第2章 学校教育と生徒指導 (3)教科外活動のカリキュラム化 ①教科中心の学校(学校の成立過程) 人類が蓄積してきた知識や技術を体系的、意図的に後世 の世代に引き継ぐことが社会の重要な課題となり、その 役割を担う機関として、「学校」が成立 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 1 第2章 学校教育と生徒指導 ②日本における教科外活動のカリキュラム化 教科課程=「どの学年でどういう教科を課するかを決め、 またその課する教科と教科内容との学年的な配当を系統 づけたもの」(昭和22年版学習指導要領一般編(試案) ) 教育課程=「児童や生徒がどの学年でどのような教科の 学習や教科以外の活動に従事するのが適当であるかを 定め、その教科や教科以外の活動の内容や種類を学年 別に配当づけたものを教育課程という」(昭和26年版学習 指導要領(試案)) この段階では、「生徒指導」という概念は登場せず、「教科以外の活 動」「特別教育活動」 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 2 第2章 学校教育と生徒指導 – 今日では • 小学校:各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び 特別活動 • 中学校:各教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動 • 高等学校:各教科に属する科目、総合的な学習の時間及び特別 活動 – カリキュラム化されていない教科外活動 • 休み時間や放課後に行われる個別的な指導や、学業の不振な 児童生徒のための指導、随時の教育相談など教育課程外の教 育活動等 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 3 第2章 学校教育と生徒指導 – ③カリキュラム(教育課程)内外における諸活動と生徒指 導の関係 1.カリキュラム化された諸活動:多数の児童生徒全体 (集団)を対象とした活動(教育内容の共通性) 2.課外活動:個別指導中心 3.狭義には、個別指導を中心とする活動(個別指導、 個別相談等)を「生徒指導」として、全体(集団)を対象 とした活動と区別する理解の仕方がある(ex.特別活 動と生徒指導を区別する) 4.しかし、教育機能としての生徒指導は、教育課程の 内外の全領域において行われている。(ex.生徒指導 は特別活動と教育相談いずれも含む概念) 5.むしろ、全体を対象とする全教育活動において、個 性を持った一人一人の児童生徒の人格の形成を目 指す「生徒指導」の観点を持っている必要がある 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 4 第2章 学校教育と生徒指導 • (4)諸教育活動と生徒指導 • ①教科指導の生徒指導的側面 • 1.学習活動が成立するために、一人一人の児童生徒が落 ち着いた雰囲気の下で学習に取り組めるよう、基本的な学 習態度の在り方等についての指導を行う(学習活動への適 応) • 2.一人一人の児童生徒が、そのねらいの達成に向けて意 欲的に学習に取り組めるよう、学習意欲や習慣を身につけ させる(自己指導力の育成) • 3.一人一人の個性を生かした学習活動を工夫する(個性 の伸長、学校生活の充実) • 4.学習不適応への個別指導(学校生活の充実) 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 5 第2章 学校教育と生徒指導 学習上の不適応を示す児童生徒に対する対応 – ・「わかる授業」の推進や児童生徒の関心意欲を引き出し主体的に 学べるよう指導上の工夫をするなど教育課程実施上の改善措置を 図ることが不可欠 – ・児童生徒一人一人の持つ様々な学習上の悩みや問題の相談に温 かく応じ、その能力や適性、さらには家庭の状況などについての理 解に努めるとともに、現在の学習上の不適応原因をつぶさに分析し 、一人一人の事情に即した指導方針を打ち出して、適切な指導を行 う 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 6 第2章 学校教育と生徒指導 ・特定の教科についての遅進を補うための本来の意味 の補習やその指導について配慮する ・児童生徒同士で学習を助け合うグループ活動を援助 する ・当該児童生徒にとって比較的得意とする方面を伸ば すような方法を講ずる ・児童生徒の置かれた生活上の問題状況を改善するた めに、保護者と相談・協力するとともに、必要に応じて 相談機関や青少年保護育成関係の諸機関と連携し 協力を得る ・不適応の原因が病気その他心身の問題による場合は 、関係方面の専門機関と連携し、治療及び相談が行 えるようにすること 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 7 第2章 学校教育と生徒指導 • ②道徳教育と生徒指導 – 道徳教育:児童生徒の道徳的心情、判断力、実践的意欲や態度な どの道徳性の育成を直接的なねらいとしている – 生徒指導:道徳教育で培われた道徳性や道徳的実践力を、生きる 力として日常の生活場面に具現できるように援助すること • ③総合的な学習の時間と生徒指導 – 総合的な学習の時間:「横断的・総合的な学習や探究的な学習を通 して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より よく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やもの の考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、 協同的に取り組む態度を育て、自己の生き方(高等学校は、在り方 生き方)を考えることができるようにする。」 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 8 第2章 学校教育と生徒指導 • ④特別活動と生徒指導 – 特別活動:学級活動・ホームルーム活動、児童会・生徒会活動、学 校行事、クラブ活動等の集団的活動を通して、「心身の調和のとれ た発達と個性の伸長を図り、集団(や社会)の一員としてよりよい生 活や人間関係を築こうとする自主的、実践的な態度を育てるとともに 、自己の(人間としての)生き方(在り方)についての考え(自覚)を深 め、自己を生かす能力を養う – 自己指導能力や自己実現のための態度や能力の育成と直接にか かわっている – 生徒指導的側面:自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問 題を解決する資質や能力、共同して物事に取り組む態度、自らの生 き方を考える力の育成 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 9 第3章 学習指導要領と生徒指導 • (1)教育基本法における学校教育の課題 • 教育基本法 – (学校教育) 第6条 法律に定める学校は、公の性質を有するもので あって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみ が、これを設置することができる。 – 2 前項の学校においては、教育の目標が達成されるよ う、教育を受ける者の心身の発達に応じて、体系的な教 育が組織的に行われなければならない。この場合におい て、教育を受ける者が、学校生活を営む上で必要な規律 を重んずるとともに、自ら進んで学習に取り組む意欲を 高めることを重視して行われなければならない。 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 10 第3章 学習指導要領と生徒指導 • (2)新学習指導要領総則における教育課題 • 第1章 総則 • 第1.教育課程編成の一般方針 (略) – 学校の教育活動を進めるに当たっては,各学校において,生徒に 生きる力をはぐくむことを目指し,創意工夫を生かした特色ある教育 活動を展開する中で,基礎的・基本的な知識及び技能を確実に習得 させ,これらを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断 力,表現力その他の能力をはぐくむとともに,主体的に学習に取り組 む態度を養い,個性を生かす教育の充実に努めなければならない。 その際,生徒の発達の段階を考慮して,生徒の言語活動を充実す るとともに,家庭との連携を図りながら,生徒の学習習慣が確立する よう配慮しなければならない。(中学校学習指導要領) 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 11 第3章 学習指導要領と生徒指導 • (3)新学習指導要領と生徒指導 • 中学校学習指導要領 第1章 総則 • 第4.指導計画の作成等に当たって配慮すべき事項 • 高等学校学習指導要領 第1章総則 • 第5款教育課程の編成・実施に当たって配慮すべき事項 • (資料参照) • 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 12 第3章 学習指導要領と生徒指導 • ①中学校 • 1.生徒指導の充実 – ・教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間 関係を育てる – ・生徒理解を深める – ・生徒が自主的に判断,行動し積極的に自己を生かして いくことができる • 2.計画的組織的進路指導 – ・生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択するこ とができる • 3.ガイダンス機能の充実 – ・生徒が学校や学級での生活によりよく適応する – ・現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を 育成する 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 13 第2章 学校教育と生徒指導(2) • ②高校 • 1.個々の生徒の特性等の的確な把握に努め,その伸長を図る • 2.ガイダンスの機能の充実 – ・生徒が適切な各教科・科目や類型を選択 – ・学校やホームルームでの生活によりよく適応する – ・現在及び将来の生き方を考え行動する態度や能力を育成する • 3.生徒指導の充実 – ・教師と生徒の信頼関係及び生徒相互の好ましい人間関係を育て る – ・生徒理解を深める – ・生徒が主体的に判断,行動し積極的に自己を生かしていくことがで きる • 4.計画的,組織的な進路指導を行いキャリア教育を推進する – ・生徒が自己の在り方生き方を考え,主体的に進路を選択すること 2015/9/30 ができるように 14 2章、3章学習指導要領と生徒指導 第2章 学校教育と生徒指導(2) • (2)生徒指導の充実とは • ①基本的観点 • 生徒指導は、単なる問題行動への対応と いう消極的な面だけにとどめるのではなく、 「すべての生徒のそれぞれの人格のよりよき 発達を目指すとともに、学校生活がすべての 生徒にとって有意義で興味深く、充実したも のにする」ために行われる。 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 15 第2章 学校教育と生徒指導(2) • ②三つの観点 • 1.生徒理解 – ・多面的、総合的に理解する – ・日ごろの人間的ふれあいだけでなく、学年、教科、部活等広い 視野からの理解を深める • 2.信頼関係の構築 – – – – – 2015/9/30 ・人間的なふれあい ・生徒とともに歩む姿勢 ・授業等における生徒の充実感、成就感を生み出す指導 ・生徒の特性や状況に応じた的確な指導 ・不正や反社会的な行動に対する毅然とした態度 2章、3章学習指導要領と生徒指導 16 第2章 学校教育と生徒指導(2) • 3.望ましい人間関係の構築 – ・自他の個性の尊重 – ・互いの身になって考え、相手の良さを見つけよ うと努める集団 – ・互いに協力しあい、主体的によりよい人間関係 を形成していこうとする集団 – ・生徒一人一人が存在感を持ち、共感的な人間 関係を育み、自己決定の場を豊かに持ち、自己 実現を図っていく人間関係 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 17 第2章 学校教育と生徒指導(2) (3)進路指導の充実とは ・生徒が自らの生き方を考え、将来に対する目的 意識を持って、主体的に自己の進路を選択決定 ・生涯にわたって自己実現を図っていくことができ る能力や態度の育成 ・特別活動の学級活動を中核としつつ、学校行事 の勤労生産・奉仕的行事における進路にかかわ る啓発的な体験活動および個別指導としての進 路相談 ・系統的、発展的に 取り組む 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 18 第2章 学校教育と生徒指導(2) • <参考> 進路指導の指針(平成5年文部事務次官通知) – a.学校選択の指導から、生き方の指導への転換 – b.進学可能な学校の選択から、進学したい学校の選択への指 導の転換 – c.100%の合格可能性に基づく指導から、生徒の意欲や努力を 重視する指導への転換 – 2015/9/30 d.教師の選択決定から生徒の選択決定への指導の転換 2章、3章学習指導要領と生徒指導 19 第2章 学校教育と生徒指導(2) • ※キャリア教育の推進 – ・「キャリア教育」という用語は高等学校学習指導要領において示さ れている – ・しかしながら、今回の改訂学習指導要領においては、小、中、高す べての段階において、「キャリア教育の推進」という観点から、様々 な取り組みが求められている – ・中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学 校の学習指導要領の改善について」(2008.1.17)の指摘 – ① 「生きる力の形成」・確かな学力─基礎的・基本的な知識・技能の 習得、思考力・判断力・表現力(活用力)の形成、学習意欲の向上や 学習習慣の定着─形成上のキャリア教育への期待 • 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 20 第2章 学校教育と生徒指導(2) – 「観察・実験やレポートの作成,論述など体験的な学習,知識・技能 を活用する学習や勤労観・職業観を育てるためのキャリア教育など を通じ,子どもたちが自らの将来について夢やあこがれをもったり, 学ぶ意義を認識したりすることが必要である。」 – ②キャリア教育それ自体の意義 – 「社会の変化への対応の観点から教科等を横断して改善すべき事 項」の一つとしての「キャリア教育」 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 21 第2章 学校教育と生徒指導(2) – 生活や社会,職業や仕事との関連を重視して,特別活動や総合的 な学習の時間をはじめとした各教科等の特質に応じた学習が行わ れる必要がある。特に,学ぶことや働くこと,生きることを実感させ将 来について考えさせる体験活動は重要であり,それが子どもたちが 自らの将来について夢やあこがれをもつことにつながる。具体的に は,例えば, – ・ 特別活動における望ましい勤労観・職業観の育成の重視, – ・ 総合的な学習の時間,社会科,特別活動における,小学校での職 場見学,中学校での職場体験活動,高等学校での就業体験活動等 を通じた体系的な指導の推進, – などを図る必要がある。 – ・進路指導・職業指導を「キャリア教育」という視点から再編(後述) 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 22 第2章 学校教育と生徒指導(2) • (4)ガイダンス機能の充実 • 適切な情報提供、案内・説明、活動体験、各種の援助、 相談活動 – 具体的事例 – a.入学時、新学期時に、生徒自身が学校や学級における諸活動 や集団の意義、内容への理解 – b.新たな学習や学習活動の開始時→これから始まる学習活動へ の興味、関心 – c.選択教科、学習活動のねらいや方法、 – d.進路選択時 2015/9/30 2章、3章学習指導要領と生徒指導 23
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