第12回 情報デザイン(4) 情報の構造化と表現 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 [email protected] 1-1 情報構造の捉え方 • 構造化:物事を成り立たせるために必要な要 素を組み立て,ひとまとめのモノにする作業. – 構造:ある物事が成り立つための組み立てとその 情報要素のしくみ. • 構造化の目的は,複雑な情報を扱いやすくし, そのなかにある情報の関係性を示し,わかり やすくすること. – 情報の意味を要素に分解し,論理的に納得のい くしくみと形にまとめる. • KJ法による構造化のプロセス 1. データの書き出し:1つのデータを1枚のカード に書く. 2. 分類・ラベリング:類似のカードを集めてカテゴリ 化し,カテゴリ名をつける. 3. 図解化:カテゴリ相互の関係を図示する. 4. 叙述化:図的に表現されたものを文章化する. 1-2 情報の関係性 • 2つ以上の要素を何らかの統一的な観点か らとらえることができるとき,これら2つの要素 はその観点において「関係がある」. • 情報要素の相互関係は,大まかに,以下の5 つで表すことができる. – 並列,順序,分岐,因果,階層(テキスト p.115 の 例を参照のこと) • 相互関係は図解表現でよりわかりやくすく表 すことができる. 関係の基本図形 • 矢印による表現 A から B への変化 A から B への因果関係 A B A B 対立 相関関係・双方向の因果 A B 双方向の因果 情報の双方向性 矢印の太さで関係性の強さを表すことができる.破線は弱い印象を与える. 関係の基本図形 • 潜在変数から顕在変数への因果 総熱量 肉類 洋食傾向 乳製品 酒類 洋食傾向が潜在的な原因(潜在変 数=直接測定されない). それが4つの顕在変数に結果とし てあらわれる. 関係の基本図形 • 顕在変数から潜在変数への因果 総熱量 4つの顕在変数が原因.洋食傾向と いう潜在変数を規定.(あるいは,4 変数が1変数に合成される) 肉類 洋食傾向 乳製品 酒類 構造と表現 • 構造と表現の組み合わせにより,情報提示 方法のバリエーションが生まれる(テキスト p.117) – 構造:どのように配置するか – 表現:何を配置するか(何を用いるか) 1-3 情報構造の種類 • LATCH(「掛け金」):ワーマン(Wurman)による 情報整理手法.構造化の手法. – 位置(Location):場所,地域,住所 – アルファベット(Alphabet) – 時間(Time) – 分野(Category) – 階層(Hierarchy).もともとは連続体(Continuum) 情報の構造化と記憶 • 構造化された情報は記憶されやすい • Bower, Clark, Lesgold, & Winzenz (1969) の実 験 • 4カテゴリ(動物・衣服・乗物・鉱物)の単語を 覚える – 体制化条件:カテゴリごとに単語の階層構造を示 す木 – 統制条件:木は用いるが単語はバラバラ 再生された単語の平均数 試行 条件 1 2 3 4 体制化 73.0 106.1 112.0 112.0 ランダム 20.6 38.9 52.8 70.1 • 場所法(Method of Loci) • よく知っている道にそって,記憶材料を場所 に関連づける – 道の例:本屋,レコード店から図書館 – 材料例:牛乳,ホットドッグ,ドッグフード,トマト, バナナ,パン – 本屋の前に牛乳の水たまり,レコードの上で回る ホットドッグ,・・・ • 記憶材料を強引に構造化する 情報構造の種類 • 並列・順列・分岐・因果・階層の5関係におけ る,要素のつながりの表現. – リニア(直線)構造:複数の情報を一定の順番で ユーザに見せる. – ツリー(階層)型:大分類から小分類へ – 放射(ネットワーク)型:関連する事柄をリンクで結 ぶ.複雑な構造 – 他にもいくつかの種類の構造がある(テキスト p.120-121 参照) ウェブサイトのナビゲーションとリンク • ナビゲーション:ユーザがサイト内を迷うこと なく目的のコンテンツにたどり着けるよう案内 する.リンクの集合.「案内板」 – グローバルナビゲーション:サイト全体での主要 コンテンツへ案内する – ローカルナビゲーション:局所的なまとまりの中で のナビゲーション アマゾンのグローバルナビゲーション アマゾンのローカルナビゲーション ナビゲーションのデザイン(1) 分類項目式ナビゲーション 格納式ナビゲーション ナビゲーションのデザイン(2) テキストリンク式ナビゲーション パンくず式ナビゲーション 2-1 表現の基礎 • 色彩の心理学的特性をデザインに利用する. • 色彩の3属性 – 色相:色の種,色合い – 明度:白―黒の次元 – 彩度:あざやかさ.白―灰色―黒は彩度ゼロ.純 色が最も彩度が高い. • ウェブで探すと,色彩の3属性に関するカラー 図版がいろいろ見つかります. – 色相環 – マンセル表色系 色の対比とコントラスト • 色相対比:色と色のコントラスト.違う色相の 2色を隣り合わせると,それぞれの色が本来 の色味を増して輝いて見える.補色の関係に ある色を並べると,最も強いコントラストが得 られる(補色対比). – 補色:2つの色を混ぜたとき灰色(無彩色)になる 色.色相環上で反対側にある色がおおよそ対応 する. • 他に,明度対比(カラー p.2),彩度対比. 図形要素のまとまりの要因 • 形態の心理学的特性をデザインに利用する. いくつかの要素がまとまって図として認識され るとき,要素への分解は意味がない. • ゲシュタルト心理学 – 全体性重視:全体は要素の和ではない – 与えられた刺激の時・空的な配置に基づき,いか にして知覚的な分凝と全体のまとまりが成立する かを追求. • ゲシュタルトの法則(ウェブでしらべてみましょ う) – 類同の法則(要因) – 近接の法則 – 閉合の法則 – よい連続の法則 ちょっと横道へ:錯視 • 北岡明佳先生の錯視サイト http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/indexj.html • ミューラー・リヤー錯視など基本的な錯視は, サイト内の「錯視のカタログ」を参照のこと レイアウトの基本4原則 • レイアウトの基本4原則 – 近接:たがいに関連する項目は,グループ化して まとめる. – 整列:各要素は整列して配置する.他との視覚的 な関係性を持たせる. – 反復:一貫性,継続性を持たせる. – コントラスト:強弱関係をつける. • 参考:http://webdesignrecipes.com/4-factorof-designing/ 2-2 情報表現の種類 • 情報の可視化:人間が直接見ることができな い現象や事象,あるいは関係性などの情報 を,「見る」ことができる画像・映像・グラフ・表 などにすること. • 可視化された情報は,情報の受け手によって 解釈される. セリフ 考えている こと • 数値情報は,グラフやチャートに置き換えるこ とで,わかりやすく,視覚的に表現できる. – インフォメーショングラフィックス:情報をわかりや すく伝えるために,文字ではなく,図案化して伝え る手法. – 適切でない表現がされていることも多い. • 参考文献:吉田一「英語のセンター試験の統計グラフ 問題を論評する」(数学セミナー2007年12月号)
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