地方分権(地域主権)

佐賀県・平成23年度市町管理者研修
地方分権改革と
今後の地方自治
平成23年5月19日
九州大学大学院・法学研究院
准教授 田中孝男
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自己紹介
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昭和61年4月~平成17年2月(約19年間)
は札幌市職員
税の徴収、法規審査・訟務(5年間)など
に従事
平成17年3月 ⇒ 九州大学に採用
行政法(地方自治法)を専攻
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この講演のねらい
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地域自主自立推進改革(仮称)をめぐる
一連の動きを把握する
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そのために前提となるこれまでの地方分
権改革の状況についても少し触れる
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印象的なこと
・1995年
1月…阪神淡路大震災
7月…地方分権推進法成立
・2011年
3月…東日本大震災
4月…第1次地方自主自律改革推進
関連法成立
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本日の講演について講師が述べて
いる本
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お聞きします
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5月2日に公布された、第1次地域自主自立
推進改革関連3法の内容について、大まか
でも、ご存じか。
上記3法の成立により、市町では、どのよう
な取り組みが必要になったか、多少なりと
もご存じか。
第2次地域自主自立推進改革法の内容は、
ご存じか。
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地方分権とは
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一定の地域の住民とその代表機関(地方
政府)に統治の権能が分け持たれている
こと(広辞苑・第6版)
これでは、「地方自治」の説明とほぼ同じ
であり、ここでお話しする「地方分権」とは
少し違う
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中央集権と対になった「地方分権」
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中央集権⇔地方分権は、動態的な用語
中央政府
統治権
地方政府(自治体)
中央集権
地方分権
すべての権能が地方に移れば、
連邦制ないし国家分裂となる
民でできることは民でという【民間化】
の議論に対応できない
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地方分権の必要性
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「国家にとって」
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「国民にとって」
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中央政府を国内の細々とした事項から解放して、国家政府とし
て国家の舵取りをしてほしい
中央集権構造は、柔軟性に欠けて脆弱で非民主的
統治客体から主体へ、社会の秩序の形成に自らが関わってい
く、そういう社会を作っていく
公共空間に参加し、その中で活動者となることで、自立した個
人となっていく
「自治体にとって」
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人を重視する総合行政の実現、
属地空間の高付加価値化
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地方分権は責任の増大をもたらす
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自己決定と自己責任は表裏一体
地方分権というのは、国(中央政府)から見ると
これまでの自治体
これからの自治体
いわば未成年扱い
成年並みの扱い
といえる。
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例、地方債許可制の廃止
国の通達(旧)に従った事務処理の違法によって自
治体が責任を負う
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そもそも日本国憲法は「充実した地方
自治」を求めている。
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地方分権は、充実した地方自治の確立
のための手段
本日の講義では触れないが
地方自治の充実
両
方
必
要
団体自治の充実
住民自治の充実
=地方分権
住民参加
補完性原理
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日本の地方分権にも長い歴史がある
フォーラム福岡24号(HP)より
分権
分権改革?
融合
分離
旧・日本
集権
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戦後日本の地方分権改革
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シャウプ勧告(シャウプ使節団日本税制報告書)
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1949年
地方財政平衡交付金(後の地方交付税)制度の創設
行政事務分配の3原則
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行政責任明確化の原則
能率の原則
市町村優先の原則
① 地方分権には税財源の分権を含む
② 地方分権の原型は、シャウプ勧告にあるといえる
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第1次地方分権改革
H5年6月、衆参両院で地方分権の推進に
関する決議
 H6年12月、地方分権の推進に関する大
綱方針(閣議決定)
 H7年7月、地方分権推進法制定

地方分権推進委員会
H11年7月、一括法成立

地方分権推進計画
勧
告
地方分権一括法
閣議決定
H12年4月、地方分権一括法施行
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第1次分権改革の理念
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「国と地方」、「国民と住民」、「全国と地域」、「全
と個」の間の不均衡を是正し、地方・住民・地域・
個の側の復権を図ることを目的に、全国画一の
統一性と公平性を過度に重視してきた旧来の
「中央省庁主導の縦割りの画一行政システム」
を、地域社会の多様な個性を尊重する「住民主
導の個性的で総合的な行政システム」に変革す
ることである
国
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地方
対等、協力
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第1次分権改革の課題
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未完の分権改革(西尾勝)
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第2期(地方税財源)、第3期(住民自治制度
の拡充)を想定し、第1次改革はベースキャン
プだとしていた
受け皿論の先行
・行政体制の整備(行政改革)
・市町村合併の促進
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市町村合併の進展
佐賀県内
H16.12.31時点7市37町5村(49市町村)
H19.10.1以降 10市10町(20市町)
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三位一体改革
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地方税源の充実、地方交付税の削減、国
庫補助金の削減
国庫補助金
△4.7兆円
税源移譲
3兆円
地方交付税
△5.1兆円
行革国民会議のHPより
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地方分権21世紀ビジョン懇談会(報告
書、H18年6月)
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新分権一括法の制定
地方分権改革推進法
地方債完全自由化
地方財政健全化法
破綻法制の整備
税源配分見直し、新型交付税、補助金削減
地方歳出削減
地方行革
道州制ビジョン懇談会
道州制
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政権交代により国では少しトーンがおちたが、
関西広域連合のようにこれを推進する動きもある
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地方分権改革推進法(H16.12~)
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政権交代
総務省HP
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第1次
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23.5.2
平成23年5月
23.8.2
24.4.1
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地方自治法改正法
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議員定数の法定上限の撤廃
議決事件の範囲の拡大(法定受託事務に係る事件
(一部を除く)についても、条例で議会の議決事件として
定めることができることとする)
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

行政機関等の共同設置
特別地方公共団体のうち、全部事務組合、役場
事務組合及び地方開発事業団を廃止
市町村基本構想の策定義務などの自治法上の
義務付けを廃止
直接請求に係る請求代表者規定などを整備
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総務省における「地方自治法抜本
改正」への動き
平成22.6
地方自治法抜本改正に向け
ての基本的な考え方
地方自治法抜本改正につい
平成23.1
ての考え方(平成22年)
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地方行財
政検討会
議で議論
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第1次一括法への対応
基本的な心構え
① 内容を考えてもらう条例改正が多く、その主管
部局は、総務(法規)ではなく、福祉や技術系の
事業部門
-公営住宅、道路、福祉施設など…
② 県のサポートは、「自主・自立」の趣旨からは、
あまり望めない
③ (いつになるか不明だが)第2次一括法対応は、
もっと大変な仕事になる
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改正地方自治法対応
基本構想をどのように位置づけるか
基本構想について、法律の位置づけがなくなった
ときに、重要だと考えるならば、条例により位置
づけなければならないのでは?
 基本構想をまちづくりの基本計画に据えるとして
その策定手続をどうするか
議会の議決を得るようにすべきではないのか?

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第1次一括法対応の条例制定
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施設基準

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公営住宅入居、道路構造、準用河川、介護保険
地方公営企業の剰余金処分
平成24年4月1日までに整備(施設基準については、
政省令基準に従えば事実上1年間猶予)
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施設基準等条例の難しさ
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政省令の基準(拘束力の違いがある3種類の基
準がある)

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従うべき基準・・・条例の内容を拘束する必ず適合しな
ければならない基準で、異なる内容は不可。例、介護
保険基準、公営住宅の整備基準
標準・・・法令の「標準」を通常よるべき基準としつつ、合
理的な理由がある範囲内で、地域の実情に応じた標準
と異なる内容が許される。例、介護施設の入所定員
参酌すべき基準・・・十分に参酌した結果であれば、地
域の実情に応じて、政省令の基準と異なる内容をさだ
めてもよい。例、道路の構造基準、河川の技術的基準
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基準の内容確定への考慮要素
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
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政省令基準の吟味(想定モデルと自分の自治体
との違いを明らかにする)
県内他市町その他の近隣自治体における基準
とのバランス
基準設定への住民参加のあり方
審議会
パブリック・コメント
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行政担当者に
よる研究会・協
議会の設置
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第2次一括法(案)
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もし成立すると。
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施設の設置基準等の条例化が、全部局で及ぶ
例、図書館協議会・博物館協議会の委員の基準、水
道技術管理者の資格、都市公園の設置基準、路上
駐車場表示事項、下水道の構造基準、一般廃棄物
処理施設の技術管理者の基準
条例化が必要!
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庁内体制
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情報収集体制
条例案の議会提案スケジュール管理
基準づくりにおける地域の実情の把握方法
の標準化
条例原案についてのパブコメその他の住民
参加手続の標準化
関係条例の整備
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今後の地方自治への展望
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第2次一括法案
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旧政権下での考え方の延長にあるので、反対という
ことにはならない
しかし、東日本大震災による対応、首相の[無]関心
(?)から、近いうちでの成立は無理か
財政上の苦境の再来
迷走する地方行財政検討会議
しかし、市町レベルへの仕事は、間違いなく増
えて来る
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管理者に期待すること
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これからの実際に仕事をしてもらうときに「核」と
なる人材を育てなければ、対応ができない
条例の整備 ⇒ 法的能力
 地域のルール作りへの住民参加
⇒ 地域の人とのコミュニケーションやコーディ
ネート力
 国の技術基準を地域でカスタマイズできる ⇒専
門的技術力 ← 地域からのサポート
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自学の重要性
(法務能力を例にして)

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大学院等で学ぶ
検定制度に挑戦
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自治体法務検定
地域横断的・自主的な研究会活動
本などを自分で読む
上司が働きかける必要性
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