火山噴火 ー予知と減災を考えるー 第3章

火山噴火
ー予知と減災を考えるー
第3章 噴火は予知できるか?
3083-0049
佐野 友絵
◆目次◆
噴火予知の五要素とは?
 地震を調べる
 地殻変動を測る
 磁気と地電流で見るマグマ活動
 火山ガスの変化を見る
 火山のホームドクター

◆噴火予知の五要素
火山の現在の状態
次に何が起こるか?
いつ
どこから
噴火の時間経過にしたがって
どんどん変化していく
噴火予知の五要素
どのような形式で
いつまで続くのか
どのくらいの大きさ・激しさで
地震を調べる
ー高周波地震ー
火道周辺で発生する地震
マグマは火道(前回の噴火で埋められ
ている)をバリバリと割って上昇し、その
際に地震が発生する。
マグマだまり周囲で発生する地震
http://www2.edu.ipa.go.jp/gz/index.html
マグマが上昇する前にマグマだまりが
膨張し、周囲の岩石が無理やり破壊さ
れ、地震が発生する。
地震を調べる
ー低周波地震ー
船に乗っているときのよう
にユラユラと揺れる地震
物質の動きによって発生する
・火道やマグマだまりの中にある液体や気体状の物質が動く
→地下深くの高圧で存在できる状態(超臨界状態)の水や二酸化炭素
マグマに熱せられた地下水によって発生する
爆発的な噴火に伴って発生する
火口直下の火道内のたまっていたガスが突出する際にまわりの岩石を揺
すって発生する
地震を調べる
ー火山性微動ー
・人間にはほとんど感じない小さい地震
・地震の始まりと終わりもはっきりしない
(短い・・・数秒程度
マグマや火山ガスの上昇
長い・・・数週間)
地下水の震動
噴煙の放出
直前予知の手がかり
火山性微動が頻発し、数時間~数日で噴火につながることが多い
地震を調べる



マグマがどこに上がってくるか
マグマが地上に噴出するまでの時間の推定
地震回数の変化を過去の噴火と比較
ハワイ キラウエア火山
北海道 有珠山
など
地殻変動を測る
火山体の膨張と収縮
傾斜計
1万メートルの棒の片方がミ
リメートル持ち上がったくり
あの傾きまで測定できるほ
ど、精密な機器
地殻変動を測る
噴火に伴う地殻変動
←2000年の有珠山噴火で生じた地殻変動
水平方向の地面の動きによって鉄道の線路が曲
がってしまった
←1978年の有珠山噴火で生じた地殻変動
建物が断層によって崩れてしまった
磁気でみるマグマ活動
◎地表にあるすべての岩石は「磁化」している
→岩石が磁石の力を持っている
・流れてきた熱い溶岩は、地球の磁場と同じ方向に磁化がつくという性質をもつ
この時ついた磁場は冷え固まった溶岩の中に保存される→残留磁化
ふたたび熱を受けると・・・
磁化が消滅する
磁気でみるマグマ活動
磁性鉱物
磁性が消滅する固有の温度を持つ
キュリー温度
具体的には・・・
○火山岩にゆっくりと熱を加えていくと、摂氏600℃くらいで磁化が完全に消える
○ゆっくり冷やしていくと、600℃を切ったあたりのところから磁化が復活する
地磁気調査
磁化の変化を調べることで地球内部の熱の変化を
調査することができる
磁気でみるマグマ活動
<地磁気調査の実際>
火山のそばで磁力を繰り返し測定していると、磁力が
日ごとに変化していくことがある
①マグマ自体の温度が変化したため
②マグマの上昇にともなって周囲の岩石の
温度が変わったため
磁気でみるマグマ活動
☆★多くの火山では噴火の前に磁場の強さが減ることが観測されている
マグマが上昇して火山を構成する岩石の温度
が上がると、その部分だけ磁力が減少する
噴火
←阿蘇山の噴火にともなう磁力の変化
阿蘇山では1989年夏から火山活動があり、ストロ
ンボリ式噴火を経て、火口周辺には多量の火山
灰が堆積していた。
19902月になると大雨によって火山灰が火口内
に流れ込んで、火口をふさぎ湯だまりを作ってし
まった。→見かけ上、火山活動は静穏化したよう
に映っていた
地電流でみるマグマ活動
地下には微弱な電流が流れている。(地電流)
地下深部にあったマグマがゆっくりと上がってくると、地電流の流れ具合が変わる
一般に・・・高温のマグマは固まった岩石に比べて電気を流しやすい
抵抗が低くなると、地下のマグマが
地上に近づいたことを示す。
火山ガスの変化を見る
火山ガス
95%以上が水蒸気+その他のガス(二酸化炭素・二酸化硫
黄・硫化水素・塩化水素など)
火山ガス全体の放出量と個々のガスの相対的な比率に関する観測データも
噴火予知に使用される
草津白根火山
噴火の1年前から二酸化炭素/硫化水素比が増加した
噴火の前に噴気中の水素濃度が増加した
三宅島
ピナツボ火山
山頂に大きな火口が出現してから二酸化硫黄の放出
が急激に増加した
逆
プリニー式噴火が起こる1週間くらい前に二酸化硫黄
の放出量が減った
火山のホームドクター(まとめ)
★☆火山ガスや放熱量は個々の火山によって大きく異なっている
火山ごとにかなり長期に渡って観測を継続し、データを集める必要がある。
さらに、火山ガスや放熱量は日常的にも多少の変動があるため、噴火のシナリ
オを日常のノイズから見分けるために、その火山に熟知した研究者も必要であ
る。
活火山ごとにホームドクターが必要である