和歌山大学における 星空案内人養成について 富田晃彦*、尾久土正己** (和歌山大学) *教育学部 [email protected] **観光学部 [email protected] 星のソムリエ認定制度の企画から評価まで 「星のソムリエ資格制度の全国普及モデルの開発」研究会 2008年2月12日、 キャンパスイノベーションセンター東京 和歌山では… ごく普通の、小さい地方大学での授業を借りてやってみた。 そのような大学生を対象にやってみるとどうなるか、という 試行を行った。星空「準」案内人のレベルで進めた。 結論: 教養の授業で試行したが、適さない。 何でも資格好きの大学生でも、この資格は大学生の 数%が目指す程度。したがって… →星空案内人養成を目的のひとつとした 学科、ゼミなら適している(来年度以降の計画)。 和歌山大学とみさと天文台(距離40km)の連携の一つ である学芸員実習の延長として考えていくこともできる。 教材の標準化は、とても意義深い。大学の授業としても おおいに磨きがかかった。受講生の緊張も違う。 大学の授業を使った理由 (1) 教養科目「宇宙科学」(富田も担当)新設のタイミングだった。 (2) 大学の授業なら、体系的な授業がやりやすい。 (3) 一般の大学生が、このような資格にどれくらい興味を 持つか、どれくらい難しいと感じるか、知ることができる。 → [和歌山での、今年度の狙い] (4) 富田&尾久土の、いつものノリ。 利用した授業 科目名 担当者 開講期間 曜日・時限 対象学生 授業形態 単位数 宇宙科学 (Astronomy and Cosmology) 富田晃彦(教育学部、天文)・石塚亙(教育学部、物理) 後期 月曜日・2時限(90分授業) 全学部 全学年 講義 2単位 全15回のうち、富田担当の8回(ガイダンスを除く)で、 「準案内人」向けの講義部分を行った。 石塚氏担当分は、「案内人」と関係なく、宇宙論の授業。 といっても「宇宙図」も利用したので、「方向」は似ている。 講義部分(「宇宙科学」の8回、富田担当) * 10/15: 第1章「さあ、はじめよう」1回目 → 終了 * 10/22: 第1章「さあ、はじめよう」2回目 → 終了 * 10/29: 第1章「さあ、はじめよう」3回目 → 終了 * 11/ 5: 第4章「望遠鏡のしくみ」1回目 → 終了 * 11/19: 第4章「望遠鏡のしくみ」2回目 → 終了 * 11/26: 第2章「星空の文化に親しむ」 → 終了 * 12/ 3: 第3章「宇宙はどんな世界」 → 終了 * 12/10: 認定試験 (第1章、第4章) 実技部分(尾久土担当、来週) 2/18-21に、希望者に夜間、望遠鏡などを使っての 学内での指導を予定(受講はいずれか一日、2コマ分) 1,2,3,4章の講義の出席+認定試験の合格+実技の出席 → 準案内人の資格に届く まず学内で準案内人 → 公開天文台で錬成して案内人 今回はこの段階まで 大学と天文台の連携は和歌山の特徴 (来年度以降の取り組み) どうしてこの授業を取りましたか? 10月15日に質問 「星空案内人」準拠の授業をする、ということは、10月1日のガイダンスで連絡済 回答総数:460 「宇宙」だから / 「星空案内人」だから / 何となく、の3つから 宇宙:299 / 星空案内人:61 / 何となく:89 / 分類困難:6 / 無回答:5 「宇宙」と「案内人」の回答は互いに独立ではないだろう。 「宇宙の話」は、やはり大人気。富田が昨年度担当した「地学B」は 40人だった。ガイダンスの際「物理の臭いが強いぞ」「単位は辛いぞ」 とさんざん脅しても、この受講者数(この年度、受講者数の第2位)。 受講者数の推移 受講確認メールの返送数より 10/15: 460 10/22: 454 10/29: 456 11/ 5: 460 11/19: 439 11/26: 415 12/ 3: 401 12/10: 479(試験) 「宇宙科学」登録者: 603 授業に1回でも出た者(含試験だけ受験): 538 試験を受けた者: 479 教育学部 経済学部 システム工学部 3回生以上 33 26 22 32 16 12 113 90 71 2回生 2 1 1 19 17 13 147 138 124 1回生 86 83 78 16 15 15 155 152 143 講義室は、大学で最も大きい部屋、それでも419人収容! 和歌山大学は受講者数制限をしません。 「講義部分」合格者: 110 うち「実技部分」希望者: 27 教育学部 経済学部 システム工学部 3回生以上 8 4 3 0 24 5 2回生 0 0 1 0 21 4 1回生 24 5 2 0 27 6 「宇宙科学」登録の603人のうち、 星空準案内人を得る見込みの者: 27人 教育学部3回生以上で(比較的)人気 →教員という職業を意識、だろう。 ただ、全体として、そんなに資格に「血眼」ではない。 ◀ 第1章の試験の採点基準 星空案内人認定講座としては、7問 中6問以上の正解が合格の基準。 「宇宙科学」の試験としては、これを 25点満点で採点した。 また、 受講者向け ウエブサイトを 開設した。 第1章の問題 7問中の正解数 0 0 1 2 2 7 3 27 4 97 5 112 認定試験合格の水準 6 123 7 111 平均 5.34 (正解率: 76%) 第4章の問題 6問中の正解数 0 6 1 21 2 35 3 76 4 131 認定試験合格の水準 5 119 6 91 平均 4.14 (正解率: 69%) 試験結果の統計 (受験者数: 479) 第1章の問題 25点満点の得点 10点以下 9 11〜15点 79 16点 14 17点 37 18点 47 19点 36 20点 26 21点 47 22点 56 23点 18 24点 25 25点 85 平均 19.70 (得点率: 79%) 第4章の問題 25点満点の得点 10点以下 38 11〜15点 98 16点 20 17点 29 18点 39 19点 34 20点 40 21点 28 22点 39 23点 42 24点 33 25点 39 平均 18.24 (得点率: 73%) 第1章、第4章の得点合計 50点満点の得点 25点以下 34 26〜30点 55 31〜35点 69 36点 20 37点 25 38点 30 39点 22 40点 31 講評: 受講生は、期待以上によく勉強 した。ただ、星空案内人の資格 は、少々壁が高かったか? 41点 22 42点 18 43点 21 44点 26 45点 29 46点 15 47点 20 48点 10 49点 14 50点 18 平均 37.93 (得点率: 76%) まとめ 1. 大学生には「星空案内人」は魅力的に感じてもらえた (講義担当の富田の感想)。「宇宙」は人気だ。 2. ごく普通の大学生にとって、「星空(準)案内人資格」は、 「血眼」になって取得を目指す程ではないようだ。 3. 無バイアスに大学生に提供する必要はない。したがっ て、教養の授業を使う必要まではない。 4. 来年度以降、星空案内人を目指すことを目的とする学 科(観光学部内)やゼミ(教育学部天文ゼミや自主演 習)での養成を検討。学内の講義+実習で準案内人、 その後、みさと天文台など、地域の公開天文台での連 星を経て正案内人へ。学芸員実習の天文特化版。学芸 員実習での経験をもとにしたい。 謝辞 「星空案内人」という概念を練り上げてこられた、柴田 さんを始め、関係の皆様方に敬意を表するとともに、 和歌山での試行で激励を下さったことに感謝します。 和歌山大学では、天文学ゼミや観光学部、学生自主創造科学センター (クリエ)や生涯学習教育研究センターにおいて、宇宙を案内する人の 養成を核に、引き続き科学コミュニケーター養成で頑張りたい。 星のソムリエ資格制度で実現した教材の標準化はとても意義深いもの と考えており、地方大学での裾野拡大と連携の観点でも、今後も星のソ ムリエ資格制度の活用を積極的に考えたい。この観点での「仲間作り」 も長年目指していたもの(光学赤外線天文連絡会元運営委員として)。
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