国の管理職の57%が「自分は名ばかり管理職」と回答

アメリカと日本の法体系、労働市場、労働慣行の相
違を無視している:
日本は
アメリカは
19
構想されていたWCE批判(2)

賃金管理と時間管理の意図的な結合
「賃金がどう決まるか」という問題と「一日何時間働く
か」とを同一レベルで論じてはならない

労働CSRという視点
CSRとは、企業の行動について、社会がそれを評
価し、責任を果たすように監視すること
国連のグローバルコンパクト
OECD多国籍企業行動指針
20