前回復習と補足

第1章 生徒指導とは何か(前回補足)
• (1)文科省の見解─「生徒指導提要」(2010.3)にみる「生徒
指導」観
• ①学習指導と並んで学校教育の主要機能の一つ
– ・教科外活動(指導)、生活指導とも呼ばれる
– ・「訓育(態度や行動などの指導)と陶冶(教授、学習指
導)」という概念に対応
– ・ヘルバルト:訓育と管理を統合して Führung(指導)
→guidance
– ・ 生活指導:1920年代の民間教育運動(生活綴方運動
や大正自由主義教育)のなかで生み出されて発展してき
た概念。学習者自身が学習の中で生活を対象化し、自ら
のよりよい生活の構築に向けて学習を進めていくという理
念。戦後、「ガイダンス」の訳語としても用いられた。
– しかし、文部省は、生活指導という概念は広すぎるとして、
1958年学習指導要領改訂以降「生徒指導」という言葉
を用いている。
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生徒指導論
第1章 生徒指導とは何か(前回補足)
• ②一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図り
ながら、社会的資質や行動力を高めることを目指して行われ
る教育活動
– 知的・認識的側面の指導(教科指導)にたいして、人格
的・情動的側面の指導、児童・生徒の内面、価値観、生き
方に関わる分野に関与する
• ③学校生活がすべての児童生徒にとって有意義で興味深く、
充実したものになることを目指す
• ④児童生徒自らが、現在及び将来における自己実現を図っ
ていくための自己指導能力の育成を目指す
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生徒指導論
第1章 生徒指導とは何か(前回補足)
– 自己指導力とは、様々な課題(価値)の達成、実現に向
かって自分から進んで意欲的に課題に取り組むとともに、
自己の直面する諸問題を自力で解決することのできる能
力
– 生徒が、人間としての行動の仕方や生き方、あるいは、
学校生活への適応あるいは進路の選択等において直面
するさまざまな問題(困難や悩み)を取り上げ、それらの
解決を援助することを通して、人格の形成と社会的に自
立していくための資質、人間関係調整能力などを育てる
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生徒指導論
第1章 生徒指導とは何か(前回補足)
• (2)生徒指導にかかわる留意事項
• ①基本は、将来自立しうる主体的力の育成(自立した個人の育成、自己
指導力の育成)
– 「言われないとできない」だから「強制的に守らせる」ではなく、「やら
なければいけないこと、やってはいけないことの違いを自分でわかる、
自分で自分の行動を律することができる」力を育てる
– そのために自分で判断する機会を保障すること
• ②現実に目の前にいる生徒が、あれができない、これもできない、といっ
た問題状況を示す中で、ともすれば、生徒を縛り、形式的、表面的な、従
順な態度を求める指導に陥りがち。つまり「消極的生徒指導」にとどまり
がちである。それを自己目的にしてはいけない。
• ③「生徒指導=生徒の学校における生活態度を正すこと」 という固定観
念の克服
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生徒指導論
第1章 生徒指導とは何か(前回補足)
• ④学校生活の充実という観点からすると、個と集団の緊張
関係、矛盾への配慮が特に必要
– 結論を押し付けない、自分で考えることができるように
– 「校則遵守」の態度の形成と、校則の意味を考え、自分たちに必要
なきまりを自分たちで作りあげていくことのできる力の形成との関係
– 「管理」か「自立」か
– 生徒一人ひとりの可能性や個性を伸ばすのが基本であることを考え
れば、課題を明確にしながら、それを克服していく道筋を生徒と共に
歩んでいく(支え、励まし、共に悩み、希望を捨てず)という姿勢が求
められる
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生徒指導論
第2章 学校教育と生徒指導
• (1)学校教育において、「生徒指導」は、必ず
しも自明ではない
• (2)学校教育における教科外活動の位置づ
け─四つの型
– ①学校の役割としてではなく、学校外における社
会教育、あるいは家庭教育が担うべきものとして、
学校教育とは相対的に区別されるものとして位
置づけられる
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2章学校教育と生徒指導
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第2章 学校教育と生徒指導
– ②課外活動としての位置づけ
– ③教科と教科外活動を学校教育の二領域として
位置づける
– ④学校教育を国民統合の手段として位置づけ、
その役割を担うものとして教科外活動を学校教
育に優先的に位置づけようとするもの(国家に対
する忠誠心を養う)
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第2章 学校教育と生徒指導
 (3)教科外活動のカリキュラム化
 ①教科中心の学校(学校の成立過程)
人類が蓄積してきた知識や技術を体系的、意図的に後世
の世代に引き継ぐことが社会の重要な課題となり、その
役割を担う機関として、「学校」が成立
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第2章 学校教育と生徒指導
 ②日本における教科外活動のカリキュラム化
教科課程=「どの学年でどういう教科を課するかを決め、
またその課する教科と教科内容との学年的な配当を系統
づけたもの」(昭和22年版学習指導要領一般編(試案) )
教育課程=「児童や生徒がどの学年でどのような教科の
学習や教科以外の活動に従事するのが適当であるかを
定め、その教科や教科以外の活動の内容や種類を学年
別に配当づけたものを教育課程という」(昭和26年版学習
指導要領(試案))
 この段階では、「生徒指導」という概念は登場せず、「教科以外の活
動」「特別教育活動」
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第2章 学校教育と生徒指導
– 今日では
• 小学校:各教科、道徳、外国語活動、総合的な学習の時間及び
特別活動
• 中学校:各教科、道徳、総合的な学習の時間及び特別活動
• 高等学校:各教科に属する科目、総合的な学習の時間及び特別
活動
– カリキュラム化されていない教科外活動
• 休み時間や放課後に行われる個別的な指導や、学業の不振な
児童生徒のための指導、随時の教育相談など教育課程外の教
育活動等
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第2章 学校教育と生徒指導
– ③カリキュラム(教育課程)内外における諸活動と生徒指
導の関係
1.カリキュラム化された諸活動:多数の児童生徒全体
(集団)を対象とした活動(教育内容の共通性)
2.課外活動:個別指導中心
3.狭義には、個別指導を中心とする活動(個別指導、
個別相談等)を「生徒指導」として、全体(集団)を対象
とした活動と区別する理解の仕方がある
4.教育機能としての生徒指導は、教育課程の内外の
全領域において行われている
5.むしろ、全体を対象とする活動においてこそ個性を
持った一人一人の児童生徒の人格の形成を目指す
「生徒指導」の観点を持っている必要がある
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第2章 学校教育と生徒指導
• (4)諸教育活動と生徒指導
• ①教科指導の生徒指導的側面
• 1.学習活動が成立するために、一人一人の児童生徒が落
ち着いた雰囲気の下で学習に取り組めるよう、基本的な学
習態度の在り方等についての指導を行う(学習活動への適
応)
• 2.一人一人の児童生徒が、そのねらいの達成に向けて意
欲的に学習に取り組めるよう、学習意欲や習慣を身につけ
させる(自己指導力の育成)
• 3.一人一人の個性を生かした学習活動を工夫する(個性
の伸長、自己指導力の育成)
• 4.学習不適応への個別指導
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第2章 学校教育と生徒指導
• ②道徳教育と生徒指導
– 道徳教育:児童生徒の道徳的心情、判断力、実践意欲や態度など
の道徳性の育成を直接的なねらいとしている
– 生徒指導:道徳教育で培われた道徳性や道徳的実践力を、生きる
力として日常の生活場面に具現できるように援助すること
• ③総合的な学習の時間と生徒指導
– 総合的な学習の時間:「横断的・総合的な学習や探究的な学習を通
して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、より
よく問題を解決する資質や能力を育成するとともに、学び方やもの
の考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的、
協同的に取り組む態度を育て、自己の生き方(高等学校は、在り方
生き方)を考えることができるようにする。」
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第2章 学校教育と生徒指導
– 生徒指導的側面:自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、
よりよく問題を解決する資質や能力、共同して物事に取
り組む態度、自らの生き方を考える
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第2章 学校教育と生徒指導
• ④特別活動と生徒指導
– 特別活動:学級活動・ホームルーム活動、児童会・生徒
会活動、学校行事、クラブ活動等の集団的活動を通して
、「心身の調和のとれた発達と個性の伸長を図り、集団(
や社会)の一員としてよりよい生活や人間関係を築こうと
する自主的、実践的な態度を育てるとともに、自己の(人
間としての)生き方(在り方)についての考え(自覚)を深
め、自己を生かす能力を養う
– 自己指導能力や自己実現のための態度や能力の育成と
直接にかかわっている
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