管理会計 担当 ; 浅田 孝幸

第3章 原価計算制度と原価情報
原価計算の意義・目的と原価概念
1.原価計算目的と原価計算制度
2.実際原価計算
3.標準原価計算
4.新しい原価計算
1.原価計算目的と原価計算制度
原価計算の意義
①企業で製品を生産し販売するのに「かかったものの計算」
②特定の給付に関連づけて原価を把握する手続き
給付とは、企業活動の結果、生み出されたもの(output)
原価計算の目的
財務諸表作成、原価管理、利益計画、予算管理、
代替案の評価、価格決定など
財務諸表 原価計算によって、損益計算書の売上原価情報を
提供する。
原価管理 狭義:一定の生産設備・生産条件のもとで作業能率を
高めて原価の引下げをはかる(cost control)
広義:原価の標準自体を引き下げるコスト・リダクション
をはかる(cost management)
目的
原価の測定と分類
1)全部原価と部分原価
全部原価:一定の給付に対して生じる全部の製造原価、
またはこれに販売費及び一般管理費を加えて
集計したもの。
部分原価:その一部のみを集計したもの
2)固定費と変動費
固定費:操業度の変化に変化しない費用
ex)減価償却費や固定資産税など
変動費:操業度の変化に応じて発生額が変化する費用
ex)正比例して変化する比例費(直接材料費)
相対的に減る逓減費(燃料費)
→無理な仕事による不良品の発生
2.実際原価計算
個別原価計算と総合原価計算
個別原価計算
顧客の注文に応じて製品が生産され、注文別に原価を
計算する (例)造船業、建設業、印刷業
総合原価計算
標準化された製品は、同一の計算期間内において等しい
原価をもつと考えられ、原価計算期間内に消費された
原価を生産数量で除した値が製品単位原価となる。
見込生産の場合に使用する。
個別原価計算
No.413
No.415
No.535
間接費
計算例3-1
材料費 労務費 経費
\1,500 \2,000 \3,500
2,000 1,600
3,000
2,500 1,400
2,000
1,000 2,000
3,600
【データ】月初仕掛品は、No.413(6000円)
月末仕掛品はNo.415のみである。
生産量:No.413 20個
No.415 10個
No.535 30個
個別原価計算
計算例3-1
原価計算表
N o .4 1 3 N o .4 1 5 N o .5 3 5 合計
月初仕掛品
6,000
0
0 6,000
直接材料費
1,500
2,000
2,500 6,000
直接労務費
2,000
1,600
1,400 5,000
直接経費
3,500
3,000
2,000 8,500
製造間接費
1,100
3,300 4,400
合計
13,000
7,700
9,200 29,900
{計算}
No.413の間接費
=(1,000+2,000+3,600)*20
(20+10+30)
=2,200
総合原価計算
仕損
原材料の質が悪かったり作業上の誤りにより
完成品にならなかった場合発生する費用
減損
生産中に原材料が蒸発などにより投入前に
比べ減少することにより発生する費用
減損の処理
・異常な減損:損失処理
・正常な減損:完成品に負担させる方法と完成品と
期末仕掛品の両者に負担させる方法がある。
総合原価計算
計算例3-2
{データ}
月初仕掛品
当月投入
投入量合計
完成品
減損の処理
正常減損
月末仕掛品
産出量合計
月
2,500kg
22,500
25,000
18,750
1,250
5,000
25,000
初
完成品
仕掛品
当月
投入
月初仕掛品原価
原料費 2,5000円,加工費 12,500円
当月製造費
原料費 22,5000円,加工費 175,500円
減損
月 末
仕掛品
計算 32ページ参考
3.標準原価計算
標準原価計算の意義の低下
①JIT(Just-in-time):現場での継続的原価低減活動の進展のため
②FA(factory automation)に伴う原価構成の変化
→直接費の減少する一方、減価償却費、研究開発費など間接費の増加
③製品ライフサイクルの短縮化
原価標準の設定ー数量標準と価格標準
原価標準とは、製品1単位を能率的に製造するためにかかる原価
原価標準
数量標準
価格標準
標準原価差異の分析
アウトプット法 生産高の実績と原価標準とを比較して差異を把握する
勘定記入:パーシャル・プラン
インプット法
図 3-1
原価要素の投入時点において、材料消費量や直接作
業の実績を把握し、標準原価と比較する方法
勘定記入:シングル・プラン
パーシャル・プラン
仕掛品
実際原価
標準原価
(実際単位* (標準単位
実際消費量
*標準消費量
原価差異
製品
標準原価
材料消費価格差異
材料消費数量差異
賃率差異
作業時間差異
図 3-1
シングル・プラン
材料
受入高
払出高
(標準単位*(標準単位
実際受入量 *標準消費量
差異
賃金
実際発生高 消費高
(標準単位
*標準作業時間
差異
材料受入価格差異
材料消費数量差異
賃率差異
作業時間差異
製造
標準原価 標準原価
製品
標準原価
直接材料差異の分析
価格差異=(実際価格-標準価格)*実際消費量
数量差異=(実際消費量-標準消費量)*標準価格
材料価格差異の発生原因:①市価の変動、②価格標準の不適切性
③購買部門の不手際
材料数量差異の発生原因:①消費数量標準の不適切性、②不良材料
の使用、製品企画、作業方法の変更など
③能率低下など。
図3-2価格差異と数量差異の関係
実際消費量
価格差異
標準消費量
数量差異
標準消費量
実際消費量
直接労務費差異の分析
価格差異=(実際賃率ー標準賃率)*実際作業時間
作業時間差異=(実際作業時間ー標準作業時間)*標準賃率
賃率差異の発生原因:①賃金水準、制度の変更、②不適当な標準賃金
③労務管理上の原因、④経営能力としての
労働力の利用に関する原因
作業時間差異の発生原因:①不適当な作業時間標準の適用、②作業
能率低下など。
図3-3 価格差異と数量差異の関係
実際賃率
標準賃率
賃率差異
作業時間差異
標準作業時間 実際作業時間
製造間接費差異の分析
製造間接費差異は、製品別ではなく部門別計算において分析される。
分析方法
固定予算:基準操業度を1つに固定して、その操業度に
おける予算を設定するとヨンさん期間中は変更しない。
変動予算 実査法:費用別に複数の操業度に対する間接費予算
公式法:間接費を固定費と変動費に分解して公式に
よって各操業度における予算額を計算する。
図3-4 変動予算を用いた差異分析法
四分法
(イ)
三分法
(ロ)
費消差異
予算差異
変動費
能率差異
固定費
操業度 能率差異
能率差異
差異
不働能力
操 業 度
差異
差
異
図3-4 四分法における差異
二分法
(イ)
(ロ)
管理可能
管理可能 差異
差異
操業度
差異
実際発生額
変動予算
変動比率
操業度
差異
固
定
費
固定比率
標準操業度
変
動
費
実際操業度
基準操業度
3.新しい原価計算
原価企画と品質原価計算
①新しい原価計算は、原価企画、品質原価計算、
ライフサイクル・コスティング,ABC,ABMなど
原価企画
・開発設計段階から行われる原価低減活動
・原価企画開発は製品開発にかかわることから、
戦略意思決定である。
・品質・性能を高めつつ原価・価格を抑えるためには
生産以前に原価を低減させる必要がある。
品質原価計算
・品質管理に関係して発生しているコストを管理者に
報告するための原価計算である
3章で学んだキーワード
特殊原価調査 全部原価 固定費 変動費
直接費
間接費
標準原価計算
原価管理
アウトプット法 インプット法