第1章 電気工学の基礎

第6章 ネットワーク技術
6.1 ネットワーク技術の基礎
6.2 LAN
6.3 電気通信網
6.4 アクセスネットワーク技術
6.5 インターネット技術
6.6 バックボーンネットワーク技術
6.4 アクセスネットワーク技術
6.4.1
6.4.2
6.4.3
6.4.4
6.4.5
アクセスネットワークとは
メタリックアクセス技術
光アクセス技術
固定無線アクセス技術
CATVアクセス技術
6.4.1
アクセスネットワークと
は
ユーザ端末と通信事業者を接続するためのネットワーク。
利用者側と高々1マイル程度の距離を接続するという意味で
ラスト・ワン・マイルとも呼ばれている。
① アクセスネットワークとしては,ISDNやADSLが代表的であったが,
光ファイバによるFTTH,無線によるFWA等,
高速アクセスネットワークのサービスも提供されるようになってきた。
② 多様なサービス提供を可能にするために,多種多様なプロトコル,伝送方式,
メディアに対応したマルチサービス・スイッチも提供されるようになってきている。
6.4.2 メタリックアクセス技術
サービス総合ディジタル網
(1)ISDN
(ISDN : Integrated Service Digital Network)
① 狭帯域 ISDN (N-ISDN : Narrow-band aspect of ISDN)
・ 基本インターフェースは,2つのBチャネル(64 kbps)と1つのDチャネル
(16 kbps)を多重伝送する。Dチャネルはシグナル信号を伝送する。
・ 「2B+D」とも呼ばれる。
・ 1回線で8台までの電話機・端末機を接続できる。
・ 一次群インターフェースでは, 2つのBチャネルに加えてH0 (384 kbps),
H1 (1,536 kbps)チャネルを多重伝送するので更に高速化が可能である。
② 広帯域 ISDN(B-ISDN : Broad-band aspect of ISDN)
・ ATM(Asynchronous Transfer Mode)技術を用いたISDN。
・ ATMでは,固定長セルを使って非同期転送モードによる転送を行う。
・ 100 Mbps 以上の高速通信に対応するため入回線/出回線の接続は
ハードウェア動作による。
狭帯域ISDNのサービス
ISDNのサービス(-はサービスなし)
サービス名
INSネット64
チャネル
B (64 kbps)
D (16 kbps)
INSネット1500 B (64 kbps)
H0 (384 kbps)
H1 (1,536 kbps)
D (64 kbps)
回線交換
サービスあり
-
サービスあり
サービスあり
サービスあり
-
パケット交換
サービスあり
サービスあり
サービスあり
-
-
サービスあり
INSネット1500 では,1回線が電話23回線分に相当する。
後述するように,他のINS(例えば64)を併用すれば,
64 kbps のDチャネルも回線として用いることができるので,
24 回線分として使用することができる。
制御信号
-
サービスあり
-
-
-
サービスあり
基本インターフェース
構成とサービス
通信
モード
加入者線路(一対)など
(メタリックケーブル)
回
線
終
端
装
置
チャネル
タイプ
Bch(64kbps)
Bch(64kbps)
Dch(16kbps)
2B+D
DSU
パ 信
ケ
ッ
ト
交
換 号
B
(64 kbps) ○ ○
D
(16 kbps)
バス配線形式
メタリック
ケーブル
回
線
交
換
NTT
○ ○
一次群インターフェース
構成とサービス
(b) 一次群インターフェース
・
・
・
デ
ィ
ジ
タ
ル
P
B
X
・
・
・
加入者線路など(光ファイバ)
Bch(64kbps)
×23
Dch(64kbps)
回
線
終
端
装
置
・
・
・
・
・
・
・
・
・
Bch(64kbps)
×24
Dch
2B+Dまたは
23B+DのDch と
共用
ディジタル
PBX
DSU
回
線
終
端
装
置
・
・
・
光ファイバ
回
線
交
換
チャネル
タイプ
加入者線路など(光ファイバ)
デ
ィ
ジ
タ
ル
P
B
X
通信
モード
NTT
パ 信
ケ
ッ
ト
交
換 号
B
(64 kbps)
○ ○
H0
(384 kbps)
○
(注)H1
(1.5 Mbps)
D
(16 kbps)
○
○ ○
(注)
H1には,1.536 kbps( H11)と
1.920 kbps( H12 )がある。
N-ISDNに関わる用語
① アウトバンド信号方式
通信チャネルとは別のチャネルで呼信号やシグナル信号を送る方式。
N-ISDNではDチャネルで信号を送るので,アウトバンド信号方式である。
② インバンド信号方式
通信チャネルと同じチャネルで呼信号やシグナル信号を送る方式。
DDX-PなどのX.25パケット網はインバンド信号方式である。
③ LAPD(Link Access Procedure on the D-Channel)
N-ISDNでは,制御信号用に D チャネルを使ってデータリンクを行うので
こう呼ばれる。
伝送方式の復習
「5.5.2 データ伝送技術」における以下の事柄について
思い出そう。
① DSUでは,データ信号をデジタル伝送路に送出する際,
データ信号のクロック数をデジタル伝送路のクロック数に一致させる。
② DSUでは,データ信号を伝送路に乗せるとき,
エンベロープ形式に変換する。
③ 単点サンプリングは,2400 bps 以上の同期式DSUで用いられる。
④ 多点サンプリングは,1200 bps 以下の同期式DSUで用いられる。
Dチャネル競合制御について
① ISDNの基本インターフェースの下り方向では,
ブロードキャストで各端末宛に多重化された情報を垂れ流す。
各端末は自分に必要な情報だけを取り込むので競合は発生しない。
② 上り方向では,複数端末が限られたチャネルを使用するので,
必然的に競合状態が発生する。
③ 上り方向でも,
D チャネルシグナリングにより B チャネルの割り当てを行うので,
Bチャネルに対する競合はない。
④ D チャネルでは,複数端末がパケット多重方式で共用するので,
競合が生じる可能性がある。
したがって,上り方向 D チャネルでは,競合制御が必要となる。
網終端(NT : Network Terminal)
Dチャネル競合制御の手順
① Dチャネルが使用されているかどうかをキャリアセンスによってチェックする。
② 空いていれば信号を送出する。[注]
③ 信号送出中に競合が生じたかどうかを監視(衝突検出)し,
衝突が検出されなければ通信が成立したとみなす。
④ 競合を検出するには,自端末が送出した D チャネルビットと
NTから受信したエコービットを比較して,異なるときに競合と判定する。
③ 衝突を検出したら,いったん信号送出をやめて
再度①から繰り返す(再アクセス)
[注]
Dチャネルが空き状態のとき,エコーチェックビットは
7 個以上の 1 が連続しており,それ以外のとき使用状態である。
Dチャネル競合制御(その3)
Dチャネル衝突検出と生き残り
エコー
A
0
0
1
0
1
×衝突
網終端
0
コピー
A
B
0
0
1
1
×衝突
B
C
0
0
1
0
C
衝突をいつまでも検知しなかったホストが生き残る。
いわば「知らぬが仏」が生き残るといえる。
Dチャネル競合制御(その4)
優先度付与による再アクセス
① ビット 1 が何ビット連続しているかをカウントし,ある値X1(7以上)に達したら
空き状態と判定し,ある値X2に達したらデータ送出を決定する。
② X1,X2の値が小さい端末は,空き状態判定・データ送出のタイミングが早く,
値が大きい端末はタイミングが遅い。
X1,X2を優先度として使う。(ビット1の連続検出回数という)
① 情報送出に成功した端末のX1,X2は1だけ増加させることでを優先度を低くする。
② 他に情報を送信したい端末がない場合,初期値に戻す。
(カウンタ値が増加したX1,X2に等しくなったら初期値に戻す)
2線式伝送方式
① 時分割方向制御伝送方式
時分割により上り,下り方向を切り替える方式。
いわゆるピンポン伝送と呼ばれる。
② エコーキャンセラ方式
1対のメタリックケーブルに双方向の信号を乗せ,端末と交換機では
ハイブリッド回線で上下信号を分離して伝送を行う方式。
時分割方向制御伝送方式の場合
① ユーザ端末からの信号は,一時的にバッファメモリに蓄積された後,
時間圧縮されバイポーラ信号に変換されて加入者線に送出される。
② 受信側交換機では,受信した信号をバッファメモリに蓄積して,
時間伸張して元の信号に変化し受信側端末に送る。
③ 信号変換は時間圧縮により生じた時間を利用して行われる。
④ 時分割方向制御伝送方式では,送受信を交互に伝送するので,
近端漏話雑音の影響がないので,伝送可能距離を伸ばすことができる。
エコーキャンセラ方式の場合
① 送信信号の一部がハイブリッド回路を介して受信方向に回り込み
受信信号と重さなり,信号誤りが生じるおそれがある。
② このため,エコーキャンセラにより送信信号から回り込むエコー成分を予測
し,受信信号から取り除く。
③ エコーキャンセラ方式では,双方向伝送により伝送ビットレートを
低く抑えることができ,線路における伝送損失や漏話が減少するので
伝送距離を伸ばすことができる.
(2)B-ISDN
広帯域 ISDN(B-ISDN : Broad-band aspect of
ISDN)
① ATM(Asynchronous Transfer Mode)技術を用いたISDN。
② 1987年,短い固定長のパケットを使用したマルチメディア通信用の
多重化方式がフランスから提案され,検討が開始された。
これがATMの原型である。
③ ATMでは,固定長セルを使って非同期転送モードによる転送を行う。
④ 従来の通信用チャネルは,フレーム内のバイト位置で
周期的に割り当てられ,チャネル識別はバイト位置で行われる。
ATMでは,ヘッダ内のラベル(ずれを指すポインタ)で位置指定を行うので,
バイト位置固定ではない。ラベルで標準点からのずれを示すので
ラベル多重とも呼ばれる。
UNI : User-Network Interface
NNI : Network-Network Interface
ATMセル構造
[ATMセル構造の種類] 2種類
① UNI用セル(ユーザ側の装置に送受されるセル)
② NNI用セル(ATMネットワーク間を転送されるセル)
[セル基本構成]
1
~
5
6
~
[セルヘッダ構成]
UNI
VPI
GFC
1
VPI
2
3
VCI
セルヘッダ
5 oct
PT
CLP 4
HEC(ヘッダ誤り制御)
情報
フィールド
48 oct
53
UNI,NNI,網間
を通じて同一構成
5
NNI
1
VPI
2
VCI
3
PT CLP 4
5
HEC(ヘッダ誤り制御)
GFC : Generic Flow Control
一般フロー制御
VPI : Virtual Path Identifier
仮想パス識別子
VCI : Virtual Channel
Identifier
仮想チャネル識別子
PT : Payload Type
ペイロードタイプ
res : reservation
(PTの中の1ビット)
予約
CLP : Cell Loss Priority
セル破棄優先表示
HEC: Header Error Control
ヘッダエラー制御
VPI : Virtual Path Identifier(仮想パス識別子)
VCI : Virtual Channel Identifier(仮想チャネル識別子)
伝送路の識別
① 伝送路は,送信元と宛先間の仮想チャネルと仮想パスを指定する
VPIとVCIで識別される。
② VPI と VCI は階層関係にあり,上位の VC レイヤは,1つ下の VP レイヤを
サーバとして利用する。
③ VP レイヤは,伝送媒体が提供する実際の信号のやりとりによって
サービス提供を受ける。
④ それぞれの階層には,情報伝送の管理・運用を行うハンドラがある.
通信方式
① 多くの情報を送る場合,ATMではセルの送出頻度を高くして,
広い帯域のコネクションにする。
② 53バイト固定のセルであるため,ハードウェアによる転送が可能である。
③ フロー制御も,ハードウェアでも可能な単純な処理に限定し,
出力側回線に空きがないときは待合せにせず,破棄することが原則である。
④ データ保証のための処理も端末に任せて,プロトコル簡略化を図っている。
要求サービス品質(QoS:Quality of Service)
サービスクラス
サービスしようとする通信のトラフィック特性や伝送品質に関する要求を
あらかじめ申告し,要求に応じたコネクションを提供して,通信の品質を
満足または保証する。この要求を通信の品質に対するQoSという
① QoS には,セル転送遅延,セル遅延変動,セル廃棄率などがある。
② 呼の設定時または呼の通信中に,サービス品質について交渉(ネゴシェート)する
ことができる。
③ サービスの品質についての交渉では,トラフィック特性面から QoS を
クラス分けし,必要なパラメータを明示的あるいは暗黙的に申告する。
申告するパラメータ
① PCR (Peak Cell Rate)
: 最大セル速度
② SCR (Sustainable Cell Rate) : 平均的なセル速度
③ MCR (Minimum Cell Rate)
: 最低保証セル速度
④ MBS (Maximum Burst Size) : 最大バーストサイズ(PCRが継続する度合い)
①
②
③
④
PCR (Peak Cell Rate)
SCR (Sustainable Cell Rate)
MCR (Minimum Cell Rate)
MBS (Maximum Burst Size)
:
:
:
:
最大セル速度
平均的なセル速度
最低保証セル速度
最大バーストサイズ
帯域割当て
① 固定ビットレート(CBR:Constant Bit Rate)
リアルタイムの音声(通常の電話)など,定常的に一定のトラフィックが
発生するような固定速度型通信を想定。PCRを申告する。
② 可変ビットレート(VBR:Variable Bit Rate)
常時PCRを必要としないが,たまにPCRの帯域を必要とする通信。
例えば,動画像転送で差分符号化方式の場合,通常差分のみを送ればいいが
画像全体をおくる場合,広い帯域を要する。PCRに加え,SCR,MBSを申告する。
③ 混雑度合いに応じたビットレート(ABR:Available Bit Rate)
通信中にネットワークの混雑度合いを端末にフィードバックし,
端末はそれに応じたセル送出を制御する。PCRおよびMCRを申告する。
④ 制御を行わないビットレート(UBR:Unspecified Bit Rate)
ABRで行うような制御は行わず,空きがあれば転送されるが,
なければ破棄する。申告は行わない。
申告パラメータとトラフィック特性上の分類との関係
トラフィック
特性の分類
主な対象
アプリケーション
申告パラメータ
保証される品質
CBR
音声
動画像
擬似回線
PCR
セル損失率
セル遅延時間
セル遅延変動
VBR
ABR
可変速度
符号化
音声/動画像
PCR
SCR
MBS
セル損失率
セル遅延時間
セル遅延変動
UBR
ファイル転送
LAN間接続
PCR
MCR
セル損失
なし
なし
セル組立/分解(CLAD:Cell Assembly/Disassembly)
仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection)
仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier)
仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier)
データ転送
ATM のデータ転送では,送信の際ヘッダを付加し,受信の際ヘッダを取り除く。
このための装置を CLAD と呼ぶ。
既存端末や LAN と接続するには CLAD が必要となる。
① ATM では,通信に先立って2つの端末間にVCCを張る必要がある。
② ATM 交換機では
・ 入力側 VPI / VCI と入力ポート番号
・ 出力側 VPI / VCI と出力ポート番号
の変換表を保持し,入力セルの VPI / VCI をキーにして変換表を検索し,
出力側の VPI / VCI に書き換えて出力ポートに送出する。
③ VPI / VCI を付け替えられたセルは,組合せ変換点のノードで,
出力側の VP に向かうことになる。
VP の組合せを変更する機能をクロスコネクトという。
仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection)
仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier)
仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier)
データ転送の簡単な例(1)
VP / VC の簡単なバーチャルコネクション
S1
H1
S2
1
VCC1
3
H2
2
H3
3
H4
1
2
VCC2
A:VCC1(ホストH1~H3)
1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3)
B:VCC2(ホストH2~H4)
1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4)
S1 の VPI / VCI 変換表
ボート
入力
1
2
3
3
VPI /
入力
1/100
1/100
1/300
1/300
VCI
出力
1/300
1/200
1/100
1/100
S2 の VPI / VCI 変換表
ポート
出力
3
3
1
2
ボート
入力
1
1
2
3
VPI /
入力
1/200
1/300
1/200
1/400
VCI
出力
1/400
1/200
1/300
1/200
ポート
出力
3
2
1
1
仮想チャネル結合(VCC:Virtual Channel Connection)
仮想パス識別子(VPI:Virtual Path Identifier)
仮想チャネル識別子(VCI:Virtual Channel Identifier)
データ転送の簡単な例(2)
VP / VC の簡単なバーチャルコネクション
S1
H1
S2
1
VCC1
3
H2
2
H3
3
H4
1
2
VCC2
A:VCC1(ホストH1~H3)
1/100(H1-S1/1)→1/300(S1/3-S2/1)→ 1/200(S2/2-H3)
B:VCC2(ホストH2~H4)
1/100(H2-S1/2)→1/200(S1/3-S2/1)→ 1/400(S2/3-H4)
S1 の VPI / VCI 変換表
ボート
入力
1
2
3
3
VPI /
入力
1/100
1/100
1/300
1/300
VCI
出力
1/300
1/200
1/100
1/100
S2 の VPI / VCI 変換表
ポート
出力
3
3
1
2
ボート
入力
1
1
2
3
VPI /
入力
1/200
1/300
1/200
1/400
VCI
出力
1/400
1/200
1/300
1/200
ポート
出力
3
2
1
1
バッファ管理(1)
ATM交換機では,ひとつの1スイッチにおける1サイクルのタイミングを
交換機内の同期と合わせるために,1単位のスイッチを複数並べて構成する。
① ATMセルが150 Mbps で到着すると,セル長が53バイト固定なので
秒当り到着セル数=150×106/(53×8ビット)=約 360,000セル/sec
になる。
② 従って,スイッチングする単位は,
1/360,000 = 2.8μ sec
程度である。
③ 入力回線数は,16から1024であるため,2.8μ sec ごとに16から1024個の
バッファを束にして,スイッチングすることになる。
④ 1つのセルが入力回線バッファから取り出され,
内部の単位スイッチを複数段経由して交換機の出力側に受け渡すので,
入力側から出力側に到達する時間は,最も順調な場合,
2.8μ sec と段数の積となる。
バッファ管理(2)
ATM交換機では,以下の点が要求される。
① 廃棄されるセルの割合をできるだけ少なくする。
緊急時のセル廃棄率は,通常1012個に1セル程度が限度とされる。
② 仮想回線(VC)上のセル到着の順序は出側でも同じにする.
ATM交換機での入力側で受け取ったセルの順序を変えないで,
出力側に出すこと。従って,必ずFIFOのバッファリングでなければならない。
単位スイッチを多段階に接続して組み立てると,
複数回線から同時に入力されたセルが
同じサイクルで同じ出力回線に出てしまい,
衝突するケースが生じる。
バッファ管理(3)
入力バッファ型
出力バッファ型
FIFOバッファ
・
・
・
セレクタ+バッファ
セルフ
ルーチング
スイッチ
クロスポイントバッファ型
FIFOバッファ
・
・
・
M
U
X
・
・
・
(3)ADSL
ADSL : Asymmetric Digital Subscriber Line
① 符号化方式としては,直交振幅変調(QAM: Quadrature Amplitude Modulation)を
拡張したDMT(Discrete Multi Tone)を用いている。
② 反射による雑音を除去するエコーキャンセラを用いて,
同一帯域を上下通信で共有する。
送信装置
エコー
キャンセラ
ハイブリッド
-
受信装置
信号
除去
+
エコーキャンセラは反射除去装置としてではなく
上り信号除去のために用いる。
音声は
スプリッタで
除去
信号強度
加
入
①
者
側
信
号
上り下り混在
下りのみ信号
音
声
0
25
164
38 39
上り信号
25
7
164
38 39
4
7
トーン番号
信号強度
加
入
者
②
側
信
号
0
4
トーン番号
1,110 周波数(KHz)
256
1,110 周波数(KHz)
256
音声を除いた信号から
エコーキャンセラで上り信号を差し引く
信号強度
③
上り信号の除去
加
入
者
側
信
号
0
トーン番号
4
25
7
164
38 39
1,110 周波数(KHz)
256
DMT(Discrete Multi Tone)
DMTの仕様
① 周波数帯域 0 Hz ~ 1104 kHz を 256 個に分割。
分割された周波数帯域をトーン(tone)と呼ぶ。
トーン間隔は 1104 / 256 = 4.315 kHz である。
② トーン 1 ~ 6 (25 kHz 未満)を,POTS用に予約する。
③ トーン 7 ~ 38 (25 kHz ~164 kHz : 32 トーン)を上りの通信に割り当てる。
④ トーン 39 ~ 256 (164 KHz ~ 1104 kHz : 218 トーン)を下りの通信に割り当てる。
⑤ 各トーンに割り当てられた周波数帯から搬送波周波数を選択。
⑥ 各搬送波に対して,変調速度4 KHz (4K Symbols/Sec)の QAM を適用。
伝送能力
QAMの実質的な変調能力は,最大15 bits/symbol/Hzであるため,
上下方向の最大伝送能力は,以下のように計算できる.
・ 上り: 32 [tone]×15 [bits / symbol / Hz] × 4 [kHz] = 1.92 [Mbps]
・ 上り: 218 [tone]×15 [bits / symbol / Hz] × 4 [kHz] = 13.08 [Mbps]
加入者,局舎共に自分が送信する信号を知っているので,
エコーキャンセラで受信信号から自分の送信信号を差し引くことにより,
相手側が送信した信号,すなわち受信信号を取り出すことができる。
下りの通信で,上り用の32トーンを使用できることになる。
すなわち,32 + 218=250 トーン分で通信できることになり,
その結果,15Mbpsまで伝送能力を上げることができる.
信号減衰の影響
周波数が高ければ高いほど信号の減衰が大きくなる。
初期化時に,トーンごとにテスト信号を送信し,
減衰度を測定してQAMの変調能力を調整する。
① 低い周波数の場合は,15 bits/symbol の QAM を使用する。
② 減衰が大きい高周波数の場合は,4 bits/symbol の QAM を使用する。
距離が長くなればなるだけ,4 bits/symbol の QAM を使用するトーンが
多くなるので,伝送能力が低くなることになる。
目安としては,約 3 Km 未満が 8 Mbps,5.5 Km で 1.5 Mbps 程度と考えてよい。
第6章 ネットワーク技術
6.4 アクセスネットワーク技術
6.4.1
6.4.2
6.4.3
6.4.4
6.4.5
アクセスネットワークとは
メタリックアクセス技術
光アクセス技術
固定無線アクセス技術
CATVアクセス技術
6.4.3 光アクセス技術
(1)光ファイバ通信モデル
電気信号は,送信前に光に変換され,
受信後,電気信号に変換される以外は,
他の有線伝送と大きな違いはない。
伝送部
送信部
情報
信号
変換
電気・光
変換
光ファイバケーブル
受信部
光・電気
変換
信号
変換
情報
(2)光アクセスのトポロジー
(a) シングルスター(SS)型
加入者線
収容局
(b) アクティブダブルスター(ADS)型
加入者線
収容局
双方向共に波長1.3μmで
SSでは,利用者宅に
ピンポン伝送方式を用いる.
ONUを設置する
光分岐装置
(RT)
利用者宅
利用者宅
・・・
利用者宅
利用者宅
利用者宅
・・・
利用者宅
(C) パッシブダブルスター(PDS)形
加入者線
収容局
STM-PDSの場合,双方向共に波長1.3μmでピンポン伝送方式を用いる.
ATM-PDSの場合,下り波長1.5μm,上り波長1.3μでATM方式を用いる.
ONUまたは
光カブラ(RT)
利用者宅
利用者宅
・・・
利用者宅
(3)光伝送方式
[伝送方式の種類]
①
②
③
④
TCM (Time Compression Multiplexing)
WDM(Wavelength Division Multiplexing)
DDM(Directional De-coupling Multiplexing)
OFDM(Optical Frequency Division Multiplexing)[注意]
[注意]
直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)も
OFDMと略称されるので,注意すること。
TCM
TCM(Time Compression Multiplexing)
① 光アクセスでも,メタリックケーブルにおけるN-ISDNと同様,
局から利用者宅に向かう下り方向と,その逆方向で,使用時間を割り当て,
送受信を切り替える時分割制御伝送方式(TCM)すなわちピンポン伝送方式が
使用される。
② 一般的には,上下とも同じ波長の1.3μmが使用される。
[上下信号を時間的に切り替えて交互伝送]
切換スイッチ
切換スイッチ
E/O,O/E両機能を持つ光源
光
光源
光源
光
(切換は同期をとる)
E/O:Electrical/Optical(電気/光変換)
O/E:Optical/Electrical(光/電気変換)
WDM(Wavelength Division Multiplexing)
WDM
① 1本の光ファイバで,波長が異なる複数のデータを多重化する方法。
② 送信側の合波器によって波長の異なる複数の光を搬送波(キャリア)として多重化。
③ 受信側の分波器によって波長を分けて受信する。
④ 複数の光信号を1本の光ファイバを使用して異なる方向に伝送する場合,合波・分
波の両機能を持つ光合分波器が必要である。
[WDMによる上下信号多重]
E/O
W
D
M
回
路
O/E
O/E
波長1
波長2
W
D
M
回
路
E/O
多重化する波長の数による分類
① 2波長WDM(2波)
: two wavelength WDM
② WWDM(4波~10波) : Wide Wavelength Division Multiplexing
③ DWDM(16波以上)
: Dense wavelength Division Multiplexing
2波長WDM
① 1,300 nm 帯と1,500 nm 帯の2つの波長を使用。
② 波長間隔が200 nm と広いので,
送信側の発振周波数制御を行う必要がない。
③ 合波分波器の簡略化が可能である。
④ 双方向伝送または短距離での2種類信号を
多重伝送する際に有効。
WWDM(4波から10波)
① 波長間隔を10 nm 程度として 4 ~ 10 波程度を多重化。
② 比較的,波長間隔が広いので温度補償回路が省略可能。
③ 比較的安いコストでWDMを構築可能である。
④ 10 Gbit イーサネットで採用されている。
⑤ 8波程度を多重化するWDMを,
特にCWDM(Coarse WDM)と呼ぶこともある.
DWDM(16波以上)
① 周波数間隔を50 GHz (波長約0.4nm)の整数倍とし,
数 10 ~ 数 100 波程度の光信号を高密度で多重伝送。
② 最大の多重波数は,送信機の周波数間隔,
光アンプの利得帯域幅で制限される。
③ 最小周波数間隔は 50 GHz,
光アンプ利得帯域幅は現時点で最大 8 THz であるため,
最大多重波数は 160 程度である。
④ DWDMを実現するためには,自動偏光制御技術,
波長偏光分離技術,高速光受信技術等が必要である。
DDM
DDM(Directional De-coupling Multiplexing)
TCMにおける切り替えスイッチの替わりに,光カプラを用いて上下信号を多重化
E/O
光
光
カ
プ
ラ
光
カ
プ
ラ
O/E
O/E
光
E/O
OFDM:Optical Frequency Division Multiplexing
光ファイバ上で,異なる周波数の光信号チャネルを多重化する方式
① 異なる周波数を持つ7~8程度の光信号を多重化する。
② WDMと似ているが,光FDMでは受信された光信号が
電気信号に戻された後で多重化されたチャネルを分離する。
WDMでは,光信号の段階で多重化されたチャネルを分離し,
分離された信号を電気信号に変換する。
OFDM
(4)光パスネットワークオペレーションの階層
光パスにおけるネットワークオペレーションの機能ブロックとして,
物理メディア層と既存のATM,SDH,PDHなどの中間に位置する
3階層モデルが提案されている。
① 光中継セクションレイヤ(光信号を伝送する光ファイバ伝送路に関するレイヤ)
② 光多重セクションレイヤ(光信号を多重化して転送するレイヤ)
③ 光チャネルレイヤ(SDHやATM等などの上位レイヤとの仲立ちを行うレイヤ)
ATM
SDH
PDH
・・・
光チャネルレイヤ
光多重セクションレイヤ
光中継セクションレイヤ
物理メディアレイヤ
光レイヤの3階層
機能ブロックモデル
光チャネルコネクション
光チャネル終端
光チャネル終端
波長分波
光増幅
光多重セクション
アダプテーション
光多重セクション
アダプテーション
セクション
切替え
光多重セクション
切替え
光多重セクション
切替え
光多重セクション終端
光多重セクション終端
光中継セクション終端
光中継セクション終端
光増幅,
分散保障
光チャネル
クロスコネクション
波長合波
分配
光増幅
(5)光アクセスにおける波長
光アクセスにおける波長について,以下のトポロジー別に示す。
(a) シングルスター(SS)型
(b) アクティブダブルスター(ADS)型
(c) パッシブダブルスター(PDS)型
さらに,PDSを転送モードで分類すると,
次のように分類することができるので,それぞれ別に示す。
① STM-PDS(Synchronous Transfer Mode PDS):同期転送モード
② ATM-PDS(Asynchronous Transfer Mode PDS):非同期転送モード
シングルスター(SS)型の場合
① 上下共に同一波長1.3μmでピンポン伝送方式,
TCMで通信が行われる。
② SS型の場合,利用者宅にONUを設置する必要がある。
アクティブダブルスター(ADS)型の場合
① 加入者線収容局とRTの間は,
上下共に同一波長1.3μmでピンポン伝送方式。
TCMで通信が行われる。
(SSと同じであることに留意)
② 利用者宅とRT(光分岐装置)の間は,
電気的に分岐されて通信が行われる。
STM-PDS
● STM-PDSは,基本的に同期転送モードである。
● 上下共に波長1.3μmを用いる。
● ピンポン伝送方式で通信する。
SDH(同期ディジタルハイアラーキ)に規定されるフレームは,
125μ Sec の周期で多重化され,
以下の転送モジュールがある。
① STM-1
② STM-4
③ STM-16
④ STM-64
155.52 Mbps
622.08 Mbps
2488.32 Mbps
9953.28 Mbps
APON (ATM Passive Optical Network)
ATM-PDS
● ATM-PDSはAPONとも呼ばれる。
● 加入者線収容局とスターカプラの間は
ATMで多重化される。
● 上り波長1.3μm,下り波長1.5μmを用いて通信する。
(4) 1心伝送方式と2心伝送方式
① FTTHでは,光スプリッタなど電源を用いない受動部品,
いわゆるパッシブ部品のみで構成されているので,
基地局と加入者局だけに依存した伝送が行われる。
② このとき,異なる波長の光を1本の光ファイバに多重化するWDM方式で
伝送することができる。これを1心伝送方式と呼ぶ。
③ 同一エリアで映像とインターネット(データ)の契約者数が極端に違うとき,
映像とデータを別ファイバで伝送する方式がとられることもある。
これを2心伝送方式と呼ぶ。
1心伝送方式と2心伝送方式の例
2心伝送方式を使うと,
映像の多重度とインターネットの多重度を別々に扱うことができ,
それぞれ個別に設計することができる。
(a) 1心伝送方式
下り1.55μm(映像)
事業者
WDM
上り1.31μm(データ)
WDM
利用者宅
下り1.49μm(データ)
(b) 2心伝送方式
下り1.55μm(映像)
事業者
利用者
利用者宅
宅
上り1.31μm(データ)
下り1.49μm(データ)
光ファイバー通信における多重度
光ファイバの減衰特性は,波長1.55[μm]付近で最低となり,
その近くの波長でも十分低く,実用的な減衰定数を得ることができる。
波長1.55[μm]付近で利用可能な波長帯域幅を,
例えば1.500[μm]から1.600[μm]の0.1[μm]とすると,周波数帯域は
f 1 = 3×10 8/(1.5×10 -6 ) = 2.000×10 14
f 2 = 3×10 8/(1.6×10 -6 ) = 1.875×10 14
f W = f 1 - f 2 = 0.125 ×10 14 = 12.5 ×10 12 = 12.5 [THz]
この周波数帯域に,光の搬送周波数を 100 [GHz] 間隔で配置すると,
125 チャネルの搬送波をのせることができる。
1つの搬送波に 10 [Gbps] の情報を乗せると以下の伝送量になる。
125 × 10 × 10 9 = 1.25× 10 12 = 1.25 [Tbps]
周波数安定化の必要性
周波数間隔が接近しているので,OFDMやWDMを使うには,
複数の半導体レーザの周波数を安定化させる必要がある.
例えば,ファブリペロー共振器をも用いることにより,
共振周波数間隔を確保し,周波数間隔を
数 10 [GHz] ~ 数 100 [GHz]
まで設定することができるので,ひとつの周波数基準で
周波数間隔を等間隔に安定化させることができる。
第6章 ネットワーク技術
6.4 アクセスネットワーク技術
6.4.1
6.4.2
6.4.3
6.4.4
6.4.5
アクセスネットワークとは
メタリックアクセス技術
光アクセス技術
固定無線アクセス技術
CATVアクセス技術
P-P(Point to Point)
無線基地局
6.4.4 固定無線アクセス
(1)トポロジー
無線基地局
加入者局
加入者局
P-MP(Point to Multi-point)
加入者局
加入者局
加入者局
加入者局
加入者局
無線基地局
P-PとP-MP
■ P-Pは,大容量のデータ転送を行う企業ユーザ向け,
P-MPは,個人ユーザ向けである。
■ P-MPでは,衝突管理,多元接続,
通信内容の傍受対策が必要である。
(2)変調方式
(a)P-P方式における変調方式
① 高速系(52~156Mbps)
16値以上の直交振幅変調
(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)
② 低速系(6~45Mbps)
4相位相偏位変調
(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)
4値周波数偏位変調
(4値FSK:Quadrature Frequency Shift Keying)
16値以上の直交振幅変調
(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)
なお,QAMの場合,現在64値までが可能である.
(2)変調方式
(b)P-MP方式における変調方式
① 16値以上の直交振幅変調
(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)
② 4相位相偏位変調
(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)
③ ガウスフィルタ最小周波数偏位変調
(GMSK:Gaussion filtered Minimum Shift Keying)
④ 直交周波数分割多重
(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)
MSK(Minimum Shift Keying)
[用語解説]
■ GMSK
2値の入力信号をガウスフィルタと呼ばれる低域フィルタで
カットし,カットされた信号にMSK変調を行う方式。
使用帯域を狭帯域化することができるので,
GSMやDCS1800方式の携帯電話に利用されている。
■ MSK変調
FSK方式で周波数が変わったとき,位相が±90度になる
周波数では,元の信号を取り出しやすいことを利用する。
この関係が成立する周波数のうち
差が最も小さい周波数を選択する方式。
(3)通信方式
(a) P-P方式における通信方式
① 通信相手が決まっているので単純であるが,上り方向と下り方向を切り
替える必要がある。
② アナログ携帯電話におけるHICAP方式で用いられていた
周波数分割二重化(FDD:Frequency Division Duplex)方式も
採用されている.
(3)通信方式
(b) P-MP方式における通信方式
P-MP方式では,通信相手が多数であるため,多重化や衝突管理が必要である。
(ただし,サービスによって色々な方式が採用されている)
①周波数分割二重化方式
(FDD:Frequency Division Duplex)
②時分割二重化方式
(TDD:Time Division Duplex)
③周波数分割多元接続方式
(FDMA:Frequency Division Multiple Access)
④時分割多元接続方式
(TDMA:Time Division Multiple Access)
⑤直交周波数分割多重方式
(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplex)
⑥搬送波検出多元接続・衝突回避
(CSMA/CA:Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)
P-MPにおける方式のバラエティ
TDMA/TDD(Time Division Multiple Access/Time Division Duplex)
① PHS-WLLは,PHS と同様,TDMA/TDDである。
② ソニーのbit-driveのFWAサービスの室内ユニットには
10BASE-Tイーサネットのインターフェースが
用意されており,CSMA/CD方式で衝突を防いでいる。
③ スピードネットの無線インターフェースでは,
IEEE802.11をベースに
周波数ホッピング方式(FH-SS)を適用することで
通信傍受を困難にしている。
(c) P-MP方式におけるその他の通信方式
動的スロット割り当て(DSA:Dynamic Slot Assignment)方式
実際に交換されているトラフィックの量に応じて,
帯域割当てを動的に変更する.
[例] 日本テレコムのFWAサービス
NTTアクセスサービスシステム研究所のAWA(Advanced Wireless Access)
[注]AWAは,いつでも,どこでも同一端末で無線でネットワークアクセスを
可能とすることを目的としているので,FWAではなく NWAと捉えることが
できる。ただし,NTTビル内の各種サーバと利用者宅のモニタ用端末を
光ファイバで接続し,利用者宅の屋内部分をAWA化するという意味で,
無線LANの延長としてのFWAサービスとしても利用可能である。
AWAでは,伝送方式としてATM方式,イーサネット方式を使用している。
NWA(Nomadic Wireless Access)
(4)狭帯域・広帯域アクセス技術
(a)周波数帯域による分類
① MMDS
( Multi-channel Multi-point Distribution Service )
周波数帯が 10 GHz以下で
P-MP 方式による接続を行うもの。
② LMDS
( Multi-channel Multi-point Distribution Service )
周波数帯が10GHz以上のもの。
当初の目的は,無線による映像配信であり,
光ファイバに相当する高速通信を実現することにある。
(a) MMDSサービス例
MMDS ( Multi-channel Multi-point Distribution Service )
① 米国連邦通信委員会(FCC)の割り当て
無線インターネット用に 2.5~2.69 GHz の周波数帯域を割り当てている。
② スピードネットの2.4GHz帯の電波を使った通信サービス
スピードネットの特徴は,無線方式を主体として,必要に応じて光ファイバや
メタリックケーブルを併用する点にある.すなわち,東京電力の光ファイバ網に
無線基地局を接続し,利用者宅との間を2.4GHz帯の電波で通信している。
③ PHS-WLL(PHS Wireless Local Loop)
PHSの技術を利用して固定無線アクセスシステムを構築するPHS-WLL
サービスも広義的にはFWAサービスと捉えることができる。PHSと同一の
1.9 GHz 帯電波を利用し,PHSサービスエリア外でサービスを提供する.
PHSによるデータ通信と同一設備を利用でき,かつ安価なコストでシステムを
構築することができる。
LMDS(Local Multi-point Distribution Service)
(b) LMDSサービス例
① LMDS用電波の割り当て
28 GHz 帯付近に 1.3 GHz 幅の周波数。
② 伝送フレーム形式
通常,ATMセルをベースとした形式である。
フレーム形式がATMベースであるため,
ATMバックボーンとの接続が容易である。
③ 多重化方式
多重化方式としては,現在のところ以下の方式が採用されることが多い。
下り方向 : TDM
上り方向 : TDMA
(Time Division Multiplexing)
(Time Division Multiple Access)
LMDSサービス例
FWAタイブのBフレッツサービス
NTT東日本では,光ファイバの引き込みが難しい
マンション・オフィスビル等を対象にした
FWAタイブのBフレッツサービスを提供。
このタイプでは建物付近の電柱に無線基地局を設置し,
26GHz帯の無線で最大23Mbpsのデータ通信を
提供している.
6.4.4 CATVアクセス技術
(1)CATVとは
CATVは,基本的にはテレビ放送の再送信である。
通常,以下のように行われる。
① VHFやUHFの地上放送波を
広帯域アンテナスタックで受信する。
② 独自のチャネルを設定して搬送波を変調する。
③ 放送用ヘッドエンド装置から
光ファイバや同軸ケーブルで配信する。
(2)周波数帯域
① 映像伝送周波数帯は,55 MHz以上である。
② 最高周波数は,伝送路によって 350 MHz,450 MHz,750 MHz等と様々である。
③ 情報伝送には,55 MHz 以下が用いられるが,30 MHz 以下は雑音が多いので,
30 MHz から 55 MHz の帯域が使用される。
上り 3.2 MHz 幅
下り 6 MHz 幅
・・・
流合雑音
情報伝送/
映像中継
30 MHz
55 MHz
放送チャネル
(映像伝送)
・・・
450 MHz
(3)CATVの流合雑音
CATVでは,加入者宅側で発生する電気的な雑音が集まり,
システム全体に悪い影響を及ぼすことがある。
この雑音を流合雑音(ingress noise)と呼ぶ.
特に,オフィスビルやマンションなどの集合住宅にCATV回線を
引き込む際,主配線盤(MDF:Main Distribution Frame)に
ケーブルを1本引き込み,配線を分岐させることが多い。
この場合,家庭用電化製品等の電気的雑音がTV端子から混入し,
上り方向の回線に対して集まることで,全体として無視できない
雑音となることが多い。
(4)流合雑音対策
① 高周波帯に上位変換するアップコンバータ(up converter)を
上り回線に接続する。
② 建物内ではTV用同軸ケーブルを使用しないで xDSL や Home PNA を用いる。
Home PNA とは電話用銅線ケーブルを使用して,音声通話で使わない
5.5 MHz ~ 9.5 MHz の帯域を使ってネットワークを構築する方法である。
③ 伝送媒体として光ケーブルを用いる。
伝送路としては,従来,耐雑音性が良い同軸ケーブルだけで
配信することが多かったが,それでも加入者宅等からの流合雑音を
受信しやすいので,幹線部分に光ファイバを敷設して,
加入者宅に近いところで同軸ケーブルで分岐させる
HFC (Hybrid Fiber and Coax)方式が現在の主流である。
(5)ケーブルモデムにおける伝送速度
ケーブルモデムの変調方式 64 QAM では,
1 シンボルで 6 ビット( 64 値)を伝送できる。
したがって,30 [Mbps] を実現するためのケーブルモデムの変調速度は
30 [Mbps] / 6 [bits]=5 [M baud]
である。
256 QAM では,1 シンボルで 8 ビット(256値)であるから,
変調速度 5 [M baud] で
5 [M baud] × 8 [bits] = 40 [Mbps]
の速度を実現することができる。
J.122の当初の上り方向変調方式である QPSK ( 4 値位相偏位変調)では,
1回の変調で 2 ビット(4 値)を送信できるので,変調速度の 2 倍が通信速度である。
6.4 アクセスネットワーク技術
完