佐賀県・平成23年度市町管理者研修 地方分権改革と 今後の地方自治 平成23年5月19日 九州大学大学院・法学研究院 准教授 田中孝男 2015/9/30 1 自己紹介 昭和61年4月~平成17年2月(約19年間) は札幌市職員 税の徴収、法規審査・訟務(5年間)など に従事 平成17年3月 ⇒ 九州大学に採用 行政法(地方自治法)を専攻 2015/9/30 2 この講演のねらい 地域自主自立推進改革(仮称)をめぐる 一連の動きを把握する そのために前提となるこれまでの地方分 権改革の状況についても少し触れる 2015/9/30 3 印象的なこと ・1995年 1月…阪神淡路大震災 7月…地方分権推進法成立 ・2011年 3月…東日本大震災 4月…第1次地方自主自律改革推進 関連法成立 2015/9/30 4 本日の講演について講師が述べて いる本 2015/9/30 5 お聞きします 5月2日に公布された、第1次地域自主自立 推進改革関連3法の内容について、大まか でも、ご存じか。 上記3法の成立により、市町では、どのよう な取り組みが必要になったか、多少なりと もご存じか。 第2次地域自主自立推進改革法の内容は、 ご存じか。 2015/9/30 6 地方分権とは 一定の地域の住民とその代表機関(地方 政府)に統治の権能が分け持たれている こと(広辞苑・第6版) これでは、「地方自治」の説明とほぼ同じ であり、ここでお話しする「地方分権」とは 少し違う 2015/9/30 7 中央集権と対になった「地方分権」 中央集権⇔地方分権は、動態的な用語 中央政府 統治権 地方政府(自治体) 中央集権 地方分権 すべての権能が地方に移れば、 連邦制ないし国家分裂となる 民でできることは民でという【民間化】 の議論に対応できない 2015/9/30 8 地方分権の必要性 「国家にとって」 「国民にとって」 中央政府を国内の細々とした事項から解放して、国家政府とし て国家の舵取りをしてほしい 中央集権構造は、柔軟性に欠けて脆弱で非民主的 統治客体から主体へ、社会の秩序の形成に自らが関わってい く、そういう社会を作っていく 公共空間に参加し、その中で活動者となることで、自立した個 人となっていく 「自治体にとって」 2015/9/30 人を重視する総合行政の実現、 属地空間の高付加価値化 9 地方分権は責任の増大をもたらす 自己決定と自己責任は表裏一体 地方分権というのは、国(中央政府)から見ると これまでの自治体 これからの自治体 いわば未成年扱い 成年並みの扱い といえる。 2015/9/30 例、地方債許可制の廃止 国の通達(旧)に従った事務処理の違法によって自 治体が責任を負う 10 そもそも日本国憲法は「充実した地方 自治」を求めている。 地方分権は、充実した地方自治の確立 のための手段 本日の講義では触れないが 地方自治の充実 両 方 必 要 団体自治の充実 住民自治の充実 =地方分権 住民参加 補完性原理 2015/9/30 11 日本の地方分権にも長い歴史がある フォーラム福岡24号(HP)より 分権 分権改革? 融合 分離 旧・日本 集権 2015/9/30 12 戦後日本の地方分権改革 シャウプ勧告(シャウプ使節団日本税制報告書) 1949年 地方財政平衡交付金(後の地方交付税)制度の創設 行政事務分配の3原則 行政責任明確化の原則 能率の原則 市町村優先の原則 ① 地方分権には税財源の分権を含む ② 地方分権の原型は、シャウプ勧告にあるといえる 2015/9/30 13 第1次地方分権改革 H5年6月、衆参両院で地方分権の推進に 関する決議 H6年12月、地方分権の推進に関する大 綱方針(閣議決定) H7年7月、地方分権推進法制定 地方分権推進委員会 H11年7月、一括法成立 地方分権推進計画 勧 告 地方分権一括法 閣議決定 H12年4月、地方分権一括法施行 2015/9/30 14 第1次分権改革の理念 「国と地方」、「国民と住民」、「全国と地域」、「全 と個」の間の不均衡を是正し、地方・住民・地域・ 個の側の復権を図ることを目的に、全国画一の 統一性と公平性を過度に重視してきた旧来の 「中央省庁主導の縦割りの画一行政システム」 を、地域社会の多様な個性を尊重する「住民主 導の個性的で総合的な行政システム」に変革す ることである 国 2015/9/30 地方 対等、協力 15 第1次分権改革の課題 未完の分権改革(西尾勝) 第2期(地方税財源)、第3期(住民自治制度 の拡充)を想定し、第1次改革はベースキャン プだとしていた 受け皿論の先行 ・行政体制の整備(行政改革) ・市町村合併の促進 2015/9/30 16 市町村合併の進展 佐賀県内 H16.12.31時点7市37町5村(49市町村) H19.10.1以降 10市10町(20市町) 2015/9/30 17 三位一体改革 地方税源の充実、地方交付税の削減、国 庫補助金の削減 国庫補助金 △4.7兆円 税源移譲 3兆円 地方交付税 △5.1兆円 行革国民会議のHPより 2015/9/30 18 地方分権21世紀ビジョン懇談会(報告 書、H18年6月) 新分権一括法の制定 地方分権改革推進法 地方債完全自由化 地方財政健全化法 破綻法制の整備 税源配分見直し、新型交付税、補助金削減 地方歳出削減 地方行革 道州制ビジョン懇談会 道州制 2015/9/30 政権交代により国では少しトーンがおちたが、 関西広域連合のようにこれを推進する動きもある 19 地方分権改革推進法(H16.12~) 2015/9/30 政権交代 総務省HP 20 2015/9/30 21 2015/9/30 22 2015/9/30 23 第1次 24 23.5.2 平成23年5月 23.8.2 24.4.1 24 2015/9/30 24 地方自治法改正法 議員定数の法定上限の撤廃 議決事件の範囲の拡大(法定受託事務に係る事件 (一部を除く)についても、条例で議会の議決事件として 定めることができることとする) 行政機関等の共同設置 特別地方公共団体のうち、全部事務組合、役場 事務組合及び地方開発事業団を廃止 市町村基本構想の策定義務などの自治法上の 義務付けを廃止 直接請求に係る請求代表者規定などを整備 2015/9/30 25 2015/9/30 26 総務省における「地方自治法抜本 改正」への動き 平成22.6 地方自治法抜本改正に向け ての基本的な考え方 地方自治法抜本改正につい 平成23.1 ての考え方(平成22年) 2015/9/30 地方行財 政検討会 議で議論 27 2015/9/30 28 2015/9/30 29 第1次一括法への対応 基本的な心構え ① 内容を考えてもらう条例改正が多く、その主管 部局は、総務(法規)ではなく、福祉や技術系の 事業部門 -公営住宅、道路、福祉施設など… ② 県のサポートは、「自主・自立」の趣旨からは、 あまり望めない ③ (いつになるか不明だが)第2次一括法対応は、 もっと大変な仕事になる 2015/9/30 30 改正地方自治法対応 基本構想をどのように位置づけるか 基本構想について、法律の位置づけがなくなった ときに、重要だと考えるならば、条例により位置 づけなければならないのでは? 基本構想をまちづくりの基本計画に据えるとして その策定手続をどうするか 議会の議決を得るようにすべきではないのか? 2015/9/30 31 第1次一括法対応の条例制定 施設基準 公営住宅入居、道路構造、準用河川、介護保険 地方公営企業の剰余金処分 平成24年4月1日までに整備(施設基準については、 政省令基準に従えば事実上1年間猶予) 2015/9/30 32 施設基準等条例の難しさ 政省令の基準(拘束力の違いがある3種類の基 準がある) 従うべき基準・・・条例の内容を拘束する必ず適合しな ければならない基準で、異なる内容は不可。例、介護 保険基準、公営住宅の整備基準 標準・・・法令の「標準」を通常よるべき基準としつつ、合 理的な理由がある範囲内で、地域の実情に応じた標準 と異なる内容が許される。例、介護施設の入所定員 参酌すべき基準・・・十分に参酌した結果であれば、地 域の実情に応じて、政省令の基準と異なる内容をさだ めてもよい。例、道路の構造基準、河川の技術的基準 2015/9/30 33 基準の内容確定への考慮要素 政省令基準の吟味(想定モデルと自分の自治体 との違いを明らかにする) 県内他市町その他の近隣自治体における基準 とのバランス 基準設定への住民参加のあり方 審議会 パブリック・コメント 2015/9/30 行政担当者に よる研究会・協 議会の設置 34 第2次一括法(案) もし成立すると。 施設の設置基準等の条例化が、全部局で及ぶ 例、図書館協議会・博物館協議会の委員の基準、水 道技術管理者の資格、都市公園の設置基準、路上 駐車場表示事項、下水道の構造基準、一般廃棄物 処理施設の技術管理者の基準 条例化が必要! 2015/9/30 35 庁内体制 情報収集体制 条例案の議会提案スケジュール管理 基準づくりにおける地域の実情の把握方法 の標準化 条例原案についてのパブコメその他の住民 参加手続の標準化 関係条例の整備 2015/9/30 36 今後の地方自治への展望 第2次一括法案 旧政権下での考え方の延長にあるので、反対という ことにはならない しかし、東日本大震災による対応、首相の[無]関心 (?)から、近いうちでの成立は無理か 財政上の苦境の再来 迷走する地方行財政検討会議 しかし、市町レベルへの仕事は、間違いなく増 えて来る 2015/9/30 37 管理者に期待すること これからの実際に仕事をしてもらうときに「核」と なる人材を育てなければ、対応ができない 条例の整備 ⇒ 法的能力 地域のルール作りへの住民参加 ⇒ 地域の人とのコミュニケーションやコーディ ネート力 国の技術基準を地域でカスタマイズできる ⇒専 門的技術力 ← 地域からのサポート 2015/9/30 38 自学の重要性 (法務能力を例にして) 大学院等で学ぶ 検定制度に挑戦 自治体法務検定 地域横断的・自主的な研究会活動 本などを自分で読む 上司が働きかける必要性 2015/9/30 39 2015/9/30 40
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