教育心理学 第13回 不適応問題への対処(2): メンタルヘルスと問題行動 前回のミニレポート 1. 2. 発達障害の病因論について説明せよ 発達障害によって生じる二次的な問題につい て説明せよ 発達障害の病因論 発達障害の発症には、多数の要因が関与して いる – – 最も影響が大きいと考えられているのは遺伝的要因 であるが、多数の遺伝子が関与しており、原因遺伝 子はまだ全て特定されていない また、環境要因として、親の高齢、妊娠初期の喫煙、 妊娠週数、出産時の状況など、胎生期や周産期の生 物学的なストレスが多数関与しているが、親の養育 や友人関係などの心理社会的な要因が発症に関与 することはない 発達障害の二次的問題 発達障害そのものが直接深刻な問題行動につなが ることは少ないが、周囲の理解や配慮の不足によっ て様々な適応の障害が生じうる – – – 自閉症スペクトラム障害(ASD)を持つ場合、対人社会的 なスキルの低さにより、友人関係で孤立したり、いじめの 被害に遭いやすくなる 注意欠如・多動性障害(ADHD)は、多動・衝動性によって 親子関係や教師との関係の悪化につながりやすく、不注 意によって学業の遅れも生じやすい 学習障害(LD)は、特定教科(国語や算数)の学習の遅れ から波及して、学習全般の遅れにつながりやすい 発達障害の二次的問題 このような適応上の問題が心理的ストレスを引 き起こし、メンタルヘルスの悪化や深刻な問題 行動のリスクを高める – 抑うつ、不登校、自傷行為などの内在化問題や攻撃 行動、非行などの外在化問題まで、幅広い情緒的・ 行動的問題の背後には、社会的不適応にともなう強 い心理的ストレスが存在している 今日の流れ 情緒的・行動的問題の分類 心理社会的問題のメカニズム つまずきのある子どもへの支援 情緒的・行動的問題の分類 発達のつまずき 生物学的問題(発達障害) – – 脳やその他の身体機能の問題 多くの場合、先天的な要因によって生じる 心理社会的問題 – 人間関係上の苦痛、虐待、事故、劣悪な生活環境な ど、個人にかかるストレスが本人の対処能力を越え たときに生じる 行動化と身体化 行動化 – – – 神経性習癖(抜毛癖、指しゃぶり、爪かみなど) 自殺企図・自傷行為 非行、攻撃、不登校 身体化 – – 頭痛、腹痛、足の痛み 運動機能・感覚機能の障害 内在化問題と外在化問題 内在化問題 – – 抑うつ、不安 不登校、自傷行為、摂食障害 外在化問題 – – 怒り、不機嫌 いじめ、反抗、非行 心理社会的問題のメカニズム 心理社会的問題の要因 状況要因 – – – 家庭、学校、職場などでの強い葛藤やストレス 身体的・精神的・性的虐待 ソーシャルサポートの不足 個人要因 – – – 発達障害特性 ストレス耐性・ストレス対処能力 低い自尊心や完全主義傾向 心理社会的問題の生起プロセス 発達特性 不適応 社会性の 困難 友人 多動・ 不注意 メンタルヘルス 不登校 抑うつ 家庭 教員 問題行動 攻撃性 自傷行為 非行 知的発達 いじめ 学業 調整要因 社会的 スキル 調整要因 調整要因 ソーシャル サポート 友人の 自傷 ストレス 対処 友人の 非行 【発達特性】 【不適応】 自閉的特性 友人関係 親子関係 【メンタルヘルス】 【問題行動】 不登校 抑うつ 自傷行為 多動・不注意 教師関係 攻撃性 知的発達の 遅さ 学業 【調整要因】 【調整要因】 【調整要因】 社会的スキル サポート 友人の自傷 ストレス対処 (反すう) 友人の非行 ストレス対処 (解決・転換) 非行 いじめ行為 つまずきのある子どもへの支援 医学・生物学的な治療 生物学的問題が要因となっている場合、医学的 な治療が効果的 – ADHD児は多くが投薬を受けている 心理社会的問題が主たる要因となっている場合 の医学的治療には慎重を期すべき – – 症状が緩和されても根本的な解決にはならない 薬物依存の危険性 心理・社会的な支援 心理社会的問題が要因となっている場合、心 理・社会的支援が効果的 – 生物学的要因による発達障害にも、医学的治療と併 用して適用される 心理療法 – – 臨床心理士やカウンセラーによって実施される 乳幼児の場合、遊びの力を用いた遊戯療法がよく用 いられる 心理・社会的な支援 トレーニング – – – – 認知、言語、コミュニケーション、運動、社会性、スト レス対処などのトレーニングが必要となることも多い 単なる経験不足による発達の遅れは、適切な経験を 積ませることで改善する 背景に発達障害などの問題がある場合は、子どもの 特徴に合わせて専門的なトレーニングが必要 早期発見・早期対処がきわめて重要 心理・社会的な支援 コンサルテーション – – 心理療法やトレーニングを行う専門家と相談し、日常 の生活の中でどのような点に注意してしつけや教育 を行うかについて助言を得ること 子どもは多くの時間を専門家ではなく、親や教員とと もに過ごすことになるため、専門家から助言を受け、 子どもの障害や疾患に関する理解を深めておくこと が重要となる ミニレポート テーマ 1. 心理社会的問題の生起プロセスについて説明 せよ 定期試験について – – – – 7/23(木) 5限 持ち込み不可 これまでのミニレポートのテーマから出題 下記ページのミニレポート解答例を学習の参考に http://www006.upp.so-net.ne.jp/ito_h/EP/
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