7章.移送サービスでの運転に必要な知識と心構え

7章.安全・安心な運行と緊急時の対応
本章のポイント
1.車両の日常点検
3.リスク防止
(1)感染症の予防
2.リスク対応
(1)利用者の体調不良時
(2)悪天候・夜間・雪道での運転
(3)活動に関わる保険
(2)車両故障時
(3)事故時
4.最近の交通事故の状況
1.車両の日常点検
※点検については車両の説明書に従ってください。
(1) エンジンまわり
①ブレーキ液の量
液量が目盛の上限と下限の間にあるかを点検する。
②バッテリー液の量
同上
③エンジンオイルの量
オイルゲージを
引き抜き
ウエスなどで
ゲージをキレイ
にふき取る。
キレイにしたゲージ
を根元までさし込み、
再び引き抜いてオ
イルをチェックする。
レベルゲージのLとHのライン
の間にオイルがあれば適量。
Lより下だったらオイルを補充。
オイルの色も忘れずチェックし、
黒く濁っていたら交換。
④エンジン冷却水の量
液量が目盛の上限と下限の間にあるかを点検する。
⑤ウィンド・ウォッシャー液の量
液量が適量かを確認する。
(2)タイヤ
①空気圧は十分か
②損傷、磨耗、亀裂はないか
③溝の深さは十分か
スリップサインの位置を示す矢印
クルマ毎に設定されているタイヤの指定空気圧
太い溝で一段高くなっているスリップサイン
(3)灯火装置および方向指示器
エンジンキーを差し込んで(エンジンを作動させていない状態 )で、
正常に点灯あるいは点滅するかを確認する。
(4)車いす乗降装置、固定装置など
作動状況をチェックする。
(5)ブレーキ、ワイパー
①サイドブレーキは正常か
②ブレーキ・ペダルは正常か
スポンジ状にやわらかい感触がないか確認する。
力強く踏んだ時、踏み込みすぎていないか確認する。
③ワイパーおよびウィンド・ウォッシャーは正常か
④バッテリー
エンジンの始動時やライトの明るさなどでチェックする。
(6)エンジン
すぐに作動するか、エンジンに異常な音はしないかを確認する。
2.リスク対応
(1) 利用者の体調不良時
1) 声をかけながら、意識の有無や、呼吸の状態を確認
2) 意識がない場合は救急車を要請
3) 会話が可能な場合
どのように対応すればいいかを聞く。
判断に悩む場合は躊躇せず救急車を
要請する。
4) 離れずに様子を見守り、到着した救急隊員に様子の変化を適確に伝える。
5) 運行管理責任者に連絡
車内で体調不良を起こさないために
●後席部分の車内環境の管理には注意を払う。
応急救護について
●容態によっては、特に専門的な応急処置が必要な
場合もある。
利用者の疾病等を運行管理責任者をとおして事
前に確認する。
利用者が緊急連絡カードを携行している事もある。
■おもな症状に対する知識
症 状
対処法
1)意識障害
外界の刺激に対する反応が低
下もしくは消失した状態。
呼吸の有無と、脈拍を確認し
て、こちらの問いかけや刺激
への反応の程度を見る。
2)呼吸困難
「呼吸ができない・しにくい」「息
がつまる」「ぜいぜいする」など
の症状。動悸・息切れ・胸部の
圧迫感や痛み・不快感など。
温度や湿度を適切にしながら、
室内の換気に配慮したり、また、
衣服やベルトなどによる緊張
や圧迫を緩め、姿勢を楽にす
る。
3)脱水症状
体内の水分の減少によって体
調が変調する状態。
水をゆっくりと、かむように飲ま
せる。
4)熱中症
(日射病、
熱射病 )
気温の高い環境にいることで、
体温が上昇して体調をくずすこ
と。脊髄損傷や頚椎損傷の障
害では、汗をかくことによる体
温調整が難しいので、特に注
意する。
涼しい場所で、衣服を緩め、水
平か上半身をやや高めに寝か
せます。意識があれば水など
を飲ませたり、頭を冷やしたり
する。
(2) 車両故障時
●代替の送迎手段などについて指示を仰ぎ、利用者の送迎にできる
だけ支障がないよう対応
1)対処方法
○安全な場所に自動車を移動させ、エンジンを止める。
○利用者が動揺しないように、対応について随時伝える。
○非常点滅表示灯(ハザードランプ)を点滅させ、車両後
方に停止表示機材(三角板)を表示する。
○運行管理責任者と連絡をとり、
利用者の自宅や目的地に連絡してもらう。
2)運転中に故障した場合
■道路で故障した場合
付近の人に協力を求め、安全な場所まで押してもらう。
■踏切で故障した場合
非常ボタンを押す。
利用者や運転者が踏切外へ退避することを優先する。
■高速道路で故障した場合
非常点滅表示灯(ハザードランプ)を点滅させ、車両後方に
停止表示板を表示する。
3)故障時の運行管理責任者への連絡および確認事項
①現在地をできるだけ詳しく伝える。
②代替手段について指示を仰ぐ
利用者が乗車中の場合は、代替送迎手段などについて正確に説明する。
③エンジンやブレーキなど運転に支障のある箇所の故障かどうか、
また自走が可能かどうかを報告する。
④以降の送迎や運転協力者の交代などが予定されている場合は指示を仰ぐ。
⑤自走できない故障車両は、移動手配について指示を仰ぐ。
(3) 事故時
1)自動車乗車中(乗降中)の事故
①負傷者の救助
②2次災害の防止
利用者や事故の相手が
痛みや違和感などを訴
③警察、救急への通報
えた場合には、必ず病
院で診察する。
④運行管理責任者への連絡
⑤利用者の家族や関係者への連絡
※修理工場、保険会社への連絡
2)自動車乗車中以外の事故
○利用者の家で家財道具を壊した
○介助中に車いすが転倒して利用者が負傷した
○車いすを介助中に第三者のものにぶつけて壊した
など
①負傷者の救助
②2次災害の防止
利用者や事故の相手が
痛みや違和感などを訴
③救急への通報
えた場合には、必ず病
院で診察する。
④運行管理責任者への連絡
⑤利用者の家族や関係者への連絡
(運行管理責任者が行う場合もある)
※保険会社への連絡
3.リスク防止
(1) 感染症への注意
1)主な感染経路
①飛沫感染
②接触感染
2)車内を清潔にするために
①定期的に清掃をする(おおむね月に1回程度)
②主な清掃箇所と清掃方法
・座席
掃除機、専用クリーナーを使用する
・マット
水洗い
・車いす乗車スペース 掃除機で隙間などの砂や砂利も掃除する
・窓ガラス
ガラスクリーナーを使用する
・ダッシュボード 中性洗剤付タオルを使用後、洗剤を拭き取る
・エアコン
2)車内を清潔にするために(つづき)
③換気をする
④消毒をする
逆性石けん(塩化ベンザルコニウム)
エタノール(70%)
塩化ベンザルコニウムアルコール、
グルコン酸クロルヘキシジンアルコール
※消毒薬の使用や保存方法については、製品の注意を守ってください。
3)咳が出る場合
車内でマスクをする。
4)車内で血液が付着した場合
保菌者の血液から感染しないように、注意して拭き取る。
参考.感染症をもつ利用者を送迎(利用後に判明)した場合
運行管理責任者をとおして保健所や自治体の保健・衛生機関に必ず相談する。
※重い感染症を発病した人は利用の対象としていない場合が多い。
(2) 悪天候・夜間・雪道での運転
1)悪天候
①降雨・降雪時
リフト付き車両は車の重心が後ろにありハンドルが軽い。
ハンドル操作を慎重におこなう。
②強風時
側面の面積が広いので、横風を受けやすい。
ハンドルをしっかりと握って、車体が流されてもあせらない。
③異常気象時
無理をせず、運行管理責任者に相談する。
2)夕方・夜間
ライトを早めに点灯(トワイライト・オン運動)
乗降時はハザードランプや停止表示機材(三角板)などを使用。
3)雪道
①「急」がつく運転は絶対にしない
②雪下の側溝などに注意
③追従停車の時は車間距離を長めに
④リフトを降ろす際に
リフト接地面の氷雪の塊に気をつける。
リフトが浮いた時は段差を越える要領で乗降する。
(3) 活動に関わる保険
●損害賠償用の保険は自動車事故への適用は免責対象になる。
●通常は自動車任意保険を適用する。
参考.道路運送法第80条許可申請における損害賠償措置の規定
対人 8,000万円以上及び対物 200万円以上の任意保険若しくは
共済(搭乗者傷害を対象に含むものに限る。)に加入する。
!
所属団体が加入している保険の種類を確認すること
1)移送サービスの活動を補償する保険
事故など利用者や第三者に対する賠償責任に対応するための保険
がある。
例:移送サービス利用者傷害保険(東京都社会福祉協議会)
送迎中自動車傷害保険(同上)
2)活動(働く)することに対する保険
「利用者の物を壊した」「利用者が転倒してケガをした」
「運転協力者がケガをした」
「行事などで第三者がケガをした」などに適用する。
例:「在宅福祉サービス総合補償」
「団体損害賠償保険」や「団体傷害保険」など
4.最近の交通事故の状況
1)交通事故発生状況の推移
2)道路形状別死亡事故発生件数
・死傷者数は減少傾向にある
・交差点での発生件数が37%と特に高い
・事故件数及び負傷者数は増加
(人)
(件・人)
1,156,633
20,000
1,200,000
交差点付近
8.1%
カーブ 539件
16.5%
負傷者数
1,000,000
933,828
件
数 800,000
・
負
傷
者 600,000
数
その他
3.3%
220件
交差点
37.0%
2,453件
1,093件
15,000
事故件数
死
者
数
10,000
400,000
2,320件
6,871
死者数
5,000
200,000
平成 5
4
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
一般単路
35.0%
(平成17年)
資料:警察庁交通局「平成17年中の交通事故発生状況」平成18年2月
3)年齢層別の事故原因
16歳から64歳では、最高速度違反や脇見運転を原因とする件数が多い。
65歳以上では優先通行妨害、一時不停止や運転操作を原因とする事故が多い。
第1当事者(原付以上運転者)の主な法令違反別交通事故件数(平成17年)
出典:警察庁交通局「平成17年中の交通事故発生状況」平成18年2月
4)時間帯別の交通事故発生件数
17時台をピークに、夕方の事故発生件数が特に多い。
時間帯別交通事故発生件数(平成13~17年の平均)
出典:警察庁交通局「平成17年中の交通事故発生状況」平成18年2月