PowerPoint プレゼンテーション

OUGライフサイエンス分科会
診療ガイドラインとこれをめぐる話題
(財)国際医学情報センター
鈴木博道
平成14年12月19日(木)14:00~16:00
於ファイザー製薬株式会社会議室
ガイドラインとは
絶対守らねばならない法律ではない
あれば便利という「手すり」のようなもの
臨床判断を支援するもの
目的は医療の質の改善
ガイドラインが有効かどうかの評価も必要
ガイドラインの種別
•
•
•
•
Informal Consensus Development
Formal Consensus Development
Evidence-based Guideline Development
Explicit Guideline Development
ガイドライン作成手順
リサーチクエスチョン作成
文献検索・収集・選択
アブストラクトフォーム作成
アブストラクトテーブル作成
サイエンティフィックステートメント作成
推奨(リコメンデーション)作成
EBMの必要性
われわれは臨床上疑問に思うことが数多くある
例:大腿骨頸部骨折は緊急手術をすべきか?
アスピリンはDVT予防に有効か?
患者・家族からの質問に的確に答えたい
例:先生、人工骨頭は永久には保たないと伺いましたが
平均何年保つのでしょうか
リサーチクエスチョン
• 乳房温存療法の適応は?
• 術後補助療法としての放射線治療の効果
は?
• DCISに対する適切な治療は?
Evidence-basedなガイドラインのサンプル形式(1)
「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」より抜粋
3.術後管理
術後薬物療法
推奨(Recommendation)
a 術後炎症の発生予防にステロイドの使用が推奨される(グレードB)。
b 術後炎症・黄斑浮腫の発生予防にジクロフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
c 術後炎症の発生予防にブロモフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
Scientific Statement
白内障術後炎症、黄斑浮腫はステロイドや非ステロイド系消炎剤の点眼で抑制できる 1-9)(I-Ⅳ)。非ステロイド系消炎剤
の中でもジクロフェナックナトリウムの術後点眼はステロイド点眼と同様に術後炎症を抑える作用があり術後フレア値、
前房内細胞数、視力、眼圧に差はなかった1,4,10)(III)。術後早期ではジクロフェナックナトリウムのほうが術後フレア値が
低い報告もある11-13)(III)。術後黄斑浮腫はジクロフェナックナトリウムを使用したほうが発生頻度が低く、血液房水柵破
錠の指標であるフレア値と相関する12,14,15)(II-III)。ジクロフェナックナトリウムの副作用については認めなかった報告 1)
(III)と角膜炎を起こすという報告11)(III)がある。ブロモフェナックナトリウムは白内障術後炎症を低下させる16)(III)。
1) 11937 Reddy MS, Suneetha N, Thomas RK, Battu RR: Topical diclofenac sodium for treatment of postoperative
inflammation in cataract surgery. Indian J Ophthalmol 48 (3): 223-226, 2000
2) 12006 Missotten L, Richard C, Trinquand C: Topical 0.1% indomethacin solution versus topical 0.1% dexamethasone
solution in the prevention of inflammation after cataract surgery. The Study Group. Ophthalmologica 215 (1):
43-50, 2001
リサーチクエスチョン
• High quality evidenceがすでにあるもの
Evidence-driven questions
• 臨床家が日々知りたいこと
Necessity-driven questions
「EVIDENCE-BASED MEDICINE」
David L. Sackett
CHURCHILL LIVINGSTONE
Evidence-driven questions
Level Ⅰ
Level Ⅱ
Level Ⅲ
Level Ⅳ
Level Ⅴ
Necessity-driven questions
リサーチクエスチョン 65個
Necessity-driven questions
29個
Evidence-driven questions
36個
36÷65= 55.4 %
今回のガイドライン作成手順
章・節・項(RQ)の設定
文献検索・選択 ・収集
批判的吟味・アブストラクトフォーム作成
Scientific Statement 作成
推奨(Recommendation)作成
各種ガイドラインと根拠となった文献など
テーマ
作成機関
DB
検索文献数
選定論文数
腰痛
AHCPR
滲出性中耳炎 NSAID
AHCPR
RANDCo.
MEDLINE
EMBASE
BIOSIS
HEALTHSTAR
10,317
4,849
3,918
3,578
1,768
脳梗塞
厚生科学研究
Cochrane
医中誌DB
引用文献
くも膜下出血
厚生科学研究
MEDLINE
医中誌DB
慢性関節リウマチ
厚生科学研究
MEDLINE
医中誌DB
7,068
6,861
1,370
4,604
1,987
26,802
10,903
数千、数万件の文献を対象とする
我が国では、海外のDBと国内のDBとを併用する必要がある
総レコード数
MEDLINE
医中誌DB
Cochrane Library
1034万件
310万件
29万件
(年間40万件増)
(年間27万件増)
今回のガイドライン作成手順
章・節・項(RQ)の設定
文献検索・選択 ・収集
批判的吟味・アブストラクトフォーム作成
Scientific Statement 作成
推奨(Recommendation)作成
アブストラクトフォーム入力項目の例
( 診療ガイドライン作成の手順【ver.4.3】より )
A:書誌情報(バンクーバースタイルにしたがって記す)
・タイトル
・著者名
・雑誌名,巻:頁
B:構造化抄録
・目的
・研究デザイン
・研究施設
・対象患者
・介入
・主要評価項目とそれに用いた統計学的手法
・結果
・結論
C:アブストラクターのコメント(末尾に署名を入れる)
・コメント
*大腿骨頸部骨折ガイドラインでは、上記に研究期間、症例数、脱落率、
対象人種を追加
アブストラクトフォーム
タイトル
著者名
雑誌名、巻:頁
A combined approach to reduce mite allergen in the
bedroom
Week J, Oliver J, Birmingham K, Crewes A, Carswell F
Clinical and Experimental Allergy 1995;125:1179-83
目的
ダニアレルゲン含有量によるHDMアレルゲン制御につ
いての2つの方法の効果を調査する
研究デザイン
対象患者
介入
結果
結論
コメント
ランダム化比較試験
7-10歳のダニ感受性のある喘息の子供70人
殺ダニ剤使用vs.不使用
両群でアレルゲン含有量に差無し
殺ダニ剤使用に効果があるわけではない
アレルゲン含有量の増減をsurrogate endpointにしてい
る。
アブストラクトテーブル
リサーチクエッチョン:ダニ対策の喘息発作抑制に対する効果
文献
Weekら
1995
Lincolnら
1987
小渕ら
1980
対象
70名
7-10歳の喘息
小児
31名
18-70歳の喘
息患者
200名
15歳以下の喘
息小児
方法
結果
殺ダニ剤使用vs.不 両群でアレルゲ
使用
ン含有量に差無
し
ダニアレルゲンを
通さない枕カバー
使用vs.不使用
カバー使用群で
喘息症状改善
殺ダニ剤使用vs.不 両群でアレルゲ
使用
ン含有量に差無
し
Evidence-basedなガイドラインのサンプル形式(2)
「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」より抜粋
アブストラクトテーブル
文献ID
Ev
level
11937
III
計画的嚢外摘出術を行った
症例。
Dept. of Ophthalmology, St.
John's Medical College and
Hospital, Sarjapur Road,
Bangalore-560 034, India
白内障術後炎症への非ステロイド消炎剤の 術後炎症、視力、眼圧においてジ
効果。
クロフェナックナトリウムとコルチコ
白内障術後に0.1%ジクロフェナック点眼群と ステロイド間に差はなかった。また
1%デキサメサゾン点眼群ランダム化二重盲 ジクロフェナックに副作用もなかっ
検試験を行った。
た。
術後炎症、視力、眼圧を比較した。
Wilcoxon rank-sum test、ANOVA
12006
III
超音波乳化吸引術を行った
145名。
Universitair Ziekenhuis,
Leuven, Belgium
白内障術後の0.1%インドメタシンと0.1%デ 1日4回点眼により、両群とも術後
キサメサゾンの炎症予防効果。
1ヶ月で炎症は有意に減少した。
ランダム化二重盲検で、71症例に0.1%イン
ドメタシン、74症例に0.1%デキサメサゾン4
回/日、1ヵ月間点眼。
前房内フレア、チンダル現象を比較。
χ2-test、Pearson's test
対象患者と研究施設
目的と方法
結 果
今回のガイドライン作成手順
章・節・項(RQ)の設定
文献検索・選択 ・収集
批判的吟味・アブストラクトフォーム作成
Scientific Statement 作成
推奨(Recommendation)作成
Evidence-basedなガイドラインのサンプル形式(1)
「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」より抜粋
3.術後管理
術後薬物療法
推奨(Recommendation)
a 術後炎症の発生予防にステロイドの使用が推奨される(グレードB)。
b 術後炎症・黄斑浮腫の発生予防にジクロフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
c 術後炎症の発生予防にブロモフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
Scientific Statement
白内障術後炎症、黄斑浮腫はステロイドや非ステロイド系消炎剤の点眼で抑制できる 1-9)(I-Ⅳ)。非ステロイド系消炎剤
の中でもジクロフェナックナトリウムの術後点眼はステロイド点眼と同様に術後炎症を抑える作用があり術後フレア値、
前房内細胞数、視力、眼圧に差はなかった1,4,10)(III)。術後早期ではジクロフェナックナトリウムのほうが術後フレア値が
低い報告もある11-13)(III)。術後黄斑浮腫はジクロフェナックナトリウムを使用したほうが発生頻度が低く、血液房水柵破
錠の指標であるフレア値と相関する12,14,15)(II-III)。ジクロフェナックナトリウムの副作用については認めなかった報告 1)
(III)と角膜炎を起こすという報告11)(III)がある。ブロモフェナックナトリウムは白内障術後炎症を低下させる16)(III)。
1) 11937 Reddy MS, Suneetha N, Thomas RK, Battu RR: Topical diclofenac sodium for treatment of postoperative
inflammation in cataract surgery. Indian J Ophthalmol 48 (3): 223-226, 2000
2) 12006 Missotten L, Richard C, Trinquand C: Topical 0.1% indomethacin solution versus topical 0.1% dexamethasone
solution in the prevention of inflammation after cataract surgery. The Study Group. Ophthalmologica 215 (1):
43-50, 2001
今回のガイドライン作成手順
章・節・項(RQ)の設定
文献検索・選択 ・収集
批判的吟味・アブストラクトフォーム作成
Scientific Statement 作成
推奨(Recommendation)作成
Evidence-basedなガイドラインのサンプル形式(1)
「科学的根拠に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」より抜粋
3.術後管理
術後薬物療法
推奨(Recommendation)
a 術後炎症の発生予防にステロイドの使用が推奨される(グレードB)。
b 術後炎症・黄斑浮腫の発生予防にジクロフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
c 術後炎症の発生予防にブロモフェナックナトリウムの使用が推奨される(グレードB)。
Scientific Statement
白内障術後炎症、黄斑浮腫はステロイドや非ステロイド系消炎剤の点眼で抑制できる 1-9)(I-Ⅳ)。非ステロイド系消炎剤
の中でもジクロフェナックナトリウムの術後点眼はステロイド点眼と同様に術後炎症を抑える作用があり術後フレア値、
前房内細胞数、視力、眼圧に差はなかった1,4,10)(III)。術後早期ではジクロフェナックナトリウムのほうが術後フレア値が
低い報告もある11-13)(III)。術後黄斑浮腫はジクロフェナックナトリウムを使用したほうが発生頻度が低く、血液房水柵破
錠の指標であるフレア値と相関する12,14,15)(II-III)。ジクロフェナックナトリウムの副作用については認めなかった報告 1)
(III)と角膜炎を起こすという報告11)(III)がある。ブロモフェナックナトリウムは白内障術後炎症を低下させる16)(III)。
1) 11937 Reddy MS, Suneetha N, Thomas RK, Battu RR: Topical diclofenac sodium for treatment of postoperative
inflammation in cataract surgery. Indian J Ophthalmol 48 (3): 223-226, 2000
2) 12006 Missotten L, Richard C, Trinquand C: Topical 0.1% indomethacin solution versus topical 0.1% dexamethasone
solution in the prevention of inflammation after cataract surgery. The Study Group. Ophthalmologica 215 (1):
43-50, 2001
Evidence-basedな診療ガイドライン作成の要件(IMIC案)
(1)systematicで再現性のある文献検索
(2)検索式の明示化
(3)一定の基準に基づく文献の1次選択
研究デザイン重視
抄録レベル
(4)一定の基準に基づく文献2次選択(最終選択)と選択結果の明示化
批判的吟味
アブストラクトフォームを作成
アブストラクトテーブルとして明示
(5)エビデンスの評価基準、推奨(Recommendation)のグレーディング
事前に決定し、一律に適用
Levels of Evidence (情報の質)
I
II
III
1a
ランダム化比較試験のシステマティックレビュー
1b
個々のランダム化比較試験(狭い信頼区間を伴う)
1c
治療群以外全てが亡くなっている場合(all)または治療群は全
て生存している場合(none)
2a
コホート研究のシステマティックレビュー
2b
個々のコホート研究(質の低いランダム化比較試験を含む;
例:経過観察が80%以下)
アウトカム研究
ケース・コントロール研究のシステマティックレビュー
個々の ケース・コントロール研究
2c
3a
3b
IV
ケース・シリーズ (または質の低いコホート研究、ケース・コント
ロール研究)
V
明確な批判的吟味のない、または生理学、基礎実験に基づく専
門家の意見
Centre of Evidence-Based Medicine 1998
推奨の強さ
A:行うことを強く推奨
結果が一貫したLevel 1の試験が多数ある場合
B:行うことを推奨
結果が一貫したLevel 2,3の試験がある、あるいは Level 1の
試験から結果が外挿できる場合
C:推奨する根拠がはっきりしない
Level 4の試験がある、あるいはLevel 2、3の試験から結果が
外挿できる場合
D:行わないよう勧められる
Level 5の試験がある、あるいは levelに係わらず結果が一貫
しない場合
推奨グレード(案)
グレード
内 容
内 容 補 足
A
強い根拠に基づく
質の高いエビデンスが複数ある
B
中程度の根拠に基づく
質の高いエビデンスが1つ、または中程度の質のエビデ
ンスが複数ある
C
弱い根拠に基づく
中程度の質のエビデンスが少なくとも1つある
D
根拠がない
委員会の設定した基準を満たす研究論文がない
診療ガイドラインの質の評価
I.ガイドラインの作成方法と様式について
(1)
(2)
ガイドラインの目的が明確に述べられている
ガイドラインの作成理由と基本原理、重要性が記載されて
いる
(3) ガイドライン作成委員とその専門分野が記載されている
(4) 対象となるテーマ(健康問題、医療技術など)が明確に定義
されている
(5) 対象となる患者集団が特定されている
(6) 想定している読者、使用者が特定されている
(7) 診断や治療、予防に関する選択肢が利用可能で主要なもの
を網羅している
(8) 予期される健康上のアウトカムが記載されている
(9) 作成したガイドラインの外部評価の結果が記載されている
(10) 有効期限若しくは改訂の予定を記載している
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
診療ガイドラインの質の評価
II.エビデンスの検索・要約について
(11) エビデンスの検索方法を明示している
(12) どの時期(期間)のエビデンスを検索したのかを記載して
いる
(13) エビデンスを引用し、参考文献として列挙している
(14) データを抽出した方法を示している
(15) エビデンスのグレードのつけ方、分類方法を記載している
(16) エビデンスや専門家の意見をフォーマルな方法で統合し、
その方法を記載している
(17) 診療行為の利得と害を記載している
(18) 利得と害が定量的に記載されている
(19) 診療行為のコストへの影響が記載されている
(20) コストが定量的に示されている
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
診療ガイドラインの質の評価
III.勧告の作成方法について
(21)
(22)
(23)
(24)
(25)
勧告を作成する際の価値判断が明示されている
患者の意向が考慮されている
勧告が具体的で、ガイドラインの目的に沿っている
勧告がエビデンスの質に応じてグレード付けされている
勧告が柔軟性のある内容となっている
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
yes/no
Terrence M. Shaneyfeltら提唱 (JAMA 1999;281:1900-5)
サンプル
GL数
GLの作成方法と
様式について
エビデンスの検
索・要約について
勧告の作成方法
について
全評価項目の平
均遵守率
京大福井教授調査*1 Shaneyfelt調査*1
IMIC調査(海外)
IMIC調査(国内)
1997~2000国内発 1985~1997年Peer- 入手済みのGL(翻 入手済みの国内GL
表GL
reviewed Journal発表 訳)
された欧米GL
48
279
20
26
60.0%
79.0%
74.2%
13.0%
30.0%
13.1%
23.8%
68.0%
51.4%
57.2%
45.2%
34.0%
43.1%
*1 平成13年度厚生科学研究費補助金21世紀型医療開拓推進研究事業「EBMを指向した
「診療ガイドライン」と医学データベースに利用される「構造化抄録」作成の方法論の開
発とそれらの受容性に関する研究」報告書
厚生労働科学研究費による診療ガイドラインの研究課題一覧
平成11年度開始分
(計5課題)
○
○
○
○
○
本態性高血圧症
糖尿病
喘 息
急性心筋梗塞
前立腺肥大症及び
女性尿失禁
平成12年度開始分
(計7課題)
平成13年度開始分
(計4課題)
○
○
○
○
○
→
○
○
○
○
白内障
胃潰瘍
くも膜下出血
腰痛症
アレルギー性鼻炎
完成
○ 脳梗塞
○ 慢性関節リウマチ
→ 完成
→ 14年度完成
予定
肺がん
乳がん
胃がん
アルツハイマー病
→ 14年度完成
予定
平成14年度開始分
(計4課題)
○
○
○
○
脳出血
椎間板ヘルニア
大腿骨頸部骨折
肝ガン
→ 15年度完成
予定
お疲れ様でした