地球規模での環境問題 温暖化と森林生態系の役割(その2) 前回のまとめ Over the last 400,000 years the Earth's climate has been unstable, with very significant temperature changes, going from a warm climate to an ice age in as rapidly as a few decades. These rapid changes suggest that climate may be quite sensitive to internal or external climate forcings and feedbacks. As can be seen from the blue curve, temperatures have been less variable during the last 10 000 years. Based on the incomplete evidence available, it is unlikely that global mean temperatures have varied by more than 1°C in a century during this period. The information presented on this graph indicates a strong correlation between carbon dioxide content in the atmosphere and temperature. A possible scenario: anthropogenic emissions of GHGs could bring the climate to a state where it reverts to the highly unstable climate of the pre-ice age period. Rather than a linear evolution, the climate follows a non-linear path with sudden and dramatic surprises when GHG levels reach an as-yet unknown trigger point. 炭素の単位:100,000,000トン 温暖化メカニズム シュテファン・ボルツマンの法則(1876) 絶対温度が0度以上のあらゆる物質は、その温度の4乗に比例 したエネルギーを電磁波の形で放射している。 E=σT4 E:放射エネルギー、 T:絶対温度 σ:定数:5.67×10-8[Wm-2K-4](ステファン・ボルツマンの定数) また、放射される波長は絶対温度に反比例する。 λm[μm]= 2897/T (ウィーンの変位則) 地球の平衡温度が15℃を維持できる仕組み 太陽放射 温室効果 反射 有効放射 地表面からの長波 放射 大気による 吸収 大気からの 放射 短波放射 地 球 熱交換 どこから温暖化ガスが排出されるか? 日本の部門別二酸化炭素排出量の推移- 各部門の間接排出量 エネルギー 変換部門 産業部門 運輸部門 業務その 他部門 家庭部門 工業プロ セス 廃棄 物 1990 82.2 476.1 217.1 143.9 129.1 57.0 16.9 1991 82.7 464.3 228.9 148.8 130.7 58.6 17.4 1992 82.6 461.9 236.6 152.7 137.7 59.1 18.4 1993 82.1 450.9 238.7 153.4 139.2 58.2 18.3 1994 84.8 478.1 248.0 163.3 146.1 59.2 20.9 1995 84.3 478.4 255.2 162.9 149.1 59.2 21.6 1996 84.2 490.3 261.6 164.8 148.8 59.0 22.4 1997 85.0 486.8 265.1 163.6 145.2 57.6 23.4 1998 81.8 454.9 264.4 173.1 144.6 52.3 24.0 1999 82.5 466.8 268.3 182.3 152.6 51.9 23.9 2000 82.7 469.9 264.3 185.9 158.1 52.8 24.9 2001 77.6 451.8 266.6 188.3 154.2 50.6 24.5 出所)地球温暖化対策推進本部[2003] *各排出量の単位は[百万トン-二酸化炭素(CO2)換算] 炭酸ガスはどうしたら減らせるか? 世界の取り組み - 京都議定書 - ‘92.06 国際連合環境開発会議(地球サミット:ブラジル・リオデ ジャネイロ)において、「気候変動枠組条約」を採択 世界の各国が一体となって大気中の温室効果ガスの濃度を削減、 安定化させることに取り組むことを確認。 ‘94.03 「気候変動枠組条約」の発効 ‘97.12 京都市で開かれた第3回締約国会議(COP3)において、 「京都議定書」を採択 現在140カ国及び欧州共同体が締結している(’05.2.2現在)。ロシアの締結により発効 要件が満たされ、2005年2月16日に発効。 地球温暖化防止京都会議:COP3について COP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)は、1997年12月1日から11日まで京都で開催さ れ、世界の161カ国の政府関係者、NGO、プレス等あわせて約1万人が参加。 COP3で採択された「京都議定書」は、法的拘束力のある先進各国の温室効果ガスの削減目 標を規定するとともに、途上国についても一定の参加を促すもの。 (ポイント) ○先進国の温室効果ガス排出量について、法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定。 ○国際的に協調して、目標を達成するための仕組みを導入(排出量取引、クリーン開発メカニズム、 共同実施など) ○途上国に対しては、数値目標などの新たな義務は導入せず。 ○数値目標 対象ガス : 二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFC、PFC、SF 吸収源 : 森林等の吸収源による温室効果ガス吸収量を算入 基準年 : 1990年 目標期間 : 2008年から2012年 目 : 各国毎の目標→日本△6%、米国△7%、EU△8%等。 標 6 (HFC、PFC、SF6 は、1995年としてもよい) 先進国全体で少なくとも5%削減を目指す。 吸収源の算入 1990年以降の新規の植林、再植林及び森林減少に限って、温室効果ガスの純吸収量を 算入できる。(第3条3項) 「京都メカニズム」 (1)共同実施(第6条) ○先進国(市場経済移行国を含む)間で、温室効果ガスの排出削減又は吸収増進の事業を実 施し、その結果生じた排出削減単位(ERU)を関係国間で移転(又は獲得)することを認める制 度。 (2)クリーン開発メカニズム(CDM)(第12条) ○途上国(非附属書Ⅰ国)が持続可能な開発を実現し、条約の究極目的に貢献することを助 けるとともに、先進国が温室効果ガスの排出削減事業から生じたものとして認証された排出削 減量(CER)を獲得することを認める制度。 (3)排出量取引(第17条) ○排出枠(割当量)が設定されている附属書Ⅰ国(先進国)の間で、排出枠の一部の移転(又 は獲得)を認める制度。 以下の両方の条件を満たした後、90日後に発効 [1]55ヶ国以上の国が締結 [2]締結した附属書Ⅰ国の合計の二酸化炭素の1990年の排出量が、全附属書I国の合計 の排出量の55%以上 附属書Ⅰ オーストラリア、 オーストリア、 ベラルーシ、 ベルギー、 ブルガリア、 カナダ、 チェッコ、 デンマーク、 欧州経済共同体、 エストニア、 フィンランド、 フランス、 ドイツ、 ギリシャ、 ハンガリー、 アイスランド、 アイルランド、 イタリア、 日本、 ラトヴィア、 ヒリテンシュタイン、 リトアニア、 ルクセンブルグ、モナコ、 オランダ、 ニュー・ジーランド、 ノールウェー、 ポーランド、 ポルトガル、 ルーマニア、 ロシア連邦、 スロバキア、 スロベニア、 スペイン、 スウェーデン、 スイス、 トルコ、 ウクライナ、 グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国、 アメリカ合衆国 日本の森林で3.9%のCO2を吸収出来るか? ●‘「京都議定書」の目標は、2010年までの約束期間中に、90年に比べて5%の温室効果 ガスの削減をするというもの。日本に与えられた削減目標は6%です。 ●日本政府は日本の温室効果ガス削減分の6%のうち、 3.9%を森林によるCO2の吸収効果に頼ろうとしている。 (2002年3月決定の「地球温暖化対策推進大綱」より) ●林野庁が「地球温暖化防止森林吸収源10カ年対策」を発表(02年12月26日) 1)健全な森林の整備:多様で健全な森林整備を展開する。 2)保安林等の適切な管理・保全等の推進:水源涵養など保安林の目的機能を維持するた めの管理・保全を推進する。 3)木材及び木質バイオマス利用の推進:地域材の利用、残材の木質バイオマス利用を推 進する。 4)国民参加の森林づくり等の推進:国民の直接参加による森林の整備・保全活動や森林 環境教育を推進する。 京都議定書では、新たに造成された森林や人為的な管理を行っている森林 の二酸化炭素吸収量も削減目標の達成上カウントできることとされています。 我が国は1300万炭素トン、1990年の温室効果ガス総排出量と比較し て3.9%まで計上することが認められています。 日 本 カナダ ロシア フランス ドイツ イギリス スウェーデン 基準年排 吸収量適用上限値 出比 1300 万炭素トン 3.90% 1200 万炭素トン 7.30% 3300 万炭素トン 88 万炭素トン 124 万炭素トン 4.00% 0.60% 0.40% 37 万炭素トン 58 万炭素トン 0.20% 3.00% 京都議定書では、森林による二酸化炭素の吸収を促進する手法として「新規植林」、 「再植林」、「森林経営」という3つの手法が示されています。 新規植林:過去50年来森林がなかった土地に植林 対象地域はごくわずか 1962年 1990年 2012年 再植林:1990年以来一度も森林でなかった土地に植林 対象地域はごくわずか 1962年 1990年 2012年 森林経営:持続可能な方法で森林の多様な機能を十分に発揮するための一連の作業 人為活動の確保が課題 1962年 1990年 2012年 森林の炭素蓄積量はどうやって推定? 森林は炭素を固定・蓄積させるか? ① ② 森林の成熟過程における 生産量、呼吸消費量の変化 ・同化器官の現存量は 林冠が閉鎖するまで増 加するが、その後は一 定となる。 ・非同化器官の現存量 は林冠閉鎖後も増加 する。 ③ ・したがって、呼吸消費 量も増加するため、純 生産量は減少して、見 かけ上ゼロに近くなる。 総生産量 CO2放出 呼吸 成長量 土壌動物の呼吸 (分解) 落葉落枝 林床有機物 Dead Biomass 根の呼吸 土壌 Soil 奈良・春日山照葉樹林の炭素動態 (トン/ha・年) 総生産量26 CO2放出 呼吸 葉10 幹 8 成長量2 土壌動物の呼吸 (分解)8 落葉落枝4 林床有機物 Dead Biomass 枯死脱落? 土壌 Soil 根の呼吸2 奈良・春日山照葉樹林の炭素動態 茨城県北浦村の20年生のコナラ林 茨城県北浦村の20年生のコナラ林(管理区:下草刈りや落ち葉掻きを行う農用林、 放置区:何も利用しない二次林)と天然林での炭素循環試験の一例 ① ② ③ ・なぜ、「森林経営」が吸収源とし てカウントされるか? 持続的森林経営で削減目標が 達成できるか? ー 森林・林業の現状 - The First: Reforested area expanded at the rate of 300 to 400 thousand ha per year from the last half of the 1950’s o the first half of 1970s. Afforestation Harvesting 600 432 361 298 300 163 22 06 20 00 20 90 19 85 19 80 19 75 19 70 19 65 19 60 19 55 19 51 19 48 19 45 0 19 Area (1,000 ha) 900 The Second: The Planting Density was very High which aimed for short rotation reflecting the “WOOD BOOM” in those days. 28 years-old Japanese Cedar Forest without any Thinning and Tending. The age-classes Structure of Afforestation of Private Forests A rea(1,000ha) 3000 Need for Thinning Havesting 2000 1000 Ⅹ Ⅸ Ⅹ Ⅶ Ⅹ Ⅴ Ⅹ Ⅲ Ⅹ Ⅰ Ⅹ Ⅸ Ⅷ Ⅶ Ⅵ Ⅴ Ⅳ Ⅲ Ⅱ Ⅰ 0 A g e-class The age class structure of Sugi and Hinoki of private forests is approaching economic maturity. By area, nearly 60%, 51% of Sugi and Hinoki are still in age classes Ⅴ to Ⅷ, respectively. These correspond to ages 20 to 40. The age class structure does not show a marked difference from area to area in Japan. Stumpage price Middle Log price Grade one 3m×10.5cm sq \80,000 Price of Sugi Price (JY /m 3 ) \60,000 \40,000 \20,000 \0 1950 1960 1970 1980 1990 2000 The stumpage price A continual decline since 1980. The price of stumpage in 2004 was one-fifth of the price in 1980. The log price The price of middle-sized logs was 17,200 yen/cubic meter in 2000 This is around the level of the late 1960s. The grade one 3 metre 10.5 cm squares This prices are cheaper than the equivalent squares of North American tsuga The price in 2000 was 47,400 yen/cubic meter. Price Index of Forestry Products 90 100 Price of Sugi Log Price of Sugi Stumpage 49 Price Index of Whole Sales 85 36 0 70 100 Price of Construction Material Lobor Cost for 148 Harvesting Piece of Western Hemlock Price of Seedlings 168 1980 2000 Factors affecting Forestry Production (Comparison between 1980 and 2000) Figuree are indexes in 2000 on the base of the standard in 1980=100 Souce:Bank of Japan ”Wholesale price index long term time series data” Mountain villages cover 50% of National land area The population accounts for only 4% The ratio of the elderly (age over 65) is 25% (Significantly high in comparision to the national average of 15%) 温暖化ガスの削減目標達成のルール 排出量取引 (Emission Trading Scheme) 排出量取引(京都議定書17条) 各国の削減目標達成のため、先進国同士が排出量を売買する制度 ◆ただし、排出権取引が行えるのは京都議定書の発行が前提となります。京都メカニズムの枠 外では EU ( EU-ETS )、イギリス( UK-ETS )シカゴ( CCX )などで既に排出量(権)取引 が試行されています。 A社: 排出量が排出許容量を30万トン超過 削減コストは$50/トン B社: 排出量が排出許容量を50万トン超過 削減コストは$100/トン A社社削減コスト: $1,500万($50/トン×30万トン) B社削減コスト :$5,000万($100/トン×50万トン) A社、B社の合計 $6,500万 排出量取引を実施:B社30万トンだけ削減し、 残り200万トンはA社から排出権を購入 A社社削減コスト: $2,500万($50/トン×50万トン) B社削減コスト: $3,000万($100/トン×30万トン) A社、B社の合計 $5,500万 共同実施 (Joint Implementation) 共同実施(京都議定書6条) 先進国同士が共同で事業を実施し、その削減分を投資国が自国の目標達成に 利用できる制度 ◆先進国同士でプロジェクトを行い、その結果生じた排出削減量(または吸収増大量)に基 づいて発行されたクレジットをプロジェクト参加者間で分け合うこと。 ・クレジットは排出枠として活用が可能 ・共同実施で発行されるクレジットをERU(Emission Reducrtion Unit)という ・プロジェクトの実施に協力する先進国Aを投資国、プロジェクトを受け入れる先進国Bを ホスト国と呼ぶ クリーン開発メカニズム (Clean Development Mechanism) クリーン開発メカニズム(CDM)(京都議定書12条) 先進国と途上国が共同で事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)が自国の目標達 成に利用できる制度 ◆先進国が発展途上国と協力してプロジェクトを行い、その結果生じた排出削減量(または吸収増大量)に基づい て発行されたクレジットをプロジェクト参加者間で分け合うこと。 CER は排出枠として活用可能 ・クレジット名は CER ( Certified Emission Reduction ) ・プロジェクトを実施する先進国Aを投資国、プロジェクトが行われる途上国Bをホスト国という 。結果として、先進国 の総排出枠の量が増大します。そのため、クレジット発行に際して審査が厳格になります。第三者認証機関の指定 運営組織(DOE)が、CDMプロジェクトがホスト国の「持続可能な開発」に寄与しているか、適正に温室効果ガスを削 減するかなどCDMプロジェクトの的確性を審査します。 課題 国土保全、森林の吸収源算入、地域の 活性化などを考えると、日本の森林・ 林業に対して、今後どのような政策が 必要であるかを論じなさい。 A4用紙、ワープロ打ちで2枚 単なる感傷でなく、根拠となるデータ に基いた議論を行うこと。
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