合理化マニュアル

見積り・積算のキーポイント
株式会社 伊藤工務店
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目
次
1.はじめに
2.見積り・積算の種類
3.見積り・積算業務の流れ
①現場説明会
②見積り計画の立案・作成
③現地調査
④質疑回答(仕様・規格・見積り区分の確認)
⑤協力業者に見積り依頼をする
⑥仮設計画・施工計画・工程計画の立案をする
⑦積算をする
⑧改善(CD・VE)提案の検討をする。
⑨添付書類の作成をする
⑩見積書を作成する。(入札額決定)
4. 補足
①鉄骨
②建設物価
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1 は じ め に
◆なぜ、見積り・積算が重要なのか?
見積りとは、単に工事を受注する為に工事金額を示すだけではありません。
各社の見積りを比較する事で、その会社の施工能力・技術力・良さ・強さ・弱さなどを知る事ができます。
言い換えれば、見積書は身近な競合他社と自社を比べるベンチマークであると言えます。
注意事項:特記仕様書、図面中の解らない言葉は、必ず建築用語辞典で確認する。
◆見積り・積算とは?
見積りと積算の違いは何?
例えば、顧客に「見積りを提出する」と言いますが、「積算を提出する」とは言いません。
協力業者に「~を見積りしてください」といいますが、「~を積算してください」とは言いません。
ゼネコンに「積算課」はありますが、「見積り課」とは呼びません。
実際には、ほぼ同じ意味で使われる事が多いようですが、正確には
『見積り』 ⇒ 数量に単価を掛けて工事費を求める事。
『積 算』 ⇒ 建築物の各部分数量の算出をする事。
施主・社外に対してが『見積り』、社内に対してが『積算』とも言えます。
順番としては、「積算」を行った結果が「見積り」になると言う事になるので、積算の良し悪しで
見積りの良し悪しも決まります。
正確で精度の高い積算(数量の算出)をする事が、競争力のある見積りを作成
する事へと繋がり、さらに利益を生む工事の受注へと繋がります。
積算順序は若い番号から拾う。数量は後で判りやすいようにまとめる。
躯体数量は、コンクリート、型枠、鉄筋を一体で拾う。(相互の関連で拾い落しをチェック)
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2 見積り・積算の種類
1.概算見積り(積算)
施主が建物を建設する場合、資金の準備が必要となります。企画や計画の段階で、
大まかな工事費を予測する事を目的とする場合に行います。短時間で工事費を予測
できます。過去に建築された類似物件の工事実績から、可能な限り信頼性の高い
データをもとに予測します。
例)計画建物の延べ面積に単位面積当たりの単価をかける。
補 足
施主は、概算見積りを基に資金の準備や仕様を計画します。なので、明細見積り時に大きな差異があると困ります。
特に高くなってしまうと資金不足となります。見積り範囲や別途で掛かる費用を明確に伝える事も大切です。
施主の予算に沿った計画となるよう、VEなどのコストダウン提案を同時に行うことも必要となります。
上席・部署長との連絡・相談を密に行ったうえで話を進めてください。
2.明細見積り(積算)
業務の内容
積算の目的
積算の種類
建物の設計段階や、工事の実施段階(入札)などで
詳細な工事費を予測する事を目的とします。
設計図書に基づいて、建築物を構成する各部分の
数量を各工事区分毎に細かく拾い出してこれに
単価をかけて合計し、全体の工事費を求めます。
補 足
類似物件の工事実績を調べる為には、上席や積算担当者、工事担当者に
直接聞くのが一番早くて正確です。
当社の見積りシステムで類似工事を検索する事も出来ます。
見積りの目的と種類
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3 見積り・積算業務の流れ
⑤協力業者見積り依頼
①
現
場
説
明
②(
見
見積
積り
り日
計程
画、
を役
作割
成、
す分
る担
)
③
現
地
調
査
(
仕
④様
質・
規
格
疑・
見
積
回区
分
答確
認
)
⑦数 量 積 算
・
仮・
構・
内・
建・
金・
外・
設
設造外具属構備
数関装関及数関
量係仕係び量係
拾数上数雑拾数
い量げ量数い量
拾数拾量 拾
い量い拾 い
拾 い
い
⑩(
見入
積札
額
書決
作定
成)
な
ど
⑥施工・仮設・工程計画
⑧改善(VE・CD)提案検討
入
受
札
注
⑨添付書類作成
1) 総合仮設計画図
2) 全体工程表
3) 改善(VE・CD)提案
4) 環境(CASBEE)
に関する提案 など
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① 現 場 説 明 会
施主が建設工事を計画すると、工事を発注する施工会社を決める為に『現場説明会』を開催し、各社に
見積りを依頼します。数社を一度に行う場合や1社ずつ行う場合など様々です。
現場説明会の資料には、見積要項として下記の内容が記載されています。
・予定工期
・工事内容
・工事条件
・工事範囲
・別途工事
・質疑提出日及び質疑回答日
・入札日
・見積提出先
・提出資料の内容 など
見積・積算業務は客先から与えられた条件、日程で行いますので
資料から各条件を読み取り把握することが大切です。
また、当日に口頭での追加説明や質疑回答が有ります。
その項目も見積りに反映させます。口頭での説明では不明確なので
文書での指示を求める。質疑回答で再度確認する事が重要です。
現説資料(見積要項)の一例
補 足
現場説明会に呼ばれなければ、入札に参加する事も
出来ません。
入札に参加する為には、日常から得意先へ建設計画に
関する情報収集と営業活動をする事。
得意先から信頼される施工をする事が重要になります。
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② 見積り計画の立案・作成
現場説明会から入札日までの限られた日数の中で、精度が高く会社に利益が残る見積りを作成しなければ
なりません。
さらに競合他社に負けない価格と付加価値が無ければ、工事を受注する事は出来ません。
その為には、部署長・上席・設計を交え、しっかりと計画を立てて見積りを作成する必要があります。
業
者
名
◆積算作業の分担、役割確認。
◆提出日時の確認。
◆質疑提出、回答日時の確認。
◆計画図、工程表等提出書類
の必要日時。
◆どの協力業者に何の見積りを
依頼するのか?
などを一覧表にまとめると
分かりやすくスムーズに作業を
進める事が出来ます。
補 足
フォーマットは特に決まりはありません。
各部署で使用しているもの、各自で作成した
もの等を利用すれば良いです。
設計見積りの場合、見積図の作成が必要
になります。どの程度の図面をいつまでに
必要かも計画します。
見積り計画書の一例
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③ 現 地 調 査
現場説明会の資料のみで工事の全てを理解する事は困難です。
直接現地を見て調査する事で、資料との食い違いや不足している情報、不明な点、現地や周囲の状況や
条件が把握できます。
施工方法や総合仮設計画を検討する為にも必要であり、より精度の高い積算が可能となります。
現地調査で気付いた疑問点などは、必ず質疑として施主に提出し確認を取ります。
◆敷地状況の確認
・地中障害物
電気・電話・給排水・ガス・浄化槽・在来基礎等の確認。
・地上障害物
建物・門・塀・植樹・電柱・消火栓等の養生、移設。
・空間障害物
大型工事用機器の使用が可能か。送電線、電話線等の養生、移設等が必要か。
・敷地状態
盛土・すき取・擁壁・石垣・法付等の仕様と範囲。草刈、伐採、移植。切土・盛土の要、不要。
・試験調査
測 量 … 敷地実測図、境界明示、現状GLと設計GLの確認。
地 質 … 現状地盤状況、常水位、根切土の処理の確認。
◆借用物の確認
・占
用
公道、空間占用は可能か。車輌の乗入れが必要か。
・借
用
敷地内に事務所・詰所・倉庫・下小屋等の設置が可能か。近隣空地の有無、整地、仮囲等の要、不要。
借地、借家等の借用条件の確認。
◆近隣環境の確認
・道路状況
現状道路で運搬路の確保可能か。
・交通制限
一方通行、大型車通行禁止時間帯、積載、高さ制限の確認。人、車の通行量、
道路巾の確認。道路使用の可否・時間制限の有無。
・市街地条件
病院、学校、精密機械工場、電算機設置事務所、河川、軌道、海等の有無。
・公害条件
掘削、山留め、杭打等による影響は無いか。
・養生復旧
建物基礎と隣家の接近状況、山留め工法等の検討。隣家の接近状況から養生、
補修の検討。道路使用による補修、復旧。
・災害防止
シート、金網、朝顔、ブラケット、オーバーブリッジ等の使用と範囲
・電気給排水
仮設電力、電話引込方法と距離の確認。給水、ガス、下水管の引込方法。
補 足
現場説明会と同時に現地調査を行う場合や後日に
調査する場合とケースバイケースです。
場合によっては、協力会社にも調査させます。
撮影が可能であれば写真を撮っておくと、後で確認が
出来ます。
調査不可能、確認できない事項がある場合は、
見積条件を明記します。
競合他社も同じ条件で見積りするように
質疑回答で確認する事が重要です。
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④ 質 疑 回 答 (仕様・規格・見積り区分の確認)
現場説明会の資料には、不明な点・間違い・不整合が必ずあります。
自分で勝手に解釈して積算を行ってしまうと、
・認識違いによる拾い落とし
・認識違いによる過剰な拾い
が発生してしまいます。
拾い落としがあれば、受注できたとしても追加が貰えない、施主と
紛争になる。結果として、会社の損失や施主からの信頼を失う事にも
なりかねません。
また、過剰に解釈してしまえば見積り金額が高くなり工事を受注す
る
事ができません。
各社から提出された質疑に対する回答は、全社に配布されます。
工事で問題を起こさない為にも、競合他社との条件を揃える為にも、
不明な点を事前に質疑回答で確認する事が重要になります。
質疑回答書の一例
補 足
現場説明会の資料は施主により違います。
的確な質疑を提出する事は、施主にその物件への当社の意気込みを
アピールする事にもなります。
積算メンバー・上席・設計・設備担当者・協力業者など、なるべく多くの
意見を求めると、良い質疑を提出する事が出来ます。
補足2
質疑の文章について、『~についてご指示下さい。』という書き方は、
嫌われる場合が多いので、注意が必要です。(受身の質疑)
『~と考えて宜しいでしょうか?』と言ったように、「Yes」か「No」で
答えられる文章。こちらから『提案』するような内容を心掛けると良いです。
もちろん、設計の意図を十分理解した上で提案する必要があります。
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◆見積り(積算)区分について
工事には工事区分や条件が設定されています。例えば、
(1)別途工事、支給品の有無。
(2)指定業者、指定材料がある。(コスト低減が難しい)
(3)完成までに部分使用が あり、先行引渡し(仮使用)が必要。
などにより、価格が決まってしまう場合や、条件により
施工方法・工事金額に大きな差異が発生します。
現場説明会の資料にも明記されていますが、不明な場合や
記入忘れも多くあります。必ずチェックし、不明な点があれば
必ず質疑回答で確認します。
工事区分表の一例
補 足
指定業者であっても見積照合は行いましょう。実勢価格を知る事で、
値段交渉の材料になります。また、場合によっては、指定解除が可能になる
こともあります。自分からあきらめず、あらゆる可能性を模索しましょう。
チェックシートを利用してチェックする事で、効率よく作業を行いチェック忘れ
を防止する事ができます。Web上に便利なチェックシートがあるので、
このような物を利用してみるのも良いでしょう。
←積算区分チェックリスト
http://www.bcs-kansaisibu.com/sekisan/index.html
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⑤ 協力業者に見積依頼をする
(見積照合マニュアル参照)
より精度の高い積算を行う為には、協力業者に見積りを
依頼する事が必要になります。
直接協力業者から見積りを取得する事で、当社が施工
可能な実勢の単価を知る事が出来ます。
なるべく複数の業者から見積りを取得し、最も安く、信頼
できる単価を選定します。
各業者が同じ条件で見積りする為に、『見積り依頼書』を
作成し、指示を明確に行うとスムーズに作業を進める事が
出来ます。(見積照合マニュアル参照)
また、建設業法に沿った必要事項も必ず記載しておきます。
補 足
適正な元請下請関係の構築には、個々の下請け契約が各々の対等な立場に
於ける合意に基づいて締結される必要があります。(建設業法第18条)
ここで得た単価が当社の見積り単価となります。高ければ工事を受注する事は
出来ません。協力業者と十分値段交渉をして決定します。
※当社の見積依頼に協力的で、積極的に質疑やコストダウン提案をする業者と
非協力的な業者もいます。担当者にもよります。このような情報は逐一上席・
部署長に報告してください。良い協力業者を持つ事が重要です。
見積り依頼書の例
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⑥ 仮設計画・施工計画・工程計画の立案をする
どのように施工するか? どのような仮設計画にするか? などの内容によっても工事に掛かる費用は大きく
変わってきます。
また、現地の状況、周辺道路や施設などの状況や、工事期間に余裕があるか無いか(突貫工事)によっても
仮設工事や施工の方法に大きな影響を与えます。
資材や製品の納期が間に合うか?確認申請など諸官庁への申請期間が十分あるかなどのチェックも必要に
なります。
施主への確認が必要な事、条件が有れば質疑を提出し、確認しておきます。
特に、コストが上がる事は競合他社との条件を揃える為にも必要な事です。
補 足
総合仮設計画図は、仮設工事費の積算根拠と
なります。
総合仮設計画図には下記事項を記載しましょう。
・仮囲い、ゲート、ガードマン
・仮設事務所(休憩所・仮設WC・朝礼広場)の配置
・工事車両の駐車スペース
・外部足場
・揚重計画
・工事区画、養生方法
など
※施工するイメージを図面化し、施主に説明する為の
資料です。施主の立場で工事の方法、流れが
理解しやすい表現を心掛けます。
総合仮設計画図の一例
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全体工程表一例
補 足
総合仮設計画図同様で施主に説明する為の資料です。施主の立場で工事の
流れが理解しやすい表現を心掛けましょう。
工程表は、ネットワークやバーチャートなど指定されている場合もあるので
指定があれば従います。
受注から準備、着工、竣工までの必要な工期が分かり、客先使用開始や
資金準備時期の目安となります。
発注日、確認申請期間、着工予定日、
引渡し予定日など、準備から着工までの
施主の必要な事項を記入しましょう。
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⑦ 積 算 を す る
1.工事費の構成
1)直接工事費
コンクリート工事や型枠工事など各工事を行う
為に直接必要な材料費や仮設費、人件費などの他
その工事を行う下請会社の経費を含んだもの。
2)総合仮設費
共通仮設ともいい、工事全般及び複数の工事で
共通して必要な仮設費。
仮設建物‥事務所、宿舎、倉庫、下小屋、変電所、便所等の仮設物の
設置およびその維持管理費用。
工事費の構成
工事施設‥仮囲い、仮設道路、通信施設等の設置およびその維持管理費用
機械器具‥全般的な測量、揚重、運搬等の機械器具の損料および
その運営費用。
電力用水‥仮設建物、工事施設およびすべての機械器具並びに工事用の
電力、用水、ガス、冷暖房等の施設およびその運営費用。
環境安全‥環境対策、安全教育、点検、保安、警備、交通整理等の
施設およびその運営費用。
整理清掃‥全般的な整理、清掃、跡片付、養生等の用具、施設および
その運営費用。
そ の 他 ‥小規模な整地、既存施設等の処理、借地、広告、看板、
特殊な試験、検査、試作等および上記内訳に属さない費用。
運
搬‥全般的な運搬,連絡自動車等に要する費用。
直接工事費の例
総合仮設の例
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3)諸経費
諸経費には、
現場経費と一般管理費等配賦(はいふ)額がある。
①現場経費
建築工事現場の管理運営に要する費用。
②一般管理費等配賦額
会社の本・支店、営業所などの経費を
一般管理費といい、各工事で分担する額を
一般管理費等配賦額といいます。
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2.積算方式
明細積算の方式には、次の2種類があります。
1)工種別積算方式
工種別積算方式とは、職種や工程で分けた方式で、現場の
施工に直結した科目で構成され、一般に工種別内訳といわれる。
また、この科目の中の細かい分類を細目、細目にわたって
作られた内訳書の形式を細目別内訳といい、工事の
最小単位となる。
工事費は、細目で数量を詳細に拾い出し、適切な単価を
乗じて金額を出して清算し、科目ごとに集計して合計することで
算出される。一般的によく用いられている方式です。
工種別積算方式の構成
2)部分別積算方式
部分別積算方式とは、建築物のコストを建築工事だけで
みると、まず大科目として5つの部分に分類し、さらに中科目
として科目構成を行い、それらの部分の集合体として建築物
全体のコストを把握する方法です。
したがって、部分をとらえる単価をできるだけその部分の
下地から仕上げまでを含めて合成された価格(合成単価)で
表示するという点が大きな特色である。
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部分別積算方式の構成
3.設計図書を把握する
積算でも現場の施工と同様に、まず設計図書を把握する事が
大切です。優先順位は、特記がなければ下記(1)~(5)となります。
(1) 質疑回答書
(2) 現場説明書
(3) 特記仕様書
(4) 設計図、設計書
(5) 公共工事標準仕様書 (客先独自の仕様書を含む)
公共工事標準仕様書
4.数量について
積算で扱われる数量には、次のような種類があり、一般に工事種別に応じて用いられます。
1)設計数量
設計数量とは、設計図に表示されている個数や設計寸法から求めた正味の数量をいいます。
大部分の施工数量がこれに該当し、材料のロスなどについては単価の中で考慮します。
2)所要数量
所要数量とは、定尺寸法による切りむだ、および施工上のやむを得ない損耗などを含んだ数量をいい、
鉄筋、鉄骨、木材などの数量がこれにあたります。
工 事 種 別
所要数量は、設計数量に割増率を掛けて算出します。
砂地業・砂利地業・割栗地業・木杭・既製コンクリート杭
設
各種コンクリート・型枠・鉄筋加工組立(所要数量による場合もある)・鉄骨工場組立建方・
計
既製コンクリート・防水・石・タイル・金属・左官・木製建具・金属建具・ガラス・
3)計画数量
数
塗装・内外装・仕上ユニット・カーテンウォール(材料数量を示す場合は所要数量)
量
計画数量とは、設計図書に表示されていない
所
鉄筋(材料数量を示す場合)
要
鉄骨(材料数量を示す場合)
数
施工計画に基づいた数量をいいます。
各種木材(材料数量を示す場合)
量
仮設
計
一般に仮設工事の足場や土工事の根切りなどの
根切り・すき取り
画
埋戻し・盛土
数
数量がこれに該当します。
残土処分
量
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5.数量の拾い出しをする
設計図を見ながら、建築物の部位ごとに順序良く拾い出しをします。
1)積算の区分
積算の区分は、大きく分けて躯体と仕上げとに区分して行います。
躯体は、柱・梁・スラブなど各部分ごとにコンクリート、型枠、鉄骨
などの数量を拾います。
仕上げは、各部分ごとに各仕上げの数量を拾い出します。
積算の区分
躯体数量計算の一例
2)積算の順序
躯体の積算順序は、①基礎・基礎梁・底盤、②柱、③大梁・小梁、
④スラブ、⑤壁、⑥階段、⑦その他の順で進めます。
仕上げの積算順序は、仕上げ表に記載されている場所や
室ごとに、下階から上階へと進めるのが一般的です。
場所や室については、床(幅木)・壁(柱形)・天井(梁形)の順で
積算します。
一般に計測の順序は、右回りの順で行うことが多いです。
躯体各部分の区分
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6.エクセル等を使用して計算する
エクセルの計算機能を使用する事で、早く・正確に集計する事ができます。
個人で作成したフォーマットや積算用に作られたフリーソフト等も多くありますので、それらを活用することで
効率的に積算を進められます。
補 足
積算に関するフォーマットは、ノーツの
『品質向上委員会掲示板』→『10.積算資料』
の中にも掲載しています。
これらのソフトや機能を活用して効率的に
業務を進めてください。
躯体数量計算の一例
7.協力業者の見積りの数量を利用する
電気工事・設備工事等は、専門工事業者である協力業者に依頼した見積りの数量を利用します。
また、その他の工事に関しても協力会社が積算した数量を利用する事で効率よく積算を進める事が
出来ます。
ただし、その場合は業者の数量を鵜呑みにせず、拾い落とし等がないか必ず確認をする事が重要です。
補 足
協力業者からの見積書を、エクセルデータで提出するように依頼すると、見積り作成時に貼付けが出来るので便利です。
ペーパーレス、データの保存の点からも電子メールを活用すると良いです。
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⑧ 改善(CD・VE)提案の検討をする。
施主は、少しでも安く・品質の良い建物を望んでいます。
その為に、設計図書の仕様から改善(CD・VE)の提案を行います。
入札時の添付資料として要求される場合もありますが、要求の有無に
関わらず、常にコストダウンの提案を行う事は競合他社との差別化を
図る意味でもとても重要な事です。
見積金額の約10~20パーセント程度を
目標に入札時に提案することが、工事の
受注につながります。
VE提案例
計画案12,000,000円
効果金額
VE案10,000,000円
2,000,000円
解 説
CDとVEの違い
◆CD(コスト・ダウン)
広い意味では、コスト(価格)を下げる事全般を意味します。その物のスペック(仕様・機能)を下げる。
中止、省略する事でコストを下げる方法と、VEのような価値を向上する方法も有ります。
◆VE(バリュー・エンジニアリング)
VEとは一言で言うと、その物の機能を下げずに、コストを下げる(価値を向上させる)事を言います。
実際には同じ意味で使用されている事が多く、コストを下げる事がVEと言われる事がほとんどです。
どちらもコストを下げるという目的は同じですが、技術者としては両者を区別して考える事が必要です。
当然ですが、仕様変更により法的な不具合・必要な機能に不具合が生じない事が前提です。
VE提案書の一例
補 足
VE提案の検討は、積算メンバー・上席・設計・
設備担当者・協力業者など、なるべく多くの
意見を求めると、良い提案を出す事が出来ます。
当然ですが、機能を下げないコストダウン提案の
方が施主に喜ばれます。
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⑨ 添付書類の作成をする
入札時には、見積り書だけでなく添付資料が必要な場合が多くあります。現場説明会の資料に記載されて
いるので、記載の有るものは必ず添付しなければなりません。
記載が無い場合でも、下記の書類を用意することで、客先の信頼度が上がり、入札を優位に進める事ができる
可能性があります。
施主への提出用の書類である為、建築の専門家で無い施主にとって分かりやすい書類作りを心掛けます。
また、書類の形式を指定されている場合は、それに従います。
以下の書類は、多くの入札で必要になります。
1)総合仮設計画図
2)全体工程表
3)改善(VE・CD)提案書
また、提案型の入札を行う為に
4)建築物総合環境性能評価 (CASBEE)の評価に関しての提案
5)パース・模型などの作成
6)その他
パースの例
など、必要に応じて当社の技術力・環境対応力をアピールする提案も積極的に行うべきです。
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建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)とは
CASBEE(キャスビー)とは、省エネ・省資源・リサイクル性能などの環境負荷低減面と室内の快適性や景観へ
の
配慮などの環境品質・性能の向上面の両面から建築物の環境性能を総合的に評価するシステムで、国が中心と
なって開発・改訂している全国版の他に、自治体が独自に編集した自治体版があります。 Web上で物件ごとの
環境性能の評価が公開されています。名古屋市は『CASBEE
名古屋』、その他、愛知県では『CASBEEあいち』があります。
詳しくは、インターネットで検索・閲覧できます。
補 足
CASBEEの入力・評価は、設計時に設計部にて行います。
当社施工物件の評価(CASBEE名古屋)
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⑩ 見積書を作成する。(入札額決定)
客先の指定書式が無ければ、当社の見積書式で作成
します。指定がある場合はそれに従います。
見積内訳書の構成は、公共建築工事内訳書標準書式に
従って作成すると良いです。
具体的な内容については当該工事内容に応じたものと
なります。
種目
科目
細目
~
見
積
金
額
工
事
内
容
に
よ
る
~
1)種 目
2)科 目
3)細 目
直接工事費、総合仮設費、諸経費、
消費税(内税の場合)。
工事種目の直接工事費を 主要構成毎に
分けた費用。
科目に属する細目毎に、数量、単価、金額を
記載します。
補 足
公共建築工事内訳書標準書式に関しては、ノーツの『品質向上委員会掲示板』
→『10.積算資料』の中に掲載しています。
参考にして下さい。
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◆値入れ、入札額決定
工事費は、積算した各工種の数量に『単価』を乗じた金額を集計する事で算出されます。
この単価が適切でなく、見積り価格が高くなってしまえば工事を受注する事は出来ません。また、異常に
安くなってしまえば工事を受注できても利益を出す事が出来なくなります。
よって、適切な単価を選定し、入札額を決定する事が重要になります。
補 足
以下の情報から、値入れの単価を選定します。
1) 複数の協力業者より見積りを取得し、見積照合した単価。
2) 直近の工事で発注した単価。
◆適切な入札額
競合他社より安く、工事を受注でき、かつ利益を
出せる価格と言えます。
ただし、品質が低下してしまえば施主の信用を
失い、今後の受注が無くなってしまいます。
安く・高品質な施工の為には、受注後の徹底した
原価管理・改善活動が不可欠です。
3) 直近の物件で入札した単価。
4) 定期刊行物で最も低単価を選定の参考とする。
・月刊 積算資料
・月刊 建設物価
・季刊 建築コスト情報
・季刊 建築施工単価
補 足
直近に行われた工事物件のコストを分析し、データを検証する事で、価格の比較や、入札金額の決定に
役立てる事が出来ます。
工事実績を調べる為には、上席や積算担当者、工事担当者に直接聞くのが一番早くて正確です。
当社の見積りシステムで類似物件を検索して参考とする事も出来ます。
注)実勢単価は、社会情勢により常に変動しています。地域や施工時期(季節)によって大きく変動する
場合があります。特に、鉄筋・鉄骨・コンクリートには注意が必要です。
月刊 積算資料
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4 補足
①鉄骨
鉄骨材を使う背景
①強度、剛性が高く、その割に軽量で加工性がよく、さまざまな
規模・形態の建物に対応できる
②原料となる鉄鉱石は地球上に豊富にあり、大量生産とリサイク
ルのシステムが整えられていて、現場での工事の短期化、乾式
化に対応しやすい
素材の製造単価が少々高くても人間社会や地球
環境全体の負荷を小さくできるという利点がある。
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鉄骨の需要
全国の需要
→2006年度上期地区別鉄骨需要量
単位:トン
1月
2月
3月
4月
5月
6月
合計
シェア
北海道
東北
関東
甲信越
北陸
中部
近畿
中国
四国
九州・沖縄 全国合計
5,000
23,000
158,000
19,000
14,000
98,000
97,000
32,000
16,000
63,000
525,000
11,000
20,000
211,000
17,000
10,000
89,000
79,000
30,000
16,000
51,000
534,000
20,000
31,000
213,000
27,000
17,000
92,000 101,000
30,000
19,000
65,000
615,000
19,000
38,000
185,000
25,000
23,000 129,000
91,000
34,000
14,000
66,000
624,000
31,000
44,000
165,000
22,000
25,000
85,000 103,000
34,000
19,000
57,000
585,000
47,000
49,000
200,000
30,000
19,000 116,000 109,000
51,000
19,000
80,000
720,000
133,000 205,000 1,132,000 140,000 108,000 609,000 580,000 211,000 103,000 382,000 3,603,000
3.7%
5.7%
31.4%
3.9%
3.0%
16.9%
16.1%
5.9%
2.9%
10.6%
全国鉄骨需要量ー過去5年間
年度
需要量(トン)
2002
2003
2004
2005
2006
7,460,000 8,140,000 7,180,000 6,700,000 6,670,000
中部地域は通常、13~14%のシェア→今年度の上期、16.9%のシェア
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ロール材・市中材とは?
・ロール材:一般的には鋼材の中でも直ぐ入手できるものではなく、
メーカーに依頼するオーダーメイド品の事。納期として
は、鋼材の種類によって様々ではあるが、オーダー後
2ヵ月~4ヶ月程度で入手できる。各物件の仕様に合わ
せて注文するのでロスも少なくプロジェクト材とも呼ば
れる。
・市中材:一般的には、鋼材倉庫を持つ鋼材問屋が在庫している
品のこと。ロール材と違い、各鋼材問屋が市況や在庫の
バランスを考慮して、毎月定期的に購入している。一般
的には需要に合わせた品種・サイズ・長さのものが多い。
各問屋が独自の判断で注文するので店売り材とも呼ば
れる。
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市中材
一般的には、以下のようなものが市中材といわれるのが多い。
H鋼:規格がSS400
コラム:規格がBCR295
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ロール材
上記のようなローリング形成機で鉄の塊(スラブ)を圧延し
鋼材を製造する為、ロール材と呼ばれる。
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ロール材
物件によって、ロール材対応のもの(納期が長い)・市中材対応(納期が短い)のものが
あります。ロール材で対応しなければならないものは通常以下のような場合です。
H鋼:規格がSM490A・SN400A・SN400B・SN490A・SN490Bの場合
規格がSS400でも、50T以上ある場合など
コラム:規格がBCR295でも50T以上ある場合、BCR295でも□550サイズの場合
規格がBCP235・BCP325の場合など
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②建設物価
• 取引数量により単価の違いがある。
• 物価本に記載してある金額よりまだ
安価に入手可能である。
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編集 2008年度合理化支部委員会
(刈谷・ST・中部技建支部)
井口合理化委員長
刈 谷 市川、伊藤(栄)支部委員
S T 遠藤支部委員
中部技建 広瀬支部委員
2009.06.09
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