スキル・ディベロプメント分野の教育 協力と経済発展に関する調査研究 平成18年度拠点システム構築事業 「国際教育協力イニシアティブ」国内報告会 平成19年2月6日 広島大学 教育開発国際協力研究センター 吉田和浩 1 発表の流れ 1. 2. 3. 4. 5. 事業概要 事業の目的 調査・活動内容 調査・活動結果 今年度事業の総括と来年度以降の展望 2 1. 事業概要 課題 1) スキル・ディベロプメントの範囲と本活動の範囲 課題 2) 日本の経済発展と人材育成に果たした教育・ 訓練の役割(中等教育レベル) 課題 3) 経済発展レベル・主要開発課題による今日の 途上国の類型化 課題 4) スキル・ディベロプメント分野における日本の国 際協力が何を目指し、どのように実現したか 課題 5) (4)に対応し、異なる途上国経済が必要とする 人材と教育が果たしうる役割 課題 6) まとめ・結論 3 2. 事業の目的 低所得国にとどまっている途上国がもつ開発課 題を克服する上で需要が高いと思われる中等教 育レベルのスキル・ディベロプメント協力に焦点 を当て、改めて日本の成功要因(外部要因を含 む)を整理し、日本の過去の国際協力を概観し た上で、今日の途上国のスキル・ディベロプメン ト・ニーズを類型化することを通じて、同ニーズを 満たす上での有効な留意点を整理する。 4 3. 今年度の調査・活動内容 第1回活動調整会議の開催 課題1. SDの範囲と本活動範囲の明確化 課題2. 日本の経済発展と人材育成に果たした 教育・訓練の役割(中等教育レベル)ー来年に継続 課題3. 経済発展レベル・主要開発課題による 今日の途上国の類型化ー来年に継続 現地調査協力者の選定、関連基礎情報の収集 第2回活動調整会議の開催 5 3. 調査・活動内容 - 活動実施者 メンバー 所属 分担 小川啓一 神戸大学・助教授 ガーナ事例研究 草郷孝好 大阪大学・助教授 ネパール事例研究 廣里恭史 名古屋大学・教授 日本の経験 岡田亜弥 名古屋大学・教授 カンボジア事例研究 小池洋一 拓殖大学・教授 産業発展・政策課題 長尾眞文 広島大学・教授 南ア事例研究 吉田和浩 広島大学・助教授 総括・日本・ガーナ 6 3. 調査・活動内容 - 活動体制 文部科学省 有識者・JICA 活動調整会議 活動実施者チーム 現地調査 協力者 現地調査 協力者 現地調査 協力者 広島大学 現地調査 協力者 7 4. 調査・活動結果 - 1 定義と範囲 活動範囲・活動計画の同意:中等レベルの 特に公的機関によるTVETを主な調査研究 対象とする (課題1)。 民間 フォーマル 技術教育 企業内訓練 職業訓練 徒弟制度 インフォーマル 公的 技 能 者 テ ク ニ シ ャ ン 技 術 者 8 4. 調査・活動結果 - 2 日本の経験 明治期の 実業産業 教育 M26・27年、実業補習学校規程、徒弟学校規程、簡易農学校規程公布。 低度実業学校制度化に着手。実業教育費国庫補助法制定(~S24年度)。 戦後の産 業 職業教育 S22年、教育基本法公布。学校教育法制定。複線型から単線型へ。普通 教育主流へ。労働基準法制定。技能者養成規定。 M32年、実業学校令公布。日露戦争後の産業発展に対応して実業学校急 成長、中級技術者を提供。 S26年、産業教育振興法公布、高等学校の職業教育に国庫補助。 S33年、職業訓練法制定、事業内認定職業制度。 S35年、国民所得倍増計画。S32年の中教審「科学技術教育の振興方策 について」の答申に続き、倍増期間(S35~45)に科学技術者需要増大、 理工学系大学増加へ。 中教審答申「後期中等学校教育の拡充整備について」(S41)、「高等学校 における職業教育等の多様化について」(S42,43) S37年、高等専門学校創設。 9 4. 調査・活動結果 - 2 日本の経験 日本の教育(特に中等教育)が一般的には経済発展に 先立って拡充されてきた(神門2003)。 これに対して、職業教育は明治期(日露戦争後)、戦後 昭和期(所得倍増計画)の実需に対応して政策的に拡 充された。 産業教育振興法により工業科生徒数は、1955年の24 万人から1965年の62万人に急増し。 技術革新の発展に対応して、学科・コースが多様化(74 年に134種)。しかし、普通基礎学力が不十分、また特 定の技術教育への特化は変動する職場ニーズへの適 応性を欠くことに。その結果、中堅技術者に就く工業化 卒業生たちは減少(堀内他、2006)。 10 参考 明治以降の日本の経済発展と教育発展 20 % 18 G DPpc$000 Ave. Schooling Yrs 16 14 12 10 8 6 4 2 0 1890 1990 1910 1920 1930 1940 1955 1960 1970 1980 1990 資料:神門、速見2002 11 4. 調査・活動結果-3 途上国の類型化 工業化率 主要産業の労働生産性(できれば部門別) その他参考指標(検討中) • (一人当たり国民所得とほぼ比例) • 労働市場:失業率(健全性)、インフォーマル・セクター • 労働者の質:教育レベル、特に中等教育 • 経済構造:民間セクターの貢献度、経済成長率 • グローバル化:輸出/GDP、FDI、競争力指数 • TVETの特徴:公的機関の位置 12 4. 調査・活動結果-3 途上国の類型化 2004年 45 40 工業化率(MFG/GDP) 35 30 25 20 15 10 5 0 100 資料:世界銀行 WDI 1000 10000 付加価値労働生産性 100000 13 4. 調査・活動結果-3 途上国の類型化 1990年→2004年 45 工業化率(MFG /G DP) 40 China 35 Thailand Malaysia 30 25 S.Afrika Cambodia 20 15 S.L 10 G hana Nepal 5 0 0 2000 資料:世界銀行 WDI 4000 6000 8000 付加価値労働生産性 10000 12000 14 World Employment Report 2004/5 p.27 15 4. 調査・活動結果-ガーナ事例研究 TVET法発効(2006年7月)。 JICA支援によるSD政策枠組み策定中。 VALP:US$819(2003), 工業化率:9% 現地調査 • • • 協力者:Prof. Hubert Quist, VOTEC、Faculty of Education, Univ. of Cape Coast 近年のTVET動向と関連基礎情報収集 公的訓練機関(Technical Institute)およびインフォーマル 訓練機関の実態調査に向けた準備 16 ガーナ事例研究 - 参考 Kumasiの自動車関連集積企業Suame Magazineのひとつ (BBC Newsから) 17 4. 調査・活動結果-カンボジア事例研究 アジア市場へのアクセス⇔弱い公的SD機関 VALP:US$680(2003), 工業化率:22%、輸出 /DGP:64%(2004年) 現地調査 • 協力者:Dr. Ngin Chanrith, Director,Master's of • Development Studies Programme, Royal University of Phnom Penh カンボジアの公的TVETをめぐる基礎情報収集と職業 訓練施設の事例研究準備 18 4. 調査・活動結果-ネパール事例研究 南アジア最低の所得水準(pcGNI:$270、2005) VALP:US$588(2003), 工業化率:9% 現地調査 • • • 協力者:Mr. Kamal Phuyal、Nepal Institute of Health Science, Purbanchal University ネパール中等教育政策の概略:過去10年間の政策の変 遷、教育効果(労働市場における就労成果、生活上のライ フスキル形成など)を調査中 来年度以降:中等教育のライフスキル形成効果の実証研 究調査 19 4. 調査・活動結果-南アフリカ事例研究 旺盛なFDI⇔高い失業率(2003年28.4%) VALP:US$8621(2003),工業化率:20% 現地調査 • 協力者:Pretoria大学教育学部Jansen教授・学 • • 部長他(予定) Mpumalanga州教育省の調査協力 南ア経済における中級スキル不足・分野の特定 と公的TVETの現状(今年度着手) 20 5. 今年度事業の総括と来年度以降の展望 今年度の成果 • 課題 1(定義と範囲)、2(日本の経験整理)、 3 (途上国の類型化)については当初の予 定通り成果をみた。 • 課題2は来年度以降継続(SD政策と実施に 影響を与えた内部・外部要因を中心に) • 課題2、3については今後の現地調査の進 展にあわせて確認しつつ、必要に応じて調 整。 21 5. 今年度事業の総括と来年度以降の展望 来年度以降の展望 • 事例対象国を中心に、課題 4(日本の国際協力のレ • • • ビュー)、5(途上国の人材ニーズと教育の役割)を調 査。その仮定でSDニーズと可能性に影響を与えてい る主要因を検証。 経済・労働事情とTVETおよび国際協力の目的、成 果の関係を確認。事例国を中心に比較。 日本の経験に影響を与えた内部・外部要因とも比較 し、途上国がSDで成功する上での留意点を整理。 H20年度に調査研究を完了。 22
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