第2章 伝送とプロトコル

第3章 交換とルーチング
3.1
3.2
3.3
3.4
3.5
3.6
交換方式
専用線と交換網
信号方式
IPネットワーク交換技術
高速スイッチング
トラヒック
3.1 交換方式(switching system)
3.1.1 交換機の機能
(1)基本機能
[基本機能]発呼者の要求に従って,伝送路のつなぎ替えを行う。
[付加機能]ネットワーク制御,課金機能,各種サービス機能
通話要求検出
発
呼
検
出
要求内容分析
選
択
信
号
受
信
翻
出
線
選
訳
択
伝送路のつなぎ替え
呼
出
信
号
検
出
応
答
検
出
通
話
路
形
成
伝送路の開放
終
話
検
出
通
話
路
切
断
(2)基本機能と交換動作
交換動作では,本質的に同じ機能であったり,
密接な関係の機能が繰り返されている。
信号の送受信
・発呼検出
・発信音検出
・選択信号受信
・呼出信号送出
・話中音送出
・応答検出
・終話検出
通話路形成・切断
・通話路形成
・通話路切断・復旧
情報識別と動作指示
・発呼者識別
・被呼者識別
・翻訳
・話中判定
・出線選択
( 3 ) 交換機の基本構成
全体的な構成
・発呼検出機能
・終話検出機能
・応答検出機能
・終話検出機能
加入者回路
通話路
スイッチ網
(注)
トランク回路
トランク回路
トランク回路
加入者回路
回
線
他
交
換
機
へ
(
加入者線
・通話路形成機能
・通話路切断・復旧機能
)
信号装置
・発信音送出機能
・選択信号受信機能
・呼出信号送出機能
・呼出音送出機能
・話中音送出機能
制御装置
交換用
ソフトウェア
・発呼者の識別機能
・被呼者の識別機能
・番号翻訳機能
・話中判定機能
・出線選択機能
信号装置
・選択信号受信機能
・選択信号送信機能
・話中音送出機能
(注)ダイヤルパルスのアナログ回線
のみトランク回路がある。
(4)ディジタル交換機の構成
(a)ディジタル交換機とは
完全コンピュータ制御方式の電話交換機である。
日本で1990年代半ばからすべてこの形式の交換機に移行している。
① ディジタル交換機では,音声信号はディジタル変換され,
スイッチ動作はソフトウェア的に行われる。
② ディジタル交換機では,アナログ用の交換機と異なり,
回線ごとの応答や終話信号等を検出するトランク回路はなく,
回線の監視は信号装置で行われる。
(b)ディジタル交換機の構成
ディジタル交換機は,次のような装置から構成される。
① 通話路スイッチ網
② 制御装置
③ 加入者回路
④ 信号装置
加入者回路
加入者回路
)
交換機
(
通話路
スイッチ網
回
線
他
交
換
機
へ
信号装置
制御装置
交換用ソフトウェア
制御装置
監視信号や選択信号を分析し,被呼者の識別,出線選択,
必要な選択信号等の送出,通話路形成の動作指示等を行う。
加入者回路
加入者回路
)
交換機
(
通話路
スイッチ網
回
線
他
交
換
機
へ
信号装置
制御装置
交換用ソフトウェア
加入者回路
発呼信号や終話信号による加入者線の状態を監視する。
加入者回路
加入者回路
)
交換機
(
通話路
スイッチ網
回
線
他
交
換
機
へ
信号装置
制御装置
交換用ソフトウェア
信号装置
端末機器や多交換機との発信音,選択信号等の送受信を行う。
加入者回路
加入者回路
)
交換機
(
通話路
スイッチ網
回
線
他
交
換
機
へ
信号装置
制御装置
交換用ソフトウェア
BORSCT(ボルシュト)
ディジタル交換機では,スイッチが電子部品で構成されているので,
通話路スイッチ網内に呼出し信号のような大電力信号を
流すことができない。
そこで,次のような7機能を持たせている。
B:
O:
R:
S:
C:
H:
T:
Battery feed(通話電流供給機能) -48V
Over-voltage protection(過電圧保護機能)
Ringing(呼出し信号送出機能)
Supervision(On/Offの監視機能)
Codec/Decodec(アナログ/ディジタル信号変換機能)
Hybrid(2線4線変換機能)
Test(試験引込み機能)
これらの機能は略してBORSCHT(ボルシュト)と呼ばれる。
(5)ディジタル交換機の機能と動作
(a)基本機能
① 通話要求検出
利用者の加入者線を常時監視しており,発呼者が端末機の受話器を上げると
加入者線に電流が流れるので,この電流を検出して(発呼検出),
通話要求発呼者を識別する(発呼者識別)。
② 要求内容分析
発呼者がダイヤルした相手先番号(選択信号)を受信して,
通話を希望する相手を識別して被呼者の回線を選択する。
③ 伝送路つなぎ替え
通話路形成の準備を行い,伝送路をつなぎ替える。
④ 伝送路開放
伝送路を切断し復旧する。
要求内容分析
要求内容分析機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。
① 選択信号受信機能
被呼者の電話を促すための発信音(ダイヤルトーン)を送出し,
発呼者から送られてきた選択信号を受信して記憶する。
② 翻訳機能
選択信号を接続に適した情報に変換し,被呼者が接続されている
加入者線の収容位置を識別する。
他交換機に接続されている場合,その交換機への回線を選択して,
被呼者の電話番号を相手の交換機に送出する。
③ 出線選択機能
選択信号により,他交換機に接続された回線のルートを識別(ルート識別)し,
そのルートにつながる回線群から空いている1回線を選択する(出線選択)。
伝送路つなぎ替え
伝送路つなぎ替え機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。
① 呼出信号送出機能
被呼者に呼出し信号(リンギングと呼ぶ)を送出して着信を通知し,
発呼者には,呼び出し中であることを示す呼出し音(リングバックトーン)を
送出し,話中の場合は話中音(ビジートーンと呼ぶ)を送出する。
② 応答検出機能
被呼者に呼出し信号を出している間,被呼者の加入者線状態を監視し,
被呼者が受話器を上げると,これを応答信号として検出する。
③ 通話路形成機能
応答検出により交換機の通話路を形成して通話を可能にする。
伝送路開放
伝送路開放機能は,以下のようなサブ機能に分かれる。
① 終話検出機能
加入者線に電流が流れなくなることで通話の終了を検出する。
② 通話路切断機能
通話路を切断して復旧する。
基本機能と交換動作の関係
発呼側
交換機の機能
[発呼信号]→
発信音
←[発信音]
[選択信号
(相手先番号)]→
被呼側
(b)基本機能と動作
[発呼監視]
発呼検出
(発呼者の識別)
発信音送出
選択信号受信
翻訳
(被呼者の識別)
呼出し音
←[呼出し音]
呼出し信号
出線選択
呼出し信号送出
(呼出し音送出)
[応答監視]
応答検出
[呼出し信号]→
←[応答信号]
通話路形成
[終話信号]→
[終路監視]
通話路形成
通話路切断
(復旧)
←[終話信号]
基本機能と交換動作の関係
発呼側
交換機の機能
[発呼信号]→
発信音
←[発信音]
[選択信号
(相手先番号)]→
[発呼監視]
発呼検出
(発呼者の識別)
発信音送出
被呼側
発呼者が端末機の受話器を上げると
加入者線に電流が流れる。
この電流を検出して(発呼検出),
通話要求発呼者を識別する(発呼者識別)
選択信号受信
翻訳
(被呼者の識別)
呼出し音
←[呼出し音]
呼出し信号
出線選択
呼出し信号送出
(呼出し音送出)
[応答監視]
応答検出
[呼出し信号]→
←[応答信号]
通話路形成
[終話信号]→
① 通話要求検出
[終路監視]
通話路形成
通話路切断
(復旧)
←[終話信号]
基本機能と交換動作の関係
発呼側
交換機の機能
[発呼信号]→
発信音
←[発信音]
[選択信号
(相手先番号)]→
[発呼監視]
発呼検出
(発呼者の識別)
被呼側
発呼者がダイヤルした
相手先番号を受信し,
通話を希望する相手を識別して
被呼者の回線を選択する。
発信音送出
呼出音,呼出信号を両者に送出する。
選択信号受信
翻訳
(被呼者の識別)
呼出し音
←[呼出し音]
呼出し信号
出線選択
呼出し信号送出
(呼出し音送出)
[応答監視]
応答検出
[呼出し信号]→
←[応答信号]
通話路形成
[終話信号]→
② 要求内容分析
[終路監視]
通話路形成
通話路切断
(復旧)
←[終話信号]
基本機能と交換動作の関係
発呼側
交換機の機能
[発呼信号]→
発信音
←[発信音]
[選択信号
(相手先番号)]→
[発呼監視]
発呼検出
(発呼者の識別)
被呼側
被呼者が受話器を取ったら,
通話路を形成して通話を可能にする。
発信音送出
選択信号受信
翻訳
(被呼者の識別)
呼出し音
←[呼出し音]
呼出し信号
出線選択
呼出し信号送出
(呼出し音送出)
[応答監視]
応答検出
[呼出し信号]→
←[応答信号]
通話路形成
[終話信号]→
③ 伝送路つなぎ替え
[終路監視]
通話路中
通話路切断
(復旧)
←[終話信号]
基本機能と交換動作の関係
発呼側
交換機の機能
[発呼信号]→
発信音
←[発信音]
[選択信号
(相手先番号)]→
[発呼監視]
発呼検出
(発呼者の識別)
被呼側
いずれかが受話器を置いたら,
通話路切断・復旧を行う。
発信音送出
選択信号受信
翻訳
(被呼者の識別)
呼出し音
←[呼出し音]
呼出し信号
出線選択
呼出し信号送出
(呼出し音送出)
[応答監視]
応答検出
[呼出し信号]→
←[応答信号]
通話路形成
[終話信号]→
④ 終話の検出と切断
[終路監視]
通話路中
通話路切断
(復旧)
←[終話信号]
(c) 付加機能
①迂回制御機能
発信交換機と着信交換機の間に複数のルートを設定することで,
伝送路が切断されても通信可能になるようにしている。
したがって,複数のルートから1つのルートを選定する機能が必要となる。
たとえば,ルートAのトラヒックが多い場合,ルートBを選択する等の
迂回制御機能が必要である。
発呼者
中継交換機
発信交換機
ルートA
中継交換機
ルートB
被呼者
着信交換機
②ふくそう制御機能
災害やイベントの電話リクエストなどで大量の呼が集中的に発生したり,
中継用伝送路の切断等により,特定の交換機にとって処理能力を超える
トラヒックが発生することがある。これをふくそう状態と呼ぶ。
ひとつの交換機がふくそう状態になると,
迂回制御機能により,周辺の交換機にも影響を及ぼし,
ネットワーク自体がまひ状態になってしまう危険性がある。
予想以上のトラヒックが発生したら,
ネットワーク全体への影響をおさえるための処置を行う。
これをふくそう制御と呼ぶ。
ふくそう制御の種類
① 発信規制
交換機の処理能力を超えるような膨大な呼の発生を防ぐため,
通話確保が必要な緊急回線を除き,
発信呼を受け付けないよう規制する。
② 入呼規制
入呼の待合せの増加を防ぐため,
他交換機からの入呼を受け付けないよう規制する。
③ 出接続規制
特定地域や利用者へのトラフィック集中により,
他の地域や利用者への呼に影響を及ぼさないよう,
特定地域または利用者への呼を規制する。
③課金機能
交換機は,発信されるすべての呼に対して,
発信箇所と着信箇所の特定,またその時間を知ることができるので,
料金データを収集・蓄積する課金機能は交換機の機能となる。
この課金機能によって得られた通話距離・時間に応じた通話度数を元に,
1度数当たりの単位料金を乗じて通話料金を算出する。
④各種サービス機能
交換機のつなぎ替えの処理に,さまざまな機能を追加することで
各種のサービス機能が提供されている。
NTTの交換機におけるサービスには,以下の例がある。
① 発信サービス (可変短縮ダイヤル,国際自即)
② 着信サービス (自動通知案内,でんわばん,自動着信転送)
③ 通話サービス (キャッチホン)
3.1.2 交換方式の種類
制御方式や通話路方式による分類
制御方式
通話路
方式
通話路の制御単位
による分類
制御論理の実現
方法による分類
通話スイッチの表現
方法による分類
交換機の例
個別制御方式
布線論理制御方式
(Wired Logic)
空間分割形通話路方式
(アナログ信号)
ステップバイ
ステップ
交換機
クロスバ
交換機
共通制御方式
蓄積プログラム制御方式
(SPC : Stored Program
Control)
時分割形通話路方式
(ディジタル信号)
電子
交換機
現在,ほとんどがディジタル交換機であり,共通制御方式である。
ディジタル交換機
3.1.3 制御方式
(1)制御方式の種類
① 共通制御方式
通話スイッチ網を構成する複数スイッチに対して共通の制御装置を設ける。
現在では,コンピュータとほぼ同様の蓄積論理回路で制御する
蓄積プログラム制御方式(stored program control)方式による
ディジタル交換機が採用されている。
② 個別制御方式
スイッチごとに制御回路を付ける
(個別制御方式は制御面で融通性がないため,最近はほとんど使用されない)
(2) 制御装置の方式
共通制御方式と個別個別制御方式
端末機器
加入者回路
通話路スイッチ網
スイッチ
スイッチ
スイッチ
信号装置
制
御
装
置
(a)共通制御方式
端末機器
加入者回路
通話路スイッチ網
スイッチ
スイッチ
制御回路
制御回路
(b)個別制御方式
スイッチ
・・・
制御回路
3.1.4 通話路方式
(1)通話路スイッチ
通話路スイッチの基本単位(1本の入選に対する基本スイッチ)
入線1
交差点閉成
A
B
C
E
D
交差点開放
出線
入線が複数の場合,入線に対して,出線を共用させ,マトリックス状に構成する。
任意の入線から任意の出線を選択・接続することができるようにする。
1
各交差点の開閉スイッチは,
・ リレー接点
・ LSIによる電子ゲート
等による。
2
入
線
3
N
1
2
3
出線
N
交差点の使い方によるスイッチ方式
① 空間分割(SD:Space Division)方式
ひとつの交差点を1つの呼で使用する場合,
各交差点を空間的に配置することで呼を識別する。
② 時分割(TD:Time Division)方式
ひとつの交差点を複数の呼で共用する場合,PCM多重伝送により
各交差点を時分割的に多重使用する。
(a) 空間分割形スイッチ
SMMスイッチ
多接点封止形スイッチ(SMM:Sealed Multi-Contact Matrix)
ディジタル交換機の場合,LSI等電子回路によるゲート素子が使われるが,
考え方が単純な多接点封止形スイッチ(SMM)を示す
(b) 接点バネ
(a) 1接点組の構成
#1
#8
X8
X1
X駆動線
A1
B1
Y1
通話線A
通話線B
#1 SMM
Y1
(電磁石)
スイッチ素子
(2×8接点を金属筐体に封
入)
Y駆動線
通
話
線
b
通
話
線
a
X駆動線
A8
B8
Y8
通話線
Y8
X駆動線
b1 a1
X1
b8 a8
X8
#8 SMM
空間分割形スイッチ
[例]空間分割形スイッチ接続例
接続状態
A―E
B-F
C-D
A
B
C
交差点閉成
交差点開放
C
E
A
F
D
B
D
E
F
各入線,出線ごとに
個々の時間位置(タイムスロット)を割り付け,
入線のタイムスロットを出線のタイムスロットに
入れ替えることで交換動作を行う。
符号化
A
多重化
時間順序入替え
C
分離
C 1C0
A 1A0
#2 #1 #0
B
(b) 時分割形スイッチ
B1B0
C 1C0
C
B
#2 #1 #0
A
F
時分割形
スイッチ
接続状態
A―E
B-F
C-D
D
E
D
A1A0
B1B0
E
F
(2)通話路スイッチ網
ひとつの格子スイッチで
大規模通話路スイッチを構成するのは
コスト面や実現性の面で効率的ではない 。
一般に,個々の利用者の
電話の使用頻度が低い。
トラヒックを集めて(集束),群に振り分け(分配),
どの利用者も利用できるように展開する。
スイッチの数を節約することができる。
通話スイッチの収束・分配・展開の階梯
(ハイアラーキ)
収束・分配・展開
呼の方向
群
加入者線
(発信端子)
集束階梯
分配階梯
展開階梯
1
8
2
7
3
6
4
5
5
4
6
3
7
2
8
1
加入者線
(着信端子)
通話スイッチの収束・分配・展開のハイアラーキ
[基本的な構
成]
集束
階梯
他交換機へ
他交換機から
分配
階梯
分配
階梯
展開
階梯
分配階梯の 入線と出線の数はほぼ同じ であり,
集束階梯と展開階梯の 呼の流れは逆であることから,
実際には,集束階梯と展開階梯を以下のように共用する。
実際のスイッチ網の構成
集束・
展開
階梯
他交換機へ
分配
階梯
他交換機から
(a) 空間分割形スイッチ網の構成(その1)
① ひとつの格子スイッチで構成する場合,100×100=10,000個
接点数=10,000個
100
99
98
入線数=100個
98
3
2
1
2
1
3
100
99
出線数=100個
空間分割形スイッチ網の構成(その2)
②多段(3段)接続の場合(接点数=3段×10個×(10×10)=3,000個)
1次スイッチ
100
10
10
10
91
入
線
100
(10個)
10
1
2次スイッチ
10
100
10
10
10
(10個)
91
出
線
100
(10個)
10
10
3次スイッチ
10
10
10
10
1
ハイウェイ(HW:High way)
(b) 時分割形スイッチ網の構成
時分割多重された音声信号の伝送路は,ハイウェイと呼ばれる。
① 時間スイッチだけで大容量通話路スイッチ網を作るのは,コスト的に困難である。
② 空間スイッチだけでは,時分割多重されたタイムスロットの入替えができない。
との理由から,時分割形通話路スイッチ網は,次のスイッチを組み合わせて
構成される。
[時分割型スイッチ網を構成するスイッチ]
① 時間スイッチ(TSW:Time Switch,ハイウェイ上の時間位置を入れ替える)
② 空間スイッチ(SSW:Space Switch,音声信号をハイウェイ間で入れ替える)
ハイウェイ(HW:High way)
A. 時間スイッチ
ハイウェイ上のタイムスロットを入れ替えるスイッチ
① 通話メモリ,書込み制御メモリ,順番読出しカウンタから構成されている。
② 書込み制御メモリを書き換えることで,自由にタイムスロットを変更することが
できる。ディジタル交換機ではこれをソフトウェアで制御している。
書込み制御メモリ(内容は通話メモリの番地)
n
1番地へ
0
1
2番地へ
2
0番地へ
通話メモリ
0番地:C
1番地:A
2番地:B
順番読出し
カウンタ
0番地から
順番に読み込む
番地はタイムスロット
(TS)番号に対応
n
2 1 0 TS
・・・ C B A
入ハイウェイ
n
TS
2 1 0
・・・ C B A
出ハイウェイ
ランダム書込み・シーケンシャル読込み
[用語]
書込み制御メモリで通話メモリに書込み,
順番読み出しカウンタでメモリから読み出しているので,
ランダム書込み・シーケンシャル読出し方式
あるいは ランダムライト・シーケンシャルリード方式
と呼ばれる。
逆に入ハイウェイでは,
シーケンシャルカウンタで通話メモリに書込み,
読出し制御メモリでランダムに出ハイウェイに乗せる方法もあり,これを
シーケンシャルライト・ランダムリード方式
と呼ぶ。
時間スイッチの場合の音声信号多重チャネル数
一般に,n 多重の時間スイッチは,n × n の格子スイッチに相当する。
音声1チャネルが 8 ビットで符号化される場合,
・
・
・
・
音声信号の標本化周期 T,
スイッチアクセス回数 A
同時に時間スイッチに書き込むことができるビット数 P
通話メモリの動作周期 t c
とするとき多重チャネル数は次の式で与えることができる。
TP
n
8 A tc
ハイウェイ相互間で情報の入替えを行うスイッチ。
ハイウェイスイッチとも呼ばれる。
入 #0
ハ
イ
ウ
ェ #1
イ
・
・
・
#k
TS
2 1 0
・・・ C B A
TS
n
2 1 0
・・・ R Q P
はTS = 0 の状態
n
B.空間スイッチ
入ハイウェイ
制御メモリより
n
TS
2 1 0
・・・ Z Y X
出ハイウェイ
TS
2 1 0
・・・ Z B P
TS
n
2 1 0
・・・ R Y A
n
番地は
タイムスロット
(TS)番号に対応
n
k
n0
1 1
2 0
0
n0
1 k
2 1
制御メモリ
#k
制御メモリ
#1
1
n0
1 0
2 k
制御メモリ
#0
TS
2 1 0
・・・ C Q X
#0
#1
・
・
・
#k
制御メモリの内容は,
入ハイウェイ番号に対応
制御メモリ番号は,
出ハイウェイ番号に対応
出
ハ
イ
ウ
ェ
イ
C.時間スイッチと空間スイッチの組合せ
時間スイッチと空間スイッチの組合せパターンは,ピラミッド型で表現できる
すなわち,T を時間スイッチ,S を空間スイッチとすれば ,
TST 系列と STS 系列に分けることができる。
内部ふくそう率が低く,通話路制御が簡単
T T
TST
(TT)
TSST
TSSST
TST系列
STS
STTS
大容量の通話路
S:空間スイッチ
T:時間スイッチ
SSTSS
STS系列
① 多段接続の最も簡単な組合せパターンは,TSTとSTS系列である。
② TSTは,多重化チャネルが増えるにつれて,入線と出線の組合せで選択可能な
経路数が増えるので,通話チャネルの使用効率が高まる。
③ STSでは,ハイウェイの数の分だけが接続可能経路数となるので経路数が限定される。
D. TST構成の交換動作
① 利用者 A の音声信号は,時間スイッチT11によって,
送信用タイムスロット #0 から接続用タイムスロット#3 に入替える。
② 空間スイッチ(S)により,ハイウェイ #1 から利用者Bの接続ハイウェイ #2 に移す。
③ 時間スイッチ T22 によって,利用者Bのタイムスロット #5 に入替える
以下,HW:ハイウェイ
が上記の交換動作の流れ
(送話側)
TS#0
入HW
#1
時間
スイッチ
(T)
T11
TS#5
入HW
#2
T21
TS#3
(受話側)
利用者A
空間
スイッチ
(S)
時間
スイッチ
(T)
TS#2
T12
入HW
#1
出HW
#1
TS#2
TS#3
入HW
#2
出HW
#2
(送話側)
利用者B
TS#0
出HW
#1
TS#5
T22
(受話側)
出HW
#2
(C) 時分割集線方式
格子スイッチに入る入線数より出線数を少なくすることで,
通話路スイッチ網の規模を小さくし,スイッチ網のコストを低減することができる。
一般に,加入者線が一度にすべて使用されることはほとんどないので,
接続されている加入者回路より少ない通話メモリを用意し,
発呼した加入者線に順次メモリを割り当てる。
すべてに割り当てたら,それ以上の呼には接続しないようにすることで,
出線数を減らしている。
加入者回路
BORSCHT
BORSCHT
時分割
集線段
・
・
・
BORSCHT
時分割
分配段
入線数より少ない通話メモリにし,
発呼加入者線に順次通話メモリを割り当てる。
用意した容量以上の呼は接続しない。
3.1.5 蓄積交換方式
蓄積交換方式(store and forward switching system)とは
メモリに一時的に蓄積し,トラフィック状況に応じて適切な経路を選択する方式
端末A
端末B
端末C
a3 c2 a2 c1 a1
a3 a2 a1
c2 c1
b2 b1
a3 a2 a1
c2 c1
b2 b1
メモリ
メモリ
他交換機へ
端末D
端末E
ブロック化と情報細分化の方法
①メッセージ交換
②パケット交換
③フレームリレー交換
④ATM交換
(以下,それぞれについて説明)
(1)メッセージ交換
①ユーザの伝送情報(メッセージ)を交換機で蓄積
②ヘッダを付加してメッセージのままブロック化
③リンクごとに転送
■電信やテレックスに使われる。
■処理が簡単であるが,伝送効率は良くない。
(2)パケット交換
①パケットと呼ばれるブロックに区切って,
ヘッダを付加して伝送
②データグラム(datagram)方式とバーチャ
ルコール(virtual call)方式がある
③プロトコルはX.25に規定される。
データグラム方式
■送受信間の経路を確定しないので,コネクションレス(CL:
connectionless)とも呼ばれる。
■パケットの到達順序は保障されないので,受信側で元通り
に並べなおす順序制御が必要。
バーチャルコール方式
■情報通信に先立って送受信間の経路を確立するので,コ
ネクション指向(CO:connection oriented)形と呼ばれる。
■呼の設定や開放を行うので交換制御の負担が増す。
■大量のメッセージを送る場合は転送効率が良い。
■送信側が高速で受信側が低速の場合,受信バッファが
オーバフローする可能性があるため,受信可能なパケット
量の通知を行うフロー制御(flow control)が必要となる。
パケット交換の特徴
①蓄積交換方式なので誤り制御が可能となる(信頼性が高く
なる)。
②蓄積交換方式なので原理的に伝送遅延が発生する。
③複数端末が1つの通信回線に多重化させて転送するパ
ケット多重(packet multiplexing)が可能となる。
④空きチャネルを探索してパケットを転送するので回線利用
効率が高い。
(3)フレームリレー交換
①X.25を基本としてプロトコルを簡略化したもの。したがっ
てX.25より高速伝送。
②誤り制御やフロー制御を行わないので,X.25より高速に
伝送が可能である。これらは,エンド端末の役割として
みなされている。
③フレームを多重化させて転送するフレーム多重(frame
multiplexing)が可能。
④ネットワークがふくそう状態になってもユーザが申告した
最低限のスループットが保障される伝送速度(情報認定
速度,CIR:Committed Information Rate)が定められて
おり,ユーザgは,ふくそう状態のときCIRまで伝送速度
を落とす必要がある。
フレームリレー交換の特徴
①1.5~2Mbpsの高速伝送が可能。
②バースト的なデータ伝送(平均的に伝送されないような
データ伝送)に向いている。
③プロトコルが簡素なため伝送遅延が少ない。
④CIRで最低スループットが保障される。
⑤フレーム多重が可能。
(4)ATM交換
①広帯域ISDN(B-ISDN:broadband ISDN)の基盤技術。
②マルチメディア通信が可能。
③固定長の伝送ブロック(ヘッダ5バイト,データ48バイト)dで伝送。伝
送ブロックはセルと呼ばれる。
④ヘッダ内のラベルと呼ばれる制御情報を用いてセルを転送する。
⑤低速の場合は少なく,高速の場合は多くセルを発生するなど,情報
速度に応じてセルを発生させる。
⑥セルの転送形態には以下の種類がある。
・CBR(Constant Bit Rate:音声等の通信用)
・VBR(Variable Bit Rate:可変速度で転送する
動画像等の転送)
・ABR(Available Bit Rate:品質が保証されない )
ATM交換の特徴
①ハードウェア処理により156Mbps~622Mbpsの高速伝送が可能で,
マルチメディア通信に適している。
②通信回線内の論理的な空きチャネルを利用するので,高いスルー
プットが期待できる。これを統計的多重化(statistical multiplexing)
という。
3.1.6 ATM交換技術
(1)同期転送モードと非同期転送モード
(a) 同期転送モード(STM:Synchronous Transfer Mode)
帯域幅を時間単位で分割する。すなわち,STMで多重化されたすべての
コネクションには,1つの固定したタイムスロットが与えられる。
一度タイムスロットが割り当てられると,タイムスロットの帯域幅は,コネク
ションが休止しても,他のコネクションをサポートしない。
(b) 非同期転送モード( ATM:Asynchronous Transfer Mode )
情報ブロックを蓄積し,宛先や制御用情報などを含むヘッダが付けられ,
ヘッダで出側回線を選択し,出力向けヘッダを更新して送出する。
パケット交換では,出側回線が全部使用中なら空きを待つが,
ATMセルでは,直ちに接続するか,廃棄するかのいずれかであり,
待ち合わせをしない.
(2)ATM交換に関わるパラメータ
(a) セル構造
ユーザ・網インタフェース(UNI)用のセルと,
ネットワーク・ネットワークインタフェース(NNI)用のセルがある
5オクテット
[UNI用]
48オクテット
セル
ヘッダ
ペイロード(ユーザデータ)
仮想パス識別子(VPI)
Virtual Path Identifier
汎用
フロー
制御
仮想パス
識別子
仮想
チャネル
識別子
ペイロード
型
4ビット
8ビット
16ビット
2ビット
[NNI用]
5オクテット
12ビット
仮想
チャネル
識別子
16ビット
セルヘッダ
チェック
サム
1ビット
1ビット
8ビット
仮想チャネル識別子(VCI)
Virtual Channel Identifier
ペイロードタイプ(PT)
Paylord Type
48オクテット
セル
ヘッダ
仮想パス
識別子
予約
セル
損失
優先
汎用フロー制御(GFC)
Generic Flow Control
ペイロード(ユーザデータ)
ペイロード
型
予約
セル
損失
優先
2ビット
1ビット
1ビット
セルヘッダ
チェック
サム
8ビット
セル損失優先度(表示) (CLP)
Cell Loss Priority
セルヘッダチェックサム(ヘッダ誤り制御)
(HEC)
Header Error Control
(b)汎用フロー制御(GFC:Generic Flow Control)
ユーザ側端末と局間のフロー制御に使用される。
ユーザ側からB-ISDNへの接続では,
ユーザ側でLANに接続された多数端末であるので,
このための制御として4ビットを要している.
(c)仮想パス指示子(VPI)と仮想チャネル指示子(VCI)
送信元と宛先ATM局の対局間のパスを識別する。
仮想チャネル指示子(VCI)はその仮想パス内のコネクションを定義する。
UNIではVPI+VCIで24ビット,NNIでは28ビットである。
(NNIのほうが4ビット長い)
バーチャルチャネル(VPI+VCIで識別)
バーチャルパス(VPIで識別)
伝送路(ポート番号で識別)
伝送ペイロード
伝送路としての階層化
ATMネットワーク階層は,VPレイヤとVCレイヤから構成される。
上位のVCレイヤは,1つ下のVPレイヤをサーバとして利用する。
オペレーション
システム
サービス制御
システム
ユーザ
VCH
VCH
VCレイヤ網
VPH
VPレイヤ網
LT
VPH
LT
伝送媒体レイヤ網
ATMネットワーク
VCH:VCハンドラ,VPH:VPハンドラ
ユーザ
(d)ペイロードタイプ(PT)
当初,セル内の情報がユーザ情報であるか,
ネットワーク管理用情報であるかを識別するために
定義されたが,その後,機能が拡大された。
バーチャルチャネル上でのOAM用のセル識別や
網内のふくそうを着側に通知する機能など,
様々なオプションが設定されている.
(e)セル損失(破棄)優先(CLP:Cell Loss Priority)
交換機スイッチでセルを伝送路に送出するとき,
バッファオーバフロー時のセル廃棄に優先度を設定するために
使用される。
CLPビットは,
申告値を超えて入力されるセルに対する違反表示として
用いることも可能であり,違反した優先セル(CLP=0)は,
非優先セル(CLP=1)に変わる
(f)ヘッダ誤り制御(HEC)
ヘッダ誤り制御(HEC)は,CRCチェックで行う。
誤り検出・訂正を行うとともに,ATMセルの自己同期を行う.
これをセル同期と呼ぶ.
(3)B-ISDNの階層構造
ネットワークが提供する機能は,OSI階層のレイヤ1とレイヤ2である。
セル転送機能だけが中継交換機(ATMノード)の機能であり,
フロー制御や誤り制御等はエンドシステム(ATM端末)にまかせられる。
(AALは ATM 端末に実装される)
上位レイヤ
上位レイヤ
AAL
AAL
ATMレイヤ
ATMレイヤ
ATMレイヤ
物理レイヤ
物理レイヤ
物理レイヤ
主 要 機 能
セル分解・組立,
セル転送のゆらぎ吸収,
フロー制御/誤り制御
セル転送
(VC/VPのルーチング,多重)
セル伝送をマッピング
(4)ATM物理層
物理層は,以下の副層に分けられる。
① PMD副層:Physical Medium Dependent
ケーブル接続信号におけるビットを取り扱い,
各媒体により異なる。
② TC副層:Transmission Convergence
TC副層では,ビットからセルを組み立て,
逆にセルをビットに分解する.
(5)CLAD
CLAD(Cell Assembly/Disassembly)
53オクテット(注)のATMセル単位で情報を区切って送受信し,
到着したセルの中からヘッダ部分を取り除いて元の情報に戻す装置
ATMの端末では,CLAD機能が内蔵されているが,
既存のコンピュータ,PBX,あるいはLAN等では,
CLADを外付けまたはネットワーク側で用意する必要がある.
(注)
「オクテット」とは「八個一組のもの」という意味で,8ビットを指す。
現時点では,1バイト8ビットがほとんどなので,「バイト」と同じになるが,
通信分野では,現在でも単位としてこの「オクテット」を使うことが多い。
(2)ATM交換機の構成
(a)交換機のモデル
ATM交換機では,出側伝送路のVPI/VCIを対応付け,
その対応付けに従ってVPI/VCIを付け替えて転送する。
入側のVPI/VCI 伝送路
VP/VC
出側のVPI/VCI
ATM交換機
一般には,1つの伝送路に複数
のVP/VCが多重化されている。
ATM交換機の基本的役割
(1)入側と出側の伝送路およびVP/VCの対応付け
(2)それに従ったセル転送(VPI/VCIの付替え)
(b)ATM交換機の一般的構成
ATMでは,シグナル処理だけがソフトウェアで処理され,
その他は,すべてハードウェアで処理される。
[基本的な動作]
① セルを入力ポートから受信
② 入力ポートでの帯域制御
③ VPI/VCIの値によって出力ポートを決定
④ セルを出力ポートに出力
[基本的な構成要素]
QoS(要求サービス品質:Quality of Service)
シ グ ナ リ ン グ 処 理 部
入力
ポート
ヘッダ
処理部
QoS 処理部
(入力)
セル
スイッチ
QoS 処理部
(出力)
出力
ポート
ATM交換機の機能ブロック
使用量パラメータ制御(UPC:Usage Parameter Control)
実際の交換機では,トラヒック制御や使用量パラメータ制御を行う
必要があるので,次のような機能ブロックから構成される.
優先制御機能
使用量パラメータ制御機能
端末
呼設定情報
使用帯域
要求品質
ポリシング
・
・
・
トラヒック監視機能
出力バッファ
ATM
スイッチ
・
・
・
帯域割り当て
トラヒック
目標 データ
品質
コネクション受付制御
セルレベル制
御
呼レベル制御
網レベル制御
網内トラヒック制御
(c)セルスイッチの種類と構造
①ブロッキングとノンブロッキング
セルスイッチは次のように分けることができる。
① ブロッキングスイッチ(Blocking Switch)
複数の入力があったとき,いくつかの入力を入力側で待たす。
② ノンブロッキングスイッチ(Non Blocking Switch)
全ての入力を同時に処理する。
ATMスイッチのほとんどは,ノンブロッキングスイッチである。
② 代表的なセルスイッチ
① TDM(Time Division Multiplexing)スイッチ
セルマルチプレクサが,複数の入力ポートを一定時間間隔で走査し,
セルバスに入力セルを,制御バスにポートマスクを出力する方式。
出力ポートは,制御バス上のポートマスクで自分宛であることを確認して,
セルバスのセルを取り込む。
② ノックアウト(Knockout)スイッチ
入回線,出回線とも同じ本数のバスに接続する方式。
クロスバースイッチとも呼ばれるが,アナログ式の電話交換機における
クロスバースイッチと誤解されるので,ここではこの用語を用いる。
③ バッチャバニヤン(Butcher Banyan)スイッチ
バニヤンスイッチは,ATM以前から使用されているスイッチであり,
2入力2出力のスイッチエレメントである。これを多段に接続して使用する。
[用語]バニヤンスイッチという言葉は,スイッチの接続の様子が,枝から縦方向に気根が
垂れ下がるように生えるバニヤンの木に似ていることによる。
TDM(Time Division Multiplexing)
③ TDMスイッチ
セルマルチプレクサが,複数の入力ポートを一定時間間隔で走査し,
セルバスに入力セルを,制御バスにポートマスクを出力する。
ノンブロッキングスイッチとして動作する条件は,以下のとおりである。
入力ポート帯域×入力ポート数 ≦ バス帯域
セルバス
入力
ポート
制御バス
出力
ポート
セル・
マルチプレクサ
・
・
・
・
・
・
TDM(Time Division Multiplexing)
TDMスイッチの特徴
① 構造が簡単で実装が容易であり,マルチキャストのとき,
ユニキャストと同じ性能で処理することができる。
② バス帯域を入力ポート帯域×入力ポート数以上にする必要があるため,
接続ポート数に限界がある。
現在のバスクロックの上限は,約 133 MHz であるため,
データ幅 64 ビットバスでは,
133 MHz × 64 ビット = 8.5 Gbps
が対応できる帯域上限となる。
ノックアウト(Knockout)スイッチ
仮想チャネル(VC)
④ ノックアウトスイッチ
入回線,出回線とも同じ本数のバスに接続する方式。
入力バス上のセルが1サイクルごとに出右側に転送され,セルのヘッダで
仮想チャネルを識別して,接続する点(クロスポイント:接続点)を見つける。
セルは,クロスポイントを通って,出力側に移る.
0
入力
1
・・・
・・・
・・・
・・・
フィルタ
フィルタ
フィルタ
・・・
・・・
・・・
7
N:L
トーナメント形
集線スイッチ
N:L
トーナメント形
集線スイッチ
N:L
トーナメント形
集線スイッチ
L入力1出力
FIFO
L入力1出力
FIFO
L入力1出力
FIFO
0
1
・・・
7
入力バス
ノックアウト(Knockout)スイッチ
⑤ノックアウトスイッチの特徴
① 各入力がクロスポイントによって,常に全出力ポートに接続されているの
で,入力側ではブロッキングは発生しない。
② ブロッキングが発生するのは,フイルタおよび集線スイッチ回路の
処理能力を上回るセルが転送され,FIFOあふれが生じた場合である。
③ ノックアウトスイッチは,構造が単純で設計が容易であり,
マルチキャストの場合も効率よく処理できるが,
ポート数の2乗に比例したクロスポイントが必要となり,
ポート数が大きくなると回路が大規模になってしまう.
⑤ バッチャバニヤンスイッチ
バッチャバニヤン(Butcher Banyan)スイッチ
2入力2出力のバニヤンスイッチを多段に接続して使用する。
以下は,3段,12個のバニヤンスイッチを使用したスイッチである。
入力ポート
転送すべき
情 報
ルーチング
情 報
0
1
1
出力ポート
0
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
2
1
1
1
3
0
0
0
4
1
1
1
5
0
0
0
6:110
1
1
1
7
1ビット目
の判定
2ビット目
の判定
3ビット目
の判定
バニヤンスイッチにおける衝突
バニヤンスイッチでも衝突は発生する。
① 1段目では,(5,7),(0,3),(6,4),(2,1)で衝突が起き,5,0,4,1が選択。
② 2段目では(0,1),(5,4)が衝突し,1,5が残り,これがそのまま出力。
5
0
1
6
2
7
3
4
1
5
衝突のないスイッチ
以下の例では,ルーチング情報の並びは異なるが,
同じ出力ポートであるにもかかわらず,衝突が起きていない。
すなわち,入力側の組合せによっては衝突が起きないのである。
0
0
1
1
2
2
3
3
4
4
5
5
6
6
7
7
入力回線の並び順の変更
バニヤンスイッチの前にもう1つのスイッチ群を用意し,
入力回線の並び順を変更して,バニヤンスイッチで衝突が起きないようにする。
これをバッチャー網あるいはソーティング網と呼ぶ。
入力ポート
3
空間スイッチ網(Banyan網)
ソーティング網(Butcher網)
出力ポート
0
0
0
1
1
1
3
1
2
0
3
3
バッチャバニヤンスイッチの特徴
必要なバニヤンスイッチの数は,
ポート数nに対してn/2×log n個
である。
① ノックアウトスイッチの n2 よりスイッチは少なくなる。
② ポート数が増加すると,スイッチ要素間の接続が複雑になり,
同一出力ポート宛のセルが複数入力されるとブロッキングが発生する。
③ マルチキャストのとき余分なコストがかかる。
④ 現在のポート数や帯域の範囲内では,前述した他の方法の方が,
安価で性能が良いため,商用のATMスイッチで,
バッチャバニヤンスイッチを使用しているものは少ない.
VP(Virtual Path)
VC(Virtual Channel)
VCC(Virtual Channel Connection)
(3)ATM交換機の動作
(a)VCCの確立
ATMは,コネクション指向のセルネットワークであるため,
通信に先立って2つの端末間にVCCを確立する。
[VCCの識別方法]
① ATM端末は,送信したい情報をセルに分割し,
VPとVCと呼ばれる仮想的な通信路を介してATM交換機に届ける。
③ VP/VCは,通常,1つの伝送路に多重化され,ATM交換機は,各セルのヘッ
ダのVPI/VCIで転送先を決定する。
④ VPは複数のVCを束ねたものである.伝送路上での階層を構成し,各VCを
束にすることによって,交換機のスイッチング等を簡単化している。
VP(Virtual Path)
VC(Virtual Channel)
VCC(Virtual Channel Connection)
(b)コネクションの方法
VP/VCによって,端末間に設定された通信を
VP/VCコネクションあるいはATMコネクションと呼ぶ.
次のシート以降に示す例は,既に6.4.2(3)で示した例であるが,
再掲する。
なお,簡単化のため,VPIの値は,すべて1にしている。
① VCC1を利用したいH1は,VPI/VCIの組として1/100のセルをS1に送出.
② ATM交換機S1は,入力セルのVPI/VCIと入力ポート番号をキーにして,S1の
VPI/VCI変換表を検索.この結果,出力VPI/VCIとして1/300,出力ポート番
号3を得る.
③ S1は,セル中のVPI/VCIの値を1/300に書き換え,ポート3にセルを送出.
④ S2もS1と同じ動作を行う.同様にして,S2のポート1で入力したセルヘッダ内
のVPI/VCI,すなわち1/300を1/200に書き換え,セルをポート2に送出.
⑤ S2からセルを受信したH3は,セルをAAL PDUに変換して上位層に渡す.
バーチャルコネクションの簡単な例(1)
仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection)
仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier)
仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier)
VP / VC の簡単なバーチャルコネクション
S1
H1
S2
1
VCC1
3
H2
2
H3
3
H4
1
2
VCC2
A:VCC1(ホストH1~H3)
1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3)
B:VCC2(ホストH2~H4)
1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4)
S1 の VPI / VCI 変換表
ボート
入力
1
2
3
3
VPI /
入力
1/100
1/100
1/300
1/300
VCI
出力
1/300
1/200
1/100
1/100
S2 の VPI / VCI 変換表
ポート
出力
3
3
1
2
ボート
入力
1
1
2
3
VPI /
入力
1/200
1/300
1/200
1/400
VCI
出力
1/400
1/200
1/300
1/200
ポート
出力
3
2
1
1
バーチャルコネクションの簡単な例(2)
仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection)
仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier)
仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier)
VP / VC の簡単なバーチャルコネクション
S1
H1
S2
1
VCC1
3
H2
2
H3
3
H4
1
2
VCC2
A:VCC1(ホストH1~H3)
1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3)
B:VCC2(ホストH2~H4)
1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4)
S1 の VPI / VCI 変換表
ボート
入力
1
2
3
3
VPI /
入力
1/100
1/100
1/300
1/300
VCI
出力
1/300
1/200
1/100
1/100
S2 の VPI / VCI 変換表
ポート
出力
3
3
1
2
ボート
入力
1
1
2
3
VPI /
入力
1/200
1/300
1/200
1/400
VCI
出力
1/400
1/200
1/300
1/200
ポート
出力
3
2
1
1
クロスコネクト
VPIは仮想的な束であり,交換機内のVPI/VCI変換表で接続替えを行う。
すなわち,VPI/VCIの値は,チャネル内では一意であるが,
すべてのチャネルで一意ではなく,チャネルごとに変化する。
したがって,物理的に固定されたルートではない.
① セルは,同一方向に向かうVPに乗り,途中でVPIがつけ替えられ,
組み合せ変換点のノードで,出側の同一方面に向かうVPに乗せられる。
このVP組合せ変更機能をクロスコネクト(cross connect)と呼ぶ。
② SDHの同期端局装置として,方路向けに多重回線を振り分ける機能,
パス単位の分離と多重化機能を有するクロスコネクトを行う機器が
提供されている.
(c) SDHとの同期
① SDHフレームとATMセルのマッピング
SDHは,フレームという固定した形式を持ち,
伝送路にATMセルを乗せるためのマッピングを行う。
① マッピングの際,セル境界をSDH伝送フレームのバイト境界に
一致させるが , セルの先頭とSDHフレームの先頭を合わせる必要はない 。
② ATMセルレートを伝送路の伝送速度に合わせるために,
空きセルの挿入,空きセルの削除が行われる。
③ 空きセルのヘッダのビットパターンは,
セル同期にかかわる部分を除いて標準化されており,
セルを伝送ペイロードに合わせる端局多重装置で識別が可能である.
② セル同期
セルストリームのセル境界を受信側で識別する機能
① ヘッダ誤り制御では,HEC領域を除くヘッダ全域に誤り検出,
1ビット誤り修正を行うCRC符号を用いる。
送信側で,このHECシーケンスを計算し,ヘッダに書き込む。
② 平常時は,受信側で各受信セルを区別できる同期状態であるので,
各受信セルに対してHECを検証し,ヘッダ誤りの検出/訂正を行う。
③ 受信側で同期が外れた場合,受信セルの境界が区別できないので,
想定したヘッダ誤り保護領域32ビットに対して,HECを計算し,
これをヘッダに書き込まれた値と比較する。
これが何回か連続して合致すれば同期確立とみなし,
受信セルの区分を確定する。
④ 合致しないときは,1ビットずつ移動して,演算と比較照合を繰り返す.