第7章 資源配分の効率性 資源が効率的に分配されているというのは,諸生産要素が各産業間に うまく配分されていて,資源の無駄使いが生じていない状態という。 市場メカニズムは資源効率的な配分を実現することができるか。これ を分析する方法には,部分均衡分析と一般均衡分析があり,どちらも有 効である。 部分均衡分析 多くの財の中から1つの財のみを取り上げ,他の財の価格,消費者 の所得や嗜好,企業の生産技術や雇用量などを一定(他の事情を一 定)として,特定の財の価格とその財のへ需要量と供給を分析すること。 一般均衡分析 すべての財の価格と需要・供給,即ちすべての市場を同時に分析す ること。 ミクロ経済学 1 第7章 資源配分の効率性 経済における複数の財の市場の相互依存関係をとらえるためには, 少なくとも2つの財を考慮する必要がある。 また,複数の経済主体の相互依存関係を分析するためには,少なくと も2人の消費者,または2個の企業,あるいは1人の消費者と1個の企業 のいずれかのケースを対象とする必要がある。 以下,一般均衡理論の視点から,2人の消費者,また2個の企業によ る資源配分の効率性の問題を分析することにする。 7.5 資源配分の効率性 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: ミクロ経済学 アップルパイ x1 ビール x2 A 花子 x1A=7 x2A =15 B 太郎 x1B =3 x2B =5 2人の間で互いに交 換が行われたら,利益 はあるのか? 2 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: x1 x2 ______________ x2 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ x2 15 5 ミクロ経済学 O太郎 3 x1 O花子 7 x1 3 第7章 資源配分の効率性 O花子 7 x1 7.5 資源配分の効率性 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15 5 O太郎 O x2 ミクロ経済学 15 x2 x2 3 x1 4 第7章 資源配分の効率性 O花子 7 x1 7.5 資源配分の効率性 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: x1 x2 ______________ 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15 x2 これは,いわゆるイギリス x2 経済学者エッジワースによっ て考察されたボックス・ダイア グラムである。 長方形の横の長さが2人 のx1 財の保有量の和,縦の 長さが2人のx2財の保有量の 5 F. Y. Edgeworth 和に等しい。長方形内の点 は2つの財が2人の間での保 1845~1926 O太郎 有の組合せを表している。 ミクロ経済学 3 x1 5 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: x1 x2 ______________ 7 O花子 x2 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15 太郎の効用が最 高に引上げた点 5 花子の効用が最 高に引上げた点 ミクロ経済学 O太郎 3 x1 6 第7章 資源配分の効率性 7 消費の効率性 ■ 交換の利益 例: x1 x2 ______________ O花子 7.5 資源配分の効率性 x2 花子 7 15 太郎 3 5  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 15 2人は交換を通じて,初期保有組合せ を通る2人の無差別曲線が囲むレンズ形 の内部の領域の点に保有組合せを変え れるなら,2人の効用が共に交換前の効 用を上回る。 コアと呼ばれ,2人交換取引(交渉)の 解と見なすことができる。 ミクロ経済学 5 太郎と花子両者とも効用 が引上げられる領域 O太郎 3 x1 7 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ パレート最適 x1B OB x2 ボックス・ダイアグラムの中に任意の2 点QとQ'について, Q点における2人の効用:(uA,uB) Q'点における2人の効用:(u'A,u'B) である。もし uA ≧ u'A , uB ≧ u'B が成り立つならば,QはQ'よりもパレート 優越的(もしくはパレート改善)であるとい う。 x2B u'A uA Q' Q u'B uB x2A ミクロ経済学 OA x1A x1 8 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ パレート最適 x1B x2 パレート効率的な点では,2人の無差別 ボックス・ダイアグラムの中に任意の2 点QとQ'について, 曲線は互いに接しているので,2人の消費 Q点における2人の効用:(uA,uB) 者の限界代替率が等しい。 Q'点における2人の効用:(u' A,u'B) 消費の効率性条件 である。もし MRSA=MRSB uA ≧ u'A , uBの限界代替率 B ≧ u'B Aの限界代替率 が成り立つならば,QはQ'よりもパレート (無差別曲線の傾き) (無差別曲線の傾き) 優越的であるという。 他の配分によってパレート改善される ことのない配分をパレート最適であると呼 A x2 ぶ。 パレート最適 ミクロ経済学 OB OA x2B u'A uA Q' Q u'B uB x1A x1 9 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ 契約曲線 x1B OB x2 パレート最適な資源配分(パレート効 率的な点)とは,資源配分をどのように変 えても,誰かの効用を下がることなしには 他の人の効用を上げることができない状 態をいう。 x2B ボックス・ダイアグラムの中に,2人の 無差別曲線が互いに接している点(パ レート効率的な点)が多数存在する。これ らの接点の集合は契約曲線である。 契約曲線上の点はすべて消費の効率 x2A 条件を満たし,パレート効率的である。 契約曲線 ミクロ経済学 OA x1A x1 10 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 OB x2 ■ 効用フロンティア U*1 しかし,資源配分の効率性は,分配 の公平性と相容れないこともある。 F O 3 C U2 U3 U U*4 1 U*5 U*6 E B A U*1 U1 U2 U3 B U* C U*2 ミクロ経済学 2 D U*3 U4 U* 効用フロンティア (効用可能曲線) E A U5 契約曲線 B 君 U* 6 の U* 5 効 U*4 用 U6 U4 U5 U6 A君の効用 D F OA x1 11 第7章 資源配分の効率性 x1B 7.5 資源配分の効率性 x2 ■ オファー曲線と市場均衡 A A B B OB 消費者Aの初期保有量: ( x1 , x2 ) A A A A Aの予算制約式: p1x1 p2 x2 p1x1 p2 x2 消費者Bの初期保有量: ( x1 , x2 ) B B B B Bの予算制約式: p1x1 p2 x2 p1x1 p2 x2 価格が与えられると,2人の予算制約 線は初期保有組合せの点を通る直線 であり,この傾きが-p1/p2である。 予算制約線がそれぞれ2人の無差別 曲線との接点は2人の2財への需要量 を表す。ボックスの横・縦の長さはそれ ぞれ2財の総供給量を表す。 ミクロ経済学 Bのx2へ の需要 x2B Bのx1へ の需要 w x2A OA Aのx1へ の需要 x1A Aのx2へ pの需要 1/p2 x1 12 第7章 資源配分の効率性 x1B 7.5 資源配分の効率性 x2 ■ オファー曲線と市場均衡 A A B B OB 消費者Aの初期保有量: ( x1 , x2 ) A A p x p x p x p x 2 2 Aの予算制約式: 1 1 2 2 1 1 消費者Bの初期保有量: ( x1 , x2 ) B B Bの予算制約式: p1x1 p2 x2 p1x1 p2 x2 それぞれの所与価格に対して,消費 者の効用最大化の需要点の軌跡はオ ファー曲線である。 2人のオファー曲線の交点Eでは,2 人の無差別曲線は互いに接していて, 2人の需要点が重なる。 x2B Aのオファー曲線 w x2A E p1/p2 Bのオファー曲線 ミクロ経済学 OA x1A x1 13 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ オファー曲線と市場均衡 2人の需要点が重なるときのみ,各財 への需要量の和が総供給量と一致し, 各財の市場は均衡となる。 このときの各財の市場価格を均衡価 格である。 一般均衡モデルにおけて,これらの各 財の均衡価格と各財への需要量の組合 せを一般均衡解と呼ばれる。 2人の需要点が重なるとき,2人の無 差別曲線は互いに接して,需要点は契 約曲線上にあるはずである。 従って,市場均衡における配分はパ レート最適である。 ミクロ経済学 x1B OB x2 x2B p1*/p2* w x2A OA E x1A x1 14 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ 厚生経済学の基本定理 OB x2 厚生経済学の第1定理 市場均衡における配分はパレート最適で ある。(競争均衡であれば必ずパレート最適 である。) 市場均衡では p1*/p2*=MRSA=MRSB 均衡価格 Aの限界 代替率 の比 Bの限界 代替率 また,別の初期保有点w'からも,価格を 通じての再配分で,契約曲線状のE'点の市 場均衡に達成することができる。 厚生経済学の第2定理 p1*'/p2*' w' E' p1*/p2* w E パレート最適であるどのような資源配分であっても,それは完全競争と適切な所 有の組合せで実現する。(初期保有が適切に調整されれば,どのようなパレート最 OA x1 15 ミクロ経済学 適の資源配分も,競争均衡の解として実現することができる。) 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ 生産の効率性条件 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B B企業の等量曲線 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) 生産要素の総量: x1A x1B x1 , x2A x2B x2 A A A x2 x2 A企業の等量曲線 w1/w2 ミクロ経済学 O企業A x1 w1/w2 O企業B x1 16 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ 生産の効率性条件 2企業,2生産要素のケース 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) 生産要素の総量: x1A x1B x1 , x2A x2B x2 A x1 A O企業B A x2 x2 ミクロ経済学 O企業A x1 17 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 すべての企業の間で,技術的限界 代替率RTSが等しくなるとき,それより 2企業,2生産要素のケース パレート優越的な配分が存在しない。 A A A 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B 生産の効率性条件: 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) RTSA=RTSB 生産要素の総量: x A x B x , x A x B x 1 1 1 2 2 OB 2 x ボックスの内部の点は,2つの企業への 2 生産要素の配分を表す。 ボックス内任意の2点QとQ'について, Q点における2企業の生産量:(yA,yB) Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B) である。もし Q' yA ≧ y'A , yB ≧ y'B Q が成り立つならば,QはQ‘よりもパレート 改善であるという。 ミクロ経済学 OA x1 18 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 契約曲線に乗っている赤い点では, すべての企業の間で,技術的限界 すべての産業の要素間の限界代替 代替率RTSが等しくなるとき,それより 2企業,2生産要素のケース パレート優越的な配分が存在しない。 A A A 率が互いに等しくなり,生産要素の 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B 配分はもっとも効率的である。 生産の効率性条件: 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) RTSA=RTSB 生産要素の総量: x A x B x , x A x B x 1 1 1 2 2 ボックスの内部の点は,2つの企業への 生産要素の配分を表す。 ボックス内任意の2点QとQ'について, Q点における2企業の生産量:(yA,yB) Q'点における2企業の生産量:(y'A,y'B) である。もし yA ≧ y'A , yB ≧ y'B が成り立つならば,QはQ‘よりもパレート 改善であるという。 生産の契約曲線 ミクロ経済学 OB 2 x2 y4A y1B D y2A y3A y1A y2B y3B y4B B C A OA x1 19 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 契約曲線に乗っている赤い点では, すべての企業の間で,技術的限界 すべての産業の要素間の限界代替 代替率RTSが等しくなるとき,それより 2企業,2生産要素のケース パレート優越的な配分が存在しない。 A A A 率が互いに等しくなり,生産要素の 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B 配分はもっとも効率的である。 生産の効率性条件: 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) RTSA=RTSB 生産要素の総量: x A x B x , x A x B x 1 B B の y4 生 y3B 産 y 2B 量 A 1 1 2 2 生産フロンティア (生産可能曲線) OB 2 x2 y4A 生産の契約曲線 B D C y2A y3A y1A y1B 生産可能性領域 D y2B y3B y4B B C A ミクロ経済学 O y1A y2A y3A y4A Aの生産量 OA x1 20 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 契約曲線に乗っている赤い点では, すべての企業の間で,技術的限界 すべての産業の要素間の限界代替 代替率RTSが等しくなるとき,それより 2企業,2生産要素のケース パレート優越的な配分が存在しない。 A A A 率が互いに等しくなり,生産要素の 企業Aの生産関数: y A f ( x1 , x2 ) B B B 配分はもっとも効率的である。 生産の効率性条件: 企業Bの生産関数: yB f ( x1 , x2 ) RTSA=RTSB 生産要素の総量: x A x B x , x A x B x 1 B B の y4 生 y3B 産 y 2B 量 A 1 1 2 2 生産フロンティア (生産可能曲線) OB 2 x2 y4A 生産の契約曲線 B D C y2A y3A y1A y1B 生産可能性領域 D y2B y3B y4B B C A ミクロ経済学 O y1A y2A y3A y4A Aの生産量 OA x1 21 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 ■ 生産可能曲線 生産可能曲線: 各生産要素の総量が所与のときに最大限可能な各財の 生産量の組合せを表す。 限界変形率(marginal rate of transformation 略MRT): A財を1単位追 加的に生産するために,犠牲にしなければならないB財の生産量を表す。 B の 生 産 量 限界変形率は,B財の量で測ったA財 の機会費用でもある。 A B C 限界変形率DdyyB//dy DyAA=MRT DyB DyA ミクロ経済学 O D Aの生産量 通常生産フロンティアは外へ 凸である。つまり,限界変形率 は逓増であること意味する。 22 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 利潤最大化 市場では,各企業は利潤を最大化するように生産量を決める。このと き,この生産量の下で,費用最小化の条件をも満たしている。つまり w1/w2 = RTSA = RTSB OB 生産要素 の価格の比 企業Bの 企業Aの 技術的 技術的 限界代替率 限界代替率 x2 生産の契約曲線 すべての企業の技術的限界代替率が均等 化される。加えて,各企業の生産要素への需 要量の和が総供給量と等しい場合に, yA yB x1A x1B x1 , x2A x2B x2 生産は契約曲線上で行われることになる。 このことは,生産要素市場の均衡が生産の パレート最適配分をもたらすことを意味する。 O A ミクロ経済学 w1/w2 x1 23 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 以下,生産された財を消費すると仮定して,生産と消費の効率的な関 係を分析する。 消費者が1人であるケース 生産可能曲線 第2財の 生産量・ 消費量 生産可能曲線が無差別曲線と接す る点Eでは,効率的な生産の下で,消 y 費者の効用が最大になっているので, 2 消費を共に効率的に行っている。 生産可能曲線の限界変形率と無差 y2* 別曲線の限界代替率が等しくなって いる。 無差別曲線 E u* 生産と消費の効率性条件 MRT = MRS 生産可能曲線 の限界変形率 ミクロ経済学 u' u" 無差別曲線 の限界代替率 O y1* 第1財の 生産量・ 消費量 y1 24 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 市場均衡 生産物の価格p1,p2が所与され ると,生産可能曲線上で最も高い 価値を生む生産物の組合せQが 生産される。このとき, 生産物の価値=p1y1Q+p2y2Q 消費者は生産物の組合せQを 初期保有点とする予算制約式 p1y1+p2y2=p1y1Q+p2y2Q の下で,効用最大の需要点Cを選 択しようとする。 この場合,各財の市場において 需給は一致しない。 ミクロ経済学 予算制約線 第2財の 生産量・ 消費量 y2 超過需要 y2*=y C-y Q 2 2 C =(y1C, y2C) u' E u* y2Q O Q 超過供給 =y2C- p1/p2 y2Q y Q C y1 y1* 1 第1財の 生産量・ 消費量 y1 25 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 市場均衡 予算制約線 各財の市場において,需要と供 給が一致するのは,各財の市場 第2財の 価格がE点を通る接線の傾きに等 生産量・ 消費量 しい場合である。 y2 市場価格p1*,p2*の下で,市場 はE点で需給均衡となる。 市場均衡が生産と消費のパレー y * 超過需要 2 =y2C-y2Q ト効率的配分をもたらすことになり, 価格を媒介して次の式が成立する。 p1*/p2* = MRT = MRS Q y2 限界 各消費者の 生産物の 均衡価格比 変形率 限界代替率 生産可能曲線 ミクロ経済学 の傾きに等しい 無差別曲線の O 傾きに等しい C =(y1C, y2C) u' E u* Q 超過供給 =y2C- p1/p2 y2Q y Q C y1 y1* 1 p1*/p2* 第1財の 生産量・ 消費量 y1 26 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 市場均衡 パレート効率性条件 各財の市場において,需要と供 消費者の間で, 給が一致するのは,各財の市場 MRSA = MRSB =p1*/p2* 消費者Aの 消費者Bの 価格がE点を通る接線の傾きに等 限界代替率 限界代替率 しい場合である。 市場価格p1*,p2*の下で,市場 生産者の間で, はE点で需給均衡となる。 RTSA = RTSB 生産者Aの 生産者Bの 市場均衡が生産と消費のパレー 技術的限界代替率 技術的限界代替率 ト効率的配分をもたらすことになり, 消費と生産に関して, 価格を媒介して次の式が成立する。 pp11*/p MRT= MRSi */p22** = MRT = MRS 消費者が2人の場合でも,この 式は同様に成立する。(証明略) 生産可能曲線 消費の契約曲線 y2 E 限界 各消費者の 生産物の 均衡価格比 変形率 限界代替率 生産可能曲線 ミクロ経済学 の傾きに等しい 無差別曲線の 傾きに等しい p1*/p2* 0 y271 第7章 資源配分の効率性 7.5 資源配分の効率性 最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) 生産可能曲線上のQ点の生産物組合 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア せに対し,2人の消費者が効率的配分は E uu 生産可能曲線 Q' u'u' 契約曲線上の各点である。この契約曲線 消費の契約曲線 Q" u"u" に対応する効用フロンティアはuuである。 y 2 uB q" u" u 効用可能性フロンティア すべての効用可能 曲線の絡包線である。 Q" E E* Q' u' u" ミクロ経済学 0 q' u u' uA 0 y281 第7章 資源配分の効率性 社会厚生関数 7.5 資源配分の効率性 効用可能性フロンティア上の点について,選好比較することができない。 最後に厚生経済学への入門的な議論を付け加える。 もし,すべての効用の組合せに順序付けができるような社会的厚生関数 効用可能性フロンティア(消費者が2人のケース) W=W(uA, uB) 生産可能曲線上のQ点の生産物組合 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア が存在すれば,社会的な最適点E*(社会的厚生関数と効用フロンティアの接点) せに対し,2人の消費者が効率的配分は E uu 生産可能曲線 も存在する。 Q' u'u' 契約曲線上の各点である。この契約曲線 消費の契約曲線 Q" u"u" に対応する効用フロンティアはuuである。 y2 uB Q" 効用可能性フロンティア q" u" u E* E 社会的厚生関数 W=W(uA, uB) Q' u' u" ミクロ経済学 0 q' u u' uA 0 y291 第8章 所得再分配政策 8.5 所得再分配政策 ■ 社会厚生関数 ベンサム的な価値判断:社会のすべ ての成員の効用の総計を大きくすること が政府の目的である。 ベンサム型社会厚生関数: W=uA+uB uB ミクロ経済学 0 ベンサム型社会厚生関数 の無差別曲線 ロールズ的な価値判断:もっとも恵 まれていない人にのみ政府が関心を 持ち,その人の経済状態を改善する ことは,社会的に望ましい。 ロールズ型社会厚生関数: W=Min(uA,uB) uB uA 0 ロールズ型社会厚生関数 の無差別曲線 45° uA 第8章 所得再分配政策 8.5 所得再分配政策 ■ 社会的な最適点 生産可能曲線上のQ点の生産物組合 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア せに対し,2人の消費者が効率的配分は E uu Q' u'u' 契約曲線上の各点である。この契約曲線 Q" u"u" に対応する効用フロンティアはuuである。 uB u" u 生産可能曲線 消費の契約曲線 y2 効用可能性フロンティア 一般型の 社会的厚生関数 W=W(uA, uB) E* Q" E Q' u' u" ミクロ経済学 0 u u' uA 0 y311 第8章 所得再分配政策 8.5 所得再分配政策 ■ 社会的な最適点 生産可能曲線上のQ点の生産物組合 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア せに対し,2人の消費者が効率的配分は E uu Q' u'u' 契約曲線上の各点である。この契約曲線 Q" u"u" に対応する効用フロンティアはuuである。 y2 Q' E* u' u" Q" E ベンサム型の 社会的厚生関数 W=uA+uB u" u 0 消費の契約曲線 効用可能性フロンティア uB ミクロ経済学 生産可能曲線 u u' uA 0 y321 第8章 所得再分配政策 8.5 所得再分配政策 ■ 社会的な最適点 生産可能曲線上のQ点の生産物組合 生産可能曲線上の点 対応効用フロンティア せに対し,2人の消費者が効率的配分は E uu Q' u'u' 契約曲線上の各点である。この契約曲線 Q" u"u" に対応する効用フロンティアはuuである。 uB u" u u' ミクロ経済学 0 しかし,現実にすべての 経済主体が納得する社会 的厚生関数を見出すこと は容易ではない。 パレート効率性は論理的 生産可能曲線 帰結として受入れられる基 消費の契約曲線 準で,実証経済学の問題に y2 Q" 属する。 効用可能性フロンティア 45° 社会的厚生関数は,異な E る個人の効用を比較評価す ロールズ型の E* 社会的厚生関数 る,言わば所得分配の異な Q' る状況にランク付けを行うと W=uA+uB いう,価値判断をせずには 定義できない規範経済学に u u' u" 属する概念である。 uA 0 y331 生産物市場には,パン・テレビ・住宅など多数の市場,また生産 要素市場には,小麦・労働力・石油などの市場がある。それらの市 場は相互に関連していている。すべての生産物市場と生産要素市 場が互いに関連して,経済全体の「資源配分」と「所得分配」が解 決される。 競争的な市場経済では,価格メカニズムの働きで, 経済学の三つの基本問題に答えを出している。アダ ム・スミス(Adam Smith 1723-1790)は『国富論』のな かで,市場機構(価格のメカニズム)という「見えざる 手」に任せれば(自由放任),理想的な調和の世界 が実現できるという考えを示した。すなわち,各個人 が自分勝手な個別の経済活動をするということと, 経済全体の秩序が維持されるということが,価格メカ Adam Smith 1723-1790 ニズムによって両立すると考えた。 ミクロ経済学 34 市場の失敗 市場メカニズムが解決できない問題 地域格差の問題: 国と国の間の経済格差問題(いわゆる南北問題) 一国内の地域間の経済格差の問題 分配の問題: 人々の所得格差の問題 環境問題: 市場メカニズムは常に理想的に働くわけではない。自 由な経済活動によって生じる歪みを「市場の失敗」と呼ば れる。それはいわゆる市場の限界である。 ミクロ経済学 35
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