平成20年度日本水道協会九州地方支部水道関係事務研究会 水道施設へのバイオテロ 水の衛生(Sanitary)と防犯(Security) 鹿児島大学農学部獣医公衆衛生学教授 岡本嘉六 (人体の水の割合) 新生児・幼児:70%~80% 成人:55%~70% 老人:50%~55% 肥満体:50% やせ体:60%~70% 断食(絶食)では、運動状態 や環境によるが、適温状態で 安静にして水分を適切に摂取 した場合、餓死するまでに 一ヶ月以上要する。 他方、水を飲まないと数日 にして死亡する。 水分欠乏は、体液の塩類濃度を上昇させ、口渇、皮膚や粘膜の乾燥、 衰弱、精神異常などの脱水症状を起こし、ついには死亡する。 パート1 水の衛生(Sanitary) 多摩川上流の羽村取水堰から四谷大木戸に至る総距離 約43kmの上水路を護るために水奉行が置かれた。 四谷大木戸からは地下水道が建設され、各所に「井戸」が設けられた。当時、世 界最大の100万都市の基礎は、家康公の上水道建設に始まったのである。 コレラはインドのガンジス地 方の風土病であったが、1817 年にメッカへの巡礼団が中近 東へ広め、それが第一次世界 流行の始まりである。鎖国下に あった日本にも及び、文政5年 の流行となった。 第二次:1829~37 第三次:1852~59安政5年 第四次:1863~73文久2年 第五次:1881~96 第六次:1899~1923 第七次:1961~ 明治10年の流行では、多摩 川上流でコレラ患者の汚物を 流したと言う話が東京に流れ る。三多摩地区を神奈川県か ら東京府に編入する契機とな る。 横浜市水道事業概要 横浜市の水道は、わが国最初の近代水道として明治20年(1887年)10月17日に 給水を開始しました。 戸数わずか100戸ばかりの静かな村であった横浜は、安政5年(1858年)、徳川 幕府が日米修好通商条約を締結して開港地に定めたことにより、人口の増加や市 街の発展など、急成長をとげました。当時住民は、水を求めて井戸を掘りましたが、横浜 は沼地や海岸を中心に埋め立てて拡張されてきたので、飲料に適した良質な水には恵まれ ませんでした。 日本の国威をかけて「開港地」を優先した! 華やかな洋館の立ち並ぶ繁栄の裏 で水不足と疾病の流行や大火事に悩 まされるなど、住民の不便は言葉では 言い表すことが出来ない状況でした。 この水道は、当時のヨーロッパの先 進技術を取り入れたもので、横浜は近 代水道発祥の地ということになったの です。実際、横浜水道の完成後、函館 や長崎などの開港場、大阪や東京な どの大都市にもこの近代水道が相次 いで建設されていきました。 愛媛県伊方町で、水道水に農薬混入 2005年9月27日夕、愛媛県佐田岬半島にある伊方町正野地区の住民から水道 水に異臭がするとの通報が町にありました。同町が、給水を停止して調べたところ、 翌日、一農家の宅地内に、農業用配管と上水道管とを不正接続した個所がみつ かりました。この農家は、みかんへの農薬散布作業を行っており、コックの切り替 え操作を誤ったため、農薬散布液が上水道に逆流・混入したことがわかりました。 事故直後、地区の宅内給水栓等6箇所8検体の水を採取して分析したところ、農 家が使用したと同じ殺菌剤のチアメトキサムとマンゼブが、それぞれ、最高14㎎/L、 40mg/L検出されました。 伊方町は、水道施設や住宅内配管の洗浄処理を実施、農薬が検出されなくなっ た10月6日に、給水を再開しましたが、この間、地区の42世帯では、断水を余儀な くされました。幸い、健康調査の結果は人体には異常はなかったとのことです。 正野地区では、農業用水が慢性的に不足しており、これが、水道水の不正使用 につながったとの指摘もありますが、伊方町は、再発防止のため、広報や各戸配 布文書で水道配管への直接接続の禁止の徹底を図り、必要に応じ立入調査を行 うことにしたそうです。 水道法 (水質基準) 第四条 水道により供給される水は、次の各号に掲げる要件を備えるものでなけれ ばならない。 一 病原生物に汚染され、又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生 物若しくは物質を含むものでないこと。 二 シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと。 三 銅、鉄、弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。 四 異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。 五 異常な臭味がないこと。ただし、消毒による臭味を除く。 六 外観は、ほとんど無色透明であること。 2 前項各号の基準に関して必要な事項は、厚生労働省令で定める。 (水質検査) 第二十条 水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、定期及び臨時の 水質検査を行わなければならない。 2 水道事業者は、前項の規定による水質検査を行つたときは、これに関する記録 を作成し、水質検査を行つた日から起算して五年間、これを保存しなければならな い。 3 水道事業者は、第一項の規定による水質検査を行うため、必要な検査施設を設 けなければならない。ただし、当該水質検査を、厚生労働省令の定めるところにより、 地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者に委託して行うときは、 水質基準に関する省令 この限りでない。 (衛生上の措置) 第二十二条 水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、水道施設の管 理及び運営に関し、消毒その他衛生上必要な措置を講じなければならない。 (給水の緊急停止) 第二十三条 水道事業者は、その供給する水が人の健康を害するおそれがあるこ とを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である 旨を関係者に周知させる措置を講じなければならない。 2 水道事業者の供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知った者 は、直ちにその旨を当該水道事業者に通報しなければならない。 (水源の汚濁防止のための要請等) 第四十三条 水道事業者又は水道用水供給事業者は、水源の水質を保全するた め必要があると認めるときは、関係行政機関の長又は関係地方公共団体の長に 対して、水源の水質の汚濁の防止に関し、意見を述べ、又は適当な措置を講ずべ きことを要請することができる。 第五十一条 水道施設を損壊し、その他水道施設の機能に障害を与えて水の供 給を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。 2 みだりに水道施設を操作して水の供給を妨害した者は、二年以下の懲役又 は五十万円以下の罰金に処する。 3 前二項の規定にあたる行為が、刑法 の罪に触れるときは、その行為者は、 同法 の罪と比較して、重きに従つて処断する。 水道法施行規則 (衛生上必要な措置) 第十七条 法第二十二条 の規定により水道事業者が講じなければならない衛生上 必要な措置は、次の各号に掲げるものとする。 一 取水場、貯水池、導水きよ、浄水場、配水池及びポンプせいは、常に清潔に し、水の汚染の防止を充分にすること。 二 前号の施設には、かぎを掛け、さくを設ける等みだりに人畜が施設に立ち入 つて水が汚染されるのを防止するのに必要な措置を講ずること。 三 給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/ℓ以上保持するように塩素 消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場 合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含む おそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/ℓ以上とする。 (健康診断) 第十六条 法第二十一条第一項 の規定により行う定期の健康診断は、おおむね 六箇月ごとに、病原体がし尿に排せつされる感染症の患者(病原体の保有者を含 む。)の有無に関して、行うものとする。 2 法第二十一条第一項 の規定により行う臨時の健康診断は、同項 に掲げる 者に前項の感染症が発生した場合又は発生するおそれがある場合に、発生した感 染症又は発生するおそれがある感染症について、前項の例により行うものとする。 水道法 (報告の徴収及び立入検査) 第二十条の十五 厚生労働大臣は、水質検査の適正な実施を確保するため必要 があると認めるときは、登録水質検査機関に対し、業務の状況に関し必要な報告 を求め、又は当該職員に、登録水質検査機関の事務所又は事業所に立ち入り、業 務の状況若しくは検査施設、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。 2 前項の規定により立入検査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、 関係者の請求があつたときは、これを提示しなければならない。 3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたも のと解釈してはならない。 (報告、検査等) 第二十五条の二十二 厚生労働大臣は、試験事務の適正な実施を確保するため 必要があると認めるときは、指定試験機関に対し、試験事務の状況に関し必要な 報告を求め、又はその職員に、指定試験機関の事務所に立ち入り、試験事務の状 況若しくは設備、帳簿、書類その他の物件を検査させることができる。 3 第一項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたも のと解してはならない。 (報告の徴収及び立入検査) 第三十九条 厚生労働大臣は、水道(水道事業及び水道用水供給事業の用に供 するものに限る。以下この項において同じ。)の布設若しくは管理又は水道事業若 しくは水道用水供給事業の適正を確保するために必要があると認めるときは、水 道事業者若しくは水道用水供給事業者から工事の施行状況若しくは事業の実施 状況について必要な報告を徴し、又は当該職員をして水道の工事現場、事務所若 しくは水道施設のある場所に立ち入らせ、工事の施行状況、水道施設、水質、水 圧、水量若しくは必要な帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成 又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項及び次条第八 項において同じ。)を検査させることができる。 5 第一項、第二項又は第三項の規定による立入検査の権限は、 犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 厚生労働省や農林水産省などの通常業務に対する監督官庁は、 善意に基づく業務の遂行に際して生じる過失を防ぐための指導・監 督機関であり、何らかの意図を持って業務を妨害する犯罪捜査は警 察庁の所管である。水道法第五十一条に規定する施設の損壊や機 能の障害を防ぐ義務は水道局職員の責務であるが、実際に起きた 犯罪捜査は警察庁が行う。 犯罪が予見された場合は??? 附 則 (平成一八年六月二日法律第五〇号) 抄 (調整規定) 2 犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等 の一部を改正する法律(平成十八年法律第 号)の施行の日が施行日後となる 場合には、施行日から同法の施行の日の前日までの間における組織的な犯罪の 処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(平成十一年法律第百三十六号。次項 において「組織的犯罪処罰法」という。)別表第六十二号の規定の適用については、 同号中「中間法人法(平成十三年法律第四十九号)第百五十七条(理事等の特別 背任)の罪」とあるのは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十 八年法律第四十八号)第三百三十四条(理事等の特別背任)の罪」とする。 3 前項に規定するもののほか、同項の場合において、犯罪の国際化及び組織化 並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律の施行 の日の前日までの間における組織的犯罪処罰法の規定の適用については、第四 百五十七条の規定によりなお従前の例によることとされている場合における旧中 間法人法第百五十七条(理事等の特別背任)の罪は、組織的犯罪処罰法別表第 六十二号に掲げる罪とみなす。 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約 2003年(平成15年)5月14日国会承認 主な内容 組織的な犯罪集団への参加の犯 罪化(5条) 犯罪収益の洗浄の犯罪化(6条) 腐敗行為の犯罪化(8条) 没収及び押収(12条) 裁判権(15条) 犯罪人引渡し(16条) 特別な捜査方法(20条) 司法妨害の犯罪化(23条) 証人の保護(24条) 被害者に対する援助及び保護の 提供(25条) 条約の実施(34条) 三議定書 「人身取引」に関する議定書 「密入国」に関する議定書 「銃器」に関する議定書 組織的な犯罪集団への参加・共謀 や犯罪収益の洗浄(マネー・ローンダ リング)・司法妨害・腐敗(公務員によ る汚職)等の処罰、およびそれらへの 対処措置などについて定める国際条 約である。 1994年の国際組織犯罪世界閣僚 会議において「ナポリ政治宣言及び世 界行動計画」が採択され、2000~ 2001年の国連総会で採択された。 パート2 水の防犯(Security) 大規模テロ災害対処共同訓練の実施について 東京都 平成18年11月2日 1985年6月23日、成田空港手荷物爆発事件(インド、シーク教徒) :実際に搭乗しな かった乗客が預けた手荷物が爆発し、作業員2名が死亡し4名が重傷を負った。 1991年7月12日、悪魔の詩事件(ホメイニによる死刑布告、「ファトワー」による暗殺 事件) :日本語訳を出版した五十嵐一(筑波大学助教授)が勤務先の筑波大学にて 何者かに襲われ、喉を繰り返し切られて殺害された。 1994年6月27日、松本サリン事件(オウム真理教) :長野県松本市で、猛毒のサリン が散布され、死者8人・重軽傷者660人を出した事件。 1994年12月11日、フィリピン航空434便爆破事件(アルカーイダ) :沖縄の南大東島 附近上空で、突如客室内の座席下に仕掛けられていた爆弾が炸裂し、その座席に 座っていた日本人男性(当時24歳)が即死、附近に座っていた乗客10名も負傷した。 1995年3月20日、地下鉄サリン事件(オウム真理教) :乗客や駅員ら12人が死亡、 5,510人が重軽傷を負った。 1995年3月30日、警察庁長官狙撃事件(オウム真理教) :警察庁長官が出勤のた め自宅マンションを出たところ、付近で待ち伏せていた男に拳銃で撃たれ、重傷を 負った(全治1年6ヵ月)。 日本はテロと無縁と信じている人が多いが・・・ 食 品 の 安 全 性 を 脅 か す 事 件 グリコ・森永脅迫事件 1984年(昭和59年)3月18日、江崎グリコ社長が自宅で入浴中、侵入してきた犯行グ ループの男3人に全裸のまま誘拐され、身代金10億円と金塊100キログラムを要求さ れた。 10月7日 「どくいり きけん たべたら しぬで かい人21面相」と関西弁で書かれた紙 が張られた森永製菓製品の菓子が発見され、青酸ソーダが検出された。 その後、かい人21面相と書かれた脅迫状が丸大食品、森永製菓、ハウス食品、不二 家、駿河屋に次々と送りつけられ現金を要求。 安全性は環境汚染物質や農薬 2000年(平成12年)2月13日に時効となった。 の残留の問題であり、有害物資 を意図的に汚染することは安全 性とは関係ない??? 和歌山毒物カレー事件 1998年の7月25日に園部地区で行われた夏祭りで、カレーを食べた67人が腹痛や吐 き気などを訴えて病院に搬送された自治会長を初めとした4人が死亡し、63人が急性 砒素中毒になった。警察庁の科学警察研究所が亜ヒ酸の混入を明らかにした。 2002年12月11日の一審・和歌山地裁は、被告に死刑を言い渡した。 2005年6月28日の二審・大阪高裁は、死刑判決を再び言い渡した。 「被告」は無罪を主張し、公正な裁判を求めて「支援する会」が活動している。 飲料への化学物質混入事件の例 発生年月日 1998. 8.10 原因物質 都道府県 アジ化ナトリウム 新潟 (出典: 東京衛研年報、2001) 事件の状況 会社の電気ポットに混入、社員10人が入院 1998. 8.15 パラコート 鹿児島 簡易水道施設に混合除草剤を混入 1998. 8.31 青酸カリ 長野 スーパーで購入したウーロン茶缶を飲み1名死亡 1998. 9. 2 DDVP 奈良 自動販売機取出口のドリンク剤を飲み入院 1998. 9.18 カドミウム 京都 京大農学部の研究室で玄米茶を飲み6名 1998.10.12 パラコート 茨城 自動販売機取出し口の缶コーヒーを飲み入院 1998.10.15 アジ化ナトリウム 三重 大学研究室の電気ポットに混入、教員・学生6名 1998.10.27 アジ化ナトリウム 愛知 研究所の電気ポットに混入、助教授ら4名入院 1998.10.28 アジ化ナトリウム 京都 国立療養所の電気ポットに混入、医師8名 1998.11. 5 1999. 6.18 有機リン剤 山口 アジ化ナトリウム 埼玉 県立高校校務員室内湯沸かし室のやかんから 研究所の電気ポットに混入、研究員1名 1999. 7.19 有機リン剤 福島 コンビニのペットボトル入り清涼飲料水,1名 1999.10. 8 亜ヒ酸 鹿児島 設計事務所で電気ポットに混入、従業員5名 1999.12.10 水酸化ナトリウム 奈良 2000. 5.20 有機塩素剤 茨城 小学校で給食のカレーを食べた児童4人入院 社員寮食堂の缶ジュースに混入、一時意識不明 アメリカ同時多発テロ事件は、世界を変えた 2001年9月11日 世界貿易センター (World Trade Center) 奇しくもその前日、日本で牛海面状 脳症(BSE)の擬似患畜が公表された が、検査に供した頭部以外が化製場 に送られて肉骨粉になっていたことで、 行政対応への批判が噴出し、大騒動 に発展した。 それから7年経った今、貿易セン タービルは再建されたが、日本のBSE 問題は全く解決していない。それどこ ろか、事態は益々悪化の一途を辿っ ている。全頭検査のために毎年 数百億円をドブに捨てているが、 それでも足りず、「消費者の目 線?庁」を作るという。 日米のこの違いは、一体何に根ざし ているのか? 政治、経済、社会、文 2006年に完成した新世界貿易センタービル 化、国民性 ・・・ 知能? 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を構成するおそれのある 事象の評価及び通告のための決定手続 (WHO, 2005制定, 2007施行) バイオテロを想定して加えられた! ・ ・ ・ ・ 天然痘 :1979年に地上から消滅したはず? 野生型ポリオウイルスに起因する小児マヒ 新種の亜型を原因とするヒトインフルエンザ 重症急性呼吸器症候群(SARS) 無条件通告 公衆保健上の影響は深刻か? 通常と異なる又は予期しないものか? 条件付き通告 国際的拡大の危険性が大きいか? 国際旅行又は取引が規制される危険性が大きいか? ・ ・ ・ ・ ・ ・ コレラ これまでの国際検疫伝染病 肺ペスト 黄熱病 ウイルス性出血熱(エボラ熱、ラッサ熱、マールブルグ熱) 西ナイル熱 その他の特別な国内的若しくは地域的懸念となる疾病(デング熱、 リフトバレー熱、髄膜炎菌性病など) 国 際 保 健 規 則 に 基 づ く 事 象 の 通 告 義 務 Frequently asked questions and answers on smallpox (WHO) Weren’t the remaining stocks of the smallpox virus 痘瘡が撲滅された後、痘瘡ウイルスの保存株は滅菌され残ってい destroyed after smallpox was eradicated? ないのではないか? When smallpox was officially certified as eradicated, in December 痘瘡が公式に撲滅されたことが確認された際、1979年12月に、このウイルスの 1979, an agreement was reached under which all remaining stocks of the virus would either be destroyed or passed to one of two secure 保存株は滅菌するかまたは次の2箇所の研究所に渡すことの合意が行われた:一 laboratories – one in the United States and one in the Russian つは米国、もう一つはロシアである。その手続きは1980年代初期に完了し、それ以 Federation. That process was completed in the early 1980s and since 降、それ以外の研究施設は痘瘡を起こすウイルスを公式には利用できなくなって then no other laboratory has officially had access to the virus which いる。 causes smallpox. Then why is smallpox being talked about now? それなのに、今、何故、痘瘡を問題にするのか? Some governments believe there is a risk that the virus which causes いくつかの政府は、痘瘡を起こし得るウイルスがそれらの研究所以外に存在し、 smallpox exists in places other than these laboratories and could be 危害を起こすために意図的に散布されるリスクが存在すると信じている。これが起 deliberately released to cause harm. It is impossible to assess the risk きるリスクを査定することは不可能であるが、彼らの求めに応じて、 that this might happen, but at their request, WHO is making WHOは、その efforts to help governments prepare for this possibility. 可能性に備えようとする政府を支援する努力をしている。 食の安全問題 テロリストの食への脅威 予防と対処のシステムを 確立・強化するための手引き 世界保健機構(WHO) 2002年5月、第55回世界保健総会は、 生物や化学物質あるいは放射性物質の意 図的悪用による市民に対する脅威につい て深刻な懸念を表明する決議を採択した。 その中で、食料を介してそうした危害物質 を播種することが可能なことに留意し、国 のシステム強化に関して加盟国、とくに発 展途上国に対して防御手段と支援を提供 するよう事務局長に要求した。 その年12月、政府の政策立案者が食 へのテロ問題を既存の食の安全システム の中に組み込むのを手助けすることを意 図した本書をWHOは発行した。そして 2008年5月に改訂版を出版した。リンク 生物・化学兵器への公衆衛生対策: WHOガイダンス Public health response to biological and chemical weapons: WHO guidance (2004) 1 序論 章末付録5.1 : 生物兵器禁止条約施行制定法 2 公衆衛生への影響評価 章末付録5.2 : 化学兵器禁止条約施行制定法 3 生物剤と化学剤. 6 国際的な支援源 3.1 代表的な生物・化学剤 3.2 生物剤・化学剤の放出 3.3 曝露経路 3.4 生物剤の特徴 3.5 化学剤の特徴 3.6 生物・化学剤の使用結果 3.7 評価と結論 4 公衆衛生上の対策準備と対応 4.1 背景 4.2 対策準備 4.3 対応 章末付録4.1 : 危険分析の原則 章末付録4.2 : 日本のサリン事件 章末付録4.3 : アメリカ合衆国郵便システムを介 した炭疽菌芽胞の意図的散布 5 法的側面 5.1 1925 年のジュネーブ議定書 5.2 1972 年の生物兵器禁止条約(BWC) 5.3 1993 年の化学兵器禁止条約(CWC) 5.4 結論 6.1 国際連合 (United Nations) 6.2 化学兵器禁止機関 (OPCW) 6.3 生物兵器禁止条約 (BWC) ) 6.4 世界保健機関 (WHO) 6.5 国連食糧農業機関 (FAO) 6.6 国際獣疫事務局 (OIE) 6.7 非政府組織 6.8 連絡先 付属文書1 化学剤 付属文書2 毒性化学物質 付属文書3 生物剤 付属文書4 防護の原則 付属文書5 飲料水・食料および他の製 品の妨害(破壊)行為に対する予防措置 付属文書6 情報源 付属文書7 WHO 加盟国の生物・化学兵器に関す る国際条約への加盟状況 飲料水、食料および化粧品や医薬品など他の消費者向け製品に対する妨害行 為を予防するために作成した計画は以下の3 点に基づいている。 1. 予防、 2. 発見、 3. 対処 このいずれにおいても、即応態勢が整っていることが不可欠である。 2.1 警備 何らかの事件を疑い、あるいは発見した場合には、組織の内外を問わず公衆 衛生当局および警察と最新の視点に立った接点を確立・維持することを含む警 備・対処計画を作成する 貯蔵施設や輸送システムを含め原料の安全を守る 加工・貯蔵・輸送など、すべての危険区域への出入りを制限し、文書化する 従業員の資質と経歴の適性検査を行う 危険区域に出入りする他の従業員( 清掃、維持管理、監査要員)を審査する 供給経路において製品が汚染される機会を最小限に留める いかなる製品も履歴・適用または所在の追跡能力( トレーサビリティ)と、汚染 が確認あるいは疑われる場合には、供給経路からの排除能力を向上させる 脅迫や疑わしい行為および行動を関係当局に報告し、適切な行動をとる 3. 検出・探知・発見 安全保障体系の弱点を改善するためには、偶発的な汚染の危険性と同様に、先 を見越した危険性の分析が必要である。こうした目的のために分配される資金や 資材は、脅威に関する公算、結果の規模と深刻度、システムの弱点等に比例させ るべきである。 監視計画には慎重な裸眼検査から先端技術のインライン検出システムまで様々 な機能が含まれる。可能性のあるすべての物質を常に検査することは技術的、経 済的に不可能である。・・・水の供給システムに関する変動指標が汚染の可能性を 示唆する場合には、迅速な追跡が不可欠である。 意図的あるいは偶発的な汚染の発見において、個人消費者の果たす役割は大 きい。たとえば味・におい・色などの水質の変化を最初に発見し、水が原因で起こ る健康問題をまず自覚するのは消費者である場合が多い。 4. 対処 もしも意図的汚染が疑われる場合には管轄の警察当局に相談すべきである。 飲料水の場合には、最終処理から消費までの時間が数時間しかないことが多い。 効率的な監視によって汚染の早期警告が出せるようにすることが肝要である。 関連性が疑われる水供給システムの全ての部門と消費者に対して、迅速に通知 できる準備が整備されていなければならない。 4.4 情報伝達 恐怖を抑え、根拠のない噂を避けるためには、報道や市民との意思の疎通方法も 含めて事前準備を整えなければならない。脅威自体よりも混乱や過剰反応の方が、 産業や商業、公衆衛生にもさらに深刻な結果を招いてしまう恐れがある。・・・テロ攻 撃の犯人によっては、賑やかな場所に爆弾を仕掛け多くの人が感染あるいは死亡 するよりも、負傷や死を避けるように警告を出し社会が混乱することによって、彼らの 「メッセージ」が効果的に拡大すると捉えている者もいる。それゆえに生物・化学剤、 放射性物質の散布に代表されるテロの脅威が、純粋に多くの人々を傷害したり、疾 病を引き起こす意図を持っていると考えないほうがよい。水供給システムや食物供 給が意図的な汚染対象として興味を惹くのはこのためである。健康被害を引き起こ すのに十分な程度汚染させることよりも、いくつかの汚染物質の物理的証拠が存在・ 発見され、社会が思い知らされるなどの事態を引き起こすことのほうが、彼らにとっ てはより重要なのかもしれない。 公衆衛生当局・警察当局・商業・他の民間組織や報道機関は、混乱を引き起こす ことなく、市民の安全に必要な情報を提供する情報伝達手段を開発・使用し、社会と 積極的に意思の疎通を図らなければならない。大発生には至らなかった事件に関す る情報の提供もその情報手段に含めなければならない。こうした事件はありふれて おり、また市民の関心を高めることができる。 5. 飲料水の供給 世界各地の水源は安全性に不安があるため、生物・化学剤による意図的汚染ある いは設備や施設に対する破壊行為にはより無防備であるといえる。水処理工場の 警備水準には広くばらつきがある。 飲料水供給システムには、一般的に以下の構成要素がある 水源、 原水本管、 処理工場、 配水管による配水システム、給水タンクと給水塔、 地域内の配水管による配水システム 5.1 水源: 水源の防衛は以下に依存している。 水源への侵入しやすさと、最終消費者に傷害や疾病を引き起こすのに十分な量の 生物・化学剤をテロリストが運搬する能力 その後の水処理・分析能力と、問題が検出されてから適切に対処するまでにかか る時間 5.3 処理設備 : 塩素消毒は、すべてではないが多くの病原性生物剤に効果があり、 容易に死滅させることができる。さらに、特に大人口を抱える地域では、塩素ガスの 巨大貯蔵タンクの存在自体がテロの標的となる危険を孕んでいる。オゾン処理は中 でも高価な殺菌方法であるが、一般的には汚染物質・病原体・毒素による汚染に対 してより効果的である。しかし、オゾン処理には塩素消毒で可能な残留塩素による保 護機能はない。 5.5 給水タンクと給水塔: 給水タンクや給水塔の安全性を高めるには、立ち入りを 困難にしなければならない。丈夫なフェンスで囲む、複数の障壁を築く、侵入口を塞 ぐなどの方法で、その場所の安全を確保できる。こうした手段は、侵入感知機と警察 や水管理室に直結した無音警報機によって補完することができる。 5.6 地域の配水管による配水システム: 給水タンクから水を引く専用の配水システ ムは、テロリストにとって、他の場所よりも容易に侵入可能な場所である。特定の建 物や地域、あるいは全配水システムの様々な場所を標的として、意図的に汚染物質 の混入が行われることがある。配水システムのほんの一部が汚染されただけで市民 の混乱が拡大してしまう可能性もある。 5.7 監視: 使用される可能性がある生物・化学剤のすべてを分析することは現実的 ではない。伝導性やpH などの一定の指標に対するオンライン監視装置は、ある非 特異的水質変化や問題発生の可能性に関する情報を提供することができる。 一旦問題が発見されてからはその取り扱いを議論するための時間はないため、緊 急対処計画には異常な検査値に即応し、汚染飲料水が配水システムに混入させな いために、明確な指示を含めなければならない。管轄の公衆衛生当局への迅速な 報告についても指示しておかねばならない。・・・汚染されたという徴候や形跡がある 場合、公衆衛生に対する重大な問題を予防するためには、一時的な給水停止こそ が唯一の現実手段となる。 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律 (平成16年6月18日法律第112号) 第一章 総則 最近改正 平成18年12月22日法律第118号 第一節 通則 第二節 国民の保護のための措置の実施 第三節 国民の保護のための措置の実施に係る体制 第四節 国民の保護に関する基本指針等 第五節 都道府県国民保護協議会及び市町村国民保護協議会 第六節 組織の整備、訓練等 第二章 住民の避難に関する措置 第一節 警報の発令等 第二節 避難の指示等 第三節 避難住民の誘導 第三章 避難住民等の救援に関する措置 第一節 救援 第二節 安否情報の収集等 第四章 武力攻撃災害への対処に関する措置 第一節 通則 第二節 応急措置等 第六章 復旧、備蓄その他の措置 第三節 被災情報の収集等 第七章 財政上の措置等 第五章 国民生活の安定に関する措置等 第八章 緊急対処事態に対処するための措置 第一節 国民生活の安定に関する措置 第九章 雑則 第二節 生活基盤等の確保に関する措置 第十章 罰則 第三節 応急の復旧 第十一章 事態対処法の一部改正 1 はじめに 2 警報が発令されたら (1)武力攻撃やテロなどが迫り又は発生した地域において 警報が発令された場合に直ちにとっていただきたい行動 (2)落ち着いて情報収集に努めましょう、 (3)避難の指示が出されたら 3 身の回りで急な爆発が起こったら (1)火災が発生した場合、 (2)瓦礫に閉じこめられた場合 4 武力攻撃の類型などに応じた避難などの留意点 (1)ゲリラや特殊部隊による攻撃の場合、 (2)弾道ミサイルによる攻撃の場合 (3)着上陸侵攻の場合、 (4)航空攻撃の場合 (5)武力攻撃やテロなどの手段として化学剤、生物剤、核物質が用いられた場合 5 怪我などに対する応急措置 (1)切り傷などにより出血している場合、 (2)火傷をしている場合、 (3)骨折している場合、 (4)ねんざしている場合、 (5)かゆみや発疹など皮膚に異常が見られる場合、 (6)体に火がついた場合、 (7)精神的ショックを受けている場合、 (8)人が倒れている場合 6 日頃からの備え (1)備蓄、 (2)訓練への参加など 国民に周知されているか? 内 閣 官 房 : 国 民 保 護 ポ ー タ ル サ イ ト ( リ ン ク ) 公衆衛生上の防犯ならびにバイオテロへの事前対策と対処に係る法律 The Public Health Security and Bioterrorism Preparedness and Response Act of 2002 略称「バイオテロ法(Bioterrorism Act)」は、以下の主要な4部から構成されている。 緒言(Introduction) 第1部: バイオテロおよびその他の公衆衛生上の緊急事態に対する国の事前準 備(Title I -- National Preparedness for Bioterrorism and Other Public Health Emergencies) 第2部: 危険な生物学的因子と毒素に対する管理の強化(Title II -- Enhancing Controls on Dangerous Biological Agents and Toxins) 第3部: 食品と医薬品の供給に関する安全と防犯の保護(Title III -- Protecting Safety and Security of Food and Drug Supply) 第4部: 飲用水の安全と防犯(Title IV -- Drinking Water Security and Safety) 第5部: その他の規定(Title V -- Additional Provisions) 第401節 テロリストおよびその他に係る国際法(SEC. 401. TERRORIST AND OTHER INTENTIONAL ACTS) 第402節 安全な飲用水法に係るその他の修正条項(SEC. 402. OTHER SAFE DRINKING WATER ACT AMENDMENTS) 第403節 付帯事項と技術的事項に係る修正条項(SEC. 403. MISCELLANEOUS AND TECHNICAL AMENDMENTS) 米国の例: 国土安全保障省(DHS)設立の経緯 2001年9月11日 2002年6月2日 2002年7月16日 テロ攻撃発生 ブッシュ政権が国土安全保障省設立法案を議会に提出 ブッシュ政権が国土安全保障国家戦略発表 国土安全保障とは米国内で発生するテロ攻撃に対する防衛、テロに対するアメ リカの脆弱性を削減、攻撃によるダメージの最小化、攻撃からの回復を全国一 致団結して行う努力である。 2002年11 月2日 2003年1月24日 連邦議会が国土安全保障法可決 国土安全保障省開設 国境・運輸保安局(Border and Transportation Security) 緊急事態準備・対策局(Emergency Preparedness and Response) 科学・技術局(Science and Technology) 情報分析・インフラ保護局(Information Analysis and Infrastructure Protection) 1. テロリスト又はテロの手段の侵入の阻止 2. 国境・領海・港・ターミナル・水路・大気・土地・海上交通機関の保護 3. 合衆国市民や合法な永住権保持者でない個人への入国に必要なビザや その他の許可書を交付する法律の制定を含む、合衆国入国帰化法の管理 4. 合衆国関税法の管理 5. 国土安全保障省に新しく移る政府機関の指揮 6. これらの責務を迅速に能率的に果すための基盤の確保 国土安全保障省主要予算及び定員 3745千万$、 169,154人 科学・技術局 国境・運輸保安局 正規職員 入国帰化局(司法省) 39,459 関税局(財務省) 21,743 動植物衛生検査局(農務省) 8,620 沿岸警備隊(交通省) 43,639 保安局(連邦調達庁) 1,408 運輸保安局(交通省) 41,300 緊急事態準備・対策局 連邦緊急管理庁 化学・生物・放射能・核兵器 対応課(保健福祉省) 国内緊急援助チーム 核兵器緊急対応チーム(エネ ルギー省) 国内準備課(司法省) 国内準備課(司法省FBI) 正規職員 一般市民生物兵器防衛研究プログラム(保健福祉 150 省) ローレンスリバーモア国立研究所(エネルギー省) 324 国立生物兵器防衛分析センター(新設) ー プラムアイランド動物疾病センター(農務省) 124 情報分析・インフラ保護局 5,135 主要インフラ保証課(商務省) 緊急コンピュータ応答センター(連邦調達庁) 150 通信システム課(国防総省) ー インフラ保護センター(FBI) インフラシュミレーション分析センター(エネルギー省) ー ー シークレット・サービス(財務省) 15 65 23 91 795 2 6111 国土安全保障省は、テロ対策に関する8省庁22の政府機関を統合し、4庁1官房、 職員17万人の巨大な省庁となる。この法案の成立により、第二次世界大戦後、 米国軍隊を国防総省傘下に統一し、国家安全保障会議を創設したトルーマン政 権の改革以来の大規模な省庁再編となる。 農業テロに対する戦略的連携計画 Strategic Partnership Program Agroterrorism (SPPA) 2005年8月 国土安全保障省(DHS)、米国農務省(USDA)、食品医薬品局(FDA)、および連邦捜査局 (FBI)は、農業テロに対する戦略的連携計画 (SPPA)構想という共同構想の下で、民間産業 と国が共同作業することになった。 SPPA構想は、業界企業、商業団体あるいは州政府が 自主的に参加する真の連携計画である。 計画の目的: 連邦政府は、産業界と州政府の志願者と連携して以下のことを計画する ● 重要設備基盤/主要資源の査定によって食料部門全体の脆弱性を確認/特定する。 行政の谷間、行政と民間部門のズレ、生産者と消費者のズレ a. 間隙の特定 b. 特定された研究の必要性を中核的研究拠点と部門別機関に知らせる c. 判明した教訓の一覧を作る ● 攻撃計画を意味する指標と警告を特定する。 ● 脅威を減らし、攻撃を防ぐための緩和戦略を策定する。戦略には、産業界または政 府が脆弱性を減らすために採用可能な行動を含む。 ● 食料と農業部門のために米国政府が実施した査定を検証する。 ● 米国政府と産業界が採用している既存の手法を強化するための情報を収集する。 ● 警告と指標、主な脆弱性、および可能な緩和戦略を含む包括的な報告書を米国政府 と産業界に提供する。 ● 国家重要インフラ防護計画( NIPP )および国の事前準備目標を支えるため、国の重 要設備基盤の脆弱箇所を判定するため査定結果を取りまとめて米国政府への報告書の一 部とする。 ● 訪問した重要な食料と農業部門と一緒になって、連邦政府、州政府、地方自治体、な らびに、食料と農業部門との関係を確立・強化する。 水道事業部門が直面しているテロと防犯問題 Terrorism and Security Issues Facing the Water Infrastructure Sector 米国議会調査部 2008年7月28日 緒言 2001年9月11日、世界貿易センターと国防総省に対する攻撃は、米国における 国の給水と水質に係る基盤設備を含む多くの公共機関、施設、およびシステムの 防犯に注意を呼起した。これらのシステムは、物理的破壊、バイオテロ/化学物質 による汚染、ならびに、サイバー攻撃を含む様々な種類のテロ攻撃に対して潜在 的に脆弱であると、兼ねてから認識されてきた。・・・ 水の基盤設備システムは、その他の基盤設備システムとも密接に関連しており、 とくに、化学物質処理に使われる化学工業とともに電力と輸送と緊密に関連してい ることから、それらの全てを防護することが重要課題である。この種の相互関連の 脆弱性は、たとえば2003年8月の米国東北部における停電期間において明白であ る: 自家発電システムがなかったクリーブランド、デトロイト、ニューヨーク、および 他の地区で廃水処理施設が電力を失い、緊急時を通して未処理廃水が何百万ガ ロンも垂れ流しになり、そして、上水道施設の電力喪失は多数の地域で沸騰水を 使用する勧告を出す羽目になった。同様に、2005年のGulf Coastハリケーンや 2007年のミシシッピー川洪水などの自然災害は、輸送、水、電力、および電気通 信など多数の基盤設備システムに大規模かつ多額の損害をもたらした。・・・ 背景 水の基盤設備システムは、公共用水、工業用水、農業用水および家庭用水のた めの表流水と地下水からなる水源; 原水を貯えて輸送するダム、貯水池、水路およ び配水管; 原水から汚染物質を取り除く処理施設; 処理した上水の貯水; 使用 者に上水を配送するシステム; 廃水を集めて処理する施設が含まれる。これらのシ ステムは、全国でおおよそ、7万7000のダムと貯水池; 何千マイルもの配水管、水 路、上水道、および下水道; 16万8000 箇所の公共上水道施設; 約1万6000箇所 の公共汚水処理施設から成り立っている。・・・ 都市部に位置する大規模な上水施設と廃水施設の約15%が、米国人口の75% 以上に給水業務を行っている。間違いなく、これらのシステムはテロ攻撃の最大級 の目標となり、1万人未満の人々に配水している大多数の小規模システムは、テロリ ストの主目標となる可能性は低い。しかしながら、数が多い小規模システムは、防護 が弱い傾向にあり、破壊者やテロリストによる攻撃に対して潜在的により脆弱である。 一箇所の小規模システムに対する攻撃が成功することによってさえ、広範囲の恐慌、 経済的影響、ならびに、給水設備に対する国民の信頼喪失をもたらす。 物理的な破壊攻撃には、操業システムや配送システムの要素、電力や情報通信 システム、電子制御システム、ならびに、貯水池と汲み上げ施設に対する具体的破 壊が含まれる。・・・バイオテロや化学物質による攻撃は、病原微生物または有毒化 学物質による汚染を広範囲に配送し、無数の公衆衛生問題を引起すことができる。 防犯問題への対処 廃水処理設備の防護は、上水道システムに対するよりも配慮が不足しており、そ れらの破壊が生命や国民福祉に対する直接的脅威というよりも(未処理廃水の放出 のような)環境への脅威の側面が強いからであろう。しかしながら、脆弱性は存在し ている。地下の大型下水管は、ビルや市街地の下に破壊装置を置く目的のためにテ ロリスト集団が侵入することは可能である。マンホールや排出口からガソリンなどの 可燃性が高い物質を注入することによって、下水管を兵器に仕立て上げることが可 能である。下水道の爆発は、道路、歩道および隣接建築物を崩壊させ、近くの人々 を傷つけ、殺すことが可能である。・・・ EPAからの資金援助によって、上水道施設、廃水処理施設、ならびに工学専門 家グループは、オンライン式の汚染監視システム、ならびに、飲料水、廃水、および 雨水の基盤設備システムの物理的な防犯強化を含む3種の防犯指針文書を作成し、 2004年12月に刊行した。これらの文書は、新たなシステムと既存のシステムの立案、 構築、運用および維持を通してそれらのシステムの脆弱性を緩和するために脆弱性 査定を完了した施設を支援する目的の自主的指針を提供している。3種の指針文書 に基づいて、立案者グループは、テロ攻撃、ならびに、事故、化学物質汚染および自 然災害などのその他の潜在的危害発生源を含む広範な脅威に対して水道施設と廃 水処理施設を防護するための措置を推奨する訓練教材と一連の自主的な標準最適 技術基準(best engineering practices)を作成した。・・・ 飲用水/廃水施設当局の対処連携網 WARNS: Water/Wastewater Agency Response Networks 緊急時の連絡を確立し、最重要業 務を回復する短期の緊急時援助 を推進するための仕組み 協定州 協議中 運営委員会 指導チーム設置 研究会開催 おまけ 食の防犯(Security) 食料生産 Food Production 食の安全 Food Safety 食文化 食の防犯 Food Security 食料の品質 Food Quality テロ攻撃の手段として 何故、バイオなのか? ヒトの健康を障害し、生命を奪う様々な危害物質の中で、入手が簡 単(自然界にある)、高度技術や大規模設備を必要としない、安価であ ることから、資金力に限りがあるテロ組織には魅力的。 病原体は増殖することから、散布した地点に留まらず、広域に広が る。ボツリヌス菌が産生する毒は、人工化学物質が及ばない地上最強 の経口毒である。 何故、食料なのか? 世界流通している食料は広範囲の被害を作り出す手段として最 適である。発展途上国で混入すれば、多数の輸入国を攻撃できる。 食は生命の基本であり、それを破壊することは、たとえ小規模で あっても、心理的影響は絶大である。 中国製ギョーザに関する製造者と販売者の責任 2008年2月1日 中国製ギョーザによる健康障害については、最初の事例から1ヶ月経過した段階で公開 され、製品回収が遅れたことが大きな社会問題とされている。この「遅れ」がなければ千葉 県における重大事故を未然に防げたと考えられるが、その予防活動が可能だったのは誰 か? 少人数の単発事例で原因が特定されていない時点で、行政がその製品を公表するこ クレーム対策 とは不適切であり、社会的混乱を招くだけである。また、数少ない検疫担当官が輸入時点で あらゆる危害要因を検査することも不可能である。しかし、今回のような事態を早期発見す るための情報が集中する場所が1箇所だけある。それは輸入販売元ジェイティフーズである。 中国製ギョーザのメタミドホス汚染: 過失か故意か 2008年2月4日 偶然起きた「過失」であれば食品衛生上の問題であるが、何らかの目的を達成 するための「故意」であったとすれば刑法上の問題である。1984年に起きた「グリ コ・森永事件」は未解決のまま時効となったが、それに触発されてスーパーの商品 に「針」を差し込む等のイタズラが流行した。こうした「故意」による安全性への脅 防犯対策=治安当局との連携 威は、フードチェーンの関係者には手におえないものであり、警察に頼るしかない。 いや、警察とても事件が起きてからしか動けないのであり、「故意」による犯罪を防 ぐのは一般社会の良識を育てる以外に策はない。 非食用事故米 意図的混入 <事故米転売>ほとんどテロに近い イオンの岡田社長 9月19日21時44分 毎日新聞 汚染米がおにぎりに調理され、コンビニ エンスストアやスーパーで販売された事態 を受け、流通大手イオンの岡田元也社長 は19日、記者団に「ほとんどテロに近い。 我々も確認作業などに大変なコストがか かる。今回の事件をやった人を許してはい けない」と述べた。農林水産省の対応につ いても「結果としてここまで許した責任は重 大だ」と厳しく批判した。 事故米が加工された三笠フーズの工場 福岡県筑前町 毎日新聞 2008年9月5日 22時40分より 伝 票 偽 装 食用米 産地偽装 正 規 米 に 混 入 「食品衛生法」、「不正競争防止法違反」等は善意の過失を 防止するための法律であり、意図的汚染を謀る犯罪者を想 定した法律ではない! 通常業務: 指導、助言 癌患者の終末医療に欠かせない鎮痛剤 モルヒネは、医薬品であり「薬事法」お よび「麻薬及び向精神薬取締法」によって規制されている。麻薬は痛みを伴う終末期 患者にとって安らかな最期を迎えるために欠かせない薬剤であり、その適正な使用 と管理を定めているのは厚労省が所管する法律であり、医療業界、医薬品業界、お よび厚労省はその法律に基づいて活動している。 犯罪: 強制捜査 他方、麻薬は暴力団やテロリストの資金源でありその管理は発展途上国の重要 課題となっているが、薬物の不法使用、さらには不法流通を取り締まる法律は、「あ へん法」、「大麻取締法」、「覚せい剤取締法」、「国際的な協力の下に規制薬物に係 る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の 特例等に関する法律(麻薬特例法)」など、多数用意されている。 治安当局が麻薬の不法流通を阻止する効果的な活動を保障するとともに、無関 係の一般市民を巻き添えにすることがないように規制されている。 著者: 松延洋平(国際食問題 アナリスト、コーネル大学終身評 議委員、ジョージタウン大学法 科大学院客員教授、元国土庁 内閣官房審議官、元農水省内 閣広報審議官) 日本食糧新聞 社、2007年刊、2,625円 第1章 「食の安全」が世界を変える 〔連邦バイオテロ法〕の誕生とその仕組み 第2章 「毒物混入から異物混入まで」 大事件・大事故に学ぶこれからの企業の危機管理 第3章 食品衛生法の行方と新体制 HACCPの始まりにみるわが国の受け入れ事情 第4章 民間・産業主体の「鉄壁の防御」は可能か? 企業の主体的取り組みと実践の鉄則 第5章 現場監査システムの確立で安全へ前進 官民連繋した検査機構で消費者から信頼を 第6章 大規模犠牲者時代の危機管理戦略 事件が大量の被害者を生む危険 第7章 バイオ・アグロテロの正体とその威力 生命を守るため、農(生産)と食(製造)の壁を越えて 第8章 「産業破壊」をどう防ぐ 国の経済基盤の崩壊・破壊を狙う 第9章 安全を守る番人、「検査」の役割 国境を越える「監視社会」の光と影 第10章 遺伝子組換え食品をめぐる葛藤 組換え技術に立ちはだかる不安・不信の壁 第11章 食安全・公衆衛生での国際貿易の展開と課題 世界の司令塔を取り巻く新情勢と今後の行方 第12章 悪化する国際政治の中のテロの脅威 これでいいのか日本の危機管理と安全対策 第13章 バイオ先端科学と政治のドラマ フードポリティックスからバイオポリティックスへ オバマ氏演説「私たちはできる」 11月5日21時4分配信 毎日新聞 我々の前には大きな仕事が待っている。(イラク、アフガンの)二つ の戦争、危機に直面した地球、世紀の金融危機だ。新エネルギーを開 発し、仕事を創出し、学校を建て、脅威に対処し、各国との同盟関係を 修復しなければならない。 今夜我々は、この国の真の力は武力ではなく、民主主義、自由、機 会と不屈の希望に由来することを証明した。この選挙戦では語り継ぐ べき多くの物語があった。(ジョージア州)アトランタで投票した女性も その一つだ。106歳の彼女は、かつて(女性という)性別と(黒い)肌の 色の二つの理由から選挙に参加できなかった。彼女は全米が大不況 の絶望に包まれ、ニューディール政策によって恐怖を克服する国を見 た。彼女はアメリカがどれだけ変化できるか知っている。我々はできる。 皮肉や疑いに直面した時、「できない」と私たちに語る人がい る時、時間を超えた道理で答えるのだ。私たちはできる、と。
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