伊豆報告 「サブプライム問題と プライベートファン ド 」 へのコメント 2007年度日本国際経済学会 九州山口地区部会 九州大学 12月8日(土) 松山大学 掛下達郎 1 伊豆報告のもとになった論文・報告 「サブプライム問題とファンド資本主義」 『生活経済政策』129号,2007年10月。 「プライベートファンドと国際資本市場」特別セッ ション:現代資本主義とファンド,日本金融学会 秋季大会(於同志社大学), 2007年9月。 「国際資本市場の新たな展開~M&A,LBO, CDS~」日本証券経済学会関西部会報告(於 大阪証券取引所),2007年4月。 「ファンド・ブーム下の国際資本市場」 『甲南経済学論集』第47巻第4号,2007年3月。 目 的 ①最近の国際金融市場の活況(ITバブル崩壊 からの回復)とサブプライム問題にみられる 特徴は何か? ②様々な現象をつなぐもの・その背景にあるも のは何か? ③サブプライム問題のグローバル化の背景 〈融資の市場化〉と〈ファンドブーム〉 3 結 論 融資(クレジット)の市場化によって,従来は 分断されていた住宅ローン,社債市場,M&A関 連の融資取引などそれぞれのクレジット市場 は,グローバルに連動するようになった。 ← プライベートファン ドが仲介? ① ファンドによるM&Aの増大, ②ヘッジファンドのM&A情報をもとにした CDS売買(プロテクション買い), ③M&Aの活況は,株式市場というよりクレジット 市場(信用リスク市場)に支えられている。 4 評 価 最近の国際金融市場にかんする広い視野から のパースペクティブのある研究 非常に示唆に富み,刺激的なところがある。 メインポイント 〈投資ファンド〉は〈融資の市場化〉に ①いつから, ②どのように関係しているのか? こうした統計や事例研究はどのくらいあるのか? 5 メインポイントに関連して 〈融資の市場化〉はいつから始まったのか? 〈融資の市場化〉の規模は, 株式市場,社債市場,融資市場等にくらべて どのぐらいなのか? 〈ファンドブーム〉はいつから 始まったのか? 〈投資ファンド〉の規模は,投資銀行 (証券会社),商業銀行等にくらべて どのぐらいなのか? 6 アメリカの貸付債権の証券化の歴史 住宅モーゲイジ貸付 商業モーゲイジ貸付 自動車ローン SBA(中小企業庁)保証ローン クレジット・カード・ローン ホーム・エクイティ・ローン 1970年~ 1980年代~ 1985年~ 1985年~ 1986年~ 1989年~ 農業モーゲイジ貸付 1990年~ アメリカ投資信託の国際化 1960年代~ 7 若干の指摘 ①1980年代後半末のシンジケート・ローンでは なく,1983年以降のローン・セール市場の拡 大がM&Aの増大と関連しているのでは? ②M&Aとクレジット市場の具体的な関係は? ③ヘッジファンドとクレジット市場の具体的な関 係は? ヘッジファンドのM&A情報をもとにしたCDS 売買(プロテクション買い) (「クレジット市場」という用語を 「信用リスク市場」と「融資市場」の 両方の意味で使っていないか?) 表 世界のクレジット・ディリバティブの買い手と売り手 2000-2008年 (市場シェア% 金額ベース) プロテクションの買い手(信用リスクのヘッジャー) 銀 行 取引目的 ALM目的 ヘッジファンド 年金基金 企 業 保険会社 専門保険会社 再保険会社 その他保険会社 投資信託 その他 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年(見積り) 81% 3% 1% 6% 7% 1% 1% 73% 12% 1% 4% 6% 3% 1% 1% 67% 16% 3% 3% 7% 2% 3% 2% 1% 1% 59% 39% 20% 28% 2% 2% 6% 2% 2% 2% 1% 1% 54% 36% 18% 28% 3% 3% 6% 2% 2% 2% 1% 1% プロテクションの売り手(信用リスクの投資家) 銀 行 取引目的 ALM目的 ヘッジファンド 年金基金 企 業 保険会社 専門保険会社 再保険会社 その他保険会社 投資信託 その他 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年(見積り) 63% 5% 3% 3% 23% 2% 1% 55% 5% 2% 2% 33% 12% 3% 0% 54% 15% 4% 2% 20% 10% 7% 3% 4% 1% 44% 35% 9% 32% 4% 1% 17% 8% 4% 5% 3% 1% 40% 33% 7% 31% 5% 2% 18% 8% 4% 6% 3% 1% (出所) British Bankers' Association, Credit Derivatives Report 2006, pp. 17-18. 展 望 商業銀行業務と投資銀行業務(証券業務), あるいはマネーセンターバンクと大投資銀行 の競争という視点でみた場合, 近年,商業銀行の融資を市場化,もしくは グローバル化させたのがプライベートファン ドであるという論点は興味深い。 マネーセンターバンクが,ノンバンクである プライベートファン ドの助けを借りて,大投資 銀行に国際金融市場で競争できるようになっ たことを,どのように評価・位置づけ・理論化 していけばいいのか? 10
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