ATLAS SCTシリコン検出器に よる飛跡再構成の研究

FTBLを用いたSCTモジュールの試験
とビームパラメータの測定結果
筑波大学
塙 慶太
松隈恭子、原和彦、目黒立真(筑波大)
海野義信、寺田進、池上陽一、高力孝、幅淳二 (KEK)、川崎建夫(新潟大)
他、KEK加速器の方々から多くの助言を頂きました
LHC(Large Hadron Collider)
ジュネーブのCERN(欧州原子核研究機構)における
円周27kmの陽子陽子衝突型加速器
重心系エネルギー:14TeV
ルミノシティー:
1.0 1034 cm 2 s 1
地下約100mに4箇所の観
測点がある
ATLAS
LHCの汎用型検出器
最大の目標はHiggs粒子の発見
中心から、内部飛跡検出器、カロ
リメーター、ミュー粒子検出器で
構成
ATLASーJ SCTグループは、内部飛跡検出器のSCT(Semi Conductor Tracker)
バレル部のシリコン検出器を建設し、運転調整に携わっている。
研究目的
• SCT装置を操作し、SCTの動作特性や飛
跡再構成を理解する。
– 電子ビームを使って、検出効率や位置分解能などを
評価
• SCTの優れた分解能を利用し、FTBLの
ビーム特性を測定する。
SCT検出器
SCTモジュールはストリップ型検出器で、ベー
スボードをはさんでシリコンセンサーを表裏に
40mradの角度を持たせて貼り付けてある。シ
リコンセンサーのストリップ間隔は80μmであ
る。
⇒位置分解能:
ストリップを 横切る方向 16μm
沿った方向 580μm
バレルSCT
読み出し
Alストリップ
荷電粒子
SiO2
p+
h
nバルク
逆バイアス電圧
e h
h e
n+
e
動作原理
シリコンセンサーに逆バイアス電圧をかけ、
nバルクを全空乏化する。ここを荷電粒子が
通過すると電子-ホール対が生成され、電場
によってドリフトし、ストリップ電極に信号が
誘起される。
KEK富士テストビームライン(FTBL)
SCTモジュール:センサー8面
(6.4×12.8cm)
Cooling box
設定温度
10℃
電子ビーム
9cm
電子: 2~3 GeV
シンチレーター
(6×12cm)
matsukuma
hanawa
SCTDAQ system
SCTDAQとは
SCTモジュールの性能評価を行うた
めに開発されたVMEに基づくデータ
収集システム
バイアス電圧供給:SCTHV
低電源供給: SCTLV
クロック&コマンド制御:CLOAC
データバッファー:Mustard
テストパルスによるゲイン測定や環境
温度測定などのソフトウェアを含む
VMEモジュール
開発したオンラインモニター
飛跡c2分布と残差分布( Alignment前後)
(alignment後)
(alignment前)
注目するmodule以外の3点を直
線fitし、次式によりc2を評価した。
c2分布
2枚目モジュールの残差分布
:実際のヒット
:直線フィットの予測位置
2枚目モジュール
の残差分布(x)
0.00 mm
[mm]
si :位置分解能 (i=x,y)
(σx:0.016 mm; σy:0.58 mm)
測定値
(多重散乱)
位置分解能(飛跡の不確かさを含む)
Y軸
X軸
Module 1:
Module 1:
53.07±0.14 µm
(58. 91±0.19)
Module 2:
29.76±0.07
(29. 03±0.05)
1.202±0.004 mm Module 2:
(1.503±0.013)
1.014±0.004
(0.971±0.003)
Module 3:
Module 3:
28.86±0.06
(30.03±0.06)
Module 4:
52.75±0.14
(60.01±0.20)
1.03±0.00
(1.107±0.007)
Module 4:
1.25±0.008
(1.571±0.003)
モジュール検出効率
efficiency
対象モジュールの両面が反応した数(ずれ<R)
他の3モジュールで再構成された飛跡数
x方向のR依存性
±R
1
2
※3モジュールで構成された
2
トラックのχ <3
3
4
R
SCTの品質検査で不合格のモジュール
を用いたので
• 不良チップの個性がある
• 高めの閾値電圧Vth=2fCで運転した
モジュール検出効率の場所依存性
-20<y<-5
-20<y<-5 でのX依存性(Module
1-4)
ヒット分布(module1)
1
Y軸[mm]
0.95
efficiency
0.9
0.85
mod1
mod2
mod3
mod4
0.8
0.75
ハイブリット基板
0.7
-30
-20
-10
0
10
20
30
x[mm]
場所ごとのefficiency(y)
-5<x<5
Y依存性
1.1
1.05
efficiency
1
0.95
0.9
module1
module2
module3
module4
0.85
0.8
0.75
X軸[mm]
0.7
-70
-60
-50
-40
-30
-20
-10
0
y[mm]
10
20
30
40
50
60
70
FTBLビームの位相空間
x (ビームダンプの上流198cm)
傾き=0とした場合、4モジュール目
27cm で約5mmのずれに相当
x,y共に正の相関⇒ビームは広がっている!?
dy
dz
dx
dz
dy
dz
y
x
mm
mm
FTBLのwaistの評価
飛跡を重ねると、自由空間で最もビームが絞れた場所(waist)が評価できる
x
最下流Qマグネット(Q3,Q4)の電流値を変えた
Q3=0,Q4=0
Q3,Q4=“best”
SCTの位置
ダンプ上流198cm
2m
2m
y
焦点:-2.47±0.11m
全幅:25.31±0.51mm
焦点:-3.40±0.32m
全幅:31.63±0.90mm
2m
2m
z
焦点:-1.24±0.12m
全幅:41.93±0.20mm
焦点:-2.12±0.15m
全幅:44.35±0.65mm
Waistの位置と半値全幅のQ依存
Waist位置[m]
半値幅[mm]
50
4
3.5
40
3
2.5
Y Waist
2
30
x FWHM
X Waist
y FWHM
20
1.5
1
10
0.5
0
0
0
1
1.5
Q3, 0.5Q4の設定電流に依存し、waist位置が動くことを確認
0
0.5
1
1.5
Waist位置で、ビーム幅は約15mm(Q4軸方向)、40mm(Q4垂直)
Q3、Q4の電流値
Q3、Q4の電流値
運動量分散と位置依存
Vertical [mm]
M5
SCT
Horizontal [mm]
M5の測定で
中心+30mm(+1%Δp)
中心ー30mm(-1%Δp)
中心から30mm上
中心から30mm下
まとめ
• ATLAS SCTモジュール4台からなるシステムをFTBLで
テストし、検出効率や位置分解能などを評価した。
• ビーム幅FWHMは、測定ステージ上で約4cm。
• 飛跡を再構成することで、ビームのwaistやβ(データ紹介は
割愛した)パラメータを評価できた。Waistでのビーム幅(
FWHM)は約15mm。
• Qマグネットの効果や運動量分散の影響を確認できた。
Back up
FTBL モニター 配置図
Photon
monitor(10/25)
ターゲット+rate
M1
monitor
M2
電子モニター(ストリップシンチ)
M3
M4
M5
上流
SC9
M6
M7
位置依存
場所(水平面)による位相空間の違い
M5-6
M5-3
場所による違いも見られない
位置依存
M5-12
M5-6
ビームエッミタンス
• 位相空間に分布してい
る粒子群の、位相空間
に占める面積
• 小さいほど良いビーム
Twiss parameter
エミッタンス
モジュール検出効率
対象のセンサーの両面が反応した数(ずれ<R)
efficiency 他の3枚のセンサーで再構成された飛跡数
モジュール温度が高めであったのでVth=2fCで運転した
±R
※3枚のセンサーで構成された
2
トラックのχ <3
R
R
x  xtrack 2   y  ytrack 2
モジュールの位置較正(alignment)
各モジュールに1ヒットのみの電子ビーム事象を用いた
x=(n0-n1)×0.04/cos(0.02) [mm]
y=(n0+n1-767)×0.04/sin(0.02) [mm]
n0:モジュール(表)のストリップ番号
n1:モジュール(裏)のストリップ番号
2,3層目モジュールの中心位置(x2,y2), (x3,y3)
2,3,4層目モジュールのz軸回転(a2, a3, a4)
をパラメータとして、直線フィットのc2を最小化
1
(x2、y2)
1 mrad
2
a4
(x3、y3)
3
a3
a2
4
-1 mrad
(rad)
(a2, a3, a4)の収束
ループ数
a4
trigger rataをあげるために真空を悪くした
真空に戻した
Best±30%
Best-30%
Best+30%
同様にビームの焦点、ビーム幅は変わらない
まとめ
• 電子ビームを使って、飛跡再構成をし、検出効
率、位置分解能等を評価した。
(FTBLのcommissioningに貢献した)
• FTBLのビームプロファイルを測定した
Q3,4=0 Y軸
Q3,4=best Y軸
Q3,4=0 X軸
Q3,4=best X軸
M5-9,m5-12
efficiency(ハイブリッド部)
1fc
2.3fc
Resolution(sim)
X anxi
Y anxi
分散y
分散x
位置依存
場所(水平面)による位相空間の違い
M5-9
M5-3
これは点がわかりにくいです。上段の飛跡はいらないでしょう。
幅さんに渡した、色分けしたプロットを、
シンチの幅(1cm)と位置(M5のうしろ)を意識させて見せたら
M5の3と9で比べたのなら、+-3cmずれているので、運動量の違いは+-1
の違いです(27mmが1%;江川さんのメール)。そのずれが、SCTでのずれと相関が
、ビーム広がりの一因が運動量分散であると言える。+-1%は、通常程度の分散であり、実際
ーゲットからコンクリート領域までビームをトランスポートする設計では不可避な値。ただ、設計時の
ビーム広がりは小さいので、まだ、十分理解できていない
松隈さんから聞いたでしょうが、Q4軸への回転は正しくやりましたか。データが
正しいとして話をすると。。。
焦点と半値幅
プロットは作り直して、みやすくしてください。
横軸:Q3とQ4の電流値(”best”で規格化)
縦軸:waist位置 [m]
焦点
FWHM [mm]@waist
半値幅
Qダブレットを動かすことにより、焦点、半値幅が動くことを確認