第1問

平成23年度 中堅保育士研修会
「環境を通じて行う保育」
平成23年7月7日
今日の内容
(前半)
1 保育における「環境」とは
(後半)
2 保育の実際から「環境」を考える
保育所保育指針の記述がす~っと分かる
改定の理由の重要性-何が問われているのかを忘れないこと
改定の
背景
○子どもの生活環境の変化 (人と関わる経験の不足、遊びの変容、生活リズムの乱れなど)
○保護者の子育て環境の変化 (不安や悩みを抱える保護者の増加、養育力の低下など)
○保育界を取り巻く制度的変化(関連法令の改正等への対応、認定こども園の創設など)
保育所保育の質
○保育所の役割の明確化(養護と教育・今日的な課題)
○質の高い養護や教育の機能の充実/小学校との連携
○保護者に対する支援を担う役割(総則・6章)
○計画・評価、職員の質の向上、保育計画から保育課程(4章)
「保育の内容」の質
○発達過程の把握による子どもの理解(2章)
○養護と教育が一体的に行われる保育(3章)
○健康・安全のための体制充実(5章)
○保護者支援(6章)
子どもの経験の質
○環境を通して行う保育(保育環境構成の重要性)(総則)
子どもの育ち=最善の利益
○子どもの状況の把握・子どもの主体性を尊重
○健康・安全、情緒の安定した中での自己発揮
○発達過程や個人差を踏まえる
保育の原理
○子ども相互の関係、仲間との遊びや活動
3
○生活や遊びを通した総合的な保育
改定 保育所保育指針
第1章 総則
1.趣旨
2.保育所の役割
(1)保育所保育の目的
(2)保育所の特性
(3)子育て支援
(4)保育士の専門性
3.保育の原理
(1)保育の目標
(2)保育の方法
(3)保育の環境
4.保育所の社会的責任
(1)子どもの人権の尊重
(2)地域交流と説明責任
(3)個人情報の保護と苦情解決
3.保育の原理
(1)保育の目標
(2)保育の方法
ア 子どもの主体性の尊重
イ 一人ひとりの生活リズムと自己発揮
ウ 発達にあった保育・個人差への配慮
エ 子ども同士の関係づくり
オ 子どもが自発的、意欲的に関われる環境
カ 保護者の子育て支援
(3)保育の環境(P25)
ア 子どもが自ら関わり多様な経験を積む環境
イ 子どもの豊かな活動・保健・安全の確保
ウ 温かな親しみとくつろぎの場
エ 子どもが周囲の子どもや大人と関われる環境
4つの配慮事項
ア 子どもが自らが環境に関わり、自発的に活動し、多様な
経験を積んでいくことができるように配慮すること。
イ 子どもの活動が豊かに展開されるよう、保育所の設備や
環境を整え、保育所の保健的環境や安全の確保に努める
こと。
ウ 保育室は、温かな親しみとくつろぎの場となるとともに、
生き生きと活動できる場となるように配慮すること。
エ 子どもが人と関わる力を育てていくため、子ども自らが周
囲の子どもや大人と関わっていくことができる環境を整え
ること。
環境を通して・・・
• 「幼稚園は、義務教育及びその後の教育の
基礎を培うものとして、幼児を保育し、幼児の
健やかな成長のために適当な環境を与えて
、その心身の発達を助長することを目的とす
る」(学校教育法22条)。
• 「幼稚園教育は、幼児期の特性を踏まえ環
境を通して行うものであることを基本とする」
(1989年 平成元年 幼稚園教育要領 第1
章第1項の冒頭)
ビデオをみてみよう
– DVD保育所保育指針を映像に
– 第1巻 子どもの育ちを支える保育所の保育実践
– 5 「環境を通して行う保育」
せいがの森保育園
研修体系の考え方
• 1 研修についての基本的姿勢
– 第三者評価項目
保育所保育指針
• 2 保育の質の向上のために
– 保育の質は「子どもの経験の質」
– 保育士等の質だけが問題ではない
• 3 子ども・家庭・保育園の人的関係を豊かに
– 行事に力を入れる理由
– 地域活動に力を入れる理由
保育の構造から
○ 子どもの育ちを捉える視点をもって
いますか
○ 子どもの心と「対話」していますか
子どもをどう
理解するか
○ 子どもがどのように育ってほしいの
か願いをもっていますか
○ 子どもを信じていますか
○ 真心をもって接していますか
保育者は
どうある
べきか
○ 子どもを見守っていますか
○ 今日、子どもの遊びは熱中していま
したか
○ 今日、子どもの心の動きに共感した
喜びがありましたか
○ 今日、子どもの発達に発見がありま
したか。それが説明できますか
環境はど
うあるべ
きか
○ 思わず遊びたくなる環境になってい
ますか
○ 自分らしく過ごせる環境ですか
○ 遊びの展開を深めるように環境を再
構成していますか。
○ 子どもと共に作り上げる生活が環境
であるように保育をしていますか
3つの専門家集団を組織して、年間テーマを掘り下げていきたい。
教育の三者関係
教師
学習指導
生活指導
教材研究
教育の三角形
学習
子ども
教材
保育界に足りないもの・・
それは「環境研究」(遊具研究)
もう一つは、少子
時代の中の子ども
援助
同士の関係経験
保育者
環境研究
保育の三角形
遊具
子ども
遊びと生活
環境
環境は「教材」である
• 環境を通して行うとは、子どもの身近な環境
である幼稚園(保育園)において、さまざまな
ものが置かれ、子どもの活動を誘発すること
で成り立つもの。
• そのものとは教材と呼んでもよくて、保育者が
あらかじめ潜在的な可能性を検討し、子ども
がかかわることでその価値が引き出せるよう
なもののこと。
• それを子どもが選び、かかわる活動の仕方を
工夫することで、ものの価値を感じとり、学び
へと進めることが可能となる。
(無藤隆)
研修のテーマ
1.子どもを理解する
今日のテーマは
2.関わり方を学ぶ
3.子どもと環境
4.先生同士の関係
人間の生成への環境の影響
自然環境の影響(宇宙環境、生命、気候・・)
文化環境の影響(日本語、サッカー、食事・・)
人間環境の影響(人間社会、家庭、学校・・)
教育は意図的な人間形成の作用(保育)
人は遺伝的素質をもちながら、経験や学習を含
めた環境との相互作用のなかで育まれる。で
きるだけ意図的ではない作用も視野に。
せいがの森保育園の保育環境
• 生活環境
– 室内は遊ぶ場所・食事するところ・寝るところに分かれ
ている。生活リズム、情緒の安定
– 生活は子どもと一緒に創り出し子ども文化を育む
– ホンモノと触れ合うこと。おまわりさんも自然も。
• 遊びの環境
– 見立て遊び(模倣)・表現(制作・おえかき・ブロック・ね
んど・シアターボード)・協力ゲーム・楽器遊び
– 園庭の環境 原っぱのようなプレイゾーン。運動量。思
わず身体が動き出すように。ビオトープ。
遊びの発達
0
歳
1
歳
2
歳
3
歳
物語絵本
4
歳
文学絵本
5
歳
アルバムづくり
台本
絵・写真・広告
絵本
図鑑
生活絵本
・総合
絵本
おままごと
つもり遊び
お店屋さん
劇遊び
ゲーム
協力ゲーム
創作遊び
アースゲーム
まねっこ
パズル
ネーチャー
ゲーム
独楽回し
伝承あそび
模倣と確認応
答関係
製作
なぐりがき
べーごま
切る・はる
おえかき
ねんど
塗り絵
ねんど&竹ひ
ご
くみたてる
塗る
陶芸
曼荼羅
ブロック
積み木
ブッブー・ガタ
ンゴトン
積み木の電車
ジェンガ
版画
ビー玉転がし
展開図
プラレール
ブロックの町
造形
生活の発達
0歳
1歳
2歳
3歳
4歳
5歳
食を創り出す
食文化おはし三角
食べ
自分で選ぶ
料理する
幼児食
菜園・収穫
適量を知る
誰と食べるか
健康と栄養
排泄の自律
どろんこ体験清潔
体験
習慣づくり
口の清潔
泳ぐ
身体の清潔
水の力
模倣と確認応答関
係
プール遊び
リズム遊び わらべ
うた
海と川遊び
水遊び
楽器で遊ぶ
曲を演奏
演奏会
一緒に歌う
合奏会
音楽と運動
歌をうたう
散歩
自然と触れ合う
戸外遊び
なわとび・鉄棒
一輪車
睡眠
心地よく眠る
生き物への興味
休息をとる
季節を感じる
午睡の選択
自然を大切に
生活リズム
「個に応じる」ことと「自発的な遊び」
のかけ橋となる保育

「子どもが選べる」ように環境を用意すること
すべての子どもに経験させたいことを、あたかも
偶然かのように出合わせること(秋田喜代美)
遊びは、ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)である人間が
やりたがっているものであるから、そうさせてい
ない環境を取り除くこと。
保育の選択性
1.一人ひとりの発達課題にあった活動になる
→ 「現在を 最もよく 生きる」
2.成就の欲求・承認の欲求・所属の欲求
→ 自己肯定感や自信につながる
3.自分で選んだという前向きな心情・意欲・態度
→内発的な動機へ
課題保育と自由遊び
選択肢として保育士が用意すべきこと
↓
①自由遊びを通じて見られる発達課題の幅
→個人別の発達経過記録を活用すること。
②興味や関心などの、偏りの修正
→遊びが偏らないように、新しい遊びや生活
の経験の機会を増やす。個性を固定化しない
③生活や遊びのなかの「学び」を意識する。
保育の方法(エ)
子ども同士の関係づくり
個がいきる集団の大切さ
①関係のなかで育つもの
• 言葉・コミュニケーション・表現・代弁行為など
朝の生活の一シーン(DVD「3 朝の合同保育」)
②同じぐらいの発達と、大きく異なる発達の関わり
・≪どんな経験が起きているのか≫
・もったいないプロジェクト(年長)協働的な学び
③社会化(しつけ・行動基準の獲得・ルールの内面化)
(DVD「13 ローラー貸して」)
子どもと遊ぶ⇒子ども同士が遊ぶ
「ねえ、先生、おにごっこしよう」
このようなときにどう対応していくか。
おにごっこか、面白そうだなね、やろうやろう。
お友達を集めてきてよ ⇒ 子ども同士で熱
中して遊びこみ始めたら先生は子どもに任せ
ていく。遊びのつまづき、停滞などに援助が
入っていく。ボランティアや中学生なども。
遊びの名人づくり(子ども文化)
• 先生、手裏剣つくって!
⇒ さまざまな遊びの名人がたくさんいて、子ど
もが、その名人に教えてもらう。子どもが子ど
もに伝え、学び、一緒に遊ぶ。
⇒ 保育者はその状況や関係をつくっていく。子
どもの文化が育つ。
⇒ 異年齢児保育の中心テーマにしている
「ローラー貸して」年長児の交渉力
•
•
•
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•
粘土遊びをしている女子
左のテーブルは4歳の子二人
右のテーブルは3歳の子
男子二人は気弱な長児5歳2人
ローラーは二本しかない
二人の男子の気持ち・考え・交渉力に注目
物の取り合いの収束
• 1歳児クラスのAちゃんが、Bちゃんの自動車(
木のおもちゃ)をとってしまった。Bちゃんは取り
返そうとするが、Aちゃんは返さない。そのとき、
担任は何をしたか。
• 担任は自動車を、一つ持ってきて、子どもに渡
した。
• 渡したのはAちゃんの方。
• Aちゃんは、両方の手でもっている自動車をじっ
とみつめて(数秒)、Bちゃんに返した。
どこにしまうの?
• 後片付けができない。
– 見通しをもてているか。
– 「あと、これくらいでおしまいにしよう。長い針が2
5になったら、朝のお集まりにしたいけど、どう?
話し合ってみて・・
– 途中のものは続けていい。あとでできるように、だ
れものかを分かるように。
– ブロックで町づくり、ジェンガで高い塔などなど。
• しまう場所がわからない⇒友だちに聞く
ピーステーブル
• けんかになったら、保育士が行う役割は「起
点」づくりと、まず、養護的働きかけ
• お互いの気持ちに共感してあげて、気持ちを
支持する ⇒ 子どもは自ら、どうすればよか
ったのか、気持ちが前に動き出す
• せいがの森では、その話し合いの空間を「ピ
ーステーブル」と呼び、子ども同士で解決して
いく。「どう?」「あともう少し・・半分ぐらい」
「今日、ピーマンたべてみるんだ」
•
•
•
•
お昼の主菜がチンジャオロース
ピーマンが苦手な子はいる
大学生のボランティアが一緒に食事をした
「耳打ちで、そっと、『今日ね、ピーマン食べて
みるから』といったんです」
• 友だちもとも、先生とも交わさない会話であっ
たに違いない
• 斜めの関係。多様な人間関係の意味を再確
認
だっこは、いいんだよ
•
•
•
•
•
園庭の波型遊具
女の子AちゃんとBちゃん4歳児。
Aちゃんの妹が遊具を登ってこようとする。
お姉さんは手を出して助けてあげようとする。
と、Bちゃんは「だっこは、いいんだよ。
○○○○○子になっちゃうから」
実際の映像をみてみましょう
遊びのインクルージョン
• 協力ゲームをたくさん取り入れる
• (例)最後まで一緒に出来る椅子取りゲーム
• (例)チームで話し合いながら、偶然と知恵と
で勝敗が決まるゲーム。カラスに食べられな
いうちに、上手にくだものを収穫するゲーム
○○○○○っていってほしくて
• セミバイキングの配膳方式で好き嫌いがなく
なる
• 年長児が主菜はよそってあげる。いっぱい?
ちょっと?
• Tちゃんが、お皿を渡そうするが引っ込める。
さっさと渡さない。耳を傾けて何か言うことを
促そうとしている。
「保育の過程」にみられる判断
また新たに生起した
状況のなかで、子ど
もの行為や育ち(学
び)をどう読みとり振
り返るか
省察・
評価
どんな環境を準備
あるいは再構成し実
践するのか
乳幼児
理解
判断
保育の
実践
子どもの姿や関わり
からどんな意味をよ
みとるのか
指導計
画
その姿からどんな援
助内容が必要なの
かの予想
子どもは何をやりたがっているのか?
子どもの内面世界
子どもの内面世界
動機・興味・関心
生活経験
動機・興味・関心
生活経験
子どもの外面的世界
子どもの外面的世界
保育の専門性とは?
5つの知識や技術および判断(p19)
● 保育を実践しな
がら「子どもの学び
や経験の意味」を省
察できること
● 「子どもの育
ち」と「自らの保
育」の振り返り
遊びの展
開力
倫理観に
裏付けら
れた判断
生活援助
人間関係
の構築
環境構成
発達援助
保育の質へのアプローチ
保育所保育指針7章のパラダイム
学び合う環境の醸成
保育所の活性化
保育の質
「関係論的状況論」のパラダイム
より善い文化的実践へ
地域コミュニティの質向上 保育の質
職員全体の専門性
保育所の自己評価
子が育つ環境の向上*
育ちの物語を当事者が共有
職員の一人ひとりの専門性
子どもの育ち
保育士等の自己評価
自己評価
(子どもの育ちと自らの保育)
自己評価
(子どもの経験と環境との関係の読み取り)
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