社会ネットワークにおける局所構造の創発と分析

社会ネットワークにおける
局所構造の創発と分析
東京工業大学
高橋徹,山田隆志,寺野隆雄
概要
1.背景
2.モデルの説明
3.実験結果
4.結論
5.今後の課題
1
2
• 歴史的にコミュニケーションの
形態で3つの時代が考えられる
–村の時代
–マスメディアの時代
–ウェブの時代
3
背景:村の時代
• 村の時代は遠方とのコミュニケーションが困難
• コミュニケーションはコミュニティ内がほとんど
• コミュニティは独自の文化を形成
4
背景:マスメディアの時代
• マスメディアの登場
• マスメディアを通して遠方の情報を取得
• 文化は一様化
5
背景
6
背景
マスメディアの登場による
コミュニケーションの形態の変化は
文化の形成のされ方を変えた
7
背景:ウェブの時代
• 近年,情報技術の発展でコミュニケーションの
形態が変化
• 距離に関係ないコミュニケーションが可能
• blogを使って自己発信が容易に可能
8
背景
文化の形成も変化?
多様化?
9
背景:目的
• ABSでウェブの時代の文化の形成が
どう変わるのかを実験
–これまでの時代を含めた3つの時代を
モデリング
• 村の時代
• マスメディアの時代
• ウェブの時代
10
モデルの説明
11
モデルの説明:エージェント
• パラメタ
– 文化
•
•
•
•
Axelrodの文化の流布モデルのタグモデル
文化の要素を統合的に数字で表現
2つの文化の近さはタグの一致率で表現
今回は新しい価値観が生まれない文化が対象
0.60
3 2 1 2 4
2 2 1 3 4
0.20
2 1 4 3 4
0.60
12
モデルの説明:エージェント
• パラメタ
–知人リスト
• エージェントの知人のリスト
–所属地域
• エージェントの所属している地域
13
モデルの説明:相互作用ルール
• 選択
–相互作用の相手を文化の一致度を
キーとした優先的選択を行う
• 自分と価値観の合う相手を優先
ただし,村の時代,マスメディアの時代では
他地域のエージェントとの文化の一致度を
半分にして選択.
14
モデルの説明:相互作用ルール
• 選択
0.60 ⇒0.30
3 2 1 2 4
30%
3 1 1 3 4
0.60
0.20 ⇒0.10
1 2 2 2 4
1 3 4 1 4
15
モデルの説明:相互作用ルール
• 会話
–選択されたエージェントと
相互作用
–相互作用では確率qで相手に文化
を近似
3 2 1 2 4
3 2 4 2 4
近似
2 1 4 3 4
2 1 4 3 4
16
モデルの説明:相互作用ルール
• 紹介
– 選択されたエージェントがさらにエージェントを
選択し,そこで選択されたエージェントと会話
– 紹介されたエージェントを知人リストに加える
会話
17
モデルの説明:相互作用ルール
• 偶発的出会い
–知人リストに関係なく
全体からランダムに
エージェントを選んで会話
–そのエージェントを
知人リストに加える
18
モデルの説明:相互作用ルール
• マスメディアエージェント
–マスメディアを表すエージェント
–マスメディアエージェント自身が行動を
行うことはない
–1000ステップごとに文化を全体で最も
採用されているものに変更
–すべてのエージェントの知人リストに
加わる
19
モデルの説明:進行
• 忘却
–500ステップごとに50%の確率で
知人リストを半減
–古いものから順に削除
20
モデルの説明:進行
行動するエージェントの
選択
行動を選択
p1:会話
p2 :紹介
p3 :偶発的出会い
(確率で選択)
前回の忘却から
500ステップで忘却
21
実験
結果
22
実験結果:初期設定
•
•
•
•
•
•
q :0.1
p1 :0.75
p2 :0.24
p3 :0.01
地域数:4
各地域の
エージェント数:15
• 文化の種類:10
• 文化の長さ:8
•
•
•
•
ノード:エージェント
ノードの形状:所属地域
矢印:知人
矢印の太さ,濃さ:文化の近さ
村の時代,ウェブの時代
23
実験結果:初期設定
•
•
•
•
•
•
q :0.1
p1 :0.75
p2 :0.24
p3 :0.01
地域数:4
各地域の
エージェント数:15
• 文化の種類:10
• 文化の長さ:8
•
•
•
•
ノード:エージェント
ノードの形状:所属地域
矢印:知人
矢印の太さ,濃さ:文化の近さ
マスメディアの時代
24
実験結果:村の時代(シナリオ1)
15000ステップ後
• 基本的に
同じ地域で
固まっている
• ほかの地域に
まぎれている
ものもいる
25
実験結果:村の時代(シナリオ2)
14000ステップ後
• ほかの地域との
リンクが少なく
村の文化が近く
なっている
• 一方,分離した村
もある
26
実験結果:マスメディアの時代(シナリオ1)
15000ステップ後
• 同じ地域だけで
なく他の地域とも
文化が近い
27
実験結果:マスメディアの時代(シナリオ2)
15000ステップ後
• マスメディアと
は独自の文化
を形成するも
のも出てくる
28
実験結果:ウェブの時代(シナリオ1)
12000ステップ後
• 初期の所属地域の
影響は少なくなっている
29
実験結果:ウェブの時代(シナリオ1)
15000ステップ後
• いろいろな文化と触れ合う
機会が増えた分
収束が遅くなっている
30
実験結果:ウェブの時代(シナリオ1)
30000ステップ後
• 全体が
近い文化に
なった
• 一様化!
31
実験結果:ウェブの時代(シナリオ2)
12000ステップ後
32
実験結果:ウェブの時代(シナリオ2)
15000ステップ後
33
実験結果:ウェブの時代(シナリオ2)
30000ステップ後
• 二極化した!
34
35
結論
• 村の時代では独自の文化を築いて
いたが,マスメディアの登場により,
実際にコミュニケーションを取れなく
ても文化的に近くなるようになった.
• しかし,まれにマスメディアとも孤立
した小集団(オタク)が登場すること
もあった.
36
結論
• ウェブの時代では他の地域とのコミュニケー
ションコストが下がった.これによって以下の
ようなことがいえる.
• 文化が多様化するようなことはなく
一様化,もしくは二極化するだけであった.
• 一様化,または二極化する様子は,
1つの村の様子と類似している.
• これはコミュニケーションコストの減少が
全体を1つの村のようにしたといえる.
37
今後の課題
• 今回の文化は新しいものが
発生したり,廃れたりしない
という限定的なモデルであった.
• また,文化的な良し悪しは
考えていない
• 今後はそのような文化も考えら
れるような要素も加える
38