消費者の行動 - 日本大学経済学部

第7章 資源配分の効率性
資源が効率的に分配されているというのは,諸生産要素が各産業間に
うまく配分されていて,資源の無駄使いが生じていない状態という。
市場メカニズムは資源効率的な配分を実現することができるか。これ
を分析する方法には,部分均衡分析と一般均衡分析があり,どちらも有
効である。
部分均衡分析
多くの財の中から1つの財のみを取り上げ,他の財の価格,消費者
の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量などを一定(他の事情を一
定)として,特定の財の価格とその財のへ需要量と供給を分析すること。
一般均衡分析
すべての財の価格と需要・供給,即ちすべての市場を同時に分析す
ること。
ミクロ経済学
1
第7章 資源配分の効率性
経済における複数の財の市場の相互依存関係をとらえるためには,
少なくとも2つの財を考慮する必要がある。
また,複数の経済主体の相互依存関係を分析するためには,少なくと
も2人の消費者,または2個の企業,あるいは1人の消費者と1個の企業
のいずれかのケースを対象とする必要がある。
以下,一般均衡理論の視点から,2人の消費者,また2個の企業によ
る資源配分の効率性の問題を分析することにする。
7.5 資源配分の効率性
消費の効率性 ■ 交換の利益
例:
ミクロ経済学
アップルパイ
x1
ビール
x2
A 花子
x1A=7
x2A =15
B 太郎
x1B =3
x2B =5
2人の間で互いに交
換が行われたら,利益
はあるのか?
2
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
消費の効率性
■ 交換の利益
例:
x1
x2
______________
x2
花子
7
15
太郎
3
5
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
x2
15
5
ミクロ経済学
O太郎
3
x1
O花子
7
x1
3
第7章 資源配分の効率性
O花子
7
x1
7.5 資源配分の効率性
消費の効率性
■ 交換の利益
例:
x1
x2
______________
花子
7
15
太郎
3
5
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
15
5
O太郎
O
x2
ミクロ経済学
15
x2
x2
3
x1
4
第7章 資源配分の効率性
O花子
7
x1
7.5 資源配分の効率性
消費の効率性
■ 交換の利益
例:
x1
x2
______________
花子
7
15
太郎
3
5
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
15
x2
これは,いわゆるイギリス x2
経済学者エッジワースによっ
て考察されたボックス・ダイア
グラムである。
長方形の横の長さが2人
のx1 財の保有量の和,縦の
長さが2人のx2財の保有量の
5
F. Y. Edgeworth 和に等しい。長方形内の点
は2つの財が2人の間での保
1845~1926
O太郎
有の組合せを表している。
ミクロ経済学
3
x1
5
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
消費の効率性
■ 交換の利益
例:
x1
x2
______________
7
O花子
x2
花子
7
15
太郎
3
5
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
15
太郎の効用が最
高に引上げた点
5
花子の効用が最
高に引上げた点
ミクロ経済学
O太郎
3
x1
6
第7章 資源配分の効率性
7
消費の効率性
■ 交換の利益
例:
x1
x2
______________
O花子
7.5 資源配分の効率性
x2
花子
7
15
太郎
3
5
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
15
2人は交換を通じて,初期保有組合せ
を通る2人の無差別曲線が囲むレンズ形
の内部の領域の点に保有組合せを変え
れるなら,2人の効用が共に交換前の効
用を上回る。
コアと呼ばれ,2人交換取引(交渉)の
解と見なすことができる。
ミクロ経済学
5
太郎と花子両者とも効用
が引上げられる領域 O太郎 3
x1
7
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ パレート最適
x1B
OB
x2
ボックス・ダイアグラムの中に任意の2
点QとQ'について,
Q点における2人の効用:(uA,uB)
Q'点における2人の効用:(u'A,u'B)
である。もし
uA ≧ u'A , uB ≧ u'B
が成り立つならば,QはQ'よりもパレート
優越的(もしくはパレート改善)であるとい
う。
x2B
u'A
uA
Q'
Q
u'B
uB
x2A
ミクロ経済学
OA
x1A
x1
8
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ パレート最適
x1B
x2
パレート効率的な点では,2人の無差別
ボックス・ダイアグラムの中に任意の2
点QとQ'について,
曲線は互いに接しているので,2人の消費
Q点における2人の効用:(uA,uB)
者の限界代替率が等しい。
Q'点における2人の効用:(u'
A,u'B)
消費の効率性条件
である。もし MRSA=MRSB
uA ≧ u'A , uBの限界代替率
B ≧ u'B
Aの限界代替率
が成り立つならば,QはQ'よりもパレート
(無差別曲線の傾き)
(無差別曲線の傾き)
優越的であるという。
他の配分によってパレート改善される
ことのない配分をパレート最適であると呼 A
x2
ぶ。
パレート最適
ミクロ経済学
OB
OA
x2B
u'A
uA
Q'
Q
u'B
uB
x1A
x1
9
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ 契約曲線
x1B
OB
x2
パレート最適な資源配分(パレート効
率的な点)とは,資源配分をどのように変
えても,誰かの効用を下がることなしには
他の人の効用を上げることができない状
態をいう。
x2B
ボックス・ダイアグラムの中に,2人の
無差別曲線が互いに接している点(パ
レート効率的な点)が多数存在する。これ
らの接点の集合は契約曲線である。
契約曲線上の点はすべて消費の効率
x2A
条件を満たし,パレート効率的である。
契約曲線
ミクロ経済学
OA
x1A
x1
10
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
OB
x2
■ 効用フロンティア
U*1
しかし,資源配分の効率性は,分配
の公平性と相容れないこともある。
F
O
3
C
U2 U3
U
U*4 1
U*5
U*6
E
B
A
U*1
U1 U2 U3
B
U*
C
U*2
ミクロ経済学
2
D
U*3
U4
U*
効用フロンティア
(効用可能曲線)
E
A
U5
契約曲線
B
君 U*
6
の U*
5
効 U*4
用
U6
U4 U5 U6
A君の効用
D
F
OA
x1
11
第7章 資源配分の効率性
x1B
7.5 資源配分の効率性
x2
■ オファー曲線と市場均衡
A
A
B
B
OB
消費者Aの初期保有量: ( x1 , x2 )
A
A
A
A
Aの予算制約式: p1x1  p2 x2  p1x1  p2 x2
消費者Bの初期保有量: ( x1 , x2 )
B
B
B
B
Bの予算制約式: p1x1  p2 x2  p1x1  p2 x2
価格が与えられると,2人の予算制約
線は初期保有組合せの点を通る直線
であり,この傾きが-p1/p2である。
予算制約線がそれぞれ2人の無差別
曲線との接点は2人の2財への需要量
を表す。ボックスの横・縦の長さはそれ
ぞれ2財の総供給量を表す。
ミクロ経済学
Bのx2へ
の需要
x2B
Bのx1へ
の需要
w
x2A
OA
Aのx1へ
の需要
x1A
Aのx2へ
pの需要
1/p2
x1
12
第7章 資源配分の効率性
x1B
7.5 資源配分の効率性
x2
■ オファー曲線と市場均衡
A
A
B
B
OB
消費者Aの初期保有量: ( x1 , x2 )
A
A
p
x

p
x

p
x

p
x
2 2
Aの予算制約式: 1 1 2 2 1 1
消費者Bの初期保有量: ( x1 , x2 )
B
B
Bの予算制約式: p1x1  p2 x2  p1x1  p2 x2
それぞれの所与価格に対して,消費
者の効用最大化の需要点の軌跡はオ
ファー曲線である。
2人のオファー曲線の交点Eでは,2
人の無差別曲線は互いに接していて,
2人の需要点が重なる。
x2B
Aのオファー曲線
w
x2A
E
p1/p2
Bのオファー曲線
ミクロ経済学
OA
x1A
x1
13
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ オファー曲線と市場均衡
2人の需要点が重なるときのみ,各財
への需要量の和が総供給量と一致し,
各財の市場は均衡となる。
このときの各財の市場価格を均衡価
格である。
一般均衡モデルにおけて,これらの各
財の均衡価格と各財への需要量の組合
せを一般均衡解と呼ばれる。
2人の需要点が重なるとき,2人の無
差別曲線は互いに接して,需要点は契
約曲線上にあるはずである。
従って,市場均衡における配分はパ
レート最適である。
ミクロ経済学
x1B
OB
x2
x2B
p1*/p2*
w
x2A
OA
E
x1A
x1
14
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ 厚生経済学の基本定理
OB
x2
厚生経済学の第1定理
市場均衡における配分はパレート最適で
ある。(競争均衡であれば必ずパレート最適
である。)
市場均衡では
p1*/p2*=MRSA=MRSB
均衡価格 Aの限界
代替率
の比
Bの限界
代替率
また,別の初期保有点w'からも,価格を
通じての再配分で,契約曲線状のE'点の市
場均衡に達成することができる。
厚生経済学の第2定理
p1*'/p2*'
w'
E'
p1*/p2*
w
E
パレート最適であるどのような資源配分であっても,それは完全競争と適切な所
有の組合せで実現する。(初期保有が適切に調整されれば,どのようなパレート最
OA
x1
15
ミクロ経済学
適の資源配分も,競争均衡の解として実現することができる。)
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性 ■ 生産の効率性条件
2企業,2生産要素のケース
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
B企業の等量曲線
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
生産要素の総量: x1A  x1B  x1 , x2A  x2B  x2
A
A
A
x2
x2
A企業の等量曲線
w1/w2
ミクロ経済学
O企業A
x1
w1/w2
O企業B
x1
16
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性 ■ 生産の効率性条件
2企業,2生産要素のケース
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
生産要素の総量: x1A  x1B  x1 , x2A  x2B  x2
A
x1
A
O企業B
A
x2
x2
ミクロ経済学
O企業A
x1
17
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
すべての企業の間で,技術的限界
代替率RTSが等しくなるとき,それより
2企業,2生産要素のケース
パレート優越的な配分が存在しない。
A
A
A
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
生産の効率性条件:
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
RTSA=RTSB
生産要素の総量: x A  x B  x , x A  x B  x
1
1
1
2
2
OB
2
x
ボックスの内部の点は,2つの企業への 2
生産要素の配分を表す。
ボックス内任意の2点QとQ'について,
Q点における2企業の生産量:(yA,yB)
Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B)
である。もし
Q'
yA ≧ y'A , yB ≧ y'B
Q
が成り立つならば,QはQ‘よりもパレート
改善であるという。
ミクロ経済学
OA
x1
18
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
契約曲線に乗っている赤い点では,
すべての企業の間で,技術的限界
すべての産業の要素間の限界代替
代替率RTSが等しくなるとき,それより
2企業,2生産要素のケース
パレート優越的な配分が存在しない。
A
A
A
率が互いに等しくなり,生産要素の
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
配分はもっとも効率的である。
生産の効率性条件:
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
RTSA=RTSB
生産要素の総量: x A  x B  x , x A  x B  x
1
1
1
2
2
ボックスの内部の点は,2つの企業への
生産要素の配分を表す。
ボックス内任意の2点QとQ'について,
Q点における2企業の生産量:(yA,yB)
Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B)
である。もし
yA ≧ y'A , yB ≧ y'B
が成り立つならば,QはQ‘よりもパレート
改善であるという。
生産の契約曲線
ミクロ経済学
OB
2
x2
y4A
y1B
D
y2A y3A
y1A
y2B
y3B
y4B
B
C
A
OA
x1
19
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
契約曲線に乗っている赤い点では,
すべての企業の間で,技術的限界
すべての産業の要素間の限界代替
代替率RTSが等しくなるとき,それより
2企業,2生産要素のケース
パレート優越的な配分が存在しない。
A
A
A
率が互いに等しくなり,生産要素の
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
配分はもっとも効率的である。
生産の効率性条件:
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
RTSA=RTSB
生産要素の総量: x A  x B  x , x A  x B  x
1
B
B
の y4
生 y3B
産 y 2B
量
A
1
1
2
2
生産フロンティア
(生産可能曲線)
OB
2
x2
y4A
生産の契約曲線
B
D
C
y2A y3A
y1A
y1B 生産可能性領域
D
y2B
y3B
y4B
B
C
A
ミクロ経済学
O
y1A y2A
y3A
y4A
Aの生産量
OA
x1
20
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
契約曲線に乗っている赤い点では,
すべての企業の間で,技術的限界
すべての産業の要素間の限界代替
代替率RTSが等しくなるとき,それより
2企業,2生産要素のケース
パレート優越的な配分が存在しない。
A
A
A
率が互いに等しくなり,生産要素の
企業Aの生産関数: y A  f ( x1 , x2 )
B
B
B
配分はもっとも効率的である。
生産の効率性条件:
企業Bの生産関数: yB  f ( x1 , x2 )
RTSA=RTSB
生産要素の総量: x A  x B  x , x A  x B  x
1
B
B
の y4
生 y3B
産 y 2B
量
A
1
1
2
2
生産フロンティア
(生産可能曲線)
OB
2
x2
y4A
生産の契約曲線
B
D
C
y2A y3A
y1A
y1B 生産可能性領域
D
y2B
y3B
y4B
B
C
A
ミクロ経済学
O
y1A y2A
y3A
y4A
Aの生産量
OA
x1
21
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
■ 生産可能曲線
生産可能曲線: 各生産要素の総量が所与のときに最大限可能な各財の
生産量の組合せを表す。
限界変形率(marginal rate of transformation 略MRT): A財を1単位追
加的に生産するために,犠牲にしなければならないB財の生産量を表す。
B
の
生
産
量
限界変形率は,B財の量で測ったA財
の機会費用でもある。
A
B
C
限界変形率DdyyB//dy
DyAA=MRT
DyB
DyA
ミクロ経済学
O
D
Aの生産量
通常生産フロンティアは外へ
凸である。つまり,限界変形率
は逓増であること意味する。
22
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
利潤最大化
市場では,各企業は利潤を最大化するように生産量を決める。このと
き,この生産量の下で,費用最小化の条件をも満たしている。つまり
w1/w2 = RTSA = RTSB
OB
生産要素
の価格の比
企業Bの
企業Aの
技術的
技術的
限界代替率 限界代替率
x2
生産の契約曲線
すべての企業の技術的限界代替率が均等
化される。加えて,各企業の生産要素への需
要量の和が総供給量と等しい場合に,
yA
yB
x1A  x1B  x1 , x2A  x2B  x2
生産は契約曲線上で行われることになる。
このことは,生産要素市場の均衡が生産の
パレート最適配分をもたらすことを意味する。 O
A
ミクロ経済学
w1/w2
x1
23
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
以下,生産された財を消費すると仮定して,生産と消費の効率的な関
係を分析する。
消費者が1人であるケース
生産可能曲線
第2財の
生産量・
消費量
生産可能曲線が無差別曲線と接す
る点Eでは,効率的な生産の下で,消
y
費者の効用が最大になっているので, 2
消費を共に効率的に行っている。
生産可能曲線の限界変形率と無差
y2*
別曲線の限界代替率が等しくなって
いる。
無差別曲線
E
u*
生産と消費の効率性条件
MRT = MRS
生産可能曲線
の限界変形率
ミクロ経済学
u'
u"
無差別曲線
の限界代替率
O
y1*
第1財の
生産量・
消費量
y1 24
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
市場均衡
生産物の価格p1,p2が所与され
ると,生産可能曲線上で最も高い
価値を生む生産物の組合せQが
生産される。このとき,
生産物の価値=p1y1Q+p2y2Q
消費者は生産物の組合せQを
初期保有点とする予算制約式
p1y1+p2y2=p1y1Q+p2y2Q
の下で,効用最大の需要点Cを選
択しようとする。
この場合,各財の市場において
需給は一致しない。
ミクロ経済学
予算制約線
第2財の
生産量・
消費量
y2
超過需要
y2*=y C-y Q
2
2
C =(y1C, y2C)
u'
E
u*
y2Q
O
Q
超過供給
=y2C- p1/p2
y2Q y Q
C
y1 y1*
1
第1財の
生産量・
消費量
y1 25
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
市場均衡
予算制約線
各財の市場において,需要と供
給が一致するのは,各財の市場 第2財の
価格がE点を通る接線の傾きに等 生産量・
消費量
しい場合である。
y2
市場価格p1*,p2*の下で,市場
はE点で需給均衡となる。
市場均衡が生産と消費のパレー y * 超過需要
2 =y2C-y2Q
ト効率的配分をもたらすことになり,
価格を媒介して次の式が成立する。
p1*/p2* = MRT = MRS
Q
y2
限界 各消費者の
生産物の
均衡価格比 変形率 限界代替率
生産可能曲線
ミクロ経済学
の傾きに等しい
無差別曲線の
O
傾きに等しい
C =(y1C, y2C)
u'
E
u*
Q
超過供給
=y2C- p1/p2
y2Q y Q
C
y1 y1*
1
p1*/p2*
第1財の
生産量・
消費量
y1 26
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
市場均衡
パレート効率性条件
各財の市場において,需要と供
消費者の間で,
給が一致するのは,各財の市場
MRSA = MRSB =p1*/p2*
消費者Aの
消費者Bの
価格がE点を通る接線の傾きに等
限界代替率
限界代替率
しい場合である。
市場価格p1*,p2*の下で,市場
生産者の間で,
はE点で需給均衡となる。
RTSA = RTSB
生産者Aの
生産者Bの
市場均衡が生産と消費のパレー
技術的限界代替率
技術的限界代替率
ト効率的配分をもたらすことになり,
消費と生産に関して,
価格を媒介して次の式が成立する。
pp11*/p
MRT=
MRSi
*/p22** = MRT
= MRS
消費者が2人の場合でも,この
式は同様に成立する。(証明略)
生産可能曲線
消費の契約曲線
y2
E
限界 各消費者の
生産物の
均衡価格比 変形率 限界代替率
生産可能曲線
ミクロ経済学
の傾きに等しい
無差別曲線の
傾きに等しい
p1*/p2*
0
y271
第7章 資源配分の効率性
7.5 資源配分の効率性
最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。
効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース)
生産可能曲線上のQ点の生産物組合
生産可能曲線上の点
対応効用フロンティア
せに対し,2人の消費者が効率的配分は
E
uu
生産可能曲線
Q'
u'u'
契約曲線上の各点である。この契約曲線
消費の契約曲線
Q"
u"u"
に対応する効用フロンティアはuuである。
y
2
uB
q"
u"
u
効用可能性フロンティア
すべての効用可能
曲線の絡包線である。
Q"
E
E*
Q'
u'
u"
ミクロ経済学
0
q'
u u'
uA
0
y281
第7章 資源配分の効率性
社会厚生関数
7.5 資源配分の効率性
効用可能性フロンティア上の点について,選好比較することができない。
最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。
もし,すべての効用の組合せに順序付けができるような社会的厚生関数
効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース)
W=W(uA, uB)
生産可能曲線上のQ点の生産物組合
生産可能曲線上の点
対応効用フロンティア
が存在すれば,社会的な最適点E*(社会的厚生関数と効用フロンティアの接点)
せに対し,2人の消費者が効率的配分は
E
uu
生産可能曲線
も存在する。
Q'
u'u'
契約曲線上の各点である。この契約曲線
消費の契約曲線
Q"
u"u"
に対応する効用フロンティアはuuである。
y2
uB
Q"
効用可能性フロンティア
q"
u"
u
E*
E
社会的厚生関数
W=W(uA, uB)
Q'
u'
u"
ミクロ経済学
0
q'
u u'
uA
0
y291
第8章 所得再分配政策
8.5 所得再分配政策
■ 社会厚生関数
ベンサム的な価値判断:社会のすべ
ての成員の効用の総計を大きくすること
が政府の目的である。
ベンサム型社会厚生関数:
W=uA+uB
uB
ミクロ経済学
0
ベンサム型社会厚生関数
の無差別曲線
ロールズ的な価値判断:もっとも恵
まれていない人にのみ政府が関心を
持ち,その人の経済状態を改善する
ことは,社会的に望ましい。
ロールズ型社会厚生関数:
W=Min(uA,uB)
uB
uA
0
ロールズ型社会厚生関数
の無差別曲線
45°
uA
第8章 所得再分配政策
8.5 所得再分配政策
■ 社会的な最適点
生産可能曲線上のQ点の生産物組合
生産可能曲線上の点
対応効用フロンティア
せに対し,2人の消費者が効率的配分は
E
uu
Q'
u'u'
契約曲線上の各点である。この契約曲線
Q"
u"u"
に対応する効用フロンティアはuuである。
uB
u"
u
生産可能曲線
消費の契約曲線
y2
効用可能性フロンティア
一般型の
社会的厚生関数
W=W(uA, uB)
E*
Q"
E
Q'
u'
u"
ミクロ経済学
0
u u'
uA
0
y311
第8章 所得再分配政策
8.5 所得再分配政策
■ 社会的な最適点
生産可能曲線上のQ点の生産物組合
生産可能曲線上の点
対応効用フロンティア
せに対し,2人の消費者が効率的配分は
E
uu
Q'
u'u'
契約曲線上の各点である。この契約曲線
Q"
u"u"
に対応する効用フロンティアはuuである。
y2
Q'
E*
u'
u"
Q"
E
ベンサム型の
社会的厚生関数
W=uA+uB
u"
u
0
消費の契約曲線
効用可能性フロンティア
uB
ミクロ経済学
生産可能曲線
u u'
uA
0
y321
第8章 所得再分配政策
8.5 所得再分配政策
■ 社会的な最適点
生産可能曲線上のQ点の生産物組合
生産可能曲線上の点
対応効用フロンティア
せに対し,2人の消費者が効率的配分は
E
uu
Q'
u'u'
契約曲線上の各点である。この契約曲線
Q"
u"u"
に対応する効用フロンティアはuuである。
uB
u"
u
u'
ミクロ経済学
0
しかし,現実にすべての
経済主体が納得する社会
的厚生関数を見出すこと
は容易ではない。
パレート効率性は論理的
生産可能曲線
帰結として受入れられる基
消費の契約曲線
準で,実証経済学の問題に
y2
Q"
属する。
効用可能性フロンティア
45°
社会的厚生関数は,異な
E
る個人の効用を比較評価す
ロールズ型の
E*
社会的厚生関数 る,言わば所得分配の異な
Q'
る状況にランク付けを行うと
W=uA+uB
いう,価値判断をせずには
定義できない規範経済学に
u u'
u"
属する概念である。
uA
0
y331
生産物市場には,パン・テレビ・住宅など多数の市場,また生産
要素市場には,小麦・労働力・石油などの市場がある。それらの市
場は相互に関連していている。すべての生産物市場と生産要素市
場が互いに関連して,経済全体の「資源配分」と「所得分配」が解
決される。
競争的な市場経済では,価格メカニズムの働きで,
経済学の三つの基本問題に答えを出している。アダ
ム・スミス(Adam Smith 1723-1790)は『国富論』のな
かで,市場機構(価格のメカニズム)という「見えざる
手」に任せれば(自由放任),理想的な調和の世界
が実現できるという考えを示した。すなわち,各個人
が自分勝手な個別の経済活動をするということと,
経済全体の秩序が維持されるということが,価格メカ
Adam Smith
1723-1790
ニズムによって両立すると考えた。
ミクロ経済学
34
市場の失敗
市場メカニズムが解決できない問題
地域格差の問題:
国と国の間の経済格差問題(いわゆる南北問題)
一国内の地域間の経済格差の問題
分配の問題:
人々の所得格差の問題
環境問題:
市場メカニズムは常に理想的に働くわけではない。自
由な経済活動によって生じる歪みを「市場の失敗」と呼ば
れる。それはいわゆる市場の限界である。
ミクロ経済学
35