コンピュータを使った 中小企業支援と親孝行 諏訪東京理科大学 経営情報学部 教授 大成幹彦 2005.11.16 公開フォーラム2005 1 コンピュータ利用 = システム開発 の歩み 1950年代 自動化 1960年代 工業化 計算機制御(電力・鉄鋼・ 大気汚染防止) 1970年代 社会基盤の整備(鉄道・上下水 道),半導体歩留まり向上,車の制御 1980年代 企業の情報化,マルチメディア 1990年代 インターネット,家庭での情報化 大きな流れ: システムの大規模化・情報システムの普及 2 教育への取り組み 大学とは,自ら問題を見つけ,それを解決 する営みである。 失敗を体験できる場。 卒研では,対象・課題を見つけ,解決策を 提案し,評価する。 →システムズアプローチ →SE教育 3 役立つ情報システムの構築 私は,企業でも大学でも社会に役立つ情報シ ステムの構築を研究。 卒業研究生にも身の回りの課題を分析して,コ ンピュータを活用して解決できないかを問いか けてきた。 学生は次のようなテーマに選んだ。 ・スポーツや趣味の分野を独習するための パソコンによる教育システム, ・アルバイト先の経営問題, ・親の仕事の支援,など 4 情報システムの特徴 対象システム: 多くの要素が複雑に絡ん でいる 意思決定: 意思伝達,取りまとめ ↓ システムズアプローチ 問題の整理,解決策の策定,評価 表現: 論理的,visual パソコン利用 5 システムズアプローチ 課 題 項目の抽出,構造化: KJ法,ISM,・・ 解決代替案 課 題 目的樹木法, ・・ 方策1 方策2 具体案1 具体案2 具体案3 具体案4 具体案5 評価(選択,意思決定) Relevance Matrix, AHP, ・・ (入学試験で利用) 6 3年ゼミと卒業研究のテーマ 3年ゼミ 身近な問題に対するシステムズアプローチ 問題の整理,解決策の策定,評価の学習 http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/ohnari/se/se.htm 卒業研究のテーマの分類 モデリング 時系列分析 システム開発 教育システム開発 情報システム開発 7 卒業研究のテーマ:モデリング 上水道の需要予測, 大気汚染の発生予測, 潮流予測, アルバイト先の需要予測(ピザハウス, 居酒屋,コンビニ), TVモニタの需要予測(現卒研生) 8 卒業研究のテーマ:システム開発(1) 教育(情報)システム開発 サークル: 野球,スキー,ゴルフ,フットサル, ヨット,ボート,スキューバダイビング, エレクトーン 親の仕事や趣味: 土地借用契約促進, 着付け,茶道,トールペインティング 選択支援システム開発 スノーボード,化粧品, 楽器(ベースギター),録音音楽(現卒研生) 9 卒業研究のテーマ:システム開発(2) 経営支援システム開発 --- 親孝行 衣料品販売 顧客管理・経営管理, 青果小売業 受発注システム, 海外ホテル経営 効率的な意思疎通, AV機器設置 習熟レベルに応じる社員間 の作業配分, 中小製造業の電子商取引 イントラネットの試作, 下請工場の情報化 電子情報での受注支援 診療所 インフォームドコンセント 10 中小企業の社長を親に持つ学生 中小企業の社長を親に持つ学生は,子供の頃 から見慣れている親の仕事の課題抽出や要求 分析は協力が得やすい。 学生に方法論を与え,動機付けをすると,親と 真剣に話し合い,希望に沿った情報システムを 構築して親孝行を果たす。 卒研の過程で,親だけでなく,親の取引先とも コミュニケーションを図り,学生はSEとしての自 信を体験を通して深めていく。 11 中小企業の課題 情報武装の必要性はわかる。 何をどのようにすればよいのかが不明。 情報化の投資効果がわからない。 旋盤なら,費用も効果もわかる。 経営分析,情報化投資分析をする人材がいない。 卒研生(子息)がどれだけやれるか。 12 システム開発の手順 目的・課題 製作 要求分析 Requirement Engineering Verification prototyping ヒューマンイン タフェース, 使い勝手 Validation 要求仕様 Requirement Specification 仕様書どおりに 作られているか 利用者の真の 要求を満たして いるか 13 システムズエンジニアリング 要求分析 USER 写像 Mapping 逆写像 MAKER 技術 14 システム開発の方法論の体験は 有意義だった 小高 徳彦(1998年3月卒業) 私はシステム開発の仕事に従事。経営工学科で学んだシス テム開発の方法論は非常に有意義だった。 システム開発は「分析・設計・実装・テスト」のステップを踏む。 「分析」ではユーザが必要としている機能を抽出・整理し, 「設計」でその機能をどのようなIT技術で実現させるか検討。 「実装」で設計結果をプログラムにしコンピュータ上で実現。 「テスト」ではユーザが求める機能が実現しているかを評価。 仕事を進める上で,SEにはユーザとのコミュニケーション技 術と,自分の意図を相手に理解させるプレゼンテーション技 術を身につけることが必要です。 私はこれら一連の方法論や技術を,卒業研究を通じて体験 し,習得しました。IT技術が進歩しようとも,SEとしてベース となる技術を学ぶことができたと思います。 http://www.rs.kagu.tus.ac.jp/ohnari/se/leaflet.htm 15 SE vs. 親孝行 要求分析:論理展開→親子の対等の対話。 親の仕事の理解,子供の成長の喜び。 仕様記述→親の業務での記述。 SEとして の記述。親子の対話と相互理解。 情報システム開発,プログラム作成。 作成システムの検査→verificationと validationの理解。親子の対話の見直し。 成果: 親子の信頼感の醸成。親孝行。 16 人間形成の要素 組織のニーズ 意欲 成功の喜び 遊び, サークル, ゼミ 他人と 人間形成 人間性 協働 組織化,役割分担,マナー , 発表,討論,EQ 勉学 自信 個人で 知識・経験 学習,実習,失敗,IQ 17 まとめ 自らが興味のあるテーマを選び,苦戦し, 発表できたときの達成感,喜びは,一入 である。 一人・1年で,どれだけのことができるか を体験できたことは,将来の自信につな がる。 しかも,その過程で,親を巻き込み,ヒア リングをし,完成(?)システムを見せるこ とができることは,最高の親孝行である。 18
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