IT化による中小企業支援のため の方策とシステムズアプローチ 大成幹彦 工学博士 東京理科大学・非常勤講師 元教授 工学部経営工学科,諏訪・経営情報学部 http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/ohnari/ 2006.9.20 H18年度千葉県先端情報技術活用 研究会(理科大野田) 1 中小製造業の課題 情報武装の必要性はわかる。 何をどのようにすればよいのかが不明。 情報化の投資効果 不明。旋盤なら効果/費用わかる。 経営分析,情報化投資分析をする人材が不足。 解決策 ニーズの明確化。 自社で? SEに依頼? 子息? プレゼン内容 システムズアプローチ 課題分析⇒代替案⇒評価 中小企業の経営者を親に持つ卒研生(子息)がSE ニーズ・シーズのマッチングの仕掛け作り 2 コンピュータ利用 = システム開発 の歩み 1950年代 自動化 1960年代 工業化 計算機制御(電力・鉄鋼・ 大気汚染防止) 1970年代 社会基盤の整備(鉄道・上下水 道),半導体歩留まり向上,車の制御 1980年代 企業の情報化,マルチメディア 1990年代 インターネット,家庭での情報化 大きな流れ: システムの大規模化・情報システムの普及 3 役立つ情報システムの構築 私は,企業でも大学でも社会に役立つ情報シ ステムの構築を研究。 卒業研究生にも身の回りの課題を分析して,コ ンピュータを活用して解決できないかを問いか けてきた。 学生は次のようなテーマに選んだ。 ・スポーツや趣味の分野を独習するための パソコンによる教育システム, ・アルバイト先の経営問題, ・親の仕事の支援,など 4 システム開発の手順 目的・課題 要求分析 要件定義 製作 Verification 仕様書どおりに 作られているか Validation 利用者の真の 要求を満たして いるか 要求仕様 5 情報システムの特徴 対象システム: 多くの要素が複雑に絡ん でいる 意思決定: 意思伝達,取りまとめ システムズアプローチ 問題の整理,解決策の策定,評価 表現: 論理的,visual パソコン利用 6 システムズアプローチ 課 題 項目の抽出,構造化: KJ法,ISM,・・ 解決代替案 課 題 目的樹木法, ・・ 方策1 方策2 具体案1 具体案2 具体案3 具体案4 具体案5 評価(選択,意思決定) Relevance Matrix, AHP, ・・ (入学試験で利用) 7 システムズエンジニアリング 要求分析 USER ニーズ側 要求者 写像 Mapping 逆写像 MAKER 技術 提供者 SE シーズ側 8 Modeling 抽象化 現実の世界 写像 Mapping モデルの世界 現実の中からどれだけ必要な課題や情報を取り出し て, システム構築に生かすかは,SEの力量に依存。 9 教育への取り組み 大学とは,自ら問題を見つけ,それを解決 する営みである。 失敗を体験できる場。 卒研では,身近なところで,対象・課題を見 つけ,解決策を提案し,評価する。 →システムズアプローチ →SE教育 http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/ohnari/se/se.htm 10 卒業研究のテーマ:システム開発(1) 教育(情報)システム開発 サークル: 野球,スキー,ゴルフ,フットサル, ヨット,ボート,スキューバダイビング, エレクトーン 親の仕事や趣味: 土地借用契約,着付け, 茶道,トールペインティング,ゲーム作成ソフト 選択支援システム開発 スノーボード,化粧品, 楽器(ベースギター),録音音楽(諏訪での卒業生) 11 システム開発(2): 中小企業支援の例 (親孝行) (1) 小規模衣料品小売店向け販売支援システム (2) 飲食店の食材管理システム (3) 青果小売業における受発注システムの開発 (4) 情報通信システム構築による経営合理化 -海外リゾートホテルを持つ中小企業を例に- (5) 中小製造業の電子商取引に応じた イントラネットの試作 (6) 企業間情報の電子化による効果算定 (7) インフォームド・コンセント支援のための カルテ開示システム 12 システムズエンジニア(SE)の重要性 SEとは,ニーズに合わせて,適切なハー ド,ソフトを選択し,システムを構築する 人。仲人やコック。 システムの要求者は,要求の具体化が 難しい。要求仕様をどこまで書けるか? 作り手も,曖昧な要求仕様から,要件定 義ができない。作り手は,漏れのない要 件定義があれば,物は作れる。 顧客要求をどのように引き出し,まとめる かが, SEの課題。 13 システム開発の方法論の体験は 有意義だった 小高 徳彦(1998年3月卒業) 私はシステム開発の仕事に従事。経営工学科で学んだシス テム開発の方法論は非常に有意義だった。 システム開発は「分析・設計・実装・テスト」のステップを踏 む。「分析」ではユーザが必要としている機能を抽出・整理 し,「設計」でその機能をどのようなIT技術で実現させるか検 討。「実装」で設計結果をプログラムにしコンピュータ上で実 現。「テスト」ではユーザが求める機能が実現しているかを 評価。仕事を進める上で,SEにはユーザとのコミュニケー ション技術と,自分の意図を相手に理解させるプレゼンテー ション技術を身につけることが必要です。 私はこれら一連の方法論や技術を,卒業研究を通じて体験 し,習得しました。IT技術が進歩しようとも,SEとしてベース となる技術を学ぶことができたと思います。 http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/ohnari/se/leaflet.htm 14 中小企業の社長を親に持つ学生 中小企業の社長を親に持つ学生は,子供の頃 から見慣れている親の仕事の課題抽出や要求 分析は協力が得やすい。 学生に方法論を与え,動機付けをすると,親と 真剣に話し合い,希望に沿った情報システムを 構築して親孝行を果たす。 卒研の過程で,親だけでなく,親の取引先とも コミュニケーションを図り,学生はSEとしての自 信を体験を通して深めていく。 15 SE vs. 親孝行 要求分析: 論理展開→親子の対等の対話。 親の仕事の理解,子供の成長の喜び。 仕様記述→親の業務での記述。 SEとしての 記述。親子の対話と相互理解。 情報システム開発,プログラム作成。 作成システムの検査→verificationと validationの理解。親子の対話の見直し。 成果: 親子の信頼感の醸成。親孝行。 16 情報化ニーズとシーズのマッチング ニーズ側 提供者 大企業 中小企業 シーズ側 大企業 ? 中小企業 どこをIT化? 17 解決策(1):ニーズ・シーズのマップ ニーズ調査:顕在ニーズ+潜在ニーズ 潜在ニーズ:情報化メニュー提示と選択 業種に関係なく横断的にニーズ調査 シーズ調査:現状+業務展開計画 ニーズ・シーズのマップ作り。 IT化の啓蒙:各種ビジネスモデルの紹介 例: インターネット利用の受発注,電子 取引,ペーパーレス化,業務データ の連動化,伝票システムの統一 18 解決策(2):教育とマッチング促進 SE教育: 体験の場。実践教育。教育支援。 塾の開設: 自立心。全体知。協働。 コミュニケーション。マナー ニーズ側とシーズ側の歩み寄り 相手を探す。 ・ ニーズとシーズの各マップ作り。 ・ 技術交流会: 現場を見る。見方を学ぶ。 ・ シーズ・ニーズのマッチング促進会(合コン) ・ 情報交流システムの構築 19 まとめ SE教育の推進 他人との協働,自立心,全体知,コミュニ ケーション,縦割り社会や孤立の弊害排 除。 学生でも親と協働可⇒親孝行 システムズアプローチ 論理的(低いコンテクストで),説得性,ユー ザの立場で シーズとニーズのマッチング促進 20
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