言語体系とコンピュータ 2006年度2学期 第9回 本日の内容 • 文の意味を決める – 決まるか? 2 前回のおさらい(1) • 単語の意味を決める シソーラス(番号)と 格フレームの組み合わせ 「かける」 1a <503>ガ <525>ニ<432>ヲ 1b <713>ガ <503>ニ<432>ヲ 2 <525>ガ<959>ニ<932>ヲ 3 <061>ガ<942>ニ<077>ヲ 彼が姉に希望をかける → 1a 会社が彼に期待をかける → 1b 姉がハンガーにタオルをかける → 2 犬が電柱におしっこをかける → 3 3 おさらい(2)連想関係(1) Cranes were used to lift building materials. 1. a large waterbird with long legs and necks. 2. a large machine used to lift heavy loads. どっちか? 連想関係で決める 4 おさらい(3)連想関係(2) Cranes were used to lift building materials. 1. a large waterbird with long legs and necks. 2. a large machine used to lift heavy loads. 見出し語[語義1] ... 語11,語12, 語13, ... , 語1n 見出し語[語義2] ... 語21,語22, 語23, ... , 語2n 5 おさらい(4)連想関係(3) 入力文 wa wb wc wd we wf Wc1: Wg Wk Wb Wi Wj 一致度1 Wc2: Wg Wk We Wf Wl Wm 一致度2 6 おさらい(5)連想関係(6) Cranes were used to lift building materials. (used to) lift building material それぞれの語釈文に現れる単語 入力文中の単語の一致度 Wc1: large waterbird long leg neck Wc2: large machine (used to) lift heavy load 7 おさらい(6)連想関係(8) 入力文 wa wb wc wd we wf Wc1: Wg Wh Wb Wi Wh Wa Wx Wz Wq Wr Wc2: Wg Wk We Wf Wl Wm Wa Wn Wo Wj Wy Wq Wp Wd 類義語で拡張 類義語で拡張 8 文の意味を決める(1) • 一般的には (1)文中の単語の意味を決める (2)各単語の意味から文の意味を決める → 動詞を中心とした格フレーム 動詞と他の名詞との深層格を定義 9 文の意味を決める(2) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社が彼に期待をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] kakeru2 動作主:[HUM] 場所:[LOC/PRO] 対象:[CON] kakeru3 動作主:[HUM/ANI] 着点:[CON] 対象:[CON] 10 文の意味を決める(3) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社(ORG・LOC)が彼に期待をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] kakeru2 動作主:[HUM] 場所:[LOC/PRO] 対象:[CON] kakeru3 動作主:[HUM/ANI] 着点:[CON] 対象:[CON] 11 文の意味を決める(4) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社が彼(HUM)に期待をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] kakeru2 動作主:[HUM] 場所:[LOC/PRO] 対象:[CON] kakeru3 動作主:[HUM/ANI] 着点:[CON] 対象:[CON] 12 文の意味を決める(5) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社が彼に期待(MEN)をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] kakeru2 動作主:[HUM] 場所:[LOC/PRO] 対象:[CON] kakeru3 動作主:[HUM/ANI] 着点:[CON] 対象:[CON] 13 文の意味を決める(6) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社が彼に期待をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] kakeru2 動作主:[HUM] 場所:[LOC/PRO] 対象:[CON] kakeru3 動作主:[HUM/ANI] 着点:[CON] 対象:[CON] 14 文の意味を決める(7) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム 会社が彼に期待をかける kakeru1 動作主:[HUM/ORG] 相手:[HUM] 対象:[MEN] 単語の意味が決まって 最終的に文の意味が決まる 15 文の意味を決める(8) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム I eat the apples in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) eat3 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 道具:[CON] 16 文の意味を決める(9) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム I(HUM) eat the apples in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) eat3 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 道具:[CON] 17 文の意味を決める(10) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム I eat the apples(EDIBLE) in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) eat3 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 道具:[CON] 18 文の意味を決める(11) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム I eat the apples in the garden(LOC). eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) eat3 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 道具:[CON] 19 文の意味を決める(12) • 一般的には→ 動詞を中心とした格フレーム I eat the apples in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) 単語の意味を決めても決まらない eat1/eat2 「in」が文の中でどういう役割をしているかの考慮必要 20 共起・格パターンの利用(1) I eat the apples in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) 単語の意味を決めても決まらない eat1/eat2 「in」が文の中でどういう役割をしているかの考慮必要 the apples in the garden NP in the garden NP in NP EDIBLE in the garden EDIBLE in LOC eat the apples in the garden eat NP in NP eat EDIBLE in LOC コーパス内に出現する パターンをいろいろな 場合で想定して,頻度 から傾向をつかむ 21 共起・格パターンの利用(2) I eat the apples in the garden. eat1 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] 場所:[LOC] eat2 動作主:[HUM/ANI] 対象:[EDIBLE] (+修飾:場所:[LOC]) 単語の意味を決めても決まらない eat1/eat2 「in」が文の中でどういう役割をしているかの考慮必要 一番ありそうな解釈を選択 the apples in the garden NP in the garden NP in NP EDIBLE in the garden EDIBLE in LOC eat the apples in the garden eat NP in NP eat EDIBLE in LOC コーパス内に出現する パターンをいろいろな 場合で想定して,頻度 から傾向をつかむ 22 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 意味の曖昧性:なかなか決められない問題 Every child lifted a rock. 23 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 意味の曖昧性:なかなか決められない問題 Every child lifted a rock. xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 24 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 意味の曖昧性:なかなか決められない問題 Every child lifted a rock. yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 25 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 意味の曖昧性:なかなか決められない問題 Every child lifted a rock. xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 26 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 少年たちは,イヌを飼っている. 27 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 少年たちは,イヌを飼っている. xy(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) 28 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 少年たちは,イヌを飼っている. yx(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) 29 文の意味を決めるのが難しい問題(1) • 少年たちは,イヌを飼っている. xy(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) yx(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) 30 スコープ(1) • ∀:全称記号 – ∀x と書くと任意のxが存在する (every) • ∃:存在記号 – ∃x と書くとあるxが存在する (a ) • スコープ(有効範囲) – ∀>∃ とすると every > a – ∃>∀ とすると a > every 31 スコープ(2) • Every child lifted a rock. ∀>∃ every > a xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) ∃>∀ a > every 32 スコープ(3) • 少年たちは,イヌを飼っている. ∀>∃ 少年たち>イヌ xy(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) yx(少年( x) イヌ ( y) 飼う ( x, y)) ∃>∀ イヌ>少年たち 33 スコープの優先順位 • 基本的には,表層出現の順序関係を反映 – Every child lifted a rock. everyが先に出現しているので,every > a xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 34 スコープの優先順位(2) • 基本的には,表層出現の順序関係を反映 – Every child lifted a rock. yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) この解釈をさせるには? A rock was lifted by every child. とでもする 35 スコープの優先順位(3) • 基本的には,表層出現の順序関係を反映 • 個々の数量詞の特性にも影響される A rock was lifted by every child. yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) A rock was lifted by each child. xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 36 スコープの優先順位(3) • 基本的には,表層出現の順序関係を反映 • 個々の数量詞の特性にも影響される A rock was lifted by every child. yx(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) A rock was lifted by each child. 順序関係には反する xy(child( x) Rock( y) lift ( x, y)) 37 否定のスコープ(1) • All of them don’t think so. NO. All>not 誰もそう思っていない. 38 否定のスコープ(2) • All of them don’t think so. NO. not>All YES. 誰もがそう思っているわけではない. 39 否定のスコープ(3) • All of them don’t think so. NO. NO. YES. – 判断には個人差がある – 表層の出現順位が1つの解釈材料になる が... 40 否定のスコープ(4) • 表層の出現順位が1つの解釈材料... – しかし I didn’t visit Shizuoka this summer. (1) 私は,今年の夏,静岡を訪れなかった. (2) 私は,今年の夏は静岡を訪れなかった. どっち? 決定はなかなか難しい 41 イディオム,メタファーの問題(1) • 慣用句(イディオム) – 2語以上の結合で,元の語の意味の組合せ ではわからない別の意味を生み出す表現 「足を洗う」「手がまわらない」 wash one’s hands of to have your hands full 42 イディオム,メタファーの問題(2) • メタファー(隠喩,暗喩) – 例えであることを明示しない (直喩などをあわせると比喩) 「ガソリンを食う車」 「ガラスの心臓」 43 イディオム,メタファーの問題(3) • イディオムは計算可能 – 有限個→すべてのパターンを辞書登録 • メタファー(隠喩,暗喩)はかなり困難 – 全パターンの用意は不可能 – 使用にあわせてその都度解釈する仕組み+ 世界知識(常識や言語以外の知識も含む)+ 推論,辞書 • 冗談のわかるコンピュータも同様に難しい 44
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